SpecialEpisode-7「ロケット団!ナナシマに賭けた野望!!」 【はじめに】 この作品はナナシマ編・ネイス神殿の攻防の時期に当たるため、作中、例によって某ジ○リ映画のオマージュやパロディが多々見られるかと思います。 元ネタは恐らく誰でもご存知の作品ですが、元ネタをご覧になったことがない方は十分注意してご覧くださいませ。 (1) 「ああぁ!目がぁ、目があああ〜!!」 気がついたとき、私の視界は何も見えなかった。 さっきまで確かに見えていたはずなのに。激しい目の痛み。それを理解するまでにさほど時間はかからなかった。 周りから音が聞こえる。天井が、そして足元が今にも崩れ落ちそうな、激しい音。何も見えないまま、音だけが響く中、私は壁づたいに歩かなければならなかった。 だが何も見ることができない。その事が私の判断を、そして理性を完全に喪失させていた。 壁づたいに必死で歩く。だが私の足元もまた崩壊が始まっていたことに気づくはずもなかった。 「あ、あぁ!目がっ!」足元が何かにつまずく。その瞬間、手は壁から離れ、私は何も見えない中に放り出されてしまった。「あああああ、あぁぁぁ!!」 支えを失った私は、揺れる地面に足を取られ、下に向かって落ちていくのがわかった。 やがて全身に衝撃を覚えた。床に叩きつけられたのだろう。だが何も見えないのは変わらない。しかしこの階層も崩落するのは間違いなかった。 「ああっ、目がぁ!」私はどうにかして壁に手を触ろうとする。だが、私の口から出るのはこの言葉だけだった。「目が、目がぁ、ああぁ!!」 だが次の瞬間、聞いたこともないきしむ音がしたかと思うと、床が完全に抜け落ちていくのが分かった。 「あああああーーーーーっ!!!!」 私は抜け落ちた床――無数の瓦礫と一緒に、真っ逆さまに落ちていくのがわかった。 私はケイ。ロケット団の幹部にして、ナナシマ地区の支部長だ。 私はサカキ様からの命を受け、このナナシマに眠る超古代文明・ネイス神殿、そして伝説の宝石である、特別なダイヤモンドとパールを手に入れる使命を受けたのだ。 ネイス神殿を蘇らせて私が支配者となる。シナリオは完璧なはずだった。だが、まさかこんなことになろうとは・・・。 海に向かって落ちていく私の脳裏を、サカキ様から命を受けたときのことがよぎった。 (サカキ様・・・。) (2) 私が、サカキ様からナナシマに眠る超古代文明、「ネイス神殿」の話を聞かされたとき、私はこれこそロケット団が探し求めていた古代の遺跡だと直感した。 「ケイ君。君にナナシマに眠るネイス神殿の謎を解き明かしてほしい。そして、神殿を蘇らせて、我がロケット団の世界征服の新たな拠点とするのだ!」 サカキ様のその言葉を聞いたとき、私は胸が引き締まる思いがした。そして、サカキ様の思いを、そしてロケット団の新たなる拡大のためにも、ネイス神殿を必ず蘇らせてみせる。このとき、私は思ったのである。 「かしこまりました。ネイス神殿、このケイが必ず見つけ出して見せます。そして、我らがロケット団に繁栄と栄光を!」 それからの私の行動は早かった。 イッシュ地方でロケット団の先遣隊として活躍したムサシとコジロウ(※1)。彼らに憧れてロケット団に入ったというミカサとコイチロウの2名をナナシマ先遣隊として教育することになったのだ。 「私はロケット団幹部のケイ。今日から私がお前達を指導する。目的は1つ。ナナシマに眠ると言われる特別な宝石、ダイヤモンドとパールを見つけ出すためだ。いいか、諸君。ロケット団の未来はお前達の活躍にかかっているのだ!」 「はい、ケイ様!」 このピンクのショートヘアの女性団員。彼女がミカサである。 「ロケット団の名の下に!」 水色の髪を肩まで伸ばした男性団員。彼がコイチロウ。2人とも私がナナシマ先遣隊として選んだ団員である。 ミカサとコイチロウの活躍はずば抜けていた。ナナシマ先遣隊に向かうために準備段階として与えた任務を軽々とこなしていく。それはまるで、イッシュ先遣隊として活躍したときのムサシとコジロウを見ている感じがした。 この分なら、ナナシマ先遣隊としての仕事も簡単にまとめてくれる。そしてきっと、ネイス神殿が手に入るのも間近いだろう。そのとき私はそう思っていたのだった。あのときまでは・・・。 それは、これまでの活躍を見る上で正式に派遣できるかどうかを試す、一種のテストの形式だった。 「今回のミッションは、ホウエン地方・イザベ島で暮らすポケモン達をサカキ様に献上することだ。」 そう言って私はミッションの内容を説明した。 「イザベ島の片隅にポケモンセンターがある。この周辺で暮らすポケモン、ラルトス、キルリア、そしてサーナイトを連れ去り、サカキ様に献上するのだ。これまでのお前達の活躍を評価する上で重要なミッションだ。心してかかれ!」 ポケモンを奪ってサカキ様に献上する。ロケット団員としては手慣れた任務だが、ミカサとコイチロウはこう言った任務は初めてとなる。