風花の夜 中編  雑多な都会の中で、多くの建造物がお互い競うように、その存在をアピールしている。 日もだいぶ傾き、あと一時間もしない内に夕闇が辺りを覆うだろう。 街が喧騒を忘れ、少しずつ夜の静けさに向かっていこうとしている時だった。 一人の女性が地図を片手に、それに何かを書き込みながらとある建物の周辺を、人目を避けるようにしながら念入りに調べている。 「・・・この付近の地形や通路はこれで良し。ビルの見取り図もあるし、あとは今夜の天気ってところね」 女性は、誰にも聞こえないような声で小さくつぶやくと、建物を見上げてからその場所を後にした。 彼女が見上げていた建物・・・そこには「ルーン・カンパニー」という看板が掲げられていた・・・。 夜の闇が地上を完全に覆い、街は昼間とは違った顔を見せ始める。 夜のポケモンセンターは、その日の宿を求めるトレーナーで賑わいを見せていた。 そんな中、一組の男女もまた、その賑わいの中で少し遅めの夕食を食べている。 「でね、あの小物屋さんって、すっごく可愛いアクセサリーとか沢山あったんだ〜♪  それにね、ポケモンをモチーフにした変わった洋服とかあってさ〜。やっぱり都会は違うよね〜」 同じ席で食事を取っている女性の方は、先程から飽きもせずに、ずっと今日のショッピングの話題を一人で話している。 向かい側に座っている男性はというと、興味なさそうに、一人黙々と食事を続けていた。 「・・・フウカさん。喋るか食べるか、どちらかにしてください。  あと、余り大声だと周りに迷惑です。現に、さっきから視線がこちらに集中してますよ」 男性が不意に口を開く。男性の言う通り、確かにフウカと呼ばれた女性の声は大きかったらしく、 他の宿泊客らしいトレーナー達が、迷惑そうにこちらを見ていた。 「・・・すいません」 フウカはバツが悪そうに小声で謝ると、睨むように男性へ視線を向ける。 「ケン〜、あんたが悪いんだからね!?あんたがもう少し話しに加われば、アタシが一人で喋りまくる必要なかったのよ!」 「・・・はぁ?自分が勝手に喋っていたんでしょう?俺は静かに食事をしたいんです!」 「あ〜、もう!なんでそんなに愛想が悪いのよ!!人が折角フレンドリーに接しようとしてあげてるのにさ!!  昼間だって、勝手にスタスタとどっかに行っちゃうし、もう少し協調性ってもんは無いわけ!?」 フウカが思わず声を張り上げる。 すると、再び視線がフウカとケンの方に集まり、先程と同じように、フウカはバツが悪そうに顔を下に向けた。 「・・・やれやれ。フレンドリーに接しようとしてくれているのは有難いですが、  俺は余り人と接するのは、得意じゃないんです。だから、今まで一人旅をしていたんですよ?  誰もがあなたのように、明るく振舞えるわけじゃないということも、少しは考えてくださいね」 ケンがそう言うと、フウカは再び何か言いたそうにしたが、また周りに睨まれるのを嫌がったのか、何も言わずに食事を続けた。 その様子を見たケンは、少し複雑な表情を浮かべながら、再び食事を口に運ぼうとした時だった。 先程の騒がしさとは違う、別の騒がしさ。 そちらの方にケンが視線を向けると、食堂に設置させているテレビの前に人が集まっている。 そのテレビから流れているニュースは、「女怪盗カザバナ」がルーン・カンパニーへ予告状を出したということを告げていた。 「・・・で、フウカさん。何の用ですか?こんなところに呼び出して」 夕食後、ポケモンセンターの裏庭にある、野試合用簡易フィールドの両端で、ケンとフウカが向かい合っていた。 「何って、ここにいるってことは、バトルするに決まっているでしょう!  さっきのアレだけど、負けた方が相手に謝る。