第67話 決着、リザードンVSリングマ (あらすじ)ナイトメアの飛行要塞に捕まった大樹と英人は奪われた「虹色の羽」を取り 返すため、要塞の中枢部に向かう。同時に、望達もワタルと共に要塞の中に侵入してい た。そんな中、大樹と英人はナイトメアの仮面の男、永智とあい、英人がバトルをする が、バトルの中、永智の正体は生き別れになっていた英人の父親である事が発覚するの だった。                    ○ 「嘘だ・・・・・・・・」 「本当だ・・・お前をこの戦いに巻き込みたくなかったのは、お前が私のただ1人の家族 だからだ。」 「ただ1人・・・・?英人の母さんはいないのか?」 「・・・・・いない。英人が幼い時に・・・・・・」 「言うな!」  英人は再び怒鳴った。 「ふざけるなよ、十年以上も隠れていて今さら親だ何て言いやがって・・・・!!」 「そうだ、おっさんは何で英人を捨てたんだよ!こいつ、普段は気障だけど・・・」 「分かっている。だが、誤解はしないでほしい、今では言い訳になるかもしれないが、 私はあくまで英人を守るため、生まれたばかりのオニスズメとヒトカゲのタマゴと共に 施設に預けた。」  受け入れたくは無いが、永智の話が本当ならば、英人とオニドリルが感じた懐かしさ も説明がつくのだった。  そしてさらに、永智はリザードンがタマゴから育ったポケモンである事まで知ってい たため、英人は話が真実であると信じない訳にはいかなくなった。 「・・・・戻れオニドリル!」 「英人、どうしたんだよ!」 「・・・・」  英人はさっきとは別人のように戦意を失い、無言のまま立っていた。 「どうしたんだよ英人、あのおっさんを倒すんじゃなかったのかよ!?」 「五月蝿い、お前は黙ってろ!」 「五月蝿いって・・・・・」 「俺にかまうなよ!お前も驚いたんだろ、俺の親がナイトメアにいるって事によ!!」 「ま、まあ・・・・・」 「いきなり捕まって出てきたナイトメアの1人が親だぜ!?しかも母さんがずっと昔に 死んでるなんて言われて正気でいられるかよ!?」  何時もと違い、英人は投げやりな口調で大樹を怒鳴り続けた。  永智もそれを辛そうな表情をしながらも、目をそらさずに見ていた。 「こんなのアリかよ・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「こんな事なら家族の事なんか知ろうなんて思うんじゃなか・・・・」 「ふざけるな!!」  その瞬間、大樹は英人の顔を思いっきり殴り飛ばした。 「グッ・・・・・何するんだ大樹!?お前に俺の気持ちが分かって・・・」 「分かるから言ってるんだ!俺だって、本当の生みの親や家族を知らないんだ!!」 「あ・・・・・・・・・・・・」  そう、大樹は英人と同じ、この世界の住人である。  そして、今の英人とは違い、自分の本当の家族を知らないのである。  だからこそ、大樹は英人を殴り飛ばす事ができるのである。 「俺だって、何時、お前みたいに実の家族に会うか分からないんだ。もしかしたらお前 と同じように俺の家族もナイトメアにいるかもしれない。けど、今のお前に投げやりに なったりするなんて絶対嫌だぜ!」 「何でだ、こんな事になって投げやりにならない方が不自然だぜ!」 「こんな事だからこそ、自分で決着をつけないといけないんだ。俺は、自分で自分の運 命に決着をつけてやる覚悟で来ているんだ。だけど、今の英人は何時もの英人じゃなく て、ただの泣き虫の負け犬だ!」 「負け犬!?」  その言葉は英人には一番きつい言葉であった。  だが、英人に言葉をぶつけている時の大樹の顔を見たとき、英人は思わず怒鳴る事を 忘れてしまった。  その時の大樹は必死に何か大きなものを堪え、目からは涙が出そうになっていた。  英人はその時初めて、大樹が自分達が気付かない間も自分の過去や運命に耐えていた のだと気付いたのだった。  そしてそれを耐え抜いてきたからこそ、今の大樹は強いのだと知ったのだった。 「英人・・・お前は・・・・」 「もういい、お前は下がっていろ。」  英人は一度目を閉じ、深く深呼吸した。  そして、さっきとは違う真剣な目を自分の父に向けた。 「俺も、自分で決着をつける!」 「英人・・・・・・・」 「大樹、ナイトメアとの決着がついたら・・・・今度こそフルバトルしようぜ!」 「・・ああ、もちろんだ!」  大樹も立ち直った英人を見ると、安心し、英人から少し離れた。 「今度こそ、決着をつけるぜ!」 「覚悟はあるんだな?」 「ああ、俺はもう逃げたりはしない!」 「そうか・・・・・・。戻れペルシアン!」 「本気で来るのか?」 「ああ、私もお前と決着を付けたくなった。出て来い、リングマ!」  永智はペルシアンを戻し、真剣な眼差しで英人を見つめ、リングマを出した。 「勝負は1対1、互いのパートナーポケモンで勝負をつけよう。」 