風花の夜 後編  喧騒を忘れた雑多な都会の中を、やや冷たい澄んだ風が吹き抜け、それを暖めるように朝日が優しく街を包み込んでいく。 もうじき、街にはいつもと変わらぬ喧騒が訪れ、人々が行き交うだろう。 そんな普段と変わらぬ朝。 この街のポケモンセンターも、いつもと変わらぬ街の始まりに、いつもと変わらぬ穏やかな朝を迎えていた。 そのポケモンセンターにある、宿泊施設のとある一室の前に、一人の男性の姿がある。 ケンが、旅仲間のフウカを朝食へ呼びに来ていたのだ。 「フウカさん、もう九時ですよ?そろそろ起きたらどうですか?」 ケンがそう言いながら、フウカの部屋の扉をノックするが、反応は無い。 ケンの声は聞こえているはずである。決して部屋が間違っていたり、彼女が部屋から出ている訳でもない。 未だに寝ているのか、それとも体調でも崩したのだろうか。 答えは返ってこないまま、時間だけが刻々と進んでいく・・・。 ケンが扉を何度もノックしている音を聞きながら、フウカはベッドの上で、胎児のような姿勢で寝ていた。 目は覚めている。だが、起きることが出来ない。 尽きることの無い、言い知れぬ空虚な気分に支配され、 何かに縛り付けられるように、彼女はケンの声とノックの音を静かに聞いていた。 カーテンのかかった窓から、薄っすらと差し込む朝日は、全てを知り尽くしたように、時を刻んでいる。 数時間前、まだ夜がより深い闇で街中を覆っていた頃。とあるビルの屋上に、二人の男女がそこにいた。 一人は漆黒のマントと衣服に身を包んだ仮面の男性。怪盗「闇神楽」。 もう一人は右腕がスピアーの毒に冒され、紫色に変色しており、気を失って倒れている女性。怪盗「カザバナ」 闇神楽が懐から注射器のようなものを取り出すと、それを使いカザバナの変色した右腕に解毒剤を注入した。 「これでもう大丈夫。市販品の毒消しでも十分消せる毒だから、心配はない」 気を失っているカザバナに聞こえる訳でもないが、闇神楽は呟いた。 暫くすると、彼女の腕を侵していた毒は消え、元の肌色を取り戻す。 「・・・う・・・」 毒による苦痛が消えた為なのか、カザバナに意識が戻り、上半身だけを起こして、ゆっくりと辺りを見回す。 ぼんやりとする視界で、暫く瞬きを繰り返すと、やがてはっきりと周りの状況が把握できるようになってきた。 「ここは・・・?って、アンタは闇神楽!?なんでアンタがアタシの横にいるのよ!!」 カザバナが闇神楽の存在に気づくと、その場から素早く飛び退きながら、驚きの声を上げる。 「・・・毒の後遺症はないようですね。あの程度の策に引っかかるようなら、あそこにはもう行かない方がよろしいですよ」 「な・・・!なんでアンタにそんなことを言われないといけない訳!? アタシにはアタシの目的ってのがあるの!大体、途中からカッコつけて出てきて、アタシの邪魔をするなんて、どういう了見よ!!」 カザバナの方を見向きもせず、闇神楽が淡々と語る。 だが、それを聞いたカザバナが大人しく引き下がるはずもなく、逆に噛み付いてくる。 「邪魔・・・?面白いことを言いますね。  あの男如きの稚拙な罠に引っかかり、あまつさえ命まで落としかけていた、未熟な「自称」怪盗の台詞とは思えませんね。  助けられた事に感謝するでもなく、逆に邪魔をしたと罵る。恩知らずとは、まさにこのことだ」 闇神楽はゆっくりと立ち上がりながら、抑揚無くカザバナに言い返す。 「このアタシが未熟な「自称」怪盗ですって!?なんでアンタにそんなことを言われないといけないのよ! アタシはアンタに助けてくれなんて頼んだ覚えは無い!!アンタが勝手にやったんでしょう!? アタシには、あそこにあった『あの杖』が絶対に必要なの!邪魔をしないで!!」 「申し訳ないが、私も『あの杖』に興味が出たのでね。今回は、アレもターゲットにさせてもらう。  私に先を越されたくなくば、明日の晩、午前零時にルーン・カンパニーに来るといい。  そこで、どちらが怪盗として上か・・・決着をつけて差し上げてもよろしいですよ?」 闇神楽は、カザバナを挑発するように言うと、返事を待たずに夜の闇に、溶けるように消えていった・・・。 (・・・アタシはあの時、何もできなかった。自分の身さえ、自分で守ることが出来なかった・・・。  あの時、アイツが来てくれなければ、アタシは今・・・ここには居なかった・・・) 頭から布団を被り、微動だにしないフウカ。 昨夜遅くの出来事を思い出しては、何度もその時の悔しさと虚しさが込み上げてくる。 