第9話 マダツボミの塔の危機  暗闇の洞穴を出た翌日、2人は駆け足で道を走っていった。  そして次の瞬間、2人の視界には一つ目のバッチのある町、キキョウシティがあった。 「やっと着いた〜〜!」 「ここがキキョウシティ!」  ついにキキョウシティに到着したのだった。  2人は少しでも早くジムに挑戦したい為、まず、急いでポケモンセンターに向かって行ったのだった。 「ちょっと早いわよ!」 「置いてくぞ〜!」  そして街に2人が入った後、2人と同い年くらいの少年が一人、キキョウシティの方を向いていた。  何だか大樹とは違ってクールな感じのする少年であった。  黒い長髪を後ろで束ねており、額にはバンダナがつけられていた。 「ここがキキョウシティか・・・・・・・」  そう呟くと、少年は大樹が進んだのと同じ道を歩いていったのだった。  どうやら同じ旅のトレーナーのようであるが、こうも同じだと偶然とは思えないのだった。 ポケモンセンター・・・・・  一方、ポケモンセンターに到着した二人はすぐにポケモン達を預けたのだった。 「あ〜、早くおわんないかなぁ!」 「少しは落ちついたら?」 「これが落ちついてられるかって!いよいよジム戦なんだぜ!」  すると、センターの呼び出し音が鳴った。 「あ、私が先だわ!」 「何でお前が〜?」 「私の方が少ないからよ、じゃあ、私は先に言ってるわ〜♪」  そう言い残すと、留美はポケモンセンターを出ていったのだった。  大樹はセンターのイスでがっくりとしていたのだった。 「大樹さんお待ちどうさまです。」 「はい。」  ぼちぼちボールを受け取ると、そのままポケモンセンターを出ていったのだった。  数分遅れたが、とにかく大樹もキキョウジムに向かおうとした。  が、その時、大樹の真上を何かが通って行った。 「あ、あれはロケット団!」  言うまでもなくロケット団の気球であった。  この様子だと相手もこっちの存在には気づいてはいないようである。 「あいつら、また何か企んでるのか?」  何となく思ったのか、大樹はジムを後にして気球を追いかけて行ったのだった。  気球はしばらくすると静かに降下していった。  近くには古い塔があり、それはキキョウシティ名物の「マダツボミの塔」であった。 「でっけぇ、あれがマダツボミの塔か〜。」 「うわぁぁぁぁぁ!!」 「な、叫び声!?」  突如、塔の中から誰かの叫び声が聞こえてきた。  大樹は反射的に駆け出して塔の中に入っていった。  が、このとき大樹は、この先にある予想外の強敵の存在に気づくことはなかった。 塔の中・・・・・・  中に入ると、目の前に一本の大きな柱が不安定に揺れているのが見えた。  これがマダツボミの塔の由来とも言える柱である。 「確かにここから聞こえたハズなんだけどな〜?上か?」  一回には誰もいなかったので、大樹は上に上ってみることにした。  だが、2階にも誰もおらず、ついには最上階の三階に上ることになった。 「こ、ここか」 「来たわね!」 「あ、やっぱりお前らか!」  三階の上ると、いきなりロケット団の2人が現われた。 「あ、やっぱりお前らかと聞かれたら!」 「答えてあげるが・・・・」 「お前達は下がっていろ!」 「え、は、ハイ!!」 「何だ〜?」  ミサキとソウシの背後から一人の大柄の男が現われ、2人は言われるがままに下がったのだった。  服装から同じロケット団のようだが、何だかいつものとは何かが違っていた。 「おっさんもロケット団か!?」 「いかにも、私はロケット団幹部の一人、デストだ。  お前だな、あちこちで我らの邪魔をするガキというのは?」 「か、幹部!?」  何と、この男は今までの雑魚とは違い、ロケット団の幹部であった。  そして、デストは腰につけたモンスターボールに手を掛けようとしていた。 「一つ聞く、我らの仲間になれ。」 「やだ!」 「やはりな、なら消すしかない、行けウツボット!ブーバー!」  いきなり出したのはウツボットとブーバーであった。 「わ、ならいっけ〜ワニノコ、ホーホー!」 「ワニ〜!」 「ホ〜!」 「ワニノコ水鉄砲!ホーホーはウツボットをつつくんだ!」 「フン、ガキだな!」  大樹は勢いで攻めるが、デストは余裕の表情をしていた。  だがその余裕はなめている訳ではなかった。  ブーバーはワニノコに「炎のパンチ」をだし、ウツボットも「はっぱカッター」を出し、ワニノコとホーホーはモロにくらってしまった。 「な、何で!?」 「レベルが違うのだ。相性が悪いならレベルでカバーすればいいのだ。」 「くっそう、ならヒノアラシ、火炎放射だ!」 「ブーバー、火炎放射!」  炎どうしの激突だったが、ブーバーの方が強く押していった。  そしてその隙にウツボットはヒノアラシに「ツルのむち」を当てた。 「ヒノ〜!」 「ヒノアラシ!!」 「弱いな、こんなのにやられるとは部下達もおちたものだ・・・」 「なめんな、メリープ、10万ボルト!ニドラン、毒針だ!」 「遅い!」  強力な技も、出すのが遅ければ意味がなかった。  ブーバーは思いっきり炎を吐き出し、メリープ達は炎に押されていった。  