第三話 「出発」 「俺は一人で行く。お前らと一緒じゃ旅に出る意味がない」 最初に口を開いたのはレイだった。そして、そのセリフに誰もが驚いた。 「おいレイ!!今の博士の話聞いてなかったのかよ!?一人で行くなって言われたばかりじゃねえか、何考えてんだよ!!」 「そうだよレイ。一緒に行った方が楽しいよ?」 アオイとヨウヘイがレイを説得しようとする。(と、言ってもヨウヘイのはどこかずれていたが) 「俺たちはポケモントレ−ナーになると決めて、今日この場でポケモンを貰ったその時から敵同士なんだ。 いちいち誰かに頼っていては強く離れない!」 「だからって一人で行くこたぁねえだろ!パートシティまでなら一緒だっていいじゃねえか!!」 「そ、そうだよレイ。カゲロウの森はお化けが出るんだよ?一人じゃ危ないよぉ。」 それでもレイはアオイとシュンの意見に耳を貸そうとしない。 「幽霊?それこそ強くなるには好都合だ!! 大方ゴーストタイプのポケモンが住み着いただけの話だろう。俺が捕まえて幽霊騒ぎも治めてやるよ!!」 そういってレイはますます強気に出る。するとヤサカ博士が口を開く。 「レイ君、君のようにそう言ってひどい目にあったトレ−ナーは大勢いるんだよ。 その中には四天王に挑むためにチャンピオンロードへ向かう途中だったトレ−ナーだっていたんだ。 とてもじゃないけど、今の君では歯が立つ相手じゃない。考え直したほうがいいよ。」 「ねえレイ、博士の言うとおりだよ。そんな怖い森、一人で行かなくてもいいじゃない。みんなで行こう?」 シュンも必死に説得し、レイもしばらく考えた末、仕方なく折れる。 「ちっ、わかったよ。お前らだけじゃ・・・特に幽霊の類が大の苦手のシュンがいるんじゃ危なっかしくて仕方がない。 一緒に行ってやるよ。」 そういってレイは、シュン達と同行することを了承すると 「へへ、ホントは博士の話を聞いて怖くなったんじゃねえのか?」 アオイのその一言にレイが怒りをあらわにする。 「貴様、余程俺に痛めつけて欲しいようだな!!」 「お、おい・・・マジになるなって、冗談だろジョーダン」 そこへ、ヨウヘイが二人の間に止めに入る。 「もぉ〜、二人とも喧嘩はダメだよ!はい、仲直りの握手。」 その一言に二人は呆れたように 「おいおい、ガキじゃねえんだぜ?今時仲直りの握手なんてやんねーよ。」 「・・・くだらん。俺は先に行くぞ!!」 そのままレイは研究所を出て行く。その後を慌ててシュンが追う。 「あれぇ〜?レイ、先に行っちゃったねえ」 「やれやれ・・・おいヨウヘイ、オレ達も早く行かねーと置いてかれるぞ!」 アオイとヨウヘイも急いで研究所を出る。 「みんな〜、頑張るんだよ〜!!」 ヤサカ博士も外に出て四人を見送る。 「いってきま〜す!」 シュン達はヤサカ博士に手を振るとふるさとである町を旅立っていった。 「気をつけてね・・・」 ヤサカ博士はそう呟くと、何気なく空を見上げる。 そこにはどこまでも続く青い空と白い雲。そして、虹色に輝く鳥のような影が南の空へと消えていった。