それでどう?トレーナーらしく、バトルで白黒つけましょう!!」 「・・・何を勝手な・・・まぁ、いいか。俺も、貴方の実力には興味がありますしね。  では、使用ポケモンは一匹。お互いに最も得意とするポケモンで勝負というのは?」 フウカの言葉にケンが続くと、フウカはそれに同意するように首を縦に振る。 「いいわ、行くよ!スノウ!!」 「さて・・・久々のバトルだ。行くぞ、ブレイザー!」 そう言うと、ほぼ同時にお互いにモンスターボールを、フィールドの中心に向かって投げ入れる。 フウカが出したのは、サンタクロースを連想させる鳥ポケモン、デリバード。 一方、ケンが繰り出したのは、尻尾に明々と燃える炎が象徴的な、ドラゴンを連想させるリザードン。 二匹とも、ボールから飛び出した瞬間から、相手への攻撃を開始した。 デリバードはフィールド全体を凍らせるほどの『吹雪』を。 リザードンはそれらを溶かし、焼き払うほどの『大文字』を。 お互いに速攻で勝負を決めるつもりなのか、初手から最大の大技を放つ。 「やっぱり強いね。普通は指示されないとポケモンは動かない。  でも本当に強いポケモンは、指示が無くても的確に、トレーナーの思った通りの行動をするもの。  どれだけお互いが解り合っているか?信頼関係が築けているか?  勝負の行方を左右する、最も重要なファクターと言っても過言じゃない!久しぶりに面白くなってきたわ!!」 「バトルの最中にお喋りとは、余裕ですね。それが命取りになりますよ?・・・ブレイザー!!」 ケンが叫んだ直後、リザードンは空高く舞い上がり、一旦静止した直後、急降下を始める。 それを見たデリバードも、リザードンを迎撃するべく飛び上がっており、急降下を始めた直後に襲い掛かった。 「その言葉、そっくりそのまま返すわ!これで決めなさい、スノウ!!」 「・・・『日本晴れ』」 必殺の『吹雪』を見舞おうとした直前、リザードンが強い熱と光を持った球状のエネルギーを向かって放つ。 その光は、リザードンを取り巻く極小の粒子に乱反射し、その姿を隠しながら辺りを照らす。 そのまま、強い光でデリバードの視力を一時的に奪い、『吹雪』はあらぬ方向へ放たれた。 「光の粉!?・・・しまった、スノウ!!?」 フウカが叫んだ時には、リザードンはその場にはもういない。 素早く背後に回りこみ、『日本晴れ』で増幅された、青紫に輝く『大文字』をデリバードに直撃させていた。 「・・・悔しい。悔しいけど、完全にアタシの負けよ。ご苦労様、スノウ」 フウカはそう言うと、傷つき倒れたデリバードをモンスターボールの中に戻す。 ふと視線を前に向けると同じように、ケンも労いの言葉をかけながら、リザードンをボールに戻していた。 すると、フウカはややためらいがちにケンを見ながら、ゆっくりと口を開く。 「・・・や、約束は約束だもんね。・・・ごめ・・・」 「さて、いいバトルもできたし、寝る前の運動には丁度良かった。  早くポケモン達を休ませてあげないと。それじゃ」 フウカの言葉を遮り、ケンは何事も無かったかのようにポケモンセンターの中へと入っていく。 「ちょ・・・ケン!?」 「どうしたんです?中に入らないんですか?俺は先に休みますからね」 「待ちなさいよ!なんでそうアンタは一人で勝手に行動するわけ!?」 フウカは怒りながらも、焦るようにケンの後を追って、ポケモンセンターの中に入っていった。 昼間のように街を照らしていたビルや街灯の明かりもまばらになり、徐々に闇がその勢力を伸ばしていく。 その闇の中に身を委ねるように、一つの影がビルの上を跳ねるように突き進んでいる。 「・・・う〜、ちょっと遅くなりすぎたかしら?  