第59話 ポケモンリーグを目指して〜英人&昇也〜 (あらすじ)みんなが特訓に励む中、留美と利奈の前に元四天王のキクコが襲い掛かって きた。キクコはナイトメアの一員であり、その圧倒的な実力の前に2人は追い詰められ た行くのだった。だが、そこにスティンガーが現れて何とかキクコを追い払う事ができ たのであった。                  ○ 「あ〜食った食った!」  場所は変わってここはワカバタウン北部の山の一角である。  ここでは残った英人と昇也が特訓を行っていたが、今は夜で2人は夕飯を食べ終えた ばかりであった。 「・・・今日はもう遅い。さっさと寝るぞ!」 「おい、まだ早いだろ?」  相変わらず人付き合いが苦手なのか、英人は無愛想に口ぶりだった。  まあ、大樹達ならそんなのは慣れてるし、英人自身も彼らの前ではいくらか素直だ が、一緒になったばかりの昇也の前ではいくらか無愛想になるのも無理はない。 「なあ、お前その性格直したほうがいいぞ?」 「余計なお世話だ!」 「まあいいけどよ・・・・。」  昇也は横になりながら呟いた。  山の麓の方を向くと明るいワカバタウンの光が見えていた。  都会とは違い、田舎町の光は新鮮で綺麗だった。 「なあ、綺麗なもんだよな夜景って?」 「そうだな。」 「今頃あいつらもこんな光景見てんだろうな?」 「あいつらの居場所しだいじゃないのか?」 「・・・・お前、何か感情少なすぎじゃないか?」 「余計なお世話だ!」  ついに昇也も頭にきてしまった。 「少しは・・・・」 「苦手なんだよ俺はそういうの!」 「やっぱり・・・・」 「悪いか!?」 「別に、それがお前の個性なんだろ?」 「それが・・・・分からないんだ俺は・・・・」  英人は自分の事を聞かれると何やら悲しそうな顔をした。 「俺は孤児だから自分の事なんか全然知らなねえんだ。だからそういう事なんか興味な いし、知ろうとも思わねえよ。」 「親の事もか?」 「ああ・・・・・・・・・・・・・」 「けど、それって結構悲しくねえか?」 「何で?」 「自分がどんな風に生まれたとか、必要されて生まれたか分からないと余計に自分を傷 つけて追い詰めるだろ。」 「・・・お前の言う通りかもしれないが、知るにも手がかりもないんだ。」  普段は感情をほとんど表に出さない英人だったが、この時の英人は涙をおさえている ように見えた。  それを見ていた昇也もこれ以上は話を続けようとはしなかった。  夜も深くなり、2人は寝袋に入って眠りについていた。  焚き火も煙だけが上に昇ってゆき、辺りは月星の明かりと自然の静けさに包まれてい た。 「ZZz・・・・・・・」  2人ともよく眠っている。  だが、静かに眠っている2人に1人の男が近づいてきた。 「・・・・・・・もしかしたらと思ったが、どうやら本当だったようだな。」  男は顔を仮面で隠しているので素顔は分からなかったが、2人の顔をジッと見ていた。  何を考えているかは分からないが、しばらく無言で2人を、特に英人の顔を見ていた のだった。  2人ともよく眠っていたため、男の存在など全く気付きはしないのだった。 「・・・・可愛そうだがこれがお前たちのためだ・・・・」  男が2人の寝袋の隣に置いてあるモンスターボールに手を伸ばしていった。  モンスターボールの中には言わずとも彼らのポケモンが入っている。  男はそのポケモンを奪おうとしているのである。 「悪いが我らの邪魔をされるわけにはいかないのでな。」  そして男がモンスターボールを奪おうとしたその時、 「ブラッキー、体当たり!!」 「何!?」  男の背後から1匹のブラッキーが飛び掛ってきた。  そして同時に男のすぐ後ろには、 「貴様は!?」 「そいつらから離れるんだ!!」 「・・・・その顔、確かMr.4とか名乗っていたな?」 「コードネームだがな。」  ブラッキーのトレーナーはMr.4であった。  