SpecialEpisode-2『色違いのセレビィ!時を超えるルリカ!!』 (1) ジョウトリーグ・チャンピオン防衛戦、くさタイプを使う四天王・ルリカはチャンピオンにしてドラゴン使いのワタルに挑んでいた。しかし、ワタルの 強さは圧倒的で、ルリカは最後の1匹・メガニウムを残すだけとなっていた。対するワタルはカイリューを繰り出していた。 ルリカ「メガニウム、げんしのちから!」 メガニウムがげんしのちからを放った。いわタイプのげんしのちからはひこうタイプを併せ持つカイリューには効果抜群だ。相性の悪いくさタイプの技を あえて使わない作戦だろう。 ワタル「カイリュー、はかいこうせん!」 カイリューがはかいこうせんを放った。はかいこうせんはげんしのちからを打ち破り、そのままメガニウムに命中、メガニウムは一撃で戦闘不能に なってしまった。 審判「メガニウム、戦闘不能。カイリューの勝ち!」 ルリカがメガニウムの元に駆け寄る。 ルリカ「メガニウム、ありがとう。よく戦ってくれたわね。」 メガニウムはかなり傷ついていたが、それでも微笑んで応えていた。 その夜、ルリカはポケモンセンターでメガニウムに付き添いながら、ワタルとのバトルを振り返っていた。 ルリカ「(今日のバトル、私が全然歯が立たなかったわ。確かに、くさタイプはドラゴンタイプに相性が悪いし、相性の問題って言うのもあるかも しれないわ。でも、一番はまだ私の実力が足りなかったって言うことだと思うわ。)」 メガニウムは、すやすやと安らかな寝息を立てている。 ルリカ「(ジョーイさんは、一晩休めば元気になるって言ってたわ。でもやっぱり、今晩は私が付き添ってあげなきゃ。メガニウム、早く良くなってね。)」 と、そこに1人の女の子が声をかけてきた。 女の子「もしかしてお姉ちゃん、今日テレビに出てた?」 ルリカ「うん。でもお姉ちゃんね、全然歯が立たなかったの。それで、今ポケモン達に付き添っているのよ。まだ私の実力が足りなかったって思ってるわ。」 女の子「ううん。お姉ちゃんとお姉ちゃんのポケモン、ワタルさんを相手にすごくよく戦ってたよ。きっとポケモン達、お姉ちゃんのことを信じて バトルしてたと思うよ。お姉ちゃんって、ジョウトリーグのルリカさんでしょ?」 ルリカ「うん、よくご存じね。私はルリカ。あなたは?」 女の子「私はレイカ。今日はずっとお兄ちゃんがかわいがってたポケモンが病気にかかっちゃって、それでお見舞いに来たの。」 ルリカ「そうだったんだ。レイカちゃん、お兄ちゃんがかわいがってたポケモンって、どこにいるの?」 レイカ「上の階よ。案内してあげるね。」 ルリカはメガニウムのいる病室に声をかけた。 ルリカ「メガニウム、すぐ戻るから、心配しないでね。」 メガニウムは安らかな寝息を立てて眠っていた。 レイカに案内されて上の階に行くと、1匹のポケモンがベッドで眠っているのが見受けられた。ハッサムだ。 ルリカ「レイカちゃん、お兄ちゃんがかわいがってたのって、このハッサムのこと?」 レイカ「うん。でもお兄ちゃん、もういないの。」 ルリカ「どうして?」 レイカ「お兄ちゃん、5年前にトラックにはねられて・・・。」 そう言うとレイカは目に涙を浮かべた。 レイカ「私、お兄ちゃんと一緒にこれに行こうって、ずっと約束してたの。でも行く前の日に、事故に巻き込まれちゃったの・・・。」 レイカはポケットからその時のイベントのチラシを取り出した。5年前にアカツキシティと言う町で行われた「ポケモン・バトルパーク」と言う イベントの広告だった。 レイカ「お兄ちゃん、本当ならポケモントレーナーになって、全国を回っていたと思うの。そして今度私も10歳になるし、お兄ちゃんがずっと かわいがってたハッサムと一緒に旅に出ようって思ってたんだ。だからハッサムも、早く良くなってほしいって思ってるの・・・。」 ルリカはレイカの髪を優しくなでた。 ルリカ「レイカちゃん、ハッサムはきっと良くなると思うわ。お兄ちゃんも、きっと見守ってると思うし、だからレイカちゃん、そんなに泣かないで。」 と、その時窓の外を1匹のポケモンが飛んでいくのが見えた。幻のポケモン・セレビィだ。