このミッションに成功するか否かが、今後のナナシマでの活動に重大な影響をもたらすと言っても過言ではなかった。 「ラルトス、キルリア、そしてサーナイトですね?」 コイチロウが私に尋ねた。 「ああ。調べたところではいずれも♀、それも3匹まとまって生活しているそうだ。こいつらを連れ出してサカキ様に献上するのだ。」 「かしこまりました。ではイザベ島はどうやって?」 ミカサも尋ねる。ミカサやコイチロウはカントーの地理には慣れているが、ホウエン地方は詳しくない。 「トクサネシティとルネシティの間にある島々だ。」 私はそう言ってホウエン地方の地図を見せた。 「この中で一番大きな島がイザベ島だ。そしてルネ行きの船があるのがセルロスタウン。この手前にあるのがラルトス達が暮らしているポケモンセンターだ。ラルトス達が現れたら、そこを逃がさず取り押さえるのだ。分かったな。」 「はっ!」 ミカサとコイチロウの自信にあふれた一言を聞いたとき、私はこのミッションも無事にこなせるだろうと思っていた。 だが、それは大きな誤算だった。まさか、あのような邪魔が入ってしまうとは、このときはまだ、夢にも思っていなかった・・・。 (3) ミカサとコイチロウが帰ってきたのはそれから数日後のことだった。だがどことなく様子がおかしい。何かに吹っ飛ばされたのではないのだろうか。2人の姿を見たとき、私は妙な胸騒ぎを覚えていた。 「どうした!?」 「ケイ様、すみませんでした・・・!」 「ラルトス達を奪うことはできませんでした。まさかあのような小僧に・・・!」 そう言うと2人はばったりと倒れてしまった。あの小僧とはいったい何者なのだろう。 「誰か!救護を呼べ!」 ミッション失敗の責任は私にあるのは間違いない。私はミカサとコイチロウにつきっきりでいることにした。 やがて2人は目を覚ました。 「気がついたか?」 「はい・・・。うっ!」 よほど強力な一撃を受けたのだろう。ミカサは身を起こすのも一苦労といった感じだった。 「大丈夫です。ケイ様、ミッションがこういう形となってしまって、誠に申し訳ありません。」 コイチロウは受けたダメージはそれほどでもない感じだったが、無理はできないだろう。 「どうしたのだ?小僧がどうのこうのと言っていたが・・・?」 「はい。あのラルトスを奪おうとしたときのことでした・・・。」 ミカサとコイチロウの口から衝撃的な展開が告げられたのだった。 話によると、イザベ島に到着してからポケモンセンターに向かうまでは、何事もなかったそうだ。2人はポケモンセンターの近くの草むらに隠れて、ラルトス達が現れるのを待っていたという。 だが、そこに思わぬ邪魔が入ったのだという。報告によると、眼鏡をかけたポケモントレーナーに成り立ての少年だったらしい。 「あ、ラルトス!」 不意に現れたラルトスに、その少年は優しく語りかけたという。それはまるで、ラルトスが現れるのをはっきりと予感している感じだったという。 「何なのよあのガキ!どうしてラルトスと親しくしてるの!?」 「しっ!見つかるとまずいことになる。しばらく様子を見ていよう。」 ミカサとコイチロウがこう思うのも無理はない。 「僕、ポケモントレーナーになったんだ。あのときの約束、覚えてる?『僕がポケモントレーナーになったら、会いに行くよ』って。」 「どうしてあのガキがラルトスとそう言う約束してるのよ!」 「こうなったら力尽くでも奪うまでだ!」 そう言って2人は小僧に襲いかかったと言うことだった。どうしてラルトスが小僧と仲良しなのか、そう言ったことはどうでもよかったのだろう。それに、その程度のことは後からでも十分調べることができるはずだ。 「そのラルトス、君とずいぶん親しそうにしてるみたいだけど、そこまでよ!そのラルトス、頂いていくよ!」 ミカサはそう言って小僧を脅かそうとしたらしい。 だが小僧は「許さない!ラルトスは僕が守る!」と言って、あくまでも対決する姿勢を崩さなかった。しかし、小僧はよほどそのラルトスに愛着していたのだろう、最初のポケモンをもらっていなかったそうだ。 ホウエン地方ならキモリ、アチャモ、ミズゴロウの3匹が初心者用ポケモンとして推奨されている。それは私たちも調べて知っていることだが、小僧はそこまでして最初のポケモンをラルトスにしたかったのだろうか。恐らくは小僧の台詞にもあるとおり、昔そのラルトスと何かしらの約束を交わしていたのだろう。 「なぁに?ポケモントレーナーのくせしてポケモンを持ってないの?じゃあ容赦しないわ!行け、クロバット!」 「お前もだ!行け、ハッサム!」 ミカサはクロバット、コイチロウはハッサムを出して真っ向勝負に挑んだそうだ。だがそこに思わぬ邪魔が入ったそうだ。 キルリアの♂がめざめいしで進化した姿、エルレイド。そいつが突然現れてサイコカッターでクロバットとハッサムを吹っ飛ばしたらしい。 「こしゃくな!ハッサム、エルレイドにつばさでうつ!」 「クロバット、エルレイドにどくどくのキバ!」 クロバットとハッサムはエルレイド達を相手に奮戦した。