ブラッキー以外にも彼の後ろには強そうなポケモンがたくさん並んでいた。 「ん・・・・何だよ五月蝿いな〜〜〜〜!」 「ふわぁ〜〜〜〜〜、何なんだ?」  2人騒ぎに英人と昇也も目を覚ましだした。  半分寝ぼけていたため、しばらくは何が起きているのかは判断できなかった。  だが、しばらくすると 「なっ、何だお前は〜〜〜!!??」 「平和だな・・。」 「って、何でお前もいるんだ!?」  男の存在にも驚いたが、4(フォー)の存在にも驚いたのだった。  2人のボケにはフォーも呆れていたが、何故か仮面の男も口から苦笑した。 「おい、あいつは誰なんだ!?」 「・・・ナイトメアの1人だ。どうやらお前達の事を狙っていたようだ。」 「んだと〜〜!?」  ようやく2人も事態を飲み込んできた。  そして苦笑していた男は英人から顔をそらし、態度を変えて攻撃しようとしてきた。 「こうなったら全員片付ける。いでよリングマ!!」 「・・・・戦うのは俺ではなく、ターゲットのあの2人だ。」 「え、俺!?」 「ある意味、その方が手っ取り早いからな。」  フォーはそう言いながらジッと英人の方を向いた。  すると仮面の男は「チッ!」と舌打ちをしてフォーを睨みつけた。 「フン、そんな半人前に私の相手など務まりはしない!」 「んだと〜、誰が半人前だ!?」 「気にくわないな、勝負はやって見なければわからない。行け、ゴローニャ!!」 「こっちも、スターミー!!」  英人はゴローニャを出し、昇也もスターミーを出した。 「こうなったら早く楽にしてくれる。リングマ、ゴローニャに岩砕き!」 「ゴローニャ、丸くなって転がるだ!」  その身を丸め、一気にゴローニャはリングマに回転しながら直進して行った。  だが、リングマはそれを「岩砕き」で簡単に止めてしまった。 「甘い、冷凍パンチ!」 「ゴローニャ!!」  効果は抜群であった。  零距離で攻撃され、その威力の前にゴローニャは一撃で倒れた。 「言ったとおりだっただろ?」 「スターミー、バブル光線!!」 「かみなりパンチ!」 「光の壁!!」 「爆裂パンチ!!」  スターミーが咄嗟に「光の壁」を出した途端、リングマは技を変えてスターミーを攻 撃した。 「弱い!」 「リザードン、行け!!」 「・・・・・・・・無駄な・・・・」  英人はリザードンを出して行くが、男のリングマは簡単にリザードンを受け止めた。  明らかにレベルの差は大きかった。  リザードンがいくら力を出してもリングマは余裕で押し返していく。 「諦めるんだな。これ以上戦ってもお前たちが傷つくだけだ。」 「くそ〜〜〜〜〜〜!」 「リングマ、破壊光線!!」  リングマはリザードンを押し出し、口から破壊光線を出そうとした。  しかしその時、 「居合い切り!!」 「何!?」  破壊光線が放たれる直前、男とリングマに鋭い一線が襲い掛かってきた。  やったのはウツボット、昇也のポケモンである。  今の「居合い切り」でうまく「破壊光線」を止める事ができ、男の仮面も真っ二つに われた。 「マズイ、戻れリングマ!」 「逃げるのか!?」 「この勝負、次の機会に預けた!!  男は仮面の取れた顔を隠しながらその場を去っていった。  あれほどの実力者が何故、こうもあっさり逃げたのかは2人には分からなかった。  知っているのは・・・・ 「・・・そこまでして隠すのか・・・・・」 「ん?何か行ったか?」 「いや、何でもない・・・・・。」  知っているのは彼だけであった。 「まだ、私の正体を知られる訳にはいかない。」  山を駆け下りながら男は呟いた。  その時、月の光に照らされた男の顔は誰かに似ていた。 次回予告「ついに来たぜセキエイ高原、たくさんのトレーナーが集まってみんなやる気 マンマンってのが伝わってくる!そんな俺達の最初の関門は予選、だが、誰もが楽しん でいるポケモンリーグに怪しい動きが!?けど、今は予選を突破して本線に出場してや るぜ!!  次回 開幕!ポケモンリーグ!! 」