第68話 ホウオウ降臨 (あらすじ)ナイトメアの飛行要塞にとらわれてしまった大樹と英人の2人、「虹色の羽」 を取り返すため、シブキを撃破する。その後、英人の父であるナイトメアの永智と戦う 事になるが、英人は大きな壁を乗り越え、リザードンで永智のリングマを倒した。                    ○ 「応急処置はしたが、しばらくは無理はしないほうがいい。」  永智は英人の足首に包帯を巻き終え、もう一度足を確かめた。  あのバトル中、英人はポケモンの攻撃の衝撃で足を捻ってしまい、この要塞内の一室 で応急処置をしていた。 「ったく、怪我してるならさっさと言えよな!」 「この子の言うとおりだ。このままほっといたら悪化して使い物にならなくなっていた んだぞ。」 「そ、そんな事言わなくても自分でやってる!」 「じゃあ、何で自分でやらないんだ?」 「い、いいだろ別に!父さんがやってくれるって言ってたから・・・・!」 「お、意外と甘えん坊?」 「う、五月蝿い!!」  顔を真っ赤にし、まるで普通の子供同然に大樹と言い合っていた。  もしかすると、これが素の英人なのかもしれない。 「・・・・本当に母さん似だな。」 「え?」 「へえ、英人は母親似だったのか!?」 「ああ・・・・英人はあいつによく似ている。」  そう言いながら、永智はポケットから綺麗なケースに収められた一枚の写真を取り出 し、それを英人に渡した。 「その写真に写っているのが、昔の私たち一家だ。」  写真には若い2人の男女と、その夫婦に抱かれた1人の赤ん坊が写っていた。  その赤ん坊は英人、そして英人抱いている綺麗な女性が英人の母親なのである。 「へえ、凄い美人じゃないか!」 「この人が・・・・・俺の母さん・・・・」 「・・・お前の母さんは病気で死ぬ前までお前の事を心配していた。英人、お前は誰よ りも愛されて生まれてきたんだ。」 「うん、わかってる。」  英人は初めて、いや、久しぶりに見る自分の母親の姿を懐かしそうに涙を浮かべなが ら見つめていた。 「私は、時を遡れば再び一緒に暮らせると思っていたが、どうやらそれは違っていたよ うだな・・・。」 「時を・・・・・?」 「セレビィ、と言うポケモンを知っているか?」 「セレビィ、それって時間を自由に越えられる幻のポケモンのセレビィか!?」 「よく知っているな、その通りだ。」 「初めて聞く名前なんだが・・・・・」  英人は話しについていけそうにないと思いかけた。 「ナイトメアの最終目的、セレビィの力で歴史そのものを変える事!」 「マジ!?」 「けど、それとホウオウは何か関係あるのか!?」 「正確にはホウオウとルギア、この2匹がウバメの森にセレビィを呼び寄せる鍵となっ ている。だからこそ、ナイトメアはホウオウを捕まえようとしている。最も、ルギアは お前達の友達がゲットしたから後回しになったようだが・・・・。」 「ホウオウとルギアが・・・・?」 「この2匹はポケモンの中でも神と言われていたポケモン、そしてセレビィは時の神と呼ばれている。」  そして永智の話は続いていった。  ナイトメアのメンバーは全員が過去を変え、別の時を生きたいと思っているのだと。  永智もまた、英人の母の死を変え、再び家族で暮らそうと思い、英人を施設に預けて ナイトメアに入ったのだと。 「そうだったのか・・・・・」 「あの時はそれいいと思っていたが、今は違う。歴史を変えなくとも、家族は幸せにな れる。今だからこそ私は言える。」 「うん、俺も分かっている!」 「じゃあ、さっさと『虹色の羽』を取り返しに行こうぜ!」 「そうだな、勝手に歴史を変えたら何が起きるか分からないしな!」 「それなんだが、この要塞はそろそろエンジュの上空に到着する。時間で言うと10分 もないだろう。」 「10分!?あと少ししかないじゃないか!!」  まあ、バトルしたり治療したりで時間がかなり使われていたので無理はない。  