第66話 仮面の男の正体 (あらすじ)大樹と英人はナイトメアの2人組みにさらわれ、巨大な飛行要塞の中に閉じ 込められてしまった。何とか脱出しようと、逃げ回る途中に現れたナイトメアのシブキ と戦うものの、今までとはまるで強さのレベルが違いどんどん追い詰められていった。 だが、最後まで諦めない大樹の気持ちがポケモンにも伝わり、見事、シブキを相手にフ ェアバトルで勝利したのだった。                 ○ 飛行要塞の外・・・・・  話は少し戻り、大樹がシブキとバトルしている時、飛行要塞の外では複数の影が要塞 に侵入しようとしていた。 「わぁ、近くから見ても大きな要塞だね。」 「こんなもの、何処で造ったんだ?」 「君達、今はそんな事より中に侵入する方が先だ。早くこっちに来るんだ!」 「あ、ハイ!」  そこにいたのは望や留美達であった。  しかも、彼らと一緒にいたのはあのドラゴン使いのワタルであった。  彼らは飛行速度最速のカイリュウに乗り、ようやく飛行要塞に辿り着いたのである。 「けど、本当に2人はこの中にいるのか?」 「各省は無いが、奴らの目的からしてこの要塞の中に入れていると考えた方がいい。も ちろん、追っ手が来るのも分かっていての事でもあるが。」 「じゃあ、もしかしてとっくに私達の事気付いてるの!?」 「その方が今は丁度いいんだ。カイリュウ、あの壁に破壊光線!!」  カイリュウはワタルの指した方に破壊光線を放ち、壁に人が通るには十分な大きさの 穴を空けた。  望達もカイリュウの破壊光線がうまく加減されて放たれた事に驚きを隠せなったが、 今はそんな事に感心している場合ではなかった。 「では行くぞ!」 「ハイ!」  ワタルが先頭の元、彼らは飛行要塞の中に入っていった。 「完敗ですね。これでは仮に僕も6体持っていても勝敗には関係なかったでしょう。」 「ま、そう言う事♪」  時は戻り、大樹はシブキを倒す事ができた。  観戦していた英人も冷や汗を流しながらも、流石だと言いたそうな顔つきで大機を見 ていた。 「では約束どおり、この先は僕は止めたりはしません。どうぞご自由にしてください。」 「ああ、その前に聞きたい事がある。」 「何でしょう?」 「俺の『虹色の羽』は何処にあるんだ!?」 「それは僕にも分かりません。僕は君から取った後、すぐに首領のシラマさんに渡しま したから。」 「シラマ?それがナイトメアの首領か!?」 「ハイ、ですがあの人は僕達より遥かに強い人です。取り返したいのならあの人と戦わ ないといけませんが、それは進められません。」  大樹と英人はそこで初めてナイトメアの首領の名前を知った。  だが、英人はその直後にある事に気がつくのだった。 「おい大樹!シラマって・・・・確かお前が予選の最後に戦った奴と同じ名前じゃない か!」 「え・・・・・・・あ〜〜〜〜〜〜!」 「そうです。あの時は2軍のポケモンを使っていましたが、貴方がポケモンリーグで戦 ったあの人が我らの首領です。」 「2軍!?あのパワーで2軍かよ!?」  大樹もようやく気付いて驚いたが、シラマが使っていたポケモンが2軍だと聞き、さ らに驚くのだった。  名前は英人に言われるまで思い出せなかったが、その強さは大樹自身にもしっかりと 刻み込まれていた。 「しかし、君なら・・・・・いえ、君だからこそ行かなければならないのかもしれませんね。」 「て言うか、お前さっきから変な言い方してないか?」 「・・・・・・では、僕はこの辺で失礼します。先に進みたいのでしたらあのドアを出 て左の方へ進めば中枢部に行けますので。」 「あ、おい!」  言う事を全て話し、シブキはその場から姿を消した。  おそらく要塞内のシステムが作動して移動したのだろう。 「行っちまった・・・・。」 「それより大樹、早く行かないと取り返すことができないぞ!」 「そうだった!!」  2人はその場を後にし、「虹色の羽」を取り返すべく、要塞の中枢部を目指したのだ った。  途中、いくつもの監視カメラがあったものの、今となっては気にしても仕方が無いの で無視して先に進んでいった。 「絶対に取り返してやる!」 数分後・・・・・  飛行要塞は果てしなく広く、ずっと走り続けても中枢部らしき場所は見えてこなかっ た。  大樹と英人もだんだん息が荒くなってきたが、今はそんな事で休んでいる訳にもいか ないのでとにかく先へと進んでいった。 「ハァハァ、何て広いんだここは!?」 「このままだと中枢部に着く前に鈴の塔に着いてしまうかもしれないな。 「そんな事させないって!」  顔には汗が流れいるも、大樹はさらに足を速めていった。  だがそこに、 「ペルシアン、アイアンテイル!」 「危ない大樹!」 「うわっ!!」  突然、彼らの真上からペルシアンの尾が襲い掛かってきた。  大樹は英人に押し倒されて攻撃を受けずに済んだ。 「誰だ!?」 「流石にいい反応だな・・・・・・・・・・。」 「お、お前は!?」  ペルシアンの背後より現れたのは1人の仮面の男であった。  そう、かつて英人と昇也を襲ったあの男であり、スタジアムでシブキと共に2人をさ らったのもこの男である。  男は2人の元に近づいてゆき、英人の方をジッと見つめた。 「ここから先は通らせるわけにいかない。」 「その仮面・・・・・じゃあ、あんたがエイジか!?」 「シブキから聞いたか・・・・。奴を倒したからといって、今度も勝てると思っている のか?」 「何だと〜〜!」  大樹はエイジに対し、バトルを仕掛けようとした。  