第57話 ポケモンリーグを目指して〜望&隆史〜 (あらすじ)謎の軍団ナイトメア、そして開催が近づくポケモンリーグ、2つの戦いに備え るため、大樹達はそれぞれ別れて特訓を始める。大樹と克はティールの前にあっけなく 惨敗し、自分達の未熟さを思い知る。そんな中、渦巻き列島の外れの島では望と隆史が ある関門に立たされていた。 渦巻き列島・・・・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・」  望と隆史は黙り込んでいる。  それもそのはず、2人は会ったばかりなのにティールの口から双子だと言われたので ある。  顔は似てるが声は違い、もし、ティールの話が本当ならおそらく二卵性の双子なのだ ろう。 「・・・・・何か言えよ!」 「・・・お前の方こそ・・・・・・」  これではまるで埒が明かない。  2人とも未だに真実を受け止め切れていないのである。  しかし、詳しくは言わないが、ティールの情報に間違いはない。  どう言うルートで知ったかは分からないが、少なくともティールの情報が確かなのは この2人もようく分かっている。 「・・・・・・・・何でこうなったんだ?」 「僕に聞くなよ・・・・。」 「・・・大樹もこの世界の住人だってのも全然わかんねえ。大体なんで普通は行けない はずの異世界で生まれた俺が今まで育った世界にいたんだ?」 「だから俺に聞くなよ・・・。」 「兄だろ?」 「関係ないって・・・・・・・・」  時が経つにつれて少しは会話をしだしたが、未だに互いの目を向き合おうとはしなか った。  やはり十年の時間の壁は大きく、そう簡単には解決しそうにはなかった。 「・・・と言うより、バトルしないと特訓にならないんじゃないか?」 「そう言えば・・・でも、お前はポケモン持ってるのか?」 「バ〜カ、持ってないなら一緒に特訓に参加するわけないだろ!」 「バカって言うな!!」 「そんな能天気面してたら言わずにはいられないんだよ!!」 「だったら双子のお前も能天気面だろ〜〜!!」 「うっ・・・・俺はお前と双子だなんて認めてないぞ!!」 「僕だって!!」  矛盾した会話が続いていった。  2人の口喧嘩はほとんど兄弟喧嘩に近く、この喧嘩は十分近く続いた。 十分後・・・・・・ 「ハァハァハァ・・・・・・」 「ハァハァハァ・・・・・・」  結局、どちらも引かず、喉が疲れてしまうだけであった。 「ハァハァ、こうなったらポケモンバトルで決着つけようぜ!」 「ハァハァ、さ、賛成・・ハァハァ!」  2人とも息を切らしながらポケモンバトルで決着をつけるのを決めたのだった。  だが、戦う前から2人とも体力を消耗していた。 「いいのか、すでに疲れているようだが?」 「そ、そっちこそ!」 「いいんだな?なら、勝負は交代自由の3対3、それでいいだろ?」 「OK♪」  2人は腰につけているモンスターボールに手をかけた。  既に2人とも最初のポケモンを決めており、どちらも勝つ気満々であった。  辺りはすぐそこに崖があり、高波でたまに海水が飛んで来る事もあった。 「最初はこいつだキングドラ!!」 「行け、デリバード!!」  隆史はキングドラ、望はデリバードを出してきた。  相性ではドラゴンと氷、だが、キングドラは水タイプも持っているので愛称は互角で ある。 「キングドラ、バブル光線!!」 「デリバード、プレゼント!!」  キングドラが勢い良くバブル光線を放つ。  しかし、空を飛べるデリバードはそれを簡単にかわしながら地上に攻撃して行った。 「高速移動!!」  キングドラは地上だと言うのに素早い動きでかわしていった。 「なら吹雪だ!!」 「キングドラ、竜巻だ!!」  高速移動中のキングドラをフィールドごと吹き飛ばそうとするが、キングドラは竜巻 で吹雪を飲み込んで防いでいった。  望の強さはポケアドを読んでくださる皆さんもよく知っているでしょうが、隆史も望 に引けを取っていないのには驚きですね。  この2人、一家総出でポケモンバトルの天才でした。 「やるねえ〜♪」 「そっちこそ、けど負けやしない!キングドラ、煙幕!」 「吹雪で吹き飛ばすんだ!!」  煙幕で身を隠すが、デリバードはすぐに吹雪で煙幕をはらう。  そして、煙幕の中からキングドラの姿が現れると・・・ 「よし、スピードスター!!」 「今だキングドラ、竜の息吹!!」 「え!?」  何時の間にか、キングドラはデリバードの背後にまわりこんでいた。  