第29話 それぞれの戦い  昨日はアサギジムに襲ってきた星・覇王神と戦い、大樹と英人はジム戦をする事ができなかった。  不満ながらも、あっという間に一晩が過ぎてしまった。 「そう言えば、望はバッチいくつ持ってるんだ?」 「え?バッチだったら6個だけど・・・」 「ゲッ、俺達より1個多い・・・・!」 「・・・私は1個も無いんだけど・・・・・・・」  朝食を食べながら、大樹達はバッチの事を話していた。  まあ、初心者の利奈がバッチを持っていないのは当たり前だが、まさか望むがそこまで集めていたのにはみんなビックリであった。 「今日バッチを手に入れたら残りは2個、後はチョウジのアイスバッチとフスベの・・・・・」 「ちょ、ちょっと何勝手に話進めているのよ!?」 「な、いいじゃねえか。お前は昨日のうちにスチールバッチゲットしたんだからさあ!」 「そう言う事は利奈の前で言うんじゃないの!」 「あ・・・・・・」 「平気よ、大樹は昔から先に突っ走る性格だから・・・・」  同じ女として留美は大樹に反発したが、利奈はそれを止めた。 「だったら今日は別行動したらどうだ?望と留美は既に6個だろ、俺達はジムに行ってるからお前らは別行動してたらどうだ?」 「それもそうね、今日は輝きの灯台も見て行きたいし・・・・・・・」 「あ、私は街の外れでポケモンの特訓をしているから・・・・」 「だったら望と一緒に行ったらどうだ?」 「え、僕!?」 「どうせ暇だろ?」  なぜか留美にではなく利奈の方に行けと言う大樹に、留美はちょっと膨れた。  最も、利奈は大樹にそう言う感情は持ってはいない。 「別に私は・・・・」 「私は一人でもいいから望は利奈と一緒にいなさい!」 「は、はい!」 「何怒ってるんだ?」 「フンッ!」  なんだか焼きもちを焼いているようである。 その後・・・アサギジム・・・・ 「あら、早かったですネ。」 「まあ、いろいろあって・・・・」  あの後どうなったかは分からないが、微かに大樹のほおは赤くなっていた。  英人は知らない振りをしていた。  すると、そこに男女2人がやってきた。 「あら、久しぶりじゃない?」 「あ、カスミ!それにタケシ!」 「やあ、君達久しぶりだな!」  いたのはカントージムリーダーのカスミとタケシであった。 「話はミカンから聞いたわ、星・覇王神と言う連中と戦ったんだってね?」 「ああ、戦ったのは留美だけどな!」 「どの道、凄いじゃない!」  別に星・覇王神のことを知っている場合じゃないが、ミカンを倒した相手に勝ったと言う事で言っているようである。  だが、大樹にはちょっと次ごうが良かった。 「よっしゃ、これでバッチを沢山ゲットできるぜ!」  そして、そのまま話は進んでいき、アサギジムでは激しいバトルが始まったのだった。  一方、その頃のアサギの町外れでは・・・・ 街の外れ・・・・・ 「ディグダ、砂かけ!」 「ドンファン、転がる!」  利奈は望とポケモンの特訓をしていた。  実力では圧倒的に望が上だったが、それでも手加減していた。 「フシギダネ、宿り木の種!」 「サンダース、体当たり!」  そしてしばらくして休憩に入った。  ここまではお互いのポケモンの使える技の確認をしていた。 「ありがとう、私に付き合ってくれて。」 「別にかまわないよ、僕も暇だったし・・・・」  2人は近くの木陰に座っていた。 「・・・・そう言えば、望君はロケット団の首領の・・・・・」 「・・・・」 「あ、ゴメン・・・・・」 「別にいいよ、真実なんだから・・・・・・・」  利奈は聞いては行けないことを聞いたと思った。  一瞬つらそうな表情をしていたが、すぐにいつもの表情に戻った。 「でも、望君ってやさしいよね。」 「え、そうかな?」 「うん、とても悪い事をしていたなんて思えないし・・・それに、本当にポケモンが好きだって見えるしね。」 「・・・・・・・・」  その時、利奈の笑顔を見た望は顔をちょっと赤くした。  最も、望は異性を好きになったことをなかったのでそれがどう言う思いなのかはわからなかった。 「どうしたの?」 「あ、別に・・・・・」 「そう?」 (な、なんで僕興奮してるんだ・・・!?)  望がその気持ちに気づくのはもう少し後の話である。 その頃・・・・輝きの灯台・・・  同じ頃、留美は一人輝きの灯台に来ていた。  この灯台にはライトポケモンのデンリュウ(アカリちゃん)が海を照らしているので有名なのである。 「ここが輝きの灯台・・・・・」  この灯台、かなり古い時代から立っているのが一目でわかった。  今までもこう言った建物などには伝説のポケモンに纏わる話があるので、もしかしたらと留美は思っていた。 「もしかして・・・・・・・・・」  どうせ時間が余っているので、留美は輝きの灯台に入ろうとした。  と、その時・・・・・・・・ 「ク〜〜〜〜ン!!」  