「フウカさん。昨日負けたことが、そんなに悔しいのですか?  確かに貴方のミスはあったでしょう。でも、その程度で諦められるほどの、その程度のものなのですか?」 「・・・!!・・・」 その時、ケンの言葉に、フウカが強く反応した。 (負けた・・・?確かにアタシは、アイツに助けられはした。でも、アイツに獲物を横取りされた訳じゃない!  そうよ、まだ決着はついていない!こんなところで、こんなことをしている場合じゃない!皆が、待っているんだから!!) 再び、かつての思いがフウカの中に蘇る。己の目的を貫く決意。今はただ、それに向かって突き進むだけ。 勢いよくベッドから立ち上がり、普段着に着替え、フウカは部屋のドアを開ける。 そこには、やっと出てきたのかというような表情のケンが苦笑を浮かべながら、彼女に小さく手を振っていた。 「あ〜!!なんか急にお腹が空いてきちゃったわ。さ、早く朝ご飯にしましょう!」 何かを吹っ切ったような表情で、フウカはケンの手を引きながら、食堂へと走り出す。 「ちょ、ちょっとフウカさん!そんなに急がなくても食堂は逃げませんよ!?」 腕を強引に引かれながら、ケンがフウカに声をかけるが、そんなことはまるでお構いなし。 今はただ、フウカは己の空腹を満たすのと同時に、嫌なことを忘れることに専念したかったのである。 もうじき、その日の終りが訪れ、日付が変わる。昨夜とは違い、街は夜の静けさを忘れるほど、湧き上がっていた。 事件の中心になる、ルーン・カンパニー本社。そこの入り口付近には、警察と多くの報道陣や野次馬で埋め尽くされている。 そこからやや離れた位置に、フウカは一人立っていた。 こっそりポケモンセンターを抜け出して、この状況を静かに見つめた後、人気のない場所へと歩いていく。 表通りの騒がしさが嘘のように静まり返った路地裏。 そこでフウカは辺りに人がいないことを確認すると、近くのビルの壁をフリークライミングでよじ登っていった。 難なく屋上に辿り着くと、そこに前もって隠して用意していた鞄の中から、様々な道具を取り出し、装備していく。 最後にバイザーを取り出して、それを手に持ったまま、ルーン・カンパニーのある方角へと向かう。 「・・・アタシは、必ずあの『杖』を取り返す。新聞での一面記事とか、そんなものどうでもいい。  怪盗『カザバナ』最後のショー。最後まで演じきってみせる!!」 決意を新たに、フウカは・・・いや、怪盗カザバナはバイザーを被り、顔を覆い隠す。 そして、ルーン・カンパニー目指して、ビルの上を一気に走り出した。 ルーン・カンパニー社内では、表のお祭り騒ぎとは裏腹に鋭い緊張感に支配されていた。 警備員や警官は誰一人、一言も発さずに、自分の付近一帯を警戒し続けている。 そこへ、通気口から人知れず、目に見えないほどの小さな粉末が無数に、その付近一帯を覆っていく。 その粉末を吸い込んだ者から、人もポケモンを問わずにその場に倒れ、眠ってしまった。 「・・・『キノコの胞子』。悪いけど、皆朝まで寝ていてもらうわ。もう、アタシにも時間がないからね」 警戒を続けていた者達を眠らせた粉末がなくなった頃、小さく呟きながらカザバナが通気口から姿を現す。 そして、真っ直ぐ昨夜の社長室へと、カザバナが向かおうとした時だった。 「貴方が狙っている『杖』と、それを持つカタギリ社長は、社長室にはいませんよ」 聞き覚えのある男の声に、カザバナは足を止める。 「・・・アンタは・・・闇神楽!一体どういうことなの?」 「彼はとっくの昔に、別の場所へ移動し、そこへ『杖』も持ち去ってしまいました。  彼は・・・このビルの遥か地下深くにいます」 漆黒の闇の中から、静かに姿を見せる闇神楽。 カザバナは少し警戒しながらも、その言葉を聞いている。 「どういうつもり?アンタはアタシの敵でしょう?  アンタもあの『杖』を狙っているんだから、そんな話を信じられるはずがないでしょう?」 「確かにそうですね。ですが例え敵同士とはいえ、条件が同じでないと、後で言い訳されては困りますからね」 カザバナの射るような視線を受け流すように、闇神楽は静かにカザバナに近づき、その横を通り過ぎる。 「地下への入り口はこちらです。地下に到着した時がスタートにしましょう。  それなら、純粋に腕の勝負になるでしょうからね?」 「・・・いいわ。その挑発に乗ってあげる。あの男にもアンタにも、あの『杖』は絶対に渡さない!  