第64話 飛行要塞の戦い (あらすじ)ポケモンリーグも本戦に入り、その初戦で大樹は英人と戦う事になった。ど ちらも引けをとらないバトルを繰り広げて行き、ついにバクフーンとリザードンの戦い になったが、そこにナイトメアが乱入し、大樹から何かを盗み出すと大樹と英人の2人 をさらって行ったのだった。                    ○ 謎の飛行船・・・・・・  気がつくと、2人は見覚えのない場所で気を失っていた。 「ん・・・・・・ここは?」  最初に気付いたのは大樹、目を覚ましてすぐに異変に気付いた。  周囲は鋼鉄に囲まれ、自分はその部屋の端にあるベットに寝かされていた。  隣にはもう1つベットがあり、そこには英人が気を失って寝ていた。 「おい英人!起きろって!」 「ん・・・大樹か?」 「早く起きろよ!何だかわかんねえけど、何処か分かんない場所に閉じ込められてしま ったみたいなんだ!!」  その部屋には窓などなく、天井には人間は愚か、ポケモンも通れないくらい小さな通 気溝があるだけであったが、それでも出入り口であるドアは1つだけあった。  だが、そのドアは見るからに頑丈にできており、格闘ポケモンでも壊せそうになかっ た。 「何処なんだここは!?」 「それは俺だって知りたいって!」 「確か・・・・リザードンが倒されて・・・・・」 「そうだ!ナイトメアの奴らが・・・・!」  ようやくさらわれた時の事を思い出し、自分たちがナイトメアにさらわれた事に気付 いたのだった。 「くっそ〜〜、あいつら何で俺たちを!?」 「分からないが、奴らは俺達に何か用があるから捕まえたんじゃないか?」 「用ってなんだ?」 「ん〜〜〜〜〜、俺達のポケモンか持ち物を奪うとか?」 「でもポケモンはみんないるし、持ち物だって・・・・・」  大樹は念の為にと、自分の衣服にあるポケットを全部調べていった。  持ち物の多くはロッジに置いており、大した物は持ち合わせていないはずであった。  だが、 「あ〜〜〜〜〜〜!!」 「どうした大樹!?」  大樹は思わず大声を上げて叫びだした。 「ない・・・・」 「何が!?」 「に、『虹色の羽』がない・・・・・」 「何だと!?」  大樹は呆然としながら英人と目を合わせた。 「何であれを無防備に持ち歩いていたんだ!」 「仕方ないだろ!普段から持ってた方が安全だと思ったんだからよ!」 「それで盗まれたら意味ないだろ!あの羽は伝説のポケモン、ホウオウとあうために必 要なアイテムなんだぞ!」  英人はいつも以上に大樹を怒鳴りつけ、大樹の無防備さを訴えた。  大樹は分かっていながら、つい何時もの癖で英人と言い争ってしまった。 「あいつら、まさかホウオウを捕まえようとしてるんじゃ・・・・・・」 「だったら早く取り返しい行かないとやばいだろ!アンナ奴らにホウオウが・・・・」 「アンナ奴らって、大樹はナイトメアに直接会った事はないだろ?」 「う・・・・とにかく、羽を早く取り返さないと!」 「そうだな。」  しかし、周囲は鋼鉄に囲まれ、唯一の出入り口も頑丈にできている。  運良く、2人ともポケモンを6匹全員持っていたため、ポケモンの力なら脱出は可能 に見えた。 「とにかくポケモン達で脱出させようぜ!」 「そうだな。ゴローニャ、転がるでドアを壊せ!」  英人はゴローニャを出し、ゴローニャはドアに向かって攻撃した。  だが、頑丈なゴローニャの体も鋼鉄のドアの前では無力だった。 「壊れない。」 「今度は俺だ!フーディン、サイケ光線!!」  次は大樹のフーディンがエスパーの力で壊そうとした。  だが、サイケ光線がドアに直撃する前に見えない壁が現れ、それを事前に防いでしま った。 「何!?」 「これは光の壁!!」 「ポケモンがいるのか!?」  サイケ光線も簡単に防がれ、ポケモンの力でも脱出は不可能に見えた。  だが、それでも完全な防御が存在しない限り、2人にも何か手段があるはずであっ た。 