地上にいたキングドラはスピードスターを受けるとすぐに消えてなくなってしまっ た。  そしてデリバードは背後から竜の息吹を受け、そのまま地面に墜落した。 「影分身か!」 「正解、甘かったな!」 「それはどうかな?デリバードは『まもる』を使えるんだぜ!」 「何!?」  よく見ると、デリバードは地面に墜落したがキングドラの攻撃での傷はなかった。 「デリバード、高速スピンだ!」 「めざめるパワー!!」  デリバードは全身を高速回転させて空中から落ちてくるキングドラに直進していく。  それに対し、キングドラはめざめるパワーをデリバードに放った。 「「イケェ!」」  どちらの攻撃も互いに引かず、力はまさに互角であった。  そしてめざめるパワーと高速スピンは互いに反発して爆発したのである。 「うわぁ!!」 「クッ・・・・・!!」  爆発で生じた衝撃波が望と隆史の2人を襲う。  だが、一歩も引かない2人はさらに指示を続けた。 「キングドラ、破壊光線!!」 「デリバード、オーロラビーム!!」  2つの閃光が激突し、大爆発を起こした。  そのパワーはまるでマルマイン並の爆発であり、2匹はその爆発で吹っ飛ばされた。  さらには飛ばされたキングドラは隆史に、デリバードは望とぶつかり、隆史とキング ドラは崖の外まで飛ばされてしまった。 「しまった・・・・・・!」 「あ、隆史!!!」  反射的に望の手は隆史の手に伸びていった。  ギリギリで望は隆史の手を掴み、隆史は何とか落ちずにすんだ。  だが、望の体格では隆史を支えるのがやっとで持ち上げる事はできそうにない。  ポケモンを出そうにも、モンスターボールのほとんどがバトルの衝撃で落とされ、持 っていてもカメックスなどを出したら崖が崩れるかもしれなかった。 「の、望・・・・・・!?」 「ハハハ、何とかセーフだね。」 「何やってんだ、そのままじゃお前も落ちるぞ!」 「だ、大丈夫だって!おわっ!!」  体が滑ってしまい、2人はさらにマズイ状況になっていった。  望は片手で隆史を掴み、もう片方の手で崖にしがみついていた。  しかし、望の体も徐々に下に引っ張られ、2人が一緒に落ちるのは時間の問題であっ た。 「おい、放せよ望!!」 「は、放さない!!」 「このままだと2人ともお陀仏だぞ!!」 「それでも放さない!!」  望の手はしっかりと隆史の手を掴んでいた。  その手は暖かく、何処となく懐かしい感じがするのを隆史は感じていた。 「俺なら平気だって!だからそこまで・・・・」 「・・・・・家族だから!」 「・・・・・!?」 「お前は僕の・・・たった一人の兄弟だから・・・・弟を守るのは当然のことだろ!」 「・・・・・のぞ・・・・・・」  その瞬間、頭の脳裏にある光景が浮かび上がった。  病院の一室、若い女性に抱かれる2人の赤ん坊、その1人は隆史、そしてもう1人 は・・・ 「うわっ!」  とうとう望も限界になり、体がどんどん引きずられてゆく。  このままでは間違いなく2人とも海のそこに落ちてしまう。 「は、放せ!」 「嫌だ!!」 「放してくれ兄さん!!!」  その時の言葉には隆史の気持ちが十分溜まっていた。  そして2人は崖から落ちて行った。 「あれ?」  確かに崖から落ちたというのに全く痛みは感じられない。  そしてよく周りを見てみると・・・・・ 「あ、ルギア!」 「何故!?」 「デリデリ〜〜〜〜♪」  2人は望がゲットしたルギアの上に乗っていた。  さらにはデリバードも喜びながら一緒に乗っていたのである。  ついでにキングドラも(おい!) 「そっか、デリバードがルギアのボールを!」 「た、助かった〜〜〜〜!」  隆史は気が抜けてしまった。  それを見ると、笑みを浮かべながら望は隆史の隣に座った。 「僕の事、兄さんて呼んだよね?」 「!!!」  その瞬間、隆史は顔面を真っ赤にした。  咄嗟の事とはいえ、あの時、隆史は初めて望を「兄さん」と呼んだのである。 「今さらだけど、僕も頑張るから!」 「・・・ああ・・・・」 「さてと、特訓の続きをしないとな!手加減はしないよ隆史♪」 「うん・・・兄さん・・・・」  十年以上の壁はどうやら無くなったようであった。 次回予告「みんなが特訓に励んでいる中、何故か俺じゃなく留美と利奈の所にナイトメ アの刺客がきやがった!出てきたのは元四天王のキクコ、圧倒的な力があの2人を追い 詰めていく!負けんなよ二人とも、そんなんだとポケモンリーグで一緒にバトルができ ないぞ!   次回 ポケモンリーグを目指して〜留美&利奈〜 」