しかも普通のセレビィと違い、ピンク色の色違いだった。 ルリカ「何、今の?」 レイカ「ポケモン・・・?」 色違いのセレビィは、大きく1回転すると、どこかに飛び去っていった。 2人の看病の甲斐もあり、翌日になるとメガニウムとハッサムの具合もだいぶ良くなった。 ジョーイ「ルリカさん、昨日お預かりしたポケモン、みんな元気になりましたよ。メガニウムも、もう大丈夫みたいですね。」 ルリカ「ありがとうございます。」 レイカ「私のハッサムは?」 ジョーイ「まだ安静が必要みたいね。そうだ、ルリカさん。裏の林にオレンのみやオボンのみがなってるから、採ってきてくれないかしら。」 ルリカ「わかりました。」 レイカ「ルリカお姉ちゃん、お願いね!」 ルリカはポケモンセンターの裏にある林に出向いていった。 ジョーイさんも言っていた通り、オレンのみやオボンのみだけでなく、いろいろな木の実が自生している。 ルリカ「いろんな木の実が生えているのね。」 と、そこに妙な気配を感じ、ルリカは振り返った。するとそこには昨夜の色違いのセレビィがいた。 ルリカ「色違いの・・・セレビィ?」 色違いのセレビィはルリカの周りを飛び回り始めた。いったい何をするのだろう。 ルリカ「何!?」 と、次の瞬間、セレビィの一声とともにまばゆい光が発し、ルリカの姿は跡形もなく消えてしまった。果たして、何が起こったのだろうか。 (2) 色違いのセレビィの発した光に巻き込まれたルリカ。気が付いてみると、その場に倒れ込んでいたようだった。 辺りを見回しても、さっきのセレビィの姿は見受けられない。 ルリカ「(私、セレビィの光に巻き込まれて、・・・それから何が起こったの・・・?)」 ルリカは冷静にそれまでの出来事を振り返ってみることにした。 ルリカ「(セレビィって、確かときわたりの能力を持っているって聞いたことがあるわ。と言うことは、もしかしたら私、時代を超えてしまったの? だとすると、どの時代に・・・?)」 辺りの風景は、光に巻き込まれる前とさほど変わっていないようだった。 ルリカ「(そうだ。さっきのポケモンセンターに行けば、何かわかるかもしれないわ。行ってみよう。)」 ルリカは林を抜けると、ポケモンセンターに向かった。 と、中に入ったルリカの目に、あるポスターが飛び込んできた。 ルリカ「何・・・?『ポケモン・バトルパーク、アカツキシティで開催。トレーナーでなくても大丈夫。みんな、好きなポケモンを連れて、バトルパークに 集まれ!』ってことは・・・?」 ジョーイ「あなたもバトルパークに行くの?」 ルリカ「あっ、はい・・・。えっ、でもこれって、いつ行われるんですか?」 ジョーイ「明日よ。隣のアカツキシティで行われるの。あなたもトレーナーでしょ?是非行ってみたらどう?」 ルリカ「(バトルパークが明日?ってことは、私、5年前の世界にタイムスリップしたってこと?)」 と、そこに1組の兄妹が現れた。 男の子「こんにちは。」 ジョーイ「あら、ミノル君にレイカちゃん。明日バトルパークに行くんだってね。」 5年前のレイカ「うん。私、とても楽しみにしてるの。」 5年前のミノル「はい。レイカと2人で行こうって、ずっと前から約束してたんです。」 ジョーイ「そうね。それが終われば、ミノル君も10歳になって、ポケモントレーナーとしての旅に出るんだもんね。ミノル君、最初のポケモンは ずっと可愛がってたハッサムにするの?」 5年前のミノル「はい、僕、このハッサムと一緒に行こうって、ずっと言ってたんです。だから、バトルパークが終われば、僕もポケモントレーナーに なるし、このハッサムと一緒に、トレーナーとして活躍して、いつかはポケモンリーグにも出たいって思ってるんです。」 ジョーイ「そうなんだ。ミノル君、レイカちゃん、明日は楽しんできてね。」 ミノル・レイカ「はい。」 そう言うとミノルとレイカはポケモンセンターを後にした。 ルリカ「(レイカちゃんのお兄さんって、確かバトルパークに行く前の日にトラックにはねられたって言ってたわ。そして、この子もレイカちゃんって 言うし、明日はバトルパークが行われるって言ってたわ。ということは・・・?)」 