だがあの小僧とラルトスは、私たちの想像もつかないほど深い絆で結ばれていたのかもしれない。 あの小さいラルトスを相手にクロバットとハッサムは翻弄されていたのだろう。最後には容赦なくサイコキネシスを打たれてしまったそうだ。 「やな気分〜!」 そう言ってミカサとコイチロウは吹っ飛ばされていったという・・・。 「今回の失敗の件、ミッションを命じたケイ、お前にも責任がある。そしてミカサとコイチロウ、お前達はラルトス達を連れて帰ることができなかったということも忘れてはならない。」 サカキ様の言葉はいつにもまして厳しいものだった。イッシュ地方に派遣される前のムサシとコジロウも、任務に失敗するたびごとにこうしてサカキ様の叱責を受けていたのかもしれない。 だが、サカキ様はこう述べられたのだった。 「しかし、お前達のナナシマ・ネイス神殿を見つけ出すという固い意志はしかと受け止めている。そして何より、ナナシマでの活躍はお前達にかかっているのだ。」 「はっ!」 「ミカサ、コイチロウ。両名は回復次第、新たなるミッションを命じる。次の目的地は6のしま、点の穴だ!」 6のしまにある点の穴。古くから点字で形作られた遺跡の扉が入り口をふさいでいるという。ネイス神殿につながる超古代文明の遺跡と言われている。 「ケイ。お前は点の穴と遺跡の谷について調査を開始せよ。そしてミカサとコイチロウの新たなミッションの準備に取りかかるのだ!」 6のしまの遺跡を調べろ、と言われたときはもう後には引けないと感じていた。だが、今私が感じているのは、文字通り奈落の底に向かって真っ逆さまに落ちていく感覚だった・・・。 (4) 6のしまの南部に、遺跡の谷と呼ばれている峡谷がある。点の穴はこの地に眠る遺跡の名前だった。 ミカサとコイチロウに命じられたミッション。それは、この遺跡に眠っている特別なサファイアを見つけ出し、サカキ様のもとに届けることだった。 私は2人を送り出した後、本部にこもってネイス神殿の伝説についてさらに調べることにした。 「ケイ様、まだ調べものですか?」 「ああ。ナナシマに眠ると言うネイス神殿だよ。」 私はそう言って、部下にネイス神殿の書物を指し示した。 「この神殿・・・ですか?」 「そうだ。この神殿はナナシマの古くからの言い伝えにある神殿だ。私達ロケット団が蘇らせることができれば、すなわち世界征服の原動力となる。そうだと思わないか?」 「世界征服・・・?」 「すまん。私としたことが壮大な理想を述べてしまったな。もちろん、超古代文明の中に語られるネイス神殿がいかほどの力を秘めているのか、それは私にも分かったものではない。だが、その謎を解き明かすのもロケット団の役割ではないのだろうか?」 私は部下に対して、本音ともとれる発言をこのときすでにしていたのだろう。 だが、ロケット団のネイス神殿をめぐる行動は、この後、思いもかけない方向に向かって進み出していくのだった。それも、またしてもミカサとコイチロウのためだった。 数日後、ミカサとコイチロウは本部に戻ってきた。だが明らかに様子がおかしい。まさか、この前の小僧がまた・・・。 報告に現れた2人の顔色には、その事がはっきりと浮き出ていた。 「申し訳ありませんでした、ケイ様・・・。」 「後一歩のところだったのですが、思わぬ邪魔が入ってしまいまして・・・。」 申し訳なさそうな表情で2人は報告に現れた。 「しょうがない。この俺が直々に足を運ばねばならぬようだな。サファイアはどうでもよい。ナナシマに眠る超古代文明、それを甦らせるのに、あのダイヤモンドとパールが必要なのだからな。はっはっはっ・・・。」 私はそう言っていたが、内心は落ち着かなかった。 と言うのも、ミカサとコイチロウが点の穴に到着したとき、実はあの小僧がいたのだと言う。そして、報告で伝えられたのは、小僧にも仲間がいたと言うことだった。 2人は点の穴到着後、物陰に身を潜めていたと言う。だが、遺跡の入り口にあの小僧が現れたとき、彼は単独行動ではなかったのだ。小僧と同じ年頃の、エルレイドを連れた小娘。そして小僧や小娘よりも年上の男が同行していたと言う。 「あのガキ、確かイザベ島でラルトスを取ろうとしたときに現れた小僧ね。しかもあのラルトス、小僧のポケモンになって、しかもサーナイトになってるじゃない。」 「あの遺跡の中には、確か特別なサファイアが眠ってるって聞いたことがある。あれはゲットする以外に道はない。行くぞ!」 だが気になるのは小僧の取り巻きの小娘と兄貴分の男。この2人が加わっていることから、多勢に無勢となるかもしれない。だが、そう言った不安を抱えながらも2人は遺跡の中に足を踏み入れて行ったのである。 遺跡の中の構造は私が調べていた通り、点字で示された方向をたどっていくと言うものだった。そして小僧達がサファイアを手に入れるところを仕留める。そう言う手はずだった。 そして案の定小僧達はサファイアを見つけ出した。 「きれいね・・・。ルビーのときもそうだったけど、美しいって言うより、神秘的で神々しいって言う表現がふさわしいと思うわ。」 