夕飯の後に、あんなことするんじゃなかったなぁ〜・・・」 華麗な身のこなしで、ビルとビルの間を飛び越えながら、バイザーで顔を覆った、軽装の女性が小さく呟いた。 「まぁ、いいわ。早く『アレ』を取り返さないと・・・。そして、ついでに明日の朝刊の一面も頂きよ!  美人怪盗カザバナの華麗なショーは、もう始まっているんだから!!」 やがて女性の視界に、本日のターゲットである「ルーン・カンパニー」という会社が見えてくる。 その会社の隣のビルの屋上に、カザバナは静かに、悠然と姿を見せた。 「フフ、いるいる。警察もかなり来ているわね。・・・これなら、ルーン・カンパニーも迂闊に手出し出来ないはず。  今日こそは『アレ』の手がかりを見つけてみせる!!」 暫しの間眼を閉じ、何か強い決意を秘めた眼が鋭く開かれると、カザバナは闇の中へ再び跳躍した。 女怪盗カザバナの予告状が届き、あわただしい雰囲気を迎えているルーン・カンパニーの社長室には、 落ち着き無く動き回るでっぷりと太った白髪の男と、精悍な顔つきの男、 そして数人の黒服の男達が待機しており、その部屋の空気は限りなく重い。 「・・・カタギリ社長。どうしても、我々警察の力は必要ないと仰るのですね?」 精悍な顔つきの男が、静かに口を開く。 それを聞いた白髪の男は、男を嘲る様な目つきで睨み付けた。 「当然だ。たかが小物の、小娘一匹にすらいいように振り回されている警察などには任せてはおけん!  お前達は闇神楽とかいう、妙なコソ泥の方を捕まえる努力でもしていた方が良いのではないのか?」 そういうと、カタギリと呼ばれた白髪の男は大口を開けて笑い出す。 ひとしきり笑い終えると、再び真顔になって精悍な顔つきの男を睨み付ける。 「とにかく、君達の力は一切必要ない。まぁ、このビルの周りを警護するくらいは、認めてやらんでもないがね。  さあ、これで話は終りだ。とっとと出て行きたまえ。ワシは忙しいんだ」 「わかりました。・・・それでは、失礼致します」 男は深々と頭を下げ、社長室を後にする。黒服の男達は最後まで、精悍な顔つきの男を警戒し続けていた。 「先輩、どうでした?許可は貰えましたか?」 「・・・見てわからないか?」 男が社長室から出た直後、彼の後輩であろう若い男性が声をかけてくる。 それを邪険にするように、男は鋭く答えた。 「とにかくだ。カザバナは今夜現れる。ビルの周りの警備を強化しろ!  夜目の利くホーホーをできるだけ数多く配置し、入り口や裏口周辺にはイトマルの糸のトラップも忘れるなよ!!」 「はい!!」 若い男は敬礼し、バタバタと足音を立てながら階段を降りていく。先輩と呼ばれた男は、それを若干不安そうに見つめていた。 そして、それの様子をひっそりと、影から見つめる一つの影。 「ふぅ・・・ん。どうやら、警察を締め出したみたいね?あそこの社長。  仕方なく外だけでもって考えたみたいだけど、残念でした。カザバナ様はとっくに中に潜入させてもらっているんだから♪  でも・・・予想はしていたけど、イトマルのトラップとホーホーは厄介ね。  脱出経路を、新しく練り直したほうがいいかしら・・・?  それもだけど、警察を締め出したってことは、あっちも手段を選んでこない・・・ってことになるわね。  面白くなってきたじゃない。さあ、お仕事の開始よ!」 カザバナは小さく口の中で呟くと、唇の片端だけを上げ、決意と自信に満ち溢れた笑みを浮かべた。 やがて、男が社長室の前から立ち去ると、カザバナは音も無く社長室のドアへと移動する。 ドアは完全に閉められていたわけではなく、わずかに中の光が漏れ出ており、その隙間に特殊な形状をした鏡を入れた。 (・・・警備の男は大体4,5人ってとこね・・・。  問題は『アレ』の隠し場所・・・前もって調べておいた情報だと、社長室に直に飾られているって話だけど・・・) 鏡を通して中の様子を伺いながら、ターゲットを探す。 すると、部屋の明かりをわずかに反射させながら、鏡は壁に立てかけてある一つの杖を映し出した。 (・・・あった!間違いない、とうとう見つけた!!奪われた、あの・・・) 「・・・!誰かいるぞ!!」 カザバナが杖に気を取られた、ほんの一瞬。鏡に反射した光が、黒服の男達に見つかってしまったのだ。 黒服の男達が、怒号と共に部屋の外へと雪崩れ込む。 (やっば・・・でも、ここで引く訳にはいかない!!) 覚悟を決め、カザバナは男たちの前に躍り出る。 「はぁ〜い。美人怪盗カザバナちゃん参上〜♪出てきたところ悪いんだけど、痺れてて頂戴ね?」 男達はカザバナの台詞を無視し、容赦なく襲い掛かる。 狭い通路の中、カザバナは踊るように後退しながら、右太股にある小さなケースから、何かの粉末を取り出して振り撒く。 すると、男達は急に動きを止め、満足に身動き一つ取れなくなってしまったのだ。 「『痺れ粉』。結構効くでしょ?暫く時間が経てば、その内痺れも取れるから・・・じゃーね♪」 男達をと軽々と飛び越え、そのまま社長室のドアへと滑り込むカザバナ。 その目の前には、明らかに狼狽しているカタギリ社長がいた。 「さあ、悪いけどそこに飾ってある杖・・・アタシに渡してくれないかしら?  ・・・勿論、最悪力づくでも頂くけどね!」 今までとは明らかに違う、鋭く、怒気にも近い激しい感情を込めた声。 顔は正体がばれないようにバイザーで覆われているが、それを差し引いても、どれほど鋭い眼光で睨んでいるかが解る。 「わ、わかった。杖はお前にやるから・・・命は・・・」 怯えた表情を浮かべるカタギリ社長が途切れ途切れにそう言うと、カザバナはそれを一瞥し、まっすぐ杖の方へと向かっていく。 そして、カザバナが杖に手を伸ばそうとした、その瞬間だった。 「あぁ、杖はくれてやる。だが、代金としてその命は貰うぞ、小娘!!」 「!!」 カザバナが素早く振り返った時には、カタギリ社長の手からモンスターボールが投げられ、 中から両腕にも巨大な針を持つハチのようなポケモン、スピアーが姿を現して襲い掛かってきた。 「殺れ、『ダブルニードル』!!」 「・・・くっ!」 スピアーの両腕の鋭い針が、カザバナに襲い掛かる。 かろうじて一撃目をさけることはできたが、咄嗟の事だった為、右腕を二撃が掠めた。 「邪魔をしな・・・ヤバ・・・イ・・・!」 再び『痺れ粉』を撒こうとするカザバナ。だが、思うように右腕が動かない。 それどころか、『ダブルニードル』を受けた右腕がその毒を受け、紫色に変色していたのだ。 動きが急に鈍くなったカザバナの様子を見逃すことなく、スピアーは彼女の首に鋭い針を突きつける。 「クックック・・・最近、ワシの近辺を嗅ぎ回っていた奴がいたそうだが、  その杖を狙っていたところを見ると、犯人はお前のようだな。そんなにコイツが欲しいか?  『あの里』に安置してあった、伝説のフリーザーの尾羽で飾られた、あの杖が・・・」 「やっぱりアンタが・・・アンタがあの土地に安置してあった、大事な宝を奪った犯人なのね!?  アタシがトレーナーとして旅をしている間に、よくも・・・!!」 明らかに相手を見下した態度のカタギリに、カザバナが叫ぶ。 すると、スピアーが更に針を彼女の首に強く押し付けてきた。 声にならない声が、かろうじて彼女の口から洩れる。 「口の利き方には気をつけるのだな。貴様の生死は、このワシのサジ加減一つで決まるのだぞ?  ・・・よほどあの杖が大事らしいなぁ?ん?あの杖には何があるというのだ?」 「・・・あの杖は、ホウエンにある『あの場所』にどうしても必要なんだ!  暖かすぎる『あの場所』一体の気候では、草ポケモンや氷ポケモンは暮らせない。  その気候を和らげることができるのが、その杖なんだ!その杖の・・・大人しく返せ!!」 今にも噛み付きそうなほどの勢いで、カザバナが睨み付ける。 だが、カタギリは余裕の笑みを浮かべたまま、微動だにしない。 「そうかそうか。それはポケモン達に悪いことをしたな。だが、ワシには関係ない。  ワシは熱くも寒くも無い。苦しむことなく、快適に過ごしているんでね。ハッハッハッハッハッハ!!  ・・・・・・さて、お喋りも飽きた。ここで貴様を殺しても、誰にも解らん。  警察には「カザバナは来なかった」と、一言言えば済むことだ。死体はウツボットの溶解液で跡形も無く消せる。  さあ、一思いに楽にしてやろう。・・・スピアー」 カタギリが指を鳴らすと同時に、スピアーの腕に力がこもる。 その時、カザバナの左腕が腰の後ろにあるポーチに手が伸びそうになるが、すぐにやめてしまう。 (ここで死ねば、今までのことが無駄になってしまう。でも・・・・・・駄目!  自分の命欲しさに、ポケモンを仕事には使えない!使いたくない!!) きつく目を閉じ、カザバナが覚悟を決めた瞬間だった。 一瞬、窓から何かが光り、その光はスピアーの腕を弾き飛ばした。 「な、何者だ!?」 (・・・誰!?) カタギリとカザバナが窓の方へ目を向けると、そこには仮面をつけた、漆黒の衣服とマントに身を包む青年の姿があった。 「き・・・貴様は、怪盗闇神楽!?な、何故ここにいるんだ!?け、警察は何をしているんだ!!」 「こんばんは、カタギリ社長。レディはもう少し優しく扱わないと駄目ですよ?」 その言葉の真意を測りかねているカタギリをよそに、闇神楽は無造作に歩き出す。 「う、動くな!動くとこの女の命は無いぞ!?」 無駄とは思いつつも、カタギリはカザバナを人質に取ろうとする。 スピアーに指示を出そうと振り向いた時、既にウィンディというポケモンによって倒されていた。 それを見て、慌てふためくカタギリ。先程までとは打って変わって、無様な姿を晒している。 「あぁ、ご苦労様。ウィン。さて・・・今夜の用件を手短にお話しましょうか。これをどうぞ・・・」 そういうが速いか、闇神楽の手から、先程カザバナを救ったものと同じ光が放たれる。 それは社長室の壁に突き刺さり、部屋を照らす電球の光を鈍く反射していた。 「ス、ステンレス製の極薄カード?これは・・・予告状!?」 「えぇ、そうです。明日の晩、午前零時にこちらへ再び御伺い致します。  本日は、ただのご挨拶のつもりでしたので・・・あぁ、帰るついでに彼女は貰っていきますから。それでは、ごきげんよう」 闇神楽のわざとらしい大仰なお辞儀の後、毒で動けないカザバナを背負ったウィンディが近寄ってくる。 ぐったりとしているカザバナを抱き上げると、ウィンディをボールに戻して窓から闇神楽が外に出た。 そして、下のほうで待機していたカイリューに飛び移り、空を見上げた。 すると突如、何かが闇に紛れ、音も無く闇神楽に向かって滑空してきたのである。 その滑空してきた影は、闇神楽の腕に大人しく止まると、鋏のような腕で、上空を指した。 「あぁ、イトマルが張り巡らせたトラップを、全て切ってくれたんだな。ありがとう、スコルピオ」 スコルピオと呼ばれたサソリのようなポケモン、グライガーに礼を言うと、 カイリューが翼を羽ばたかせ、夜の闇へと飛び去っていった。 地上の喧騒をよそに、闇に包まれた夜空は静かに時を刻んでいく・・・