ルリカは思わず息を飲んだ。 ルリカ「(あのミノル君って言うのがレイカちゃんのお兄さんね。そしてミノル君がトラックにはねられてしまうってこと!?ミノル君が危ないわ!)」 次の瞬間、ルリカはミノルとレイカを追って走り出していた。 ジョーイ「あ、ちょっと、どうしたの!?」 その声はルリカには届くわけもなかった。 一方その頃、通りを1台のトラックが走っていた。何も知らないトラックの運転手は、口笛を吹きながらトラックを運転している。 他方でミノルとレイカはポケモンについてのいろいろな会話を楽しみながら通りを歩いている。 ミノル「それでね、トレーナーとしてジムに挑戦するだけでなく、コーディネーターとしてコンテストに出場、そしてブリーダーとしていろいろな ポケモンと接すること、他にもポケモンを育てる楽しみはたくさんあるんだよ。」 レイカ「すごーい!私も早くトレーナーになって、いろんなところを旅してみたいな。・・・あ、お兄ちゃん、あれ!」 ミノル「!!」 ミノルとレイカのところに1台のトラックが突っ込もうとしているではないか。 ルリカも息せき切って走り、ミノルとレイカの姿を見つけたが、もはやここからでは完全に間に合いそうもない。 ルリカ「危ない!トラックが突っ込むわ!」 しかしミノルとレイカは完全に固まってしまい、その場に立ちつくしてしまっている。 トラックの運転手「・・・!危ない!」 運転手はあわててブレーキをかけたが、これも間に合いそうもない。 ルリカ「君たち!トラックが突っ込むのよ!!早く!!」 ルリカは声を限りに叫んだが、ミノルとレイカは全く動けない。 と、その時モンスターボールからメガニウムが飛び出した。 ルリカ「メガニウム・・・?あの子達を助けるって言うの?」 メガニウムは大きくうなずくと、勢いよく一声入れた。 と、次の瞬間メガニウムからつるのムチが勢いよく伸び始め、ミノルとレイカに向かって伸びていった。 果たして、メガニウムはミノルとレイカを救い出すことができるのだろうか・・・。 (3) セレビィのときわたりで5年前の世界にタイムスリップしたルリカ。そしてルリカがたどり着いたその日は、レイカの兄・ミノルがトラックにはねられた 日だった。しかもルリカの見ているそばで、今まさにミノルとレイカがトラックにはねられようとしていたのだった。 ミノル・レイカの兄妹を救うべく、メガニウムは勢いよくつるのムチを伸ばした。 つるのムチはミノルとレイカにしっかりと巻き付き、そして勢いよく引き寄せたのだった。そして間一髪、トラックはブレーキをかけて止まった。 トラックの運転手「こらっ!どこ見て歩いてるんだっ!!」 ミノル「ごめんなさい・・・。」 トラックの運転手「・・・でもな。さっきのつるのムチがなかったら、おまえ達も今頃、このトラックにはねられてたかもしれない。これからはよく 注意して歩くんだぞ。」 レイカ「はい。わかりました。」 そう言うと運転手はトラックに乗って走り去っていった。 ミノル「・・・よかった。僕たち、生きてるんだね!」 レイカ「お兄ちゃん・・・。」 ミノルとレイカはしっかりと抱き合った。ルリカもその光景を見つめていた。 ルリカ「よかったわね。ミノル君とレイカちゃんも無事で。そしてメガニウム、あなた、つるのムチを覚えたのね!」 メガニウムはつるのムチを伸ばして応えていた。 するとそこに、あの色違いのセレビィが現れた。セレビィはルリカ達の周りを回り始めた。 ルリカ「セレビィ・・・、私たちを元の時代に戻してくれるの?」 するとセレビィの一声が響き、まばゆい光が放たれた。その光が収まると、ルリカとメガニウムの姿はどこにもなかった。 ミノル「レイカ、きっとさっきのつるのムチって、僕たちのことを助けるために、どこからともなく伸びてきたんだと思うよ。」 ミノルはそう言うと、レイカと一緒に後ろを振り返った。 ミノル「きっと、僕たちのことを、誰かが見守ってくれてたんだと思うよ。」 と、セレビィの鳴き声が聞こえた。 レイカ「今のは・・・?」 ミノル「僕たちのことを見守ってくれてるんだよ。きっとね。」 