「早くこれをニシキ博士のところに持って行ってあげよう!」 「ああ!」 小僧達はサファイアに夢中になっている。今が奪い取るチャンスだ。 「行くわよ、コイチロウ!」 「ああ!」 そして2人は小僧達の前に現れた。 「そこまでだ!サファイアは渡さん!」 「あたし達ロケット団が、このサファイアをいただいていくよ!」 だが小僧達とのやり取りから、衝撃的な事実が知らされたのだった。何と、小僧達はサファイアと対になるルビーを手に入れてしまっていたのだ。 「何だと!?それならサファイアだけでもいただいていく!」 コイチロウの判断は正しかったと言えよう。サファイアを見つけ出した後、小僧達がどこかに隠したであろうルビーも手に入れるのだ。 そして2人は小僧達からサファイアを奪い取り、帰還しようとした。ところが、そこに思わぬ邪魔者が現れたのだと言う。 およそポケモントレーナー離れした、肩むき出しの真っ赤なイブニングドレスに身を包んだ女。小僧の仲間だった。そいつはむげんポケモンと言われるラティオスにまたがり、でんじほうを放つエーフィと共に現れたのだと言う。 その女のエーフィが放ったでんじほうが飛行機のメカを破壊。2人はやむ無く小僧達を相手に変則ダブルバトルに挑んだのだが、小僧達のポケモンにあっけなく吹っ飛ばされ、サファイアはもちろん小僧達の手に渡ってしまったのだと言う・・・。 だがそれもこれまでだ。 私が本部の文献を読みあさって調べ上げた、特別なダイヤモンドとパールが眠る島、へそのいわ。 私はあの小僧がへそのいわに上陸したのを見計らい、潜水艦を飛行艇モードにして島の頂上に降り立ったのだ。 「素晴らしい!ネイス神殿を蘇らせる特別なダイヤモンド。伝承の通りだ!」 頂上に眠っていたのは、普段見かけるダイヤモンドとは全く違う、まさに神々しい代物だった。 「見える!見えるぞ!まさしくネイス神殿に導くダイヤモンドだ!」 そうだ。まさしくネイス神殿の伝説に伝えられているダイヤモンドだ。この力があればネイス神殿は蘇る。そのとき私はそうだと思っていたのだった。 だが、そこに・・・。 (5) へそのいわの頂上。ここに置かれていたのが、特別なダイヤモンドだった。これを手に入れればネイス神殿は蘇る。 私がダイヤモンドを手に取ると、たちまち海に向かって一筋の光が放たれたのだ。これこそまさしくネイス神殿を指し示しているのだ。 だが、思わぬ邪魔がそこに入った。 「そこで何しているんだ!」 「その宝石は、ネットワークマシンを完成させるのにとても重要な役割を持っているのよ!今すぐ渡しなさい!」 現れたのはまたしてもあの小僧。だが横にいるのはミカサやコイチロウの報告に聞かれたのとは別の女だった。確か、この女・・・。 (そうか、あいつだ!) 以前テレビで見た、全国で初めてくさタイプを操る四天王となった人物。確か、ジョウトリーグ四天王のルリカと言っていた。あの小僧、まさか四天王まで・・・。 「誰かと思ったら、報告に載っていた小僧!それにジョウトリーグの四天王まで!そう言って、はいそうですかと渡してたら、俺たちロケット団の名が廃るぜ!」 「ロケット団だと!?」 「そうとも。私はロケット団の幹部にして、ナナシマ支部長のケイだ!この島に眠る特別なダイヤモンド、それは今この私のものになったのだ!」 「許せない!マサト君、行くわよ!」 「はい!」 「それはどうかな?岩山の頂に眠るダイヤモンド、そして海の底に眠るパール。2つが共鳴して、今、ナナシマの超古代文明が甦るのだ!お前たちは2人そろって、超古代文明の復活に立ち会うがいい!はっはっは・・・!」 四天王やチャンピオンとは言うものの、束になってかかったところで今の私にかなうはずがない。このダイヤモンドさえあれば世界は私のものになるのだ。ネイス神殿の超古代文明。それは私のものなのだ。 「そうだ、俺たちが求めていたのはナナシマに眠る超古代文明。そして俺様はこの超古代文明を甦らせて、新たな王となるのだ!」 「それはお前だけの都合だ!それでこの世界がどうなってもいいのか!」 「関係ないな!」 お前みたいな小僧がわめこうが何しようが、もうどうもならない。 「ホウエンの超古代ポケモン、グラードンとカイオーガは、かつてマグマ団とアクア団が甦らせようとした。でも結局、超古代ポケモンは人間の手では操れるものではなかったわ。そしてシンオウでもギンガ団が赤い鎖と湖の3匹、そしてこんごうだまとしらたまを使って、ディアルガとパルキアを復活させようとしたわ。でも、結局思い通りになることはなかったわ。あなた達も同じことを繰り返したいの!?」 「関係ないな!」 四天王の分際が何を言う。もう誰にも止められないのだ! 「見るがいい。かつてナナシマに栄えた超古代文明。その中心となったネイス神殿だ!長きにわたる眠りから、今甦ったのだ!」 ダイヤモンドが放った光は大きな光の柱を高く空に伸ばした。そしてその中心に眠っていたネイス神殿が、その姿をあらわにしたのだ。 