「一体どうしたら・・・・」 「炎と氷で砕こうにも、光の壁が・・・」 「あ、だったら・・・」 「何かいい考えがあるのか?」 「まあな、出て来いエンテイ!!」  何を思いついたのか、大樹はエンテイを出した。 「エンテイ、ドアの向こう側に向かって威張るだ!」 「あ、なるほど!」  エンテイがドアに向かって「威張る」を使った。  すると、ドアの向こう側で何かポケモンが暴れている音が聞こえてきた。  どうやら混乱し、訳も分からず暴れているようである。 「よし、これなら光の壁も出ない!エンテイ、火炎放射!!」 「ああ、ランターン、ドアに冷凍ビーム!」 「エンテイ、破壊光線!」  炎と氷の攻撃技がドアに直撃し、ドアに亀裂が生じた。  そしてエンテイが破壊光線を放ち、頑丈なドアは見事に砕け散った。 「よっしゃぁ!」 「よし、このまま外に脱出するぞ!」  2人はポケモンをボールに戻し、さっさとその部屋から出て行った。  途中、壁に頭をぶつけて気絶しているバリヤードがいたが、さして気には止めなかっ た。  だが、彼らがその先で見たのは・・・ 「う、嘘・・・・・・・・・・・」  走っていくと、ようやく外を見渡せる窓が見えたが、そこから見えた景色は真っ白な 雲であった。  見えたのはそれだけではなく、自分達がいる場所が巨大な飛行要塞であったのであっ た。 「そ、空飛んでいるぞ!!」 「み、見れば分かるって・・・・・・」  流石に空を飛んでいた事には2人ともあ然とした。 「くそっ、これじゃあ脱出できないじゃないか!!」 「俺はリザードンがいるから平気だが?」 「リザードンは高さ1400メートルまでしか飛べないんじゃ?」  大樹は手持ち以外のポケモンにも詳しかった。  確かに、リザードンが飛べる高さは約1400メートルまでであり、飛行要塞が飛ん でいる高さが分からない今、無闇に飛ばすのは危険な賭けであった。 「無理か・・・・・」 「これじゃあこの船が降りるまで脱出できないじゃないか!」 「静かにしろ!敵に気付かれるだろ!!」  大声で叫ぶ大樹を英人はぶって黙らせた。  少々手荒だったものの、今はこの方法が最善であると判断したのである。  しかし、英人の判断もむなしく、1人の影が近づいてきた。 「やはり、あの程度の守りでは逃げられてしまいますね。最も、その方がこちらにとっ ても都合がいいんですけど。」 「誰だ!?」 「忘れましたか?ポケモンリーグのスタジアムでお会いした・・・・」 「あ、あの時のキングドラ使いの!!」 「思い出されてくれましたか。」  2人の前に現れた青年、あの時にキングドラでバクフーンとリザードンを簡単に倒し てしまったキングドラのトレーナーであった。  外見からして20歳前後と言った感じだが、全体から目には見えぬ強大な威圧感が感 じられた。 「申し送れました。僕の名前はシブキと言います。」 「おい、さっきの都合がいいってどう言う意味だ!?」 「そうですね、普通なら逃げられるとマズイと考えるのですが、我々にとってはシナリ オを早く進められるからと言うんでしょうか。」 「シナリオだと?」 「ハイ、我々ナイトメアは鈴の塔に行き、そこでホウオウの捕獲する予定です。その後 はホウオウと貴方達が持っている伝説のポケモンを使い、世界を創造しなおす予定なの です。」 「世界を・・・・・・!?」  最初はやはりホウオウが狙いかと思われたが、その後の話がよく分からなかった。  ロケット団のように世界征服や金儲けならわかるが、創造し直すという意味がよく分 からなかった。 「創造し直すってどう言う意味だ!?」 「その先は言えません。ですが、貴方達は野放しにすればこそ危険ですが、この中でな ら逃げずに戦ってくれる。そうすればこちらとも好きなようにあなた方・・・いえ、大 樹君の能力を測り、ホウオウと幻の存在を導き出させる事ができるので都合がいいので す。」 