それどころか、そのまま大樹にぶつかったのだった。 「うわっ!!」 「流石はデスト様!」 「このガキもここまでだな!」  後方ではミサキとソウシが言いたい放題喋っていた。  そして、デストはとどめをさそうとしていた。 「ウツボット、突進でとどめだ!」 「キィ〜〜!」(ウツボットの泣き声) 「くそっ!」  と、その時だった。 「ヒトカゲ、頭突きだ!」 「「「何!?」」」(ロケット団全員)  いきなり階段より一人の少年が現われ、一緒にいたヒトカゲはウツボットに頭突きをくらわした。  意表をつかれた為、ウツボットはそのまま壁に激突してしまった。 「た、助けてくれたのか?」 「勘違いするなよ雑魚!俺は騒がしい奴らを黙らしただけだ。」 「雑魚だと!?」 「ロケット団ごときに押される奴を雑魚といって何が悪い?」  何だか口の悪そうな少年である。  実はこの少年、先ほど大樹達の後にキキョウシティに来た少年なのである。 「雑魚とは強気な奴だな。小僧、お前の名は?」 「俺は英人、お前らは俺が片付けてやる!」  すると、英人は残りの手持ちポケモンを全部出した。  出したのは以下の通りである。ヒトカゲ、チョンチー、エレキット、キマワリ、オニスズメ、イシツブテ。 「ふん、ウツボット、はっぱカッター!」 「ヒトカゲ、火炎放射!」 「ブーバー、炎のパンチ!」 「チョンチー、水鉄砲!イシツブテ、体当たり!」  激しいぶつかり合い出会った。  6対2とはいえ、あのデストを押し出していた。  だが、デストの余裕にはほとんど変化はなかった。 「・・・・・・」 「観念したか?」 「ふん、お前もあのガキと同じレベルだな。」 「な何だと!?」 「やれ、ゲンガー!」 「!」  すると、押されていたブーバーの影から突如としてゲンガーが現われ、ヒノアラシに「メガトンパンチ」を当てた。  それだけではない、今度は床が突然爆発し、そこからサンドバンが現われた。 「ヒトカゲ、イシツブテ!!」 「どうなってるんだ!?」 「知らないなら教えてやろうか?ゲンガーはシャドーポケモン、影と融合することができるのだ。」 「くそっ!」 「では、私の今日の手持ちを紹介しよう!コイル、モルフォン!」  デストは残りのボールからコイルとモルフォンを出した。 「く、チョンチー、スパーク!エレキット、電気ショック!」 「モルフォン、念力!」  チョンチーとエレキットの攻撃は簡単に念力で方向を変えられた。  そしてそのまま他の英人のポケモンを襲ったのだった。 「ロケット団の力を見くびったな。」 「何だと!?」 「おい、このままじゃ相手の思う坪だぞ!今は・・・」 「俺に指図するな、こいつらは・・・・」  と、その時、この状況がさらにややこしくなった。 「大樹、これってどうなってるの!?」 「留美!」 「あ、小僧と一緒の小娘!」  何と今度は留美が現われたのだった。  どうやらジム戦が終わったようだが、何だかこの状況が飲みこめないようである。 「ふん、コイル、電磁波で小娘を捕まえろ!」 「コィ〜!」 「何よ、カラカラやっちゃって!」 「ウツボット、ツルのむち!」  カラカラで応戦するが、ウツボットにあっけなくやられた。  もっとも、カラカラのおかげで電磁波はかわせたが状況は変わらなかった。 「マズイ、ヒノアラシ、火炎放射だ!」 「エレキット、雷パンチ!」 「甘い、シャドーボール!!」  物凄い一撃だった。  ゲンガーはゴースト系最強のわざとも言える技を出したのだった。  その一撃で塔自身も大きく揺れ、床に大きな穴があいたのだった。 「う、うわぁ〜〜!!」 「英人!!]  運悪く、その穴に英人が落ちてしまった。  何とか大樹がつかまえるが、一人では持ち上げられそうになかった。 「なれなれしくさわんな!」 「てめえ、何いつまでかっこつけてんだよ!」  この状況で喧嘩とはさらに最悪であった。 「ここまでだな、ブーバー、炎のパンチ!」 「ブ〜バ〜!」 「うわ!」 「大樹!!」  ここまでか、そう思われたその時だった! 「エアームド、スピードスター!」 「エア〜!!」  何処からともなく声が聞こえたかと思うと、ブーバーの前にエアームドが現われた。  そしてそのまま「スピードスター」を出すと、ブーバーは呆気なく吹っ飛ばされ気絶したのだった。 「馬鹿な、たった一撃で!?」 「だ、誰なの!?」 「私よ!」  すると、壊れた床の下、すなわち2階から女の声がした。  そこには大樹達より2つか3つ年上の茶色の長髪をした少女が立っていた。 「貴様は何者だ!?」  デストは平静さを失っていた。 「私は綾奈(アヤナ)、通りすがりの勝利の女神よ。」 次回予告 「突然現われた綾奈と言うトレーナーは何者なんだ?  いきなり現われて俺達に説教して帰るはし、やな奴だぜ!  けど、今はこいつらを倒すのが先決だな!  おい英人、お前も男ならつまんねえ意地なんかはんないでこいつらと一緒に戦おうぜ!  俺の言葉で英人が心を開いたその時、俺達のポケモンに異変が!?  これってもしかして進化なのか?それにジョウトの伝説って何なんだ?  もしかしてエンテイと関係があるのかよ!?  次回 心の進化 ポケモンの進化 」