「ああ、行け、リザードン!!」  英人もリザードンを出し、永智との決着をつけるバトルが始まった。  これが、2人の本当のバトルの始まりであった。 「リザードン、突進!」 「リングマ、カウンター!」  リザードンの攻撃をリングマは簡単に倍返しした。 「カウンターが使えるのか?だったら、火炎放射!」 「炎のパンチ!」 「受け止めた!?」 「攻撃技はこういう使い方もあるという事だ。」  リザードンはリングマに思いっきり炎を放ち、リングマは炎のパンチで受け止めた。  流石にレベルが高く、特訓で強くなったリザードンの炎をも受け止め続けていった。 「なら、竜の息吹!!」 「クッ、守る!」 「リザードン、力を込めてロケット頭突き!!」 「受け止めろリングマ!」  狙いを定め、リングマにロケット頭突きを仕掛けるがリングマはそれを見事受け止め ていく。 「そのまま地球投げ!」 「原始の力だ!」 「くっ、乱れ引っかき!」  狭い空間であるため、リザードンは何時ものように自由に飛ぶ事ができず、リングマ の攻撃をどんどん受け続けていった。  リザードンはガードしながら耐えていくが、リングマのパワーが遥かに強く、その一 撃が物凄く大きかった。 「リ、リザードン!!」 「雷パンチ、冷凍パンチ!」  リングマはリザードンの2つの翼にパンチを当て、翼を封じてさらにリザードンの自 由を奪っていった。 「リングマ、電磁砲でとどめだ!」 「くそ、ここで負けてたまるか!リザードン、竜の怒り!!」 「ふ、何処まで持つか勝負だな!」 「ああ、リザードン、思いっきり力を込めるんだ!」  リングマが電磁砲を放ち、リザードンは竜の怒りで勝負に出た。  再び2つの技の押し合いになり、また相殺するのかと思われた。  しかし、 「うおぉぉぉぉぉぉ!!」 「クッ・・・・・(何というパワー、一体あれからどれ位強くなったというのだ!?)」 「イケェ、リザードン!!」  英人の叫びと共に、リザードンの竜の怒りはリングマの電磁砲を一気に押していった。  それと同時に、リザードンの尻尾の炎も一気に大きく燃え上がってゆき、その力が増 大している事は知らせていた。 「これは、怒り、それに我慢か!?」 「ああ、特訓のお陰で2つ同時に使えるようになったんだ!」  そしてリザードンはついにリングマの電磁法を破り、大きな一撃をリングマに与えた。  以前は一撃も与えられずにあっけなく負けてしまったが、今では互角以上に渡り合っ ていた。 「リザードン、火炎放射!!」 「ならば、最大パワーで破壊光線!!」 「こっちも最大パワーだ!!」  もはや、2人ともここが屋内である事を忘れ、とてつもないパワーで攻めてきた。  どちらも自分のポケモンと同じタイプの技を出したため、その威力は普通よりも遥か に大きく、トレーナーにもその衝撃が伝わっていた。 「くっ・・・・・・!!」 「イケェ〜〜〜〜!!」  リザードンの炎はさらに大きくなり、破壊光線を一気に貫いていった。  そしてリングマは強大な炎に飲み込まれていった。 「今だ、爆裂パンチ!!」  そして最後にリングマにとどめの一撃を与えた。  攻撃は急所に当たり、リングマはそのまま倒れた。 「ハァハァ、よくやったリザードン!」 「・・・・・負けたな。」  永智はリングマをモンスターボールに戻した。  リザードンはそれを見ると安心し、その場に座り込んだ。 「ゆっくり休んでいいぞリザードン!」 「おっしゃぁ!やったな英人!」 「ああ、お前のお陰だ。ありがとな大樹!」  英人はサッパリした表情で大樹と手を打ち合った。  そしてその光景を永智はうれしそうに見ていた。 「(いい友達を持ったな英人・・・どうやら、これ以上無理をする必要はないようだ な。)」  永智はそのまま英人の元に歩いてゆき、英人も永智と視線を合わせた。 「・・・・何だよ、勝負は俺の勝ちだぜ!」 「そうだな、お前は本当に強くなった。」 「なっ!」  その瞬間、英人は初めて父親に頭を撫でられた。  それと同時に、今まで縛っていた英人の何かが断ち切れた。 「大きくなったな英人・・・・」 「・・・・・父さん!」  英人はその時初めて人前で涙を流し、父親の胸元に抱きついた。  永智も英人をギュッと抱きしめ、一粒の涙を流した。  それを見ていた大樹は、安心した顔をしながら後ろを向いて見ていなかったことにした。 「・・・・今まで心配かけてしまってすまなかった。」 「もう、いいんだ・・・父さん!」  十年以上の壁は、何時の間にか崩れていた。 次回予告「飛行要塞はとうとうエンジュシティに到着してしまった。俺達は急いでシラ マを止めようとするが、他のナイトメアのメンバーに阻まれてしまう。マズイ、このま まだとホウオウが奴らの手に・・・・・・!?そして、俺達が不安を抱く中、大きな虹 と共に鈴の塔にホウオウが舞い降りた。 次回 ホウオウ降臨 」