だが、もうすぐ鈴の塔があるエンジュシティにこの飛行要塞が到着するとなるともは や猶予は全くもないのである。 「んじゃ、行くぜ英人!」 「ああ!」 「待て、行くならこのナビゲーターを持っていけ。それを持っていれば直ぐに行ける!」 「ありがとう父さん!」 「無理はするな、無事に帰って来るんだぞ。」  英人は永智から小型のナビゲーターを受け取ると、その部屋を後にしていった。  永智は2人が無事に戻ってくる事を願い、ある1つのモンスターボールを握り締めて 何処かへと姿を消した。 飛行要塞中枢部・・・・・ 「永智さんが負けたようですね。」 「フェッフェッフェ、あの男は子供には甘いからのう。」 「ですが、それでも私たちの計画は決して止められません。この羽でホウオウを呼び出 て捕獲し、望君の持っているルギアも手中に治めた時点で我々の計画は成功です。」 「そうじゃのう、何もセレビィに遇うまでが計画ではないんじゃからのう。」  中枢部にはナイトメアの首領のシラマ、そして元四天王のキクコがいた。  2人とも自分達の計画が潰れるとは全く思っておらず、「虹色の羽」を手にしながら モニターに映される外の光景を眺めていた。 「異世界に行き来する事はポケモンの力なしでもできますが、時間だけはセレビィでな ければ移動できません。」 「フェッフェッフェ、以前も星・覇王神とやらもその実験をしていたのう。」 「ええ、彼らは空間を移動する事はできましたが、時間を移動する事はできませんでし た。所詮、人間の力では時を越える事はできないと言う事です。だからこそ、我らには セレビィが必要なのです。」 「それはそうと、邪魔者が来たようじゃのう?」 「そのようですね。」  キクコは不気味に笑いながら後ろの方を向いた。 「またあったわね!」 「フェッフェッフェ、久しぶりじゃのう。」  現れたのは大樹達ではなく、ワタルと望達であった。 「キクコ、やはりお前がシラマと・・・・・」 「ほう、流石にそこまで気付いておったか?」 「どう言う事なんですかワタルさん!?」 「キクコは以前からシラマにセレビィの話をしていたのだろう。もちろん、シラマ自身 の実力を知っての事なのだろうが・・・・。」 「フェッフェッフェ、そこまで知っていてももう手遅れじゃよ。」 「そうですね、もうエンジュシティ上空まで来ていることですし・・・」  すると、急に要塞の高度が下がり始めてきた。  それは、この飛行要塞がエンジュに到着している事を意味する。 「では、これから鈴の塔へ行き、この羽を使ってホウオウを呼びましょう。」 「そうはさせない、ハクリュウ!」 「邪魔はさせませんよ、スターミー!」  ワタルは「虹色の羽」を奪い返そうとするが、またしてもシラマのポケモンに阻まれ てしまう。  だがそこに、ようやく彼らが到着した。 「見つけたぞシラマ!!」 「あ、大樹に英人!」 「何だ、お前らも来てたのか?」 「その人は誰だ?」 「あ、この人はあの四天王のチャンピオンのワタルさんよ!!」 「え、マジ!?」  大樹達は本題をずらしてはしゃいでいた。 「ハクリュウ、竜の息吹!!」 「スターミー、ハイドロポンプ!!」 「あ、もう戦いが始まっている!!」 「とっくに始まってるって!」  肝心な時にボケている大樹に、みんな呆れるのだった。  だが、一緒にずれていた彼らにも非があった。 「その程度では私には勝てませんよ。スターミー、冷凍ビーム!!」 「光の壁!!」 「今です、スピードスター!!」  シラマは冷凍ビームを囮に使い、どんどんスターミーを攻撃していく。  スピードスター自体は連続で出してこそパワーを発揮するのだが、シラマのスターミ ーのレベルはそのパワーをさらに上げたのだった。 「スターミー、フラッシュ!!」  その瞬間、辺り一面が眩しい光に包まれ、人間もポケモンも視界を失った。 