「な・・・・・・」 「おい待て、お前達は大樹に用があるなら何で俺までさらった!?」 「それは、あなたがライコウを持っている事もありますが、エイジさんがあなたを我ら の敵に回って欲しくないと言っているので、事が終わるまでここで保護していたのです が、そうもいきそうにありませんね。」 「エイジ?あの仮面の男か!?」 「ハイ、ですがあの人の事は貴方が一番よく知っていると思いますが?」 「?」  その時のシブキの言葉はよく分からなかった。  だが、エイジという仮面の男は英人だけは戦いに巻き込ませる事を拒んでいるのは確 かであった。 「あ〜〜、話がよくわかんないな〜〜!」 「そうですか、なら簡単に話しましょう。ここから脱出したいのなら僕をポケモンバト ルで倒さないといけないのです。」 「お、それなら分かりやすい!」 「おいおい・・・・」  大樹の単純さに英人は呆れていた。 「では戦い場所はこの先の部屋でやりましょう。なお、このバトルは僕と大樹君の勝負 ですので英人君は観戦していてください。」 「何だと!?」 「大丈夫だ英人、こいつは俺が倒してやるって!」 「では、場所を移りましょう。」  そう言うと、シブキは2人を1つの部屋に案内して行った。  しかし、2人が行き着いたのは部屋というより立派なバトルフィールドであった。  これだけ大きな要塞ならあっても無理はないが、2人とも驚きを隠せなかった。 「それではバトルを始めましょう。大樹君は好きなだけポケモンを出してもいいです が、僕はあいにく3体しか持っていないのですが・・・これはハンデと言う事でお願い します。」 「ハンデなんかいらないって!」 「では行きます。マグカルゴ!」 「話聞けよ!」  だが、勝負は既に始まっている。  シブキは炎と岩のタイプを持つマグカルゴを出してきたが、マグカルゴは既に火口の 中のマグマのように熱そうであった。 「え〜い、だったらオーダイルだ!」 「水タイプですか、いい判断です。岩や地面タイプではマグカルゴの炎は防げないです から。」 「え?岩でも炎は防げるぞ!」 「すぐに分かります。マグカルゴ、火炎放射!」 「来たな、水鉄砲だ!」  マグカルゴは炎を出してきたのに対し、オーダイルは水鉄砲で攻撃した。  だが、マグカルゴの炎は予想以上に強く、水鉄砲を簡単に貫いてしまった。 「な、かわせオーダイル!」 「大きい体のわりには動きがいいですね。流石と言うべきでしょう。」 「そっちこそ、敵だけど褒めてやるぜ!」 「余裕ですね。マグカルゴ、スモッグです!」 「オーダイル、凍てつく風!」  マグカルゴは口から大量のスモッグを出し、オーダイルはそれを凍てつく風で払いの けようとした。  しかし、 「大文字!」 「どわっ!」  スモッグを破った直後、オーダイルの目の前に大文字が一気に向かってきた。  オーダイルは交わそうとしたが、うまく動けず直撃を受けてしまった。 「オーダイル!」 「タイプの違う技を出す場合、ポケモンは得意技の時以上に集中力やパワーを使うので 回避力が低下するのを知っていましたか?」 「くそ、立てるか!?」 「無駄です。今ので火傷を受けましたし、マグカルゴのこの技でオーダイルは倒れます。」 「そんな事はない!」 「試してみますか?マグカルゴ、転がる攻撃!」  マグカルゴは体を殻の中にこもり、高速回転しながらオーダイルに向かって行った。  オーダイルは火傷のせいで何時もよりも動きが鈍くなっており、交わせようになかっ た。 「これで終わりです!」 「オーダイル!!」  果たして、オーダイルの運命は!? 次回予告「シブキのポケモンのパワーは俺達の想像を遥かに超えていた。俺のポケモン はどんどん追い詰められていく。けど、俺はそれでもライバル以外には絶対負けたくは ないんだ!そっちが強いなら俺はそれを超えていくぜ!  次回 勝利への爆裂パン チ!! 」