必ず、あの『杖』はホウエンの故郷に持って帰らなきゃいけないんだから!!」 闇神楽の提案を、カザバナが鋭い声で承諾する。 そして二人以外、全てが寝静まった社内を並んで歩き始めていった。 「・・・なんで普通エレベーターに乗る訳?そんな簡単にその地下とやらにいけるはずがないでしょう!?」 そこはルーン・カンパニー社内に普通に設置してある、何の変哲もないエレベーター。 闇神楽とカザバナの二人は、今それに乗っている。 「問題ありません。普段は地下一階から最上階までしかありませんが・・・ここを見てください」 そういって、闇神楽が各階へのボタンの下の方に触れる。 「ここを開けると・・・ほら。更に下へ行く為のボタンが隠してある」 巧妙に隠されていた、小さな扉を開け、闇神楽は更なる地下へのボタンを押す。 「・・・ちょっと、なんでこんなものを隠す必要がある訳?あの社長、よっぽど人に知られたくない秘密があるみたいね・・・?」 「ご名答。そしてその秘密こそが、私の本来の目的。さ、そろそろ到着ですよ。お喋りはおしまいです」 エレベーターのドアが開き、冷たい空気が流れ込み、闇神楽とカザバナは警戒しながら外へ出る。 すると、獲物が来るのを待っていたかのように、天井から複数の影が二人に襲い掛かった。 フウカと闇神楽は通路の左右に身をかわすと、自分達に襲い掛かってきた影を睨み付ける。 「オコリザル・・・?でも、何かが違う・・・!!」 突如として襲い掛かってきた影の攻撃を避けながら、相手の不自然さに気づいたフウカが呟く。 「・・・やはり、ここに『ヤツ』もいる・・・。カザバナ、貴方がこのポケモン達に感じた不自然さは、  恐らく薬物の投与や、バイオ手術といった行為により、強化、凶暴化させられているからです」 闇神楽が冷静にそう言うと、手にはモンスターボールが握られていた。 「そして、こいつらを鎮めるには、こうするしかないということです!!」 言うが速いか、モンスターボールの中からヤミカラスが飛び出す。 漆黒の翼を持つその鳥は、光を貫く影のように、襲い掛かってくるオコリザル達を瞬く間に倒してしまった。 「酷い・・・ポケモンに、こんな事をするなんて・・・」 「・・・確かに気の毒だが、こうやって倒して、大人しくさせる以外には方法は無い。  カザバナ・・・貴方に一つ忠告しておこう。自分の仕事に、ポケモンを関わらせたくないという気持ちは解ります。  だが、それで貴方が成すべき事を成せずに、貴方が命を落とす事になっては本末転倒というもの。  そして、それは貴方のパートナー達の本意ではないでしょう?  貴方は自分のやるべき事を知っている。ならば、つまらない拘りなどは捨てて、己の全ての能力を以って行動しなさい」 闇神楽は静かにそう言うと、通路の奥に向かって歩き出す。 「・・・・・・・・・」 カザバナは暫く沈黙した後、闇神楽の後を追って走り出していった。 容赦なく襲い掛かってくる凶暴化したポケモン達を、闇神楽が一人で退けて先に進んでいく。 その時、カザバナが不意に闇神楽を呼び止めた。 「待って。この先にレーザーが、壁や天井の至る所から仕掛けられてあるわ。知らずに通れば、見えない刃に焼切られる」 「ふむ・・・そのバイザーは特殊な光も見ることが出来るのですか。流石に用意はいいですね」 顎に手を当てながら、闇神楽が呟く。 「感心している場合じゃないでしょう?網の目のように仕掛けられているから、通るのは不可能よ。  他の道を探さないと・・・でも、余りグズグズしていられないし・・・」 左手の親指の爪を噛みながら、口惜しそうにカザバナが言う。 闇神楽はそれを横目に見ると、再び前へと進みだした。 「ちょ、危ないわよ!!死にたいの!?」 「大丈夫ですよ。こういうトラップは・・・こうしてしまえばいいんです!」 闇神楽は手にしたモンスターボールから、カイリューと呼ばれる竜のような巨体のポケモンを出す。 カイリューは闇神楽に一瞬視線を向けた後、通路の左右の壁に両手をつけた途端、カイリューの体が強い光を発したのである。 すると壁や天井、床からも幾つモノ小さな爆発が、連鎖するように起こった。 「ドラグーンの『十万ボルト』。相手が電子機器なら、過剰に電気を流し込んでショートさせればいい」 「・・・乱暴だけど、確かに有効ね。流石に、こういう事は手馴れているじゃない」 「貴方からお褒めの言葉を頂けるとは、光栄ですね」 カイリューを戻した後、闇神楽がわざとらしくお辞儀をする。 