第63話 ナイトメア、災いの始まり 深夜・・・・・・・  全ての予選が終わり、ポケモントレーナー達は安息に入っていた。  そんな中、決勝リーグが行われる決戦会場に、複数の人影が合った。 「貴方とあろうお方が負けるとは予想もしませんでした。やはり、彼には我々の域を超 える何かがあるようですね?」 「ハハハ、それだけでも確かめられたのが収穫でした。ですが、本当の戦いはこれから です。」 「フェッフェッフェ、若い者達は気楽でいいのう。」  人影の正体はナイトメアの面々であった。  だが、その数は四天王達と戦ったときとは違い、シラマとキクコ、そして初めて見る 青年であったが、その姿はハッキリとはしなかった。 「明日からポケモンリーグも本戦が始まります。彼らにこれ以上先に進まれると少し厄 介ですので、明日中に・・・・・・。」 「どの道、明日中に『虹色の羽』を手に入れる必要もあります。多少の妨害はあると思 われますが、それも含めた作戦で事を進めましょう。」  話が終わり、ナイトメアの面々はスタジアムから姿を消していった。  スタジアムには再び静かな空気が漂い、これから起きる事などまるで思わせはしなか った。  ただ、ナイトメアが「虹色の羽」を狙う目的は・・・・ 翌朝・・・・  ナイトメアの動きなど全く知らず、大樹達は本戦最初の朝を迎えていた。  すでに外では本戦を観に来た観客で賑やかになっており、ポケモンリーグへの期待の 大きさが感じさせられていた。 「準備万端!」 「本当に万端なの?」」 「バッチリ!ポケモン達も元気満タンだし、これなら今日の試合も楽勝だぜ!」 「それはこっちのセリフだ。」 「英人も準備万端のようだね。」  大樹と英人は互いをにらみ合っていた。  今日の試合、大樹の対戦相手は英人なのである。  予選で選手もかなり絞られ、今では32人、その中で2人は最初にぶつかったのであ る。 「言っとくけど、俺は手加減しないぜ?」 「それもこっちのセリフだ。」  2人も待っていましたと言わんばかりの笑みを浮かべていた。  考えてみると、この2人がバトルをした事はないに等しかった。  そして、今日のバトルこそが彼ら2人の初バトルであり、雌雄を決する時なのであ る。 「あのう、気合を入れるのはいいんだけど・・・・」 「何だよ望?」 「・・・・・時間がないんだけど・・・・・」 「「えっ!?」」  振り向いてリビングにあった時計を見ると、既に試合開始時間30分を過ぎていた。 「だぁ〜〜〜〜!!」 「じゃ、お先に!」 「あ、待ちやがれ英人!!」  2人は急いで外に出て、急いでスタジアムに向かって行った。  スタジアムに向かう道は大勢の人で溢れており、先に進むのも何時もより時間がかか ってしまった。 「やばやばやば!!」  大樹は全速力で走って行くが、流石のこの数ではそう簡単には進めなかった。 スタジアム・・・・  既にスタジアムは観客で満員になり、誰もが大樹と英人の試合を待ち望んでいた。  フィールド全体は何もない普通だが、だからこそトレーナーの実力が試されるのであ る。 「ハァハァ、何とか間に合った!」  試合開始2分前になり、大樹はようやく到着した。  既に審判も前に出ており、バトルの準備は万端であった。 「一緒に出たのに遅かったな?」 「って、お前はリザードンで飛んで行っただろ!」 「フン!」 「ホントにきざな奴!」  だが、英人の表情は真剣そのものであった。  英人もこの試合を誰よりも待ち望んでいたため、この試合にかける思いは人一倍大き かった。 「ただ今より、決勝リーグ第1回戦第1試合を開始します!」  審判の声と共に2人は自分も持ち場に足を踏み入れた。  既に2人は最初のポケモンを決めている。 「大樹選手対英人選手、使用ポケモンは6体、時間無制限!」  多くの人が見守る中、ついに始まるのだった。 「試合開始!」 「イケッ、ニドキング!」 「行け、キマワリ!」  ついに始まった大樹と英人の試合、大樹はニドキング、英人はキマワリで試合は始ま った。 「毒針!!」 「影分身!」  無数の毒針と無数のキマワリがフィールドを満たしていく。  大きさなら明らかにニドキングが上だが、体が小さい分、攻撃は当たりにくかった。 「はっぱカッター!」 「砂嵐だ!!」  ニドキングは砂嵐を起こし、襲ってくるはっぱカッターを簡単に防いだ。 「キマワリ、日本晴れ!」 「ソーラービームを出す気だな?ニドキング、地割れで足場を奪うんだ!」 「キマワリ、ソーラービーム!!」  大きな地割れがキマワリに襲い掛かっていく。  だが、キマワリはニドキングに目掛けてソーラービームを放った。           ズドーン!  2つの技はほぼ同時にぶつかった。  土ぼこりが舞う中、その中で立っていたのは一体だけであった。 「キマワリ戦闘不能、ニドキングの勝ち!」 「よし!まず1体!!」  最初の勝負を制したのは大樹のニドキングであった。  キマワリは地割れに飲み込まれ、ニドキングに放ったソーラービームも「みきり」で 防がれていた。 「行け、リザードン!!」 