第1話 始まりのワカバタウン その日、少年は何も知らずにいつものように過ごすはずだった。 「急げ急げ!」  少年の名は大樹(タイキ)、ポケモンの好きなどこにでもいる少年である。  彼は学校から家に向かって急いでいた。 「録画するの忘れてた〜!」  ここは地方であったため、今日ポケモンのアニメがあるのである。  家にダッシュで行く大樹だったが、そこに予想外の事態が起きるのだった。             キ〜〜〜〜〜〜ン 「何の音・・・・・・・?」  どこからか聞き覚えのない音が聞こえてきた。  すると、いきなり景色が変わっていき、目の前に渦のようなものが現われて大樹を飲みこみ始めたのだった。 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」  抵抗する事すら出来ず、大樹はそのまま吸いこまれてしまったのだった。  その場には大樹のランドセルだけが残っており、その後、偶然通りかかった人によって拾われるのであった。 ???・・・・  気がつくと、大樹は草原の上にいた。  辺りには木々が生い茂っており、遠くには街が見えていた。 「ここはどこだ?」  どう見ても自分のいた町ではないと思った大樹はそのまま辺りを歩くことにした。  すると、近くに何かがいるのに気づいた。 「ん?」 「コラッタァ〜〜!」 「うわ!?」  突然、目の前に長い前歯をした紫色の鼠が飛び出してきた。  それだけではない、至る所に見覚えのある動物がいたのである。 「ま、まさか、ポケモン!?」 「誰かいるのかい?」 「え?」  すると、どこからか、大人の声が聞こえてきた。  声の主はすぐに大樹の前に姿をあらわした。見るからに大人の体格だが、  何だかどっかの新米の研究員という感じだった。 「君は・・・・まさか、ワカバタウンの子供じゃないよね?」 「わ、ワカバタウン?ここってワカバタウンなのか?」 「やっぱり、とにかく僕の研究所に来てくれないか、事情を聞きたいんだ!」 「あ、はい!」  他にあてがなかったため、大樹は素直についていった。  研究所は森のすぐそこにあり、屋根には大きなアンテナなど、本格的であった。 「あ、そこのイスに座ってて、ちょっと用意があるから。」 「はい・・・」  そう言うと、男は何かを本棚から取り出すと、研究所の真中のテーブルのイスに腰をかけた。 「そう言えば自己紹介がまだだったね、僕はここでポケモンの研究をしているオダワラと言うモノ、君は?」 「た、大樹・・・」 「大樹君、とにかく事情を話してくれ。」  そう言われると、大樹はここに来るまでも経緯を話した。  オダワラの顔は真剣であり、疑う様子は全くなかった。 「そうか、やっぱり異世界から来たのか・・・残念だけど、君はしばらく帰れそうにない。」 「な、何で?」 「ここは君のいうとおり、ポケモンの住む世界、文明も君の世界より上だけど君をもとの世界に返すことは出来ないんだ。」  大樹はしばらく黙りこんだ。それでも博士の話は続いていった。  ここはワカバタウン、ジョウトのはずれの街であり、この研究所以外にもウツギ研究所がある。  そんな中、ポケモン好きの大樹は何かを思い出した。 「もしかして・・俺がこの世界に来たのはセレビィのせいじゃ・・・でもあれは時間を・・・」 「僕もセレビィが関係していると思う・・・恐らく時わたりの何らかの作用で君はここに来てしまったんだ。」 「じゃあ、セレビィを捕まえなきゃ俺は帰れないってことじゃないか!  幻のポケモンをどうやって捕まえれば・・・・」  ふと、大樹は話すのを途中でやめた。  博士は恐る恐る近づくと・・・ 「こうなったら当たって砕けろだ!」 「うわっ!」 「俺が直接セレビィを探しに行ってやる!  それに、ポケモントレーナーにはあこがれていたし、こうなったらとことんこの世界を楽しんでやる!」 「そ、そう・・・・」(汗)  単純なのかは分からないが、とにかく大樹はトレーナーになる決意を決めた。  すると、博士は何とか置きあがってさっきとってきた赤い電子手帳みたいなのを差し出した。 「あ、これってポケモン図鑑!」 