第70話 セレビィ、映し出された過去 (あらすじ)鈴の塔の頂上でホウオウに遭遇し、シラマはホウオウを捕獲しようとする。 大樹達は必死で止めようとするが、シラマとキクコのポケモンに阻まれてしまう。望が ルギアを出して何とか倒すが、既にホウオウは捕獲されそうになっていた。大樹は無謀 にもシラマに激突していくが、その時にシラマの素顔が現されるが、それは大樹とよく 似た顔であった。そして、鈴の塔にいた一同全員は謎の光に飲み込まれていったのだっ た。                  ○ 謎の空間・・・・・  気がつけば、大樹は光の流れの中にいた。  まるで川の流れのように光の中を進んで行き、何時の間にかバクフーンと一緒にいた。 「ここは何処なんだ!?」  大樹は辺りを見渡すが、自分達以外には誰の姿も見えなかった。  と思ったその時、 「ギャラドス、ハイドロポンプ!!」 「うわっ!!」  突然、大樹に向かって誰かが攻撃を仕掛けてきた。  早く気付いたため、何とか交わしたが、いきなり襲ってきたギャラドスの上にはあの 男が乗っていた。 「また君ですか?」 「あ、シラマ!どうなってるんだ、これもお前の仕業か!?」 「・・・・いいえ、これは私がやったことではありません。」 「じゃあ誰がやったって言うんだ!?」 「セレビィです。」 「え!?」  シラマの発言に大樹は驚く。 「ここはおそらく時の流れの中です。」 「時の流れ!?」 「先ほどの戦いで鈴の塔にホウオウとルギアがそろいました。この2匹は互いに対を成 すポケモンであり、この2匹がそろった事により、鈴の塔に時の流れに入る扉が開いた のです。」 「じゃあ、あの光は・・・・・」 「ホウオウとルギアにはセレビィを呼び寄せる力があります。あの場で2匹が発した光 にセレビィが引き寄せられ、その時に一緒にいた私たちをここに入れたという訳です。」 「じゃあ、他のみんなもここの何処かにいるって事なんだな!バクフーン、みんなを探 しに行くぞ!」 「無駄です。この世界では私達の常識が通じないので探す事はできません。この世界を 自由に動けるのはセレビィだけです。」  シラマの言うとおり、大樹は何度か先に進んだりしようとするが、殆ど自由に動く事 はできなかった。 「くそ〜〜、一体どうしたらいいんだ!?」 「どうする事もできません。この状況を変える事ができるのはセレビィのみです。」 「って、お前はそれしか言ってないだろ!大体、お前は何でセレビィに拘るんだよ!」 「・・・・・・」 「やっぱり他の奴らと同じ過去を変えるためなのか!?」 「それは違います。変えようにも、私は過去を知りませんから。」 「えっ・・・・!?」  大樹は驚いた。  ナイトメアのメンバーは誰もが過去を変えようとしている思っていたが、目の前にい るシラマはそれとは違っていた。 「私には過去の記憶が殆どないのです。実の家族の顔も覚えていません。私は自分の過 去を取り戻すためにセレビィを捕獲するのです。」 「じゃあ、俺とあんたがそっくりなのもわかんないのか?」 「ええ、ですが、私も君の姿を見た時には驚きました。最初は私も貴方が私の過去を知 る手がかりになると思いましたが、その貴方も知らないのでは素顔で接触するのは面倒 なので隠していたのです。」 「けど、俺達が似ているって事は・・・・・」 「偶然ではないでしょうね。少なくとも、私と君は兄弟かもしれませんし、または親戚 か何かかもしれません。ですからホウオウを捕獲し、セレビィも我が物にして過去を知 りたかったのです。」  シラマには過去がない。  だが、少なくとも大樹とは深い関係があるのは確かである。 「ん、何だ!?」  その時、周囲の景色に変化が起き始めていた。  大樹らのいる場所の景色は真っ白から一気に変わってゆき、まるで映画のように何か が映し出されていった。 「な、何だこれは・・・・・」 「・・・・・・・!?」  そして立体映像のように現れたのは1つの街の光景であった。  その中で、大樹達の目の前にあったのは普通の一軒家、家の庭にはたくさんの可愛い ポケモンが遊んでいた。 「何だここは・・・・・?」 「この家、何だこの懐かしさは・・・・・・」  その時、シラマは何か懐かしさを感じていた。  すると、家の庭に1人の女性が赤ん坊を抱いて歩いてきた。 『ほうら、今日もポケモン達が遊んでるわよ。』  女性は赤ん坊にポケモンを見せながらあやしていた。  赤ん坊は男の子らしく、女性は赤ん坊を抱きながら庭に置かれてある椅子に座った。 『ホント、この子はいつでも元気よね。』 『それはお前に似たのかもな。』 『あら、あなた!それに白真(シラマ)も帰っていたの?』  その直後、見ていた大樹とシラマは驚きを隠せなかった。  女性の夫である男性と一緒にいる幼い少年、その名前がシラマだったのである。 『ただいまお母さん!』 『おかえりなさい、ほうら、お兄ちゃんが帰ってきたわよ大樹ちゃん!』 『大樹〜、お兄ちゃんだよ〜〜♪』 『ハハハ、すっかり立派なお兄ちゃんだな!』  2人とも呆然としていた。  彼らが見ている光景は過去、時の流れの世界に映し出された大樹と白真の過去なので あた。 「まさか・・・・あれが俺の母さんと父さん・・・・・?」 