それを見たカザバナは苦笑したが、気を取り直して、二人は先を急いで走り出していった。 二人は、途中で出会う凶暴なポケモン達を時には倒し、時には惑わせた隙に逃げ出すなどしながら進んでいく。 だが、途中で幾つもの分かれ道はあった。もう勝負は始まっているはずなのに、カザバナと闇神楽は共に行動しているのだ。 「・・・誘われていますね・・・」 闇神楽が不意に呟く。 それを聞いたカザバナも、これまでの敵の動き方を思い出し、静かに頷いた。 「確かに、ある場所へ誘導させられているわね。しかも、二人一緒に・・・」 やがて二人は、とある部屋へと行き着いた。 そこには、カザバナが狙う『杖』を持つルーン・カンパニーの社長であるカタギリと、 そしてもう一人、白衣を着た見慣れない男性の姿があった。 「ほほぅ・・・ここに辿り着けたのか。流石だな」 白衣の男が、二人を一瞥しながら言う。 「お、おい!?どうして奴らがここにいるんだ!奴らはお前の強化ポケモン達で葬るはずじゃなかったのか!!」 カタギリが白衣の男に強い口調で迫る。だが、白衣の男はあっさりとそれを無視した。 「さて・・・私に用があるのだろう?闇神楽。だがな、今日は貴様の相手をするつもりはない。  私はこれで、失礼させてもらうよ。・・・さらばだ」 「な・・・勝手なことを言うな!!私を置いていくつもりか!?」 白衣の男はカタギリを無視したまま、別のドアから部屋を出ていく。 一人部屋に取り残されたカタギリは、カザバナと闇神楽の方に向き直ると、いくつかのモンスターボールを投げた。 「こ、こんなところで私の野望を邪魔されてたまるか!いけ、奴らを皆殺しにしろ!!」 その言葉とほぼ同時に、見るからに凶暴そうなニドキングやブーバー、スピアーといったポケモンが姿を現す。 それをみて、身構えるカザバナ。だが、闇神楽は戦うそぶりすら見せない。 「ちょっと、来るわよ!?なにしてんの!!」 「・・・カザバナ。予定を変更します。私は先程の白衣の男を追う。  貴方には『杖』とカタギリの方をお任せしますよ。・・・『風花』とは本格的な冬の到来を告げるとされる粉雪の事。  本当の冬の厳しさ、彼に教えてあげてくださいね」 そう言うが早いか、闇神楽はカタギリとその出したポケモン達を無視して、白衣の男を追って、出て行ってしまった。 「・・・なによ、アイツ・・・。自分勝手で、その癖余計な世話ばかり焼くんだから・・・」 「何をブツブツ言っている!さあお前達、あの小娘を捻り潰せ!! アイツから高い金を払って買った、強化ポケモンの力を見せてやれ!!!」 カタギリの命令に従い、三匹がカザバナに襲い掛かってくる。 それを見たカザバナは、何かを吹っ切ったような、決意を新たにしたような目で、それらを射抜く。 「そうね・・・自分の拘りよりも、自分がやらなくちゃいけないことを優先させないとね!  皆が待っているんだから、アタシは絶対に死ねないし、負けられない!!  もう、絶対に迷わない。・・・お願い、力を貸して・・・スノウ!!!」 腰の後ろに着けているポーチから、モンスターボールを取り出して投げるカザバナ。 中からデリバードが飛び出し、襲い掛かる三匹に向かっていった。 「スノウ、『吹雪』!」 カザバナの声よりも早く、デリバードはモンスターボールから飛び出すと同時に、向かってくる敵に強力な冷気を浴びせる。 多少はバトルできるような広さの部屋とはいえ、大技を放つには少々狭すぎる。 『吹雪』はまるで、濁流のように部屋の中で暴れ狂い、部屋と向かってきた者達を瞬く間に氷付けにしてしまった。 「っ痛〜・・・失敗失敗。ちょっと部屋の大きさを考えてなかったわ。  でも、これで三匹とも戦闘不能よ。どうするの、社長さん?」 自信満々に言うカザバナの吐く息が、白い。部屋が凍りつくほどに気温は低下しているからだ。 カタギリは寒さのせいなのか、恐怖のせいなのか、ガタガタと震えながら、『杖』を握り締めたまま動かない。 「いい加減、観念しなさいよ。何も命まで取ろうなんて言ってないわ。  アタシはただ、その『杖』を返して欲しいだけ。悪い話じゃないでしょう?」 そう言いながら、ゆっくりとカタギリに近寄っていくカザバナ。 その時、カタギリの表情が突如として変わった。 「こ、この『杖』に隠された膨大な力を解明できれば、巨万の富を得られたというのに・・・。  折角の研究も全ては水の泡・・・全ては貴様らのせいだ!貴様らのせいで、私は破滅だ!!  