遥か昔、空中浮遊都市として栄えていたネイス神殿。長きにわたって海底で眠っていたのだが、今、長いときを超えて蘇ったのだ。 「見るがいい、今こうして甦ったネイス神殿を。俺はこのネイス神殿の王となり、新しい世界を築くのだ!」 「そうはさせない!行くよ、サーナイト!」 「あなたみたいな悪は、この私が四天王の名にかけて許さないわ!行くわよ、メガニウム!」 小僧はサーナイトを繰り出した。おそらくミカサとコイチロウが報告したあのラルトスが進化したのだろう。そして四天王が出したのはメガニウム。あやつの一番のパートナーと聞く。だが私のポケモンにかなうわけがない。 「面白い。ポケモンバトルで勝負というのか。それなら私も行くぜ!出でよ、バンギラス!」 私が繰り出したのはバンギラス。たちまちすなおこしの特性が働き、辺り一面が強烈な砂嵐に見舞われた。サーナイトとメガニウムは砂嵐でダメージを受けることになるだろう。 「サーナイト、マジカルリーフ!」 「メガニウム、エナジーボール!」 マジカルリーフとエナジーボール。バンギラスが苦手とするくさタイプの技だが、この程度でかなうとでも思っているのだろうか。 「効かない!?」 「どうしてなの?」 「私のバンギラスは、ちょっとやそっとのダメージはものともしないんだ!バンギラス、いわなだれ!」 バンギラスのいわなだれ。これを食らえばひとたまりもないだろう。だが。 「サーナイト、メガニウムと一緒にテレポート!」 「何っ!?」 いわなだれが命中する直前、サーナイトはテレポートでメガニウムもろとも姿を消してしまった。 「サーナイト、もう一度マジカルリーフ!」 「メガニウム、はっぱカッター!」 次にサーナイトとメガニウムが現れたのはバンギラスの真後ろだった。バンギラスも予想外のダメージを受けてしまった。だがこの小僧、ロケット団に入ればなかなかの活躍をやってくれるだろう。そして四天王のルリカとやら、お前も幹部クラスの働きに値する。 「ほう。小僧、お前はなかなか見込みがある。ロケット団に入れば幹部になれるかもしれないな。それとも、私と組んで古代文明を繁栄させようではないか?」 「断る!」 「何ということを言うの!?あなたに超古代文明を操る資格はないわ!おとなしくダイヤモンドを返しなさい!」 ふっ。案の定断られたか。だがダイヤモンドを返すわけにはいかない。 と、そこに思わぬ人物が現れたのだ。 「マサト!」 「ルリカさん!」 ミカサとコイチロウの報告に上がっていたもう1人の小娘。そして例のイブニングドレスの女。しかも小娘の手にはパールが握られているではないか。飛んで火に入る夏の虫ポケモンとはこのことを言うのだろう。 「そこの小娘。お前が持っているのはパールだな。見ろ、ダイヤモンドとパールの光が1つになって、ネイス神殿が完全復活を遂げるのだ!」 「ふざけないで!パールは渡さないわ!」 「ラティオス、サイコキネシス!」 と、サイコキネシスはバンギラスではなく、私が持つダイヤモンドに向かってかけられたではないか。あくタイプのバンギラスはエスパー技が効かない。それを利用してダイヤモンドを奪おうというのか。 「お前達もじゃまをする気か。しょうがない。バンギラス、邪魔者のラティオスにかみくだく攻撃!」 ラティオスはバンギラスのかみくだくをまともに受けて技の発動が途切れてしまった。見ろ、言わぬことではない。 「見ろ、ネイス神殿の全貌を!この神殿は古代文明の象徴。この私が新しい支配者にふさわしいのだ!」 そうしていると、私の足下が青く光り始めた。光の道が空に続く。そして道はネイス神殿の入り口に架かったのだ。この道はロケット団の栄光、いや、私の野望に続く道だ。 「お前達、私の野望を止めたいんだな!?なら神殿までついていくかね?」 しかし邪魔というのは予想もつかないところから現れるものだった。 私が光の道を渡り始めたちょうどそのとき、強烈なハイドロポンプがダイヤモンドを私の手から弾き飛ばしてしまったのだ。 「ダイヤモンドが!!」 ダイヤモンドが高く空を舞う。 「今よ!メガニウム、つるのムチ!」 四天王がメガニウムにつるのムチを出す。つるのムチはダイヤモンドに向かって一直線に伸びていく。だがこう言うときのために下で部下が行動していると言うことをお前達は知るまい。私の乗ってきた潜水艦は飛行艇にもなると言うことにお前達は気づいていないだろう。 飛行艇から現れたクロバットはダイヤモンドをがっちりとキャッチして私に差し出したのだ。 「ありがとう、ドンカラス。見ろ、これはロケット団の飛行艇なのだ。あるときは潜水艦、そしてまたあるときは飛行艇。空の上だろうと海の中だろうと自由自在なのだ!はっはっは・・・!」 どうだ。これでもうお前達に勝ち目はあるまい。このネイス神殿は私のものになるのだ。そして世界も私のものだ。 (6) 私はついにネイス神殿の中に足を踏み入れていった。 古代人が残した遺跡。その名残は長い間海に沈んでいながらも、色濃く残っていた。