「・・・・・これが、私の過去・・・・・・・・・」  目の前にいる少年と赤ん坊、それは間違いなく今ここにいる大樹とシラマなのであっ た。  やはり2人は血の繋がった兄弟、顔が似ているのは偶然ではなかったのである。 「へ、へ〜〜〜〜、まさか敵のあんたが俺の兄さんだったのか。こう言う事ってよくあ るものなんだな?」 「普通ならパニックになると言うのに、君はのん気ですね?」 「生まれつきだからな!」 「確かにそのようですね。」 「納得するな!!」  大樹が怒鳴っている中でも、目の前で親子4人が仲良く暮らしていた。  だが、そんな一家に運命の事件が起きてしまうのであった。           ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・  突然、地面が揺れだし、映し出された光景の空が急に暗くなり出してきた。  それはまるで、かつて大樹が時空を超えた時と同じような感じであった。 『じ、地震だよお父さん!!』 『白真、動くんじゃない!』 『あなた、大樹をお願い!』  突然のゆれに一家は慌てだしていた。  女性は赤ん坊の大樹を夫に渡し、怖がっている幼い白真を落ち着かせようとした。  だが、次の瞬間、目の前に巨大な時空の穴が現れ、物凄い勢いで周りのものを吸い込 んでいった。  夫婦は自分たちの子供を必死で捕まえていたが、穴の力に負け、最初に白真が、次に 大樹が吸い込まれていったのである。  そして、2人が吸い込まれた所で映像が途切れた。 「・・・・なるほど、私はこの時のショックで記憶を失ってしまったのですね。」 「て言うか、言葉使いが凄く変わっている様な気がするんだけど・・・・。」 「・・・・・・・」  そして再び光の流れに戻ったかと思うと、そこには1匹のポケモンが大樹たちの前に 現れた。 「あ、あれはセレビィ!!」 「やっと見つけました。セレビィ、あなたを捕獲します!」 「な、何だよ!過去なら見たんだからもういいだろ!?」 「いいえ、セレビィの捕獲は我らナイトメアの最終目的です。ここで逃すわけにはいか ないのです!」 「・・・だったら、俺がここで止めてやる!!」 「できますか?私のギャラドスはあの四天王やワタルさんにも倒せなかった最強のポケ モンです!」  白真の横にはギャラドスが鋭い目つきで大樹を睨みつけてきた。  それに対し、バクフーンも大樹の隣でギャラドスを睨みつけていた。 「例え、弟と言えど手加減はしません!ギャラドス、竜の息吹!!」 「バクフーン、電光石火!!」  そして大樹と白真の血を分けた兄弟バトルが始まった。  相性では明らかにバクフーンが不利であったが、バクフーンも大樹の気持ちに答えよ うといつも以上のパワーを発揮していった。 「バクフーン、スピードスター!!」 「ギャラドス、リフレクター!!」  リフレクターは物理攻撃のダメージを半分にする技だが、白真のギャラドスは全くダ メージを受けていなかった。 「ギャラドス、バブル光線!!」 「火炎放射!!」  苦手な水タイプを相手にしながらにバクフーンはどんどん攻撃していく。  だが、ただでさえレベルが違いすぎるギャラドスの前では無力だった。  せめて他のポケモンだったら少しは勝機があったのかもしれないが、それでも大樹は バクフーンで真っ向勝負をしたかった。 「うおぉぉぉぉぉぉ、いっけ〜〜〜!!」 「無駄だと言うのが分からないのですか!?ギャラドス、ハイドロポンプで片付けなさ い!!」 「バクフーン、大文字!!」  そして2匹のポケモンが最大技で激突しようとした。  だがその時、            ビュッ!! 「な・・・・」  突然、2匹の間を黒い球体が横切っていった。 「何だ!?」 「今のはシャドーボール!今のは・・・・・」  2人はシャドーボールが飛んできた方向に目をやった。  そして、その先にいたのは・・・・・・・ 「あ、あれは・・・・・・・・・・・・!?」 「まさか・・・・・・・・・」  いたのは一匹の凶暴そうなポケモンであった。  紫色の尾を持ち、明らかに好戦的な表情をしたポケモンがいた。 「ミュウツー!!」  それは、科学者が踏み入れてはならない領域にはいって生み出した遺伝子ポケモン、 そう、ミュウツーなのであった。  ミュウツーからはとてつもないエネルギーが漏れ出し、ミュウツーのいる所だけ空間 が歪んで見えた。 「まさか・・・私達が吸い込まれた時空の穴はミュウツーの力により生み出されたのでは・・・・」 「そうか、ここなら過去でも未来でも何時の時代にも繋がっているからな!」 「今のミュウツーは完全に私達を攻撃対象にしています。このままでは・・・・・」 「だったら戦って・・・・」 「いけません、ここでミュウツーの力を全開にしたら何が起きるか分かりません!」  だが、そう言っている間にもミュウツーは攻撃を仕掛けようとしている。  かくして、急展開した事態を大樹は乗り越えられるのでしょうか。 次回予告「ミュウツーとの戦いが続く中、白真の中に記憶が蘇っていく。だが、ミュウ ツーの前に成す術のない大樹であった。だが、そこに英人達も集まってきて一斉にミュ ウツーを攻撃するのだった。そんな中、ミュウツーの力のせいで時空が激しく歪みだし ていくのだった。果たして、彼らの運命は・・・!?  次回 無敵のミュウツー 」