フ、フフフ・・・アーハッハッハッハッハッハ!!  お、終りだ、ワシはもう終りだーーー!!皆、皆消えてしまえぇぇぇえええええ!!!」 狂ったように笑うカタギリは、懐のモンスターボールからマルマインと呼ばれる球状のポケモンを出した。 「ハーッハッハッハッハッハッハ!ワシ一人では死なん。全てを破壊してしまえ、『大爆発』!!」 直後、マルマインの体が発光し、次の瞬間には轟音と共に衝撃と炎が、その階全てを駆け巡った。 薄暗く、やや狭い一本道の通路を、一つの影が疾走する。 やがて、とある部屋が見えてきた。そのドアを半ば強引に蹴り開け、中へと雪崩れ込むようにして入る。 「・・・ほう、もう来たのか。流石に標的を見定めると、行動が早いな。闇神楽よ」 「黙れ。貴様を簡単に逃がすわけにはいかない!さあ、ここで決着をつけてやる!!」 部屋の中にいた白衣の男に、闇神楽がハッキリと敵意を見せる。 モンスターボールを手に取り、何時でも白衣の男に仕掛けられるように身構える闇神楽。 だが、白衣の男は無防備な、自然体のまま動こうとはしない。 その様子に、より一層警戒を強める。 「ククク・・・やめておけ。貴様はここでは余りにも不利だ。  貴様の持つほとんどのポケモンは、外で、空を自由に翔る事で、初めてその真価を発揮する。  この小さな部屋の中で、しかも大型の鳥ポケモンでは、身動きすら満足に取れまい?」 白衣の男は、闇神楽を嘲笑うかのように、余裕の態度を見せ付ける。 「それは貴様も同じだろう?貴様の扱うポケモンも又、大型で凶暴なモノが中心。条件は五分だ。  だが・・・一つ聞かせろ。何故今日、この場所に居た?俺がここに来ることは、初めから解っていた筈だ」 闇神楽が、鋭い声で白衣の男に問いかけた。 「どんな質問かと思えば、そのような愚問か。まぁいい、教えてやろう。答えは、単なる『商談』だ。  相手の欲しいものはこちらの技術力と、それによって造り出された強化ポケモン。  こちらが欲しいのは、研究資金。ただ、それだけのことよ。今日この場に居たのは、私の実験体の成果を見せる為に過ぎん。  まぁ、本気ですらない貴様の足止めにすらならなかったがな。  この地下施設は、主にそういった類の密売や取引のために使われているのだ。  勿論、私が提供した技術を、奴なりに研究していたようだが、比べ物にはならんよ。  そうそう。当然だが、私に金を落としていく企業はここだけではない。  実験体達も、それなりに上々の成果を挙げているんでな。『商品』の売れ行きも中々好調だ。  それもみな、貴様が私の研究の為にデータを残してくれたお陰だ。一応礼を言っておいてやろう」 「・・・貴様ぁああ!!」 白衣の男の言葉に、闇神楽が激昂する。 手にしたモンスターボールを投げ、中からウィンディが姿を現すと、白衣の男に向かって灼熱の『大文字』を放つ。 「クックッ・・・相変わらず、ポケモンの事となると見境をなくすな。そして、その甘さが未熟な証拠だ」 向かってくる炎を、一条の強力な水砲がどこからとも無く放たれ、相殺した。 「く・・・スターミーの『ハイドロポンプ』か!?」 水砲が放たれた方向へ、闇神楽が視線を向けると、二つの星を重ねたようなポケモン、スターミーが待ち構えていた。 「そういうことだ。そして・・・」 白衣の男が指を鳴らすと、突如、部屋の中を散らかしながら、壁に巨大な穴が開いた。 その穴からサイドンと呼ばれる、岩のような硬い皮膚と、ドリルのような角を持ったポケモンが姿を見せる。 それとほぼ同時に、別の部屋から大きな爆発音と衝撃が駆け抜け、部屋が炎に包まれたのだ。 「やれやれ・・・カタギリの奴、商才はあるものの、小心者だからな。すぐに己を見失う。  この爆発は・・・その結果だろうな。どうせ自棄でも起こしたのだろう」 特に関心を示すわけでもなく、白衣の男が独白する。 オレンジ色の炎が、部屋の中を明々と照らし、対峙する二人の男を取り囲む。 「さて・・・時間も無いか。私はこの穴から失礼する。・・・それと闇神楽。貴様も急ぐことだな?  貴様達はこの程度はどうということは無いだろうが、このフロアに残されたポケモン達は、果たしてどうかな・・・?」 ニヤリと笑みを浮かべながら、白衣の男はスターミーとサイドンを従えて、穴の中から部屋を出て行った。 「・・・ちぃ!!次こそは・・・必ず決着をつけてやる。覚悟しておけ、『カゲツラ』!!」 