だが、そこを英人は割り込んで止めてきた。・ 「こいつの相手は俺にさせろ。」 「英人・・・・」 「止めておけ、戦うだけでも無駄というものだ。そして、お前はこの戦いに関わっては いけない。」 「・・・・そう言えば聞く事があった!」 「・・・・・・・」  英人は真剣な眼差しでエイジを睨み、そして問いかけた。 「お前は一体何者なんだ!何で俺とは避けようとしたりする!?」 「・・・・答える必要は無い!」 「シブキは言っていた。お前は俺をかばい、そして俺が一番お前の事を知っていると!」 「・・・・シブキ・・余計なことを・・・・・」  エイジは少し焦りだしている。 「ならばしょうがない。早々に片付けて眠ってもらおう。」 「それはこっちのセリフだ!行け、オニドリル!!」 「この狭い空間で飛行タイプを出すか・・・・」 「オニドリル、スピードスター!!」  狭い空間であえてオニドリルを出し、早速先制攻撃を仕掛けた。 「守る!」  エイジは冷静な判断で容易に攻撃を防いだ。  先ほど見せた焦りなど嘘かのように、エイジは揺ぎ無い態度で勝負に出た。 「オニドリル、乱れつ・・」 「切り裂く攻撃!」 「あ・・・・・・・!?」  一瞬であった。  エイジが指示した途端、ペルシアンは一瞬でオニドリルの前に行き、素早くオニドリ ルを攻撃したのである。  あまりの速さに見ていた大樹も唖然とした。 「は、早い・・・・・!」 「ペルシアンは戦闘での近距離の移動速度は目で追う事はお前達にはできまい。」 「くそっ、大丈夫かオニドリル!?」 「運良く急所ははずしたか。ならば10万ボルト!」 「オウム返し!!」  ペルシアンは飛行タイプの天敵、電気タイプの攻撃を仕掛けてきたが、英人は素早く 指示を出し、攻撃を相手に跳ね返した。  攻撃は直撃はしなかったものの、何とかペルシアンの手足にかすらせる事ができた。 「いい判断だ、今のでペルシアンのスピードは下がってしまったな。」 「随分と冷静だな?」 「バトルにおいて、冷静な判断ができなくなる事は何より愚かな事だからな。」 「確かに・・・・オニドリル、電光石火!」 「突進!」  苦手な場所でありながらも、オニドリルはペルシアンと対等に渡り合っていった。  大樹もオニドリルの実力はほとんど分かっていなかったが、ここまで強いとは想像も していなかった。 「流石に強い・・・・・けど・・・」 「・・・・・・・・・」  バトルが続く中、英人は敵のペルシアンを見ている内、何か不思議な思いを感じてい た。  それは戦っているオニドリルも同じなのか、戦っている中でも何かを考えているよう にも見えた。 「(何だ・・・この感じ・・・・何故懐かしく思うんだ!?)」 「・・・戦いに考え事は無用だ。ペルシアン、電磁砲!」 「くっ、オニドリル、トライアタック!!」  余所見をしている間にも、敵は容赦なく大技を仕掛けてくる。  オニドリルも同じように大技を出し、何とか直撃を避けようとした。  トライアタックはオニドリルと同じノーマルタイプの技でもあったため、通常よりも パワーが上がり、タイプの違う技で来るペルシアンのシャドーボールと互角に押し合っ ていった。 「パワーを上げるんだオニドリル!!」  その直後、2つの業は相殺し、その衝撃を両者に襲い掛かってきた。  エイジは簡単にこらえるものの、英人は何とか足に力を込めて耐え抜いた。 「ペルシアン、乱れ引っかき!」 「今だ、かまいたち!!」  ペルシアンが飛び掛ってきた瞬間、オニドリルは翼を勢いよく振り、ペルシアンに鋭 い無数の風の刃を放っていった。   だが、その刃はペルシアンにだけではなく、いくつかがエイジの方に飛んでいった。 「しまった!」 「くっ!」  エイジは素早く交わしたが、              ピシッ!!  刃がかすってしまい、その仮面に亀裂が走った。  エイジは壊れそうな仮面を抑えようとするが、すでに遅く、エイジの顔を隠していた 仮面が粉々に割れて床に落ちていった。  そして、その直後に現れた顔は・・・・ 「あ・・・・・・・」 「う、嘘・・・・・・」  仮面の下から現れたのは英人によく似た30前後の男の顔であった。  完全に似ている訳ではないが、顔つきや頭髪も英人によく似ていた。 「くっ、見られてしまったか・・・!?」 「そ、そんな・・・・・・」 「おい、まさか・・・あのオッサン、お前の生き別れの・・・・・」 「そんな訳が無い!!」  英人は大声で大樹を怒鳴った。  彼にとって、これだけは受け入れたくない現実なのである。  今まで顔も思い出せなかった自分の父親が目の前にいるなどと、英人は認めたくは無 かった。 「英人・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・本当だ・・・。」 「!?」 「いずればれる事だったが、その子の予想通りだ。」  エイジは顔を隠さず、その素顔を英人の前に見せた。 「じゃ、じゃあ・・・・・・・・・・」 「私が、英人の父の永智(エイジ)だ。」  2人は言葉を失った。  目の前にいるナイトメアの男、その男こそが英人の父親だったのであった。 次回予告「信じられない真実、英人はそのショックで戦意を失いかけてしまう。そんな 英人に容赦なくペルシアン、そしてリングマの猛攻が迫ってくる。どうした英人、お前 はこんな所で終わる奴じゃないだろ!そして、英人が真実を受け止めた時、英人の運命 の決着がついた。 次回 決着、リザードンVSリングマ 」