突然、灯台の上から聞き覚えのある雄叫びが聞こえてきた。  そして反射的に灯台の上を見上げてみると、そこには見覚えのあるポケモンがいた。  全身が水晶のように美しく、ジョートに伝わる伝説のポケモンの一匹 「伝説の・・・・スイクン!!」 「ク〜〜ン!!」  スイクンは再び雄叫びをあげると、そのまま留美の元に飛び降りてきた。 「嘘、こんな所でスイクンが・・・・」 「・・・・・・」  スイクンはジッと留美をにらみつけていた。  その表情は、まるで大樹に勝負を挑もうとしたエンテイと同じであった。 「そう言う事・・・・・」  それには留美もすぐに気づいた。  そして・・・ 「行けぇ〜、メガニウム!」 「!!」  来たと思ったのか、メガニウムが出るとスイクンはすぐに攻撃に入った。  相性ではあきらかにメガニウムが有利だが・・・・ 「はっぱカッター!」 「ク〜!」 「か、風おこし!?」  忘れてはならないこと、スイクンは他のタイプの技も使えるのである。  しかも、「風おこし」は草タイプに効果抜群だったのでメガニウムは大きなダメージを受けた。 「だったら、甘い香り!そしてツルの鞭!!」  だが、素早いスイクンはすぐに交わし、再び風おこしを使ってきた。  そして、額の水晶が輝くと、そこから「オーロラビーム」を放った。 「しまった、戻ってメガニウム!今度はピジョン、風おこしよ!!」 「ピジョ〜〜!!」  だが、やはり飛行タイプのピジョンでもスイクンのスピードには追い付けなかった。  そして今度は・・・・・ 「電光石火!」 「ク〜〜〜〜ン!!」  攻撃しようとはしたが、その前に水鉄砲で止められてしまった。  水鉄砲にあたった羽は飛べる状態ではなくなり、そのまま落ちてしまった。 「ピジョン!!」 「・・・・・・・・・」  スイクンはじっと留美の方を睨みながら黙っていた。  ピジョンはかろうじて立てるが、もう長く戦える体ではなかった。  だが、それでもピジョンは戦おうと懸命に立ちあがった。 「ピジョ〜!!」 「ピジョン・・・・・」 「ピジョ〜〜〜!!」             ピカッ!!  その時、ピジョンの体が輝き始めた。  そう、進化である。 「ピジョンが・・・・・」 「ピジョット〜〜〜!!」 「ピジョットに進化した!!」  ピジョンは見事、最終形態のピジョットに進化を果たしたのだった。  だが、それと同時にスイクンは「冷凍ビーム」を放とうとしていた。 「来るわよピジョット、オウム返し!!」 「ピジョッ!!」  冷凍ビームが放たれると、ピジョットは大きな翼を振って冷凍ビームを放った。  だが、スイクンも体を不思議な光で包みこんだ。 「あれはミラーコート!!」  特殊攻撃を跳ね返す「ミラーコート」で冷凍ビームは再びピジョットに襲いかかってきた。  当たったら今度こそピジョットは確実に倒れてしまう。 「負けないわ、ピジョット、またオウム返し!」 「!!」  ピジョットは再び冷凍ビームを跳ね返した。  倍返しだったのできつかったが、それでもピジョットはそれを乗り越えて跳ね返した。 「今よ、翼で打つ!」  スイクンは再び跳ね返そうとしたが、その隙をつかれ、攻撃を受けてしまった。 「かまいたち!!」 「ピジョッ!」  スイクンはどんどんと攻撃を受けていった。  そして次第に力が衰えていき・・・・・ 「ピジョッ!!」 「いっけ〜、スピードボール!!」  動きの素早いスイクンに「スピードボール」を投げ放った。  スイクンは交わす事もできず、そのままボールに吸いこまれていった。 「やった〜〜〜、スイクンゲットよ!!!」 その後・・・・・ 「凄い!!」 「今度はスイクンか!」  みんな留美がスイクンをゲットしたことにビックリしていた。  たまたま一緒にいたミカン達も呆然としていた。  ただ一人、水のエキスパートのカスミはウルウル目でスイクンを見つめていた。 「いいな〜〜、ねえ、スイクンと私のポケモン交換しない?」 「だ〜〜め!」 「それはそうと、早く出発しようぜ!」 「そうだな、暗くなる前にアサギを出たいしな。」  大樹と英人もジム戦を終え、ジムバッチを6個に増やしていた。  本当は8個になるつもりが、タケシとカスミがバッチを持っていなかったため、一つしかもらえなかったのである。 「とにかく出発だ〜〜〜〜!」  そして、大樹達は次の目的地、チョウジタウンを目指して出発していったのだった。 次回予告「ついに俺の元にもライコウが現われた。その強大なパワーの前にゴローニャ が倒れてしまう。俺はリザードで勝負するが、ライコウのスパークや雷の前にリザード も倒れかけてしまう。立つんだ、俺も勝つまで絶対に逃げたりはしない!その時、ついにリザードが最終形態に進化を果たそうとしていた!  次回 雷のライコウ スリバ チ山の決闘 」