第73話 大激突、大樹VSティール (あらすじ)ミュウツーとの戦いは、セレビィと突如として現れたミュウの力によって解 決された。だが、ミュウツーの力で歪んだ時空は螺旋の渦を巻き、大樹達を飲み込んで いった。その後、大樹は白真と共に自分が生まれた故郷についた。そして長い間離れ離 れになっていた両親と再会したのだった。                   ○ セキエイ高原・・・・・  大樹達が両親と再会していた頃、他の者達はセキエイ高原である少年と一緒にいた。  話を伸ばすのも面倒なので言うが、その少年はティールである。 「じゃあ、ティールは最初から全部知ってたのか?」 「ああ、俺達の情報網なら直ぐに探る事ができたからな。」  オープン喫茶の一席で、ティールは英人達と話をしていた。  ティールの話では、彼は大樹の過去も何もかも知っていたようなのである。  それでもあえて知らないふりを詞ながら彼らと接していたのである。 「本当ならスグにでも教えたかったが、それだと余計な騒ぎ・・・いや、大樹の事だか ら何が何だか分からずに爆発してしまいそうだったからな。」 「確かに・・・・・・・・・」 「あいつならありえる・・・。」  一同は率直に納得した。  そして話はさらに弾んで行き、ティールは彼らに隠してきた事を話していった。 「で、この状況はどうするんだ?」 「この状況?何の事だ?」 「とぼけるな、このあるわけのない異世界が融合した状態の事だよ!!」 「・・・・別にいいんじゃない?」  結構いい加減な性格である。 「別にいいって・・・・・」 「最終的な事が決まるまではこのままにしておくしかないだろう。だからお前達はポケ モンリーグの事を心配していればいい。」 「ああ、そう言えば明日から再開するようだな?」 「ナイトメアの騒動でずれたが、俺から運営委員に話をつけておいたから問題はない。」 「どうすればそうなるのかしら?」 「さあ・・・・・・」  謎がいくつか残ったものの、とにかくこれでナイトメアの一件は終わったのであった。  しかし、ナイトメアとの一件が終わったのと同時に、彼らの手持ちからエンテイ、ラ イコウ、そしてスイクンとルギアはいなくなっていた。  ホウオウと共に何処かへと去ったのか、それとも再び長い眠りについたのか、今では 知る由もないのだった。 「さ〜て、じゃあ僕達も試合の準備をしないと!」 「俺達もそうするか!」 「ああ、手持ちの整理もしないとな!」 「じゃあ、今日はここで解散だな。また明日・・・・?」 「・・・また明日?」  ティールが言ったその言葉、誰もが普通に聞いていたが、留美だけは何か違和感を感 じていたのだった。 「・・・・・・?」  だが、その時にはもうティールはずっと先の方を歩いていたため、留美もあまり深追 いはしなかった。  日はすでに沈み始め、ティールの姿は完全に消えていた。 「ま、いっか!」  そう呟くと、留美もその場を離れていった。 翌日・・・・ 「は〜〜〜、何とか間に合った!」 「また遅刻ギリギリかよ大樹?」  大樹は息を切らしながらスタジアムに現れた。  昨日、選手である大樹の元に試合再開の知らせが届き、今日の試合の為に急いでやっ てきたのである。 「親孝行してきたか大樹♪」 「それは嫌味か克!?」 「べっつに〜〜、ただ気になってよ!」 「ハイハイ、私も!」  みんなあの後、大樹がどうしているのかが気になっていた。 「・・・・・・親孝行と言っても、そんなのする暇のなかったんだぜ。」 「そうだったの?」 「母さんも父さんも休む暇もなく俺にくっついていたんだよ。嬉しいからってあれはし つこすぎだっての!」 「いや、むしろよく似た親子って感じがする!」 「右に同じ!」 「・・・・・・・・・・・・」  英人達の言う事には大樹は反論する事はできなかった。 「あ、そう言えば、ナイトメアの一件で決勝リーグの組み合わせが変わったみたいよ?」 「え、何だよそれ!?せっかく英人と決着付けられるのかとおもったのによう!」 「それがよく分からないのよ。でも、とにかく今日の初戦は大樹の試合なのよ、相手は わからないけど・・・・・。」 「・・・ま、何とかなるか!」 「軽いな。」 「俺らしいだろ?」 「ああ。」  昨日は自分にとって大変な一日だったのにもかかわらず、大樹は何時もと変わらない ような振る舞いに、みんなは何かとホッとしながら何時ものように会話をしていった。  その後、第1試合が始まる頃には大樹もバトルフィールドに入り、対戦相手が現れるの を待っていた。 「英人じゃないのは残念だけど、今日の相手は誰なんだ?」  