〜挿入歌・『明日天気にしておくれ』が流れる〜 ルリカは、再びセレビィのときわたりで元の時代に戻ってきた。 ルリカ「セレビィ、ありがとう。この事は誰にもいわないで、私だけの秘密にするわ。」 セレビィは再び一声あげると、また何処とも知れぬ時代に向かってときわたりして行った。 傍らを見ると、たくさんのオレンのみやオボンのみが置かれていた。 ルリカ「(セレビィ、きっとハッサムが元気になるようにって、木の実を置いていってくれたのね。ありがとう。)」 ルリカは木の実を持ってさっきのポケモンセンターに向かった。すると、すっかり元気になったハッサム、大きくなったレイカ、そしてポケモントレーナー となったのだろう、たくましく成長したミノルの姿があった。 レイカ「あ、ルリカお姉ちゃん!」 ミノル「ハッサムを看病していただいて、本当にありがとうございました。」 ルリカ「レイカちゃん、良かったね。この木の実、裏の林で採ってきたの。ハッサムに食べさせてあげたくて。」 ハッサムはすっかり元気になっており、両方のはさみを勢いよく振り回していた。そして、木の実を美味しそうに食べていた。 ミノル「レイカ、お前ももう10歳になるし、このハッサム、お前にもずいぶんなついてる。レイカ、このハッサムと一緒に旅に出るっていうのはどう?」 レイカ「えっ、でもお兄ちゃんがトレーナーになる前からずっと可愛がってたハッサムでしょ?私が譲り受けていいの?」 ミノル「うん。きっとレイカなら、このハッサムを任せられるって思う。心配しないでいいんだよ。」 ハッサムもレイカにほほえみかけている。 レイカ「うん。私、このハッサムと一緒に強くなる。そしていつか、ポケモンリーグに出て、ルリカお姉ちゃんとバトルするんだ!」 ルリカ「まあ。よく言ってくれたわね。レイカちゃん、ポケモントレーナーとしてポケモンリーグに出場するっていうのは、大変長い道のりになると 思うけど、でもレイカちゃんだったらきっとできるわ。私、レイカちゃんとバトルできる日を楽しみにしてるわね。」 レイカ「ありがとう。約束よ、ルリカお姉ちゃん!」 ルリカとレイカは固い握手を交わした。 と、ジョーイさんがポケモンセンターから出るなり言った。 ジョーイ「ルリカさん。今からナナシマ・バトルチャンピオンシップスの広報部長さんがお見えになるそうですよ。」 ルリカ「ナナシマ・バトルチャンピオンシップス?」 ジョーイ「今度、ナナシマの南、7のしまで行われる、ナナシマで初めてのポケモンリーグ公式大会なんです。」 間もなく1台の車が到着、中から1人の男性が現れた。この人がナナシマ・バトルチャンピオンシップス広報部長だろう。 広報部長「あなたがジョウトリーグ四天王のルリカさんですね?」 ルリカ「はい。」 広報部長「実は、今度行われるナナシマ・バトルチャンピオンシップスに、ゲスト解説として実況の横でアシスタントを務めてもらいたいのです。」 ルリカ「ゲスト解説?私がですか?」 広報部長「はい。四天王として活躍なされているルリカさんでしたら、きっとこの役割を任せられるだろうと思っておりまして、それで今回、お願いに 上がった次第です。」 ルリカ「(広報部長さんが私に直々に・・・。それなら。)はい、わかりました。私に是非、ゲスト解説者として参加させてください。」 広報部長「ありがとうございます。」 レイカ「良かったね、ルリカお姉ちゃん!」 ミノル「ゲスト解説って、実況のそばでアシスタントするだけでなく、トレーナーの心情も理解していないと務まらない、大切な役割だよ。でも ルリカさんならきっとできるって思っています。」 ルリカ「はい。」 こうして、セレビィのときわたりとルリカの活躍で、ミノルはポケモントレーナーとして立派に成長を遂げた。 そしてレイカはミノルからハッサムをもらい、ポケモントレーナーとして旅立つのだった。 そしてルリカは、ナナシマ・バトルチャンピオンシップスのゲスト解説という役割を任されたのだった。 果たして、ルリカはこの大役を勤め上げることができるのだろうか。 <初出> (1):2009年6月28日、(2):2009年7月11日、(3):2009年7月12日、いずれも旧ぽけあに掲示板にて掲載。