闇神楽はそう叫ぶと、踵を返してカザバナ達の居る部屋へと走り出していった。 爆発によって、部屋を覆っていた氷は蒸発し、霧となって砂塵と共に辺りを覆う。 炎が部屋を支配し、そこから湧き出るように上がる煙が、鼻や喉に不快な痛みを与える。 「ゲホッ、ゲホッ!・・・う・・・スノウ、大丈夫!?」 カザバナがなんとか体を起こし、デリバードへと駆け寄る。 デリバードの受けたダメージは酷く、すぐにでも手当てを必要とするだろう。 「急いで傷薬を・・・・・・無い!?今の爆発で・・・全部駄目になってる!!?」 カザバナに絶望にも似た表情が浮かぶ。 「いや・・・嫌よ!スノウ!しっかりして、スノウ!!」 「・・・ゼロ、『たまごうみ』を!」 傷つき倒れたデリバードに、すがるように叫ぶカザバナの耳に、ある男の声が聞こえた。 その直後、卵形をしたエネルギーの圧縮体が、満身創痍のデリバードを包み込む。 すると、瞬く間にデリバードの傷が癒されていった。 「・・・闇神楽!?」 カザバナが振り返ると、そこには闇神楽の姿があった。 しかし、デリバードに『たまごうみ』を使ってくれたポケモンの姿は見えない。 「もう大丈夫ですよ。さ、早く火を消さなければ・・・ここにいるポケモン達が危ない!」 「・・・炎・・・そうだ、これを使えば!!」 ふと何かを思い出したように、カザバナが走り出す。 そして、爆発のショックで気絶しているカタギリの近くに転がっていた『杖』を拾い上げた。 「これの力で、スノウの『吹雪』を増幅してやれば・・・この炎は消せるはず!スノウ・・・お願いできるよね?」 カザバナがデリバードに視線を送る。すると、傷の癒えたばかりのデリバードは力強く頷いた。 「待ってください!そのデリバードに無理させずとも、私が・・・」 「アンタは黙ってて!少しはアンタに、借りを返させてくれたっていいでしょう!? それに・・・アンタにこれだけの炎を一瞬で消せるポケモンが居るわけ?居ないんでしょう? それにね・・・アタシだって、ここのポケモン達を救いたいの!!」 カザバナの目に、何よりも強い意志の光が宿る。 それを見た闇神楽も、流石に沈黙するしかなかった。 「・・・氷を司り、何よりも美しき結晶の翼を持つ神鳥よ・・・その力の欠片を以って、この強き熱さを鎮め給え・・・」 カザバナが祈るように言葉を紡ぐと、フリーザーの尾羽を使っているといわれる『杖』が輝き始める。 「今よ、スノウ!『吹雪』!!」 その声と同時に、デリバードが冷気を放つ。それに呼応するように、『杖』の輝きが『吹雪』に更なる力を与えた。 先程カタギリと戦った時とは比べ物にならないほどの冷気が、ドアを、壁に入った亀裂を通り抜け、フロア全体を凍りつかせる。 それにより、瞬く間に炎は消えていった。 「・・・驚きましたね。まさか、その『杖』にそのような力があるとは・・・」 闇神楽が思わず、感嘆の声を洩らす。 ・・・ピシッ・・・ その時、カザバナの持っていた『杖』にある尾羽が、音を立てて崩れ去ってしまった。 「・・・『杖』が!?」 「・・・・・・いいの、なんとなくそんな気がしていたから。この尾羽にはもう、余り力が残されていなかったってね。  カタギリはこの『杖』の力を調べ、利用しようとしていたわ。  その実験の繰り返しで、きっとこの『杖』は力を使いすぎていたのよ・・・」 小さく、静かな声でカザバナが言う。 その傍らで、デリバードが悲しそうにカザバナに寄り添っている。 「・・・カザバナ。貴方には悪いが、今は感傷に浸っている場合じゃない。  貴方は急いで脱出してください。私が来た通路の先の部屋に、外に続く穴があります。  そこを抜ければ、人知れず脱出できるでしょう。時間がありません、さあ!」 「・・・闇神楽。アンタはどうするつもりなの?」 「私は大丈夫。傷ついたここのポケモン達を回収し、私も同じ穴から脱出します」 「・・・アタシも手伝うわ。アンタ一人だけじゃ、時間がかかりすぎるもの」 カザバナがデリバードをモンスターボールに戻しながらそう言うと、闇神楽は言葉を失った。 だが、やがて静かに頷くと、それを見たカザバナも頷き返し、二人は走り出していった。 街から少し離れた郊外に、巨大な大穴が口をあけている。 その中から、夜の闇に紛れ、二人の男女が穴から這い出てきた。 「ふぅ・・・やっと出られたわね。はぁ・・・結局骨折り損・・・かぁ・・・」 「私は十分収穫がありましたよ。ポケモン達も回収できたし。  