「そう、オーキド博士からもらったものなんだけど、君に上げるよ。  そうだ、ついでに図鑑も完成させてくれるかい?」 「おう、だんだん面白くなってきたぞ!」 「そう・・・じゃあ、とにかくこっちに来てくれ・・・」  オダワラに言われ、大樹は研究所の研究室についていった。  そこにはたくさんのモンスターボールなどがあり、大樹は夢中になっていた。 「えぇと、ここに何匹かポケモンがいるから好きなのを一匹選んでくれ。それが君の最初の相棒だ。」 「へん、俺は既に決めてるぜ!ヒノアラシ、お前だ!」  迷う事無くヒノアラシのボールを選ぶと、中からヒノアラシが出てきた。  ちなみに、ボールはアニメのと同じモノである。 「とにかく、今日からは遅いから今夜は準備も兼ねてここに泊まっていきなさい。」 「はい!」 翌日・・・・  次の朝、大樹はオダワラの協力によって旅の準備を整えた。  帽子にリュック、そして捕獲用のモンスターボールと傷薬、その他いろいろ・・・ 「博士、とにかく行ってくるぜ!」 「あ、待って、ポケギアも持っていくと良いよ!」 「スゲェ、まじカッコイイ!」  大樹はおおはしゃぎである。  大樹の足元にはヒノアラシが元気よく立っていた。 「じゃあ、行ってくるぜ博士!」 「何かあったら連絡するんだよ!」 「へ〜い!」  そう言って、大樹は夢にまで見た冒険の旅にでたのだった。  ワカバタウンも、気持ちのいい風を吹かせながら大樹の旅立ちを祝っていた。 「よ〜し、ポケモンリーグに出て、セレビィもゲットしてやる!」 「ヒノ〜〜!」  順序が逆だが、ヒノアラシもやる気抜群であった。  そして腕にポケギアをつけると元気よく出発していったのだった。  ワカバタウンを出ると、周りには木々や草花でいっぱいになっていた。  空には鳥ポケモンの声が響いており、森や山からもポケモンの泣き声でいっぱいだった。 「さあ〜、たくさんゲットしてやるぜ!」 「ヒノ〜!」  が、しばらく歩いてはいるが、思った以上になかなか野生のポケモンにはあえないのだった。 「ん〜、いないもんだなぁ〜〜〜〜」  だがその時、近くの草むらから何かが動いている音が聞こえた。  大樹とヒノアラシは反射的に草むらの方を向くと、  そこから紫色の角のあるポケモンが出てきた。どくばりポケモンのニドラン♂である。 「あ、ニドラン♂だ!ヒノアラシ、戦うぞ!」 「ヒノ〜〜〜!」 「ようし、体当たりだ!」  大樹は図鑑を出しながら命令した。  ヒノアラシは元気よくニドラン♂に体当たりをした。  攻撃は見事に命中し、ニドラン♂はそのまま吹っ飛ぶと、すぐに立ち直って構えなおした。 「ヒノアラシの技は・・・・」 「ラン!!」  ニドラン♂はヒノアラシに向かって角でついてきた。  ヒノアラシは何とかかわすが、相手はどんどん攻めてくる。 「ヤバ、煙幕だヒノアラシ!」 「ヒ〜ノ〜!!」  口から煙幕を吐くと、ニドランは視界を失って困惑し出した。  大樹はポケモン図鑑でヒノアラシの技を調べながらとどめの命令をした。 「火炎放射だ!!」 「ヒノ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」  背中から炎が飛び出し、同時にニドランに向かって炎を放った。 「ニド〜〜〜!!」 「今だ!!」  モンスターボールをニドランに投げ付けると、ニドラン♂はモンスターボールに吸いこまれた。  しばらく抵抗するが、すぐに止まってゲットに成功した。 「よっしゃぁ〜、ニドランゲットだぜ!!」 「ヒノ〜!」  見事な初ゲットだった。  大樹はニドラン♂の入ったボールを手にしながら叫んだ。  大樹とヒノアラシの冒険は順調にスタートしたのだった。 次回予告 「俺とヒノアラシ、それにニドランの活躍で今度は河原でワニノコをゲットしたぜ。  その夜、森の中で一夜を明かすことにした俺達は、  そこでロケット団の残党に襲われているチコリータをつれた少女、留美に出会った。  ようし、ここは俺達で助けてやるぜ。と思ったけど相手は意外にも強く、苦戦しちまう!  だけど絶対に勝ってやるぜ!そしてそこに現われた一匹のポケモンは・・・?  次回 ホーホーの森と少女ルミ」