「地面タイプにリザードンを出していいのか?」 「飛行タイプだから関係ない。  英人が2番手に出したのは切り札かと思われたリザードンであった。  リザードンは飛行タイプを持っている為、地面タイプの技が効く事はないが、炎タイ プの攻撃もニドキングには効果は半減するはずである。 「リザードン、火炎放射!!」 「ニドキング、目覚めるパワー!!」  灼熱の炎がリザードンの口から放たれ、ニドキングの攻撃と真正面から激突した。  相殺するかと思われたが、リザードンの炎が圧倒してニドキングに直撃した。 「さっきの日本晴れはリザードンの為の意味もあったんだよ。」 「なるほどな、ニドキング、10万ボルトだ!!」 「リザードン、竜の息吹!!」  ここから激しいバトルは始まった。  互いに引けを採らないパワーで攻めて行き、その衝撃はトレーナーの2人にも伝わっ ていった。 「炎の渦!」 「砂嵐!」 「よし、鋼の翼!」  炎と砂の渦がフィールドの中心で渦巻く中、リザードンはその翼で切り裂き、ニドキ ングに襲い掛かった。  攻撃はニドキングの急所に当たり、ニドキングは地面に倒されてしまった。 「ニドキング!!」 「今だ、地球投げ!!」  ニドキングの巨体を持ち上げて行き、凄い勢いで回転させて地上に投げつけた。 「ニドキング!!」  地面に叩きつけられたニドキング、その巨体を持ってさえ、リザードンの地球投げに 耐えることはできなかった。 「ニドキング戦闘不能、リザードンの勝ち!」 「これで振り出しだな。次はオーダイルでも出すか?」 「ヘッ、こう言う真っ向勝負にはこいつしかいないぜ!」  そして次に大樹が出したのは、 「行って来い、バクフーン!!」 「やっぱりそいつで来たな!」  大樹が出したのはファーストポケモンのバクフーンであった。  英人のファーストポケモンがリザードンであるように、大樹も自分のファーストポケ モンで勝負に出たのである。 「バクフーン、スピードスター!!」 「リザードン、竜の怒り!!」  そしてバクフーンとリザードンのバトルが始まった。  だがその時、 「キングドラ・マタドガス、煙幕!!」  その瞬間、スタジアム全体は謎の煙幕に飲み込まれていった。 「何だこれは!?」  突然の事態に困惑する大樹たち、だがそこに・・・・ 「キングドラ、破壊光線!」 「何だ!?」 「あ、バクフーン!!」 「ハイドロポンプ!!」 「リザードン!!」  突如、彼らの真上からキングドラとそのトレーナーが現れ、あっという間にバクフー ンとリザードンを倒してしまったのである。  大樹と英人はすぐに2匹をボールに戻し、目の前の謎の人物を睨みつけた。 「何だお前は!?」 「俺達の試合の邪魔をするな!!」  そして男は答えた。 「我らはナイトメア!」 「!?」  その言葉には大樹も英人も驚きを隠せなかった。 「あいつがあの時の・・!」            ドス!! 「英人!?」  気付いた時には英人は気を失い、仮面をつけた男の手の内にいた。  その男、以前、英人を襲ったナイトメアの男であった。 「お前達はこれ以上関わるな。」 「何だ・・・・グァ!!」  その瞬間、大樹は目の前が真っ暗になった。  大樹もまた、ナイトメアの一味にやられてしまったのである。 「彼らにはしばらく眠っていてもらいましょう。」 「ああ、余計な抵抗をされるのは厄介だからな。」 「しかし、その少年は本当にそっくりですね。」 「・・・・・・・」  青年は大樹の体を地面に寝かすと、大樹のポケットから何かを取り出すと再び大樹の 体を抱き上げ、自分のポケモンと共に何処かへと飛んでいった。  仮面の男もまた、英人を背中に担ぐと飛行ポケモンを出してスタジアムから去ってい った。 その後・・・・・・  煙幕が晴れた後、それからが大変であった。  バトルフィールドは破壊光線で大きな穴が空き、しかも戦っていた2人がいなくなっ たので大騒ぎになってしまったのである。  スタジアムにはリーグの運営委員や警察が集まり、一体何が起きたのかを調べ始めて いた。 「一体どうなってるんだ!?」 「私に聞いてもしょうがないでしょう!とにかくあの2人が消えてしまったのよ!!」  観客席にいた留美達もまた、事態が把握できずにいた。 「とにかく誰かにさらわれたんだよ!何処の誰だか分かんない連中に!」 「連中って誰よ!?」 「知るかよ!煙幕で何も見えなかったんだからよ!」  彼らは冷静さを失い、事態を飲み込めなくなっていった。  しかしそこに、1人の男が現れた。 「彼らはナイトメアに捕まった!」 「え?」 「誰よあんた!」 「あ、あなたはワタルさん!!」 「え!?ワタルってドラゴン使いの!?」  現れた男はドラゴン使いのワタルであった。 次回予告「呆気なくナイトメアに捕まってしまった俺と英人は巨大な飛行要塞の中で目 を覚ました。要塞はジョウトの空を飛んで行き、1つの塔を目指していた。俺達はどう にか脱出しようとするが、目の前に立ちはだかる男の前に阻まれてしまう。クソウ、こ うなったら力ずくで突破してやる!! 次回 飛行要塞の戦い 」