カタギリはあのまま放置しておこうかとも思いましたが、ま、一応警察に突き出しますか」 二人ともどこか晴れ晴れとしたような、気楽な口調で言葉を交わす。 闇神楽の背後には、ウィンディが縛り上げたカタギリを背に乗せ、その口にはモンスターボールが入った袋を咥えている。 「そうね・・・アタシは・・・どうしようかな?やる事、無くなっちゃったよ・・・」 虚空を見つめながら、カザバナが小さく呟いた。 「さて・・・と。私は仕事の後始末に向かいます。ここでお別れです」 そう言って、闇神楽は大仰なお辞儀をすると、ウィンディの背に乗った。 「あぁ・・・それと『杖』の事ですが、気を落とす必要は無いと思いますよ?  奇跡は、何時だってすぐ傍にあるものですから・・・ね」 「・・・え?」 「それでは・・・御機嫌よう!」 言うが早いか、ウィンディに乗った闇神楽は、街の方へと駆け出していった。 カザバナは小さくなっていく後姿を、呆然としながら見詰めていたが、やがて、小さく笑みを浮かべる。 「・・・クス、アイツは何が言いたいんだろうね?ほんと・・・変なヤツ・・・」 カザバナがそう笑った直後、急に辺りの気温が下がるのを感じた。 冷たい風は冬を連想させ、微かに粉雪が舞っている。 「・・・何!?」 振り返ると、そこには氷で出来たような、美しい羽を持った鳥がいたのだ。 その鳥は静かにカザバナを見つめ、やがて街の方へと飛び去ってしまった。 「・・・今のは・・・伝説の鳥、フリーザー・・・何故ここに・・・?」 そう思いながら、フリーザーが飛び去った方向を眺めていると、 キラキラとしたものがカザバナの目の前にゆっくりと落ちてくるのを見つけた。 「これは・・・フリーザーの尾羽!?これなら・・・これなら『杖』が元通りになる!!」 キラキラと輝く尾羽を抱きしめながら、カザバナは歓喜の声を上げた。 夜を知らぬかのように、明々と街灯が闇を照らし続ける街。 だが、闇の全てを照らしつくせるはずも無く、所々に深い闇が横たわっているのがわかる。 いつもとは違う夜の喧騒の中、フウカはゆっくりとポケモンセンターに向かって歩いていた。 「・・・どうしたんですか?こんな夜中に」 ポケモンセンターが見えてきた時にふと、彼女に声をかけるものがいた。 そちらに視線を向けると、ポケモンセンターから一人の男性が出てきているところだった。 「ケン・・・アンタこそ、こんな時間に旅支度を終わらせて、どうするつもりなの?」 笑みを浮かべながら、皮肉っぽくフウカがケンに尋ねる。 「そろそろ、この街を出ようかと思いましてね。夜もこんなに五月蝿いんじゃ、満足に眠れやしない。  眠れないのなら、次の街に向けて出発しようかと思いまして・・・ね?」 悪戯っぽく、フウカに笑い返す。 「・・・そう。あのさ、今日ルーン・カンパニーにあの怪盗闇神楽が予告状を出したのは知っているでしょう?」 「それが、どうかしましたか?」 「それをちょっと見に行っていたんだけど、さっきね、闇神楽が姿を見せて、あの会社の悪事を全部暴いちゃったのよ。  証拠の品とか、悪質な実験に使われてしまったかわいそうなポケモンとかと一緒に社長を縛り上げて・・・ね」 「・・・・・」 「そしたらさぁ、警察はどっちを先に逮捕するべきか?なんて戸惑っちゃってて、面白かったんだよ?  で、いざ警察が闇神楽を捕まえよう!って時になったら、なんと闇神楽はその場で綺麗に、跡形も無く消えちゃったんだ。  ホント・・・凄いよね・・・手並みも、経験も・・・カザバナとは大違い」 そこまで言って、フウカが少し声のトーンを落とす。 「どうしたんですか?貴方らしくも無い。  あれだけ怪盗カザバナに入れ込んでいたというのに、どういう心境の変化です?」 「別に。ただ、凄いものは凄いんだって、認めるようにしただけよ。  あんな奇跡・・・目の前で見せ付けられたら、認めるしかないじゃない」 「そんな・・・ものなんですかね・・・?」 「・・・そんなものなの」 その後、二人の間に沈黙が流れた。 冷たい夜風が頬を撫で、フウカは真っ直ぐケンを見つめる。 「もう・・・旅を再開するんだ?」 「・・・えぇ」 「そっか・・・なら、私ももう行こうかな?どうせ眠れないんだし・・・さ!」 「え!?」 「あら、いいじゃない?一緒に旅をしてくれるんじゃなかったの?  大体、アタシに黙って行こうなんて、ちょっと薄情じゃない?」 「・・・う・・・」 「旅支度なら、アタシもとっくに終わらせているわ。どうせ、このまま出るつもりだったしね。