「何て光だ・・・・・・何!?」 「あ〜〜、奴がいない!!」  ようやく目の前が見えてきたか思ったら、その時にはスターミーは愚か、シラマと聞 くこの姿もなかった。 「しまった、今のバトルは劣りか!」 「ええ、じゃあ・・・・」 「あいつら、今の光に紛れ込んで外に出たんだ!」 「マズイじゃないの!!」 「とにかくこっちも外に!!」  事態はかなりマズイ展開になってきた。  要塞はすでにエンジュに到着しており、このままではシラマ達にホウオウを捕まえら れてしまう。  大樹達はすぐさま外に出ようと、近くにあった要塞の非常口からポケモンに乗って外 に出て行った。 「奴らの思い通りにするかよ!!」 鈴の塔・・・・・  一方、シラマとキクコはすでに鈴の塔の内部に侵入していた。 「フェッフェッフェ、奴らもじきにこの塔に来るじゃろう。」 「そして、この塔の頂上に彼らが来たら計画は成功です。」 「さて、あたしらは先に行くとするかね。」 「そうですね、頂上の前に追いつかれたら支障をきたしますからね。」  そう言うと、階段をのぼって頂上を目指していった。  この時、大樹は外に脱出してエンジュの街に降りたばかりでった。  そして、しばらくしてようやく塔の中に入ってきたのである。 「くそう、もうのぼって行ったみたいだぜ?」 「なら、こっちも急ごう!」  一刻も早くシラマを止めるため、彼らは全速力で階段をのぼっていった。 「待ってろよシラマ〜〜〜!!」 鈴の塔・頂上・・・・・・・ 「見つけたぞシラマ!!」 「おや、思ったより遅かったみたいですね?」 「うるせえ、それより『虹色の羽』を返すんだ!!」 「いいですよ。」 「え・・!?」  あまりに意外な返答に、一同はずっこけた。  シラマは大樹の方に羽を投げると、大樹はそれを素早く受け取った。 「結構素直だな?」 「・・・・・・・来ました。」 「え・・・・・?」  その瞬間、鈴の塔から綺麗な鈴の音が鳴り響きだした。 「な、何だこの音は!?」 「ホウオウの伝説では、鈴の塔に美しい鈴の音色がなる時、ホウオウが塔に舞い降りる と言われています。」 「な、何でだ!?羽はここに・・・・・」 「簡単な事です。ポケモンはそのトレーナーにしか全力を出せないように、本来の持ち 主に渡ってこそ効果は果たさないのです。さらに言えば、ホウオウに使えているポケモ ンが3体全部この場に集結しています。これほどまでホウオウが舞い降りるのに最適な 条件はありません。」 「そんな、それっじゃあ・・・・・」 「フェッフェッフェ、羽を盗んだのもお前さん達がここに来るように誘導するためじゃ ったんじゃよ。」 「そ、そんな・・・・・・・」  全てはシラマとキクコの計画通りに進んでしまった。  そして、鈴の塔のから見渡せる景色に雨も降っていないの綺麗で、大きな虹が空に描 かれていった。 「綺麗な虹〜〜〜〜!」 「おいおい、今の状況分かってるのかよ!?」 「も、もちろんよ!」 「来ましたね!」  大きく描かれた虹は生きているようにのびて行き、彼らのいる鈴の塔の頂上に下りて きた。  そして、それと同時に空から眩い黄金の光を纏い、七色の羽を持ったポケモンが彼ら の前に舞い降りてきた。 「こ、これが・・・・・」 「ホウオウ!!」 「ん、何だ・・・モンスターボールが!?」  ホウオウが舞い降りた瞬間、大樹、英人、そして留美のモンスターボールから勝手に 3体のポケモンが飛び出てきた。  ホウオウに使えに3体、エンテイ、ライコウ、スイクンである。 「では、ホウオウ捕獲といきましょう!」 次回予告「ついに俺達の前に現れてしまったホウオウ、俺達はシラマの手からホウオウ を守ろうとするが、その圧倒的な力の前にエンテイ達も太刀打ちできなかった。けど、 このままシラマ達の思い通りに歴史を変えられてたまるかよ!絶対にシラマを倒して歴 史は守ってやる!  次回 激闘、VSシラマ  」