そして、大樹の視線の先には大樹の対戦相手の姿が現れてきた。  だが、その相手が現れた途端、大樹はおろか、観客席にいる英人達も声を失った。 「・・・・・・・・・ティール!?」 「運が良いのか悪いのかは分からないが、お前の相手は俺だ!」 「マジかよ・・・・!?」  大樹は驚きを隠せなかったが、その半面でドキドキもしていた。  今まで戦っていた中では最強クラスのトレーナーが目の前にいる。  兄である白真とはどっちが強いかは分からないが、それでも過去に勝った事がない相 手であるため、ここで戦えるのが嬉しかったのである。 「手加減はしない。お前が何処まで強くなったのかを確かめさせてもらう!」 「そっくりそのまま返すぜ♪」 「いい度胸だ!」  そして審判がフィールドの前に立ち、バトルが始まった。  使用するポケモンは6体、どちらかのポケモンが全滅するまでのフルバトルが始まっ た。 「行け、ハッサム!」 「俺の一番手は、行けニドキング!!」 「ハッサム、高速移動、影分身!」 「ニドキング、砂嵐!!」  ニドキングとハッサムの激しいバトルが始まった。  影分身で襲ってくるハッサムの姿、まるで群で獲物に襲い掛かるように見えた。  だが、砂嵐が防御の役目を果たしているのでそう簡単には突っ込んでは来なかった。 「砂の防御、いい考えだ。」 「だろ、レベルも上がってるから破る事はできないぜ!」 「それはどうかな?ハッサム、メタルクロー!!」 「何!?」  完全な防御かと思われたが、ハッサムのメタルクローのパワーの前では無力に等しか った。  ハッサムはそのままニドキングにも攻撃しようとした。 「させるか!炎のパンチ!!」 「そのまま殴り飛ばせ!!」  2つの拳が衝突し、それによって生まれた衝撃がフィールド全体を飲み込んだ。  その時のパワーはほとんど互角だったため、互いに痛み分けとなった。 「ニドキング、目覚めるパワー!!」 「ハッサム、スピードスター!!」 「今度は10万ボルト!!」  激しい技のぶつかりが続いてゆき、誰もが目を奪われていった。  だが、2人の顔は不安などの表情はなく、どちらも余裕でバトルをポケモンと楽しん でいる顔をしていたのだった。 「ニドキング、火炎放射!!」 「光の壁!!」 「やっぱり手ごわいな!」 「当たり前だ。そう簡単に負けるほど甘くはない、ハッサム、剣の舞!」 「ニドキング、岩砕き!!」  どちらも引けを取らない戦いを続けて行き、最初の勝負だけでもかなりの時間が経っ ていった。 「負けるなニドキング!!」 「ハッサム、かまいたち!!」 「カウンター!!」  ニドキングはハッサムの攻撃を返そうとするが、かまいたちのパワーが高く、押し合 いが続いていった。  どちらも引けを取らないと思われていた中、ハッサムの攻撃が押して行き、ついには ニドキングの巨体を吹っ飛ばしていった。 「何!?」 「今だ、メタルクロー!!」  前にやった「剣の舞」で攻撃力が上がっていたので圧倒したのか、その大きな一撃は ニドキングの急所に当たった。  強烈な一撃を受け、ニドキングは目をまわしながら気を失った。 「戻れニドキング!」 「予想以上に消耗したか。」 「次はヨルノズク!!」 「ハッサム、バトンタッチ!!」  ハッサムが予想以上に消耗していたため、ティールはハッサムを戻した。  だが、ただ普通に戻したのではなく、バトンタッチでハッサムの追加効果を次のポケ モンに譲り受けさせた。 「そっちはウインディか。」  美しい毛並み自慢のティールの2番手、それがウインディであった。  特訓の際、大樹はティールの手持ちを全て見たことがあるのでその圧倒的な実力も十 分に理解していた。  だが、ここで引く訳がなく、大樹はさらにワクワクしてきたのだった。 「よっしゃ〜〜!派手に決めるぜヨルノズク!」 「こっちも一気に決めるぞウインディ!」  2匹のポケモンは互いに自分のトレーナーを向きながら頷いた。 「ウインディ、火炎車!!」 「ヨルノズク、超音波!!」  そう、2人の激しい戦いはまだ始まったばかりなのである。 次回予告「始まりは何処からなのかはわからない。だけど彼らは今ここにいる。一緒に 旅をし、いろんな事を学び、共に成長していった。辛いこともあり、楽しいこともあ り、運命なのかと言う疑問も忘れながら彼らの日々は続いていく。彼らの冒険は終わっ てはおらず、また彼らは果てしなき夢へと一歩踏み出していくのだった。如何なる者も 阻む事ができない旅へと・・・・。  次回 エピローグ、未来へ・・・・  」