さ、行きましょう?」 そういって、フウカはケンの腕を引っ張って走り出す。 街を出て、暫く夜道を歩き続ける二人。すると、二人の前方に分かれ道が見えてくる。 その時不意に、フウカが口を開いた。 「さ・・・ここでお別れかな?アタシ、ちょっと急用が出来てさ、すぐにでも故郷に帰らなくちゃいけないの」 「急用ですか・・・?」 「うん。キミには沢山迷惑かけちゃったけど、でも、ここ暫く一緒に居たの、楽しかったよ。  また・・・会えたら、その時はもう一度一緒に旅してくれる?」 「・・・ま、いいですよ。どうせ、有無を言わさずについてくるんでしょう?」 意地悪くケンが笑う。それを見て、フウカもつられるように笑い返した。 「じゃあね、ケン。楽しかったよ・・・」 そういって、フウカは左の道に向かって走り出した時だった。 「フウカさん!・・・さっき、街で奇跡がどうとか言ってましたよね?  きっと奇跡なんて、何時でもすぐ傍にあるものですよ!!」 「!!?」 背後から聞こえてくるケンの言葉に、フウカは思わず足を止めた。 そして、ゆっくりと振り向く。 「カザバナ・・・風花とは、本格的な冬の到来を告げるとされる粉雪の事。  彼女は、その冬の本当の厳しさと、強い意志を持った怪盗だったと思います。・・・なんてね」 優しく笑いかけるケンに、フウカはゆっくりと、何かを確信するように近づいていく。 「ふぅ〜ん。少しは美人怪盗カザバナを見直したんだ?」 「さて・・・それはどうかな?」 「む!・・・ま、いいわ。それよりも、ちょっと顔を下に向けてくれる?」 「・・・は?」 突然のフウカの発言に、ケンは戸惑いながらも、言われたとおりに顔を下に向けた。 すると、フウカは背伸びをしながらケンの顎を優しく引き寄せる。            次の瞬間、二人は静かにお互いの唇を重ねあった。 暫くの間、二人を包み込んだ静寂と闇だけが辺りを支配する。 薄い星明りが、一つに重なった二人を照らし、黒いシルエットが冷たい大地に影を伸ばす。 悠然と流れ行く闇色の雲。肌寒いはずなのにどこか心地よい風。 全てが一つの風景画のように・・・・・・・・・・時を止めたかような調和を生み出した。 やがてフウカがゆっくりと唇を離し、そのまま踵を返して走り出して行く。 「じゃーね!今度は、きっと借りを返して見せるからね、怪盗闇神楽さん!!」 そういって、フウカは闇の中を走り抜けていった。 その姿を、ケンは半ば放心状態のまま、見送るしか出来なかったのである。 「はっ・・・カザバナ!!」 我に返り、叫ぶ。だがその時には既にフウカは闇に紛れ、見えなくなっていた。 ((クスクスクス・・・見事にやられちゃったねぇ?)) その時不意に、ケンの頭の中に楽しそうな声が響く。 「・・・ゼロか」 憮然とした表情で、ケンが振り向くと、そこには犬とも猫ともつかない、尾の長い小さな白いポケモンがいた。 「ところでゼロ。カタギリやポケモン達を警察に引き渡しておいてくれたようだね?ご苦労様」 気を取り直して、ゼロと呼んだ白いポケモンに、労いの言葉をかけるケン。 ((どういたしまして〜♪そうそう、フウカって人のデリバードも大丈夫だったしね。  僕が『たまごうみ』で助けたんだもん)) 少し得意そうに、白いポケモンは胸を張る。 「はいはい。色々とお世話になってます」 苦笑しながら、ケンが笑いかける。 ((でも、皆驚いてたよ〜?僕が闇神楽の衣装を着て、  『サイコキネシス』で操ってた偽者の闇神楽をテレポートさせた時って、すっごく大騒ぎしてたもん♪)) 楽しそうに喋る声が、ケンの頭の中に直接聞こえてくる。 その話を、ケンも楽しそうに相槌を打ちながら聞いていた。 ((でも、大サービスだよね?ヒョウガまで出してさ・・・。ホント、ケンはお人好しだよね)) 「・・・そうか?でも、彼女は無理をしてまであの『杖』の力を使ったんだ。  そして、多くのポケモン達の命を救った。だから・・・それなりにお礼をしたかっただけさ・・・」 小さく笑いながら答える。 その時、彼の頬に冷たい感触が触れた。 空を見上げると、冷たい夜風に運ばれながら、小さな粉雪が降り始めている。 「・・・風花の夜・・・か」 小さく呟いて、ケンは右側の道に向かって、ゆっくりと歩き出していく。 東の空はやがて白々と明け、また何時もと変わらぬ平穏な時を刻むだろう。 その時まで、今はただ風に運ばれてくる粉雪を眺めていたかった。 静かに、ゆっくりと・・・ 完