普通なら海水で錆びてしまっているかもしれないが、何と言う科学力だったのだろう。ホウエン地方の神話に伝わるグラードン、カイオーガ、レックウザの壁画。シンオウ地方の神話に語られているディアルガとパルキアの壁画。さらにはイッシュ地方の神話にあるレシラムとゼクロム(※2)の壁画までもが描き残されていたのだ。 「素晴らしい!陸、海、空を司るポケモン。時間と空間の神と呼ばれるポケモン。そしてイッシュの建国神話に語られるポケモンまでもが今に残されているのだ!」 それらの壁画を見ながら通路を進んでいく。さらに進んでいくと上下左右にせわしなく行き来する立方体のところにたどり着いた。 (これに乗っていけば一番奥までたどり着けるんだな。よし。) 私は恐る恐る乗ってみた。すると立方体はきわめて安定した動作を見せていた。 立方体がたどり着いたのは、不思議な紋章が刻まれた扉だった。この先にはどうやっても進めそうにない。 (待て。ダイヤモンドをここにかざせば・・・。) 私はふと思ってダイヤモンドを扉にかざしてみた。すると、扉が音を立てて開き、奥に続く道が開けたではないか。 そして奥に進む。そこは神殿の中央部。祭壇の間だった。 「ここがネイス神殿の中心部。素晴らしい。古代人の知識はすべてここに結集していたのか。見ろ。私はこの世界の王となるのだ!はっはっはっ・・・!」 古代の民の科学力がなしえたネイス神殿。それはポケモンが使うあらゆる技を増幅してこの神殿から打ち出すことができる装置を備えていたのだった。しかも全方位、あらゆる方向を見渡すことができるヴィジョンを使えばどこに誰がいるのかも一発でわかるのだ。 もうロケット団どころではない。私がこの世界を支配することができるのだ。それも、私の思いのままにだ。 (おや?) ヴィジョンが海の盛り上がりを映し出していた。そこから大きな鳥のポケモンが飛び出してきたではないか。ルギアだ。オレンジ諸島やジョウト地方に伝えられる、海の神と言われるポケモン。早速お出ましか。 「ちっ、いまいましい。古代文明の技術を集めたネイス神殿。その力を甘く見てもらっては困る!海の神といえど私の敵ではない!食らえ!」 私はダイヤモンドを石版にかざした。するとたちまち強力なビームがルギアに向かって放たれた。 ルギアは攻撃を巧みによける。そして後方のヴィジョンにまた別のポケモンが現れた。ジョウトやカントーに伝わる虹色のポケモン、ホウオウ。だが虹色の翼も私の敵ではない。 「ホウオウもお出ましか。ならこれでも食らえ!」 石版にダイヤモンドをかざすと、水の大砲が勢いよく放たれ、ホウオウを牽制した。 「いまいましい!海の神や虹色の翼が現れようが、この私の敵ではない!」 強烈なビームがルギアを、水の大砲がホウオウを牽制する。だが攻撃それ自体が命中しない。敵も然る者というところだろう。 と、そのときだった。ダイヤモンドが私を貫き、後ろの壁に向かって一筋の光を放ったのだ。 「何だ!?」 後ろを向くと、ダイヤモンドの光は壁を貫き、その向こうに向かって差し込んでいるのだ。この壁の向こうに何があるのだろう。 「この奥にもまだ何かがあるのか。この私にその姿を見せよ!」 すると、どうだろう。壁が独りでに開き、通路が姿を現したではないか。 通路を進むとそこには大きな宝石がはめ込まれていた。ネイス神殿を支えていた、ダイヤモンド、パールと並ぶ第3の宝石、プラチナだった。 「これは・・・!ネイス神殿を支えていた古代の宝石、プラチナか!」 プラチナ。それはネイス神殿の伝説にも記載されていなかった。だが、ダイヤモンドやパールと対になる第3の宝石として、その名はしばしば古代遺跡の文献に登場していたのだ。 「プラチナとダイヤモンドが反応している・・・!この俺こそが、この世界を支配する王なのだ!」 そうだ。この私こそが世界を支配するのだ。もうロケット団に縛られている必要などない。ミカサやコイチロウを始め、ここまで足を伸ばしてくれた団員、本当にご苦労だった。 お前達など、もう用はない。 だが、ミカサやコイチロウなど、ロケット団員の一部はのこのこと自分たちから足を運んでくれたのだ。 だが私はこの神殿の王。直接足を運ぶまでもない。 「ようこそ、諸君。」 「ケイ様!?」 「どこにいるのです!お姿を!」 ミカサとコイチロウの驚く姿が見て取れる。私の姿は下の展望台にも現しているが、この姿は実像ではない。今更本物が姿を見せに行くなどおこがましい。 「お静かに・・・。」 「おい、どうしてケイ様が上から・・・!?」 「どうなされたのです、ケイ様!?」 「君たち、言葉を慎み給え。ネイス神殿の正当なる後継者たるこの私の声が聞こえないのか!?」 団員が驚くのも無理はない。この後に壮大なプレゼントが待っているのだからな。 「ケイ様!気でも狂ったのですか!?」 「姿を見せて!」 「はっはっは。ネイス神殿の復活を祝って、この神殿に秘めたる力を見せてやろうと思う。ルギアとホウオウよ、これでも食らえ!!」 私は石盤にダイヤモンドをかざした。すると黒い闇の固まりが放たれた。 闇の固まりはルギアとホウオウに向かって襲いかかっていく。ルギアとホウオウもエアロブラストやせいなるほのおで抵抗するが、その程度で弾き返せるわけがない。たちまち闇の餌食になってしまった。 「古代人が作り出した、ポケモンを捕らえ、思いのままに操ることのできる空間だよ。これでルギアとホウオウは俺のものになったのだ!」 「ケイ様、やはりあなた様はロケット団の新しい時代を築くのにふさわしいお方です!」 「ロケット団が新しい時代を作るのです!」 お前達、ここまでなって何を言う。・・・もうお前達と構っている時間などないのだ。ここで消えてもらおう。 「お前達のあほ面には心底うんざりさせられる。・・・お前達はもう必要ないのだよ。」 「えっ!?今なんと仰いました?」 命乞いでもするつもりか。 「帰れ!!」 ダイヤモンドをかざすと、団員が立っている足下が開き、そのまま団員達は真っ逆さまに海に向かって落ちていった。今の私にとって、お前達はもうただの足手まといだ。 だが今度は飛行艇の団員達が邪魔だ。 案の定ポケモン達を出して神殿に攻撃しているが、ルギアやホウオウの攻撃でもびくともしないこのネイス神殿、お前達が束になってかかったところで全く痛くもかゆくもない。 「はっはっは、その程度の攻撃で私に刃向かおうというのか。おもしろい!」 私は石盤にダイヤモンドをかざす。と、強烈なビームが飛行艇に向かって一直線に放たれた。 ビームの直撃を受けた飛行艇は大爆発を起こして墜落していく。 「はっはっはっ。人やポケモンがみんなゴミくず同然だ!私に刃向かうとこうなるのだ!」 そうだ。今やこの私にかなうものなどいるわけがない。しかしそこに、またしてもあの小僧一行が現れたのだ。 小僧一行は6人に増えていた。ミカサやコイチロウが点の穴で見かけたという年上の男。そしてもう1人、ノースリーブの長いドレスを着た、ツインテールを輪っかにした特徴的な髪型の女だった。 「お前、よくもほかの団員を!」 「おとなしくダイヤモンドを返して!」 「お前のしたことは許されることではない!そのダイヤモンドを今すぐ返すんだ!」 「あなたはロケット団の幹部に居座る資格も、いやポケモントレーナーとしての資格もないわ!」 「四天王としてだけじゃない。一人の人間として、あなたを許すことはできないわ!」 「今すぐこの神殿を元に戻して!そしてダイヤモンドを、おとなしくあたし達に渡して!」 6人とも必死になってほざいている。だがそれはどうだろうか。 言いながら私はダイヤモンドを石盤にかざした。するとルギアとホウオウが姿を現した。ダイヤモンドの力で私の思いのままに操ることができる。 「行け、ルギア、ホウオウ!」 ルギアははかいこうせんを、ホウオウはせいなるほのおを放って小僧達に襲いかかった。小僧達はルギアとホウオウを解放するつもりなのか、サーナイトやメガニウムに続いて、エーフィ、ニドキング、エルレイド、カメックスと、一番のパートナーとおぼしきポケモンを続々繰り出してきた。 「サーナイト、サイコキネシスで打ち返すんだ!」 「あたしも行くわよ!エーフィ、サイコキネシス!」 「エルレイド、サイコカッター!」 「メガニウム、はっぱカッター!」 「ニドキング、ヘドロばくだんだ!」 「カメックス、ハイドロポンプよ!」 ポケモン達は強力な技を繰り出してルギアとホウオウ、そして私の持つダイヤモンドを狙っている。だがこの程度の技では大したことはない。 さらに小僧はガバイト、小娘はビブラーバを繰り出す。2対8という圧倒的不利な状況だが、所詮進化の第2段階にあるポケモンだ。ルギアとホウオウごときにかなうわけがない。 「こしゃくな!行け、ルギア、ホウオウ!」 ルギアのハイドロポンプとホウオウのじんつうりきがガバイトとビブラーバを吹っ飛ばす。 「負けるな、ガバイト!」 「ビブラーバ!」 「所詮伝説と呼ばれるポケモンには、どのポケモンもかなわないのだよ。やれ!」 それでも立ち上がろうとするガバイトとビブラーバに対してルギアはハイドロポンプ、ホウオウはだいもんじを繰り出す。お前達が束になったところでこの神殿はお前達のものにはならない。まだ分からないのか。 だがガバイトとビブラーバが突然白く光り始めた。進化だ。見る間に姿を変えていき、ガバイトはガブリアス、ビブラーバはフライゴンに進化したのだった。 「行くよ、ガブリアス!ハイドロポンプを跳ね返せ!」 「行くわよ!フライゴン、だいもんじを跳ね返して!」 ガブリアスとフライゴンはハイドロポンプとだいもんじを受け止めてしまったではないか。 「あたしも協力するわ!エーフィ、ハイドロポンプをサイコキネシスで跳ね返して!」 「私も行くわよ!メガニウム、だいもんじにエナジーボール!」 さらにサイコキネシスとエナジーボールが加わり、ハイドロポンプとだいもんじは容赦なく跳ね返されてしまう。 「何をするんだ!?」 「今よ、カメックス!ハイドロポンプ!」 そこにツインテールを輪っかにした女がカメックスにハイドロポンプを出した。私の右手にハイドロポンプが命中、ダイヤモンドが手からこぼれてしまった。 「お願い!今度こそ取り返すのよ、メガニウム!つるのムチ!」 「させるか!」 四天王のメガニウムがつるのムチを繰り出す。お前達にダイヤモンドとプラチナは渡さない。だがつるのムチの方が一歩早かった。 「待て!」 私は必死になってつるのムチにしがみつく。そうこうしているうちにダイヤモンドがつるのムチからこぼれ、高く宙を舞った。 「ああっ!ダイヤモンドが!」 「僕が取りに行く!」 たちまち小僧がダイヤモンドをキャッチ。小僧の手にダイヤモンドとパールが渡ってしまった。だが私にはまだもう1つある。そうだ、プラチナだ。 「そのダイヤモンドを確かに持ってろ!ダイヤモンドがなくても、私にはまだこの宝石がある!ネイス神殿を支えるもう1つの宝石、プラチナがな!」 だがダイヤモンドが小僧の手に渡ってしまい、ルギアとホウオウは急に表情を変えていくではないか。見る見るうちにルギアとホウオウの怒りが収まっていく。まさか・・・。 「このネイス神殿は滅びぬ。何度でもよみがえる!人とポケモンの共存を超えたネイス神殿こそ、人とポケモンの進化の理想型なのだ!」 そうだ。ネイス神殿は何度でも蘇る。人とポケモンの進化の理想型だったネイス神殿。それの王者は私だ。私に刃向かうと言うことがどうなるか、お前達も見ていただろう。 私はバンギラスを繰り出した。ダイヤモンドとパールを取り返すのはお前の役目だ。 「バンギラス、はかいこうせん!」 バンギラスははかいこうせんを繰り出して小僧達に襲いかかる。だが・・・。 「サーナイト、サイコキネシス!」 「エルレイド、サイコカッター!」 「エーフィ、でんじほう!」 小僧達もサイコキネシスやサイコカッター、さらにはでんじほうを放って応戦する。しかし勢いが強すぎた。バンギラスは後ろのプラチナの柱まで吹っ飛ばされてしまい、勢いで柱からプラチナが落ち始めたのだ。 「バンギラス、プラチナを!」 「メガニウム、もう1度つるのムチ!」 バンギラスがプラチナに飛びつく。だがつるのムチの方が早く、プラチナもまた小僧達の手に落ちてしまった。 「ほう、お前達がその宝石を使うというのか。だがお前達が使って何になる!」 お前達にこの宝石の使い道が分かるというのか。時間を与えよう。 小僧、小娘、イブニングドレスの女が宝石を1つに重ね合わせる。お前達の宝石の使い方というのを見せてもらおう。だが次は私の番だ。 「ダイヤモンド!」 「パール!」 「プラチナ!」 「その力を解き放って!!」 「ギャーアアス!!」 「ギャシャーッ!!」 小僧達の声とルギア、ホウオウの声が1つに重なる。と、次の瞬間、宝石から今まで見たこともない強烈な光が発せられたのだった。 「ああぁっ、がぁ!」 私にとってその光はあまりに強すぎた。強烈な光をまともに受けた私は目が見えなくなった。単にくらんだだけなのか、それとも失明してしまったのか。 「あぁぁ!目が、目がああぁぁ!!」 どこともなく壁伝いに歩いて行く。だがもう何も見えない。 「あ、あぁ!目が、あっああああ、あぁぁぁ!!」 手で壁伝いに歩いていたが、私は足場が落ちているのに気づくわけもなく、そのまま真っ逆さまに落ちていったのだった。 瓦礫とともに海に向かって落ちていくのが私にも分かる。両手、両足をばたつかせているのが分かるが、私の意識も次第に遠ざかっていく。 (サカキ様・・・。ナナシマでの任務は失敗でした・・・。) ロケット団がナナシマで進めていた野望。そして私の野望もまた、瓦礫とともに崩れ落ちていったのだった。 (だが、ジョウトの伝説にあるシント遺跡。あの遺跡につながる伝説が、ジョウト地方に眠っている。私の後の任務は、ジョウトの幹部がやってくれるだろう・・・。) そこで私の意識は完全に遠のいていった・・・。 (※1)「ムサシとコジロウについて」 現段階ではまだベストウイッシュが始まって間もないため、ムサシとコジロウの活躍についてはあくまでもラフなものとして留めております。ですがここでは、現段階のアニメにおいて、ムサシ・コジロウがダイヤモンド・パールまでとは違う活躍を行っていることから、ロケット団のイッシュ地方進出における先遣隊として活躍したものとします。 (※2)「レシラムとゼクロムについて」 この物語は概ねChapter-19からChapter-22までの期間であり、本編を書いていた当時はハートゴールド・ソウルシルバー発売直後だったため、ブラック・ホワイトの情報は全く出ていませんでしたが、ここでは壁画にレシラムとゼクロムの絵が描かれていたものとします。 SpecialEpisode-7、完。 <このお話の履歴> (1):2010年11月22日、(2):2010年12月12日、(3):2010年12月14日、(4):2010年12月29日、(5)・(6):2011年1月4日、いずれも当サイト連載小説掲示板に掲載。