第四話 「試練の森」 「フシギちゃん、『つるのムチ』!!」 レイのフシギダネが野生のメリープへ攻撃を仕掛けた。メリープも技をまともに喰らい、数歩ほど後ろに下がる。 「いまだ、行け!!モンスターボール!!」 メリープが隙を見せた瞬間、レイはすかさずモンスターボールを投げる。 それがメリープに当たったと同時にボールから閃光がほとばしり、メリープの体を包み込む。 そしてそのままメリープはボールの中へと消え、しばらく地面でコトコトと動き、やがてモンスターボールは動かなくなる。 「メリープ・・・ゲット」 そういってレイはボールを拾い上げると、近くでバトルの様子を見ていたシュンとヨウヘイが彼の元へ駆け寄ってくる。 「わあ・・・レイってやっぱりすごいなあ。ぼくじゃあんなにうまく戦えないよ」 「ねえレイ。ボクもさっきそこでオタチとキャタピーを捕まえたんだよ!」 シュンとヨウヘイはかわるがわる話しかけるが、レイは表情を変えず無言のままだ。 すると、近くの茂みからアオイが現れて楽しそうに 「よう、みんなどうだった?オレはホーホーをゲットしたぜ」 と言うとシュンが驚いたように声を上げる。 「え〜、アオイもポケモン捕まえたの〜?ぼく、まだ一匹もゲットできないのに〜」 そう、シュンはまだ一匹もポケモンをゲットしていない・・・というより、ゲットできないのだ。 なぜならシュンは見ているほうが目を覆いたくなるほどコントロールが悪く、 結局捕獲用のモンスターボールを全部なくしてしまったのだ。 「お前相変わらずボール投げんの下手だなあ。ホント、よくそれでポケモントレ−ナー目指す気になるよな。」 「う・・・それは・・・」 アオイのセリフにシュンは言葉を詰まらせる。その時、いきなり電撃がアオイを襲う。 シュンは驚いてすぐに電撃の放たれた方を見ると、そこには、さっきレイが捕まえたメリープがいた。 「チッ・・・逃がしたか・・・」 「逃がしたか・・・じゃねえ!!テメエいきなり何てことしやがる!!」 電撃のダメージから回復したアオイはレイに食って掛かる。 「そんなところでボサッと突っ立ってる奴が悪い。 だいたい、ボールを投げるのが得意ではないからと言ってトレ−ナーになれないわけでも、 強くなれないわけでもないのに、貴様こそシュンにどれだけ酷いことを言ったかわかっているのか!」 「う・・・じょ、冗談だろ!そりゃ確かに言い過ぎたかもしんねーけど、いちいちポケモンで攻撃してくんなよな!!」 二人に口論にシュンとヨウヘイはただオロオロしているだけだ。 「フン、<冗談>だ。ちゃんとお前が復活できる程度に加減してやっただろう?感謝しろ。」 「なっ・・・テメェ・・・!!」 いよいよ険悪なムードになった二人の間にシュンが割って入る。 「二人とも、もうやめてよ!!ぼくなんかの事でどうして二人が喧嘩なんかする必要があるのさ! アオイ、ぼくもう気にしてないから。レイももうやめてよ!」 レイは一瞬だけシュンのほうを向くと、きびすを返して森の奥へと進み始める。 「勘違いするなよシュン。俺はアオイのせいでポケモンを捕獲するチャンスを邪魔されたから文句を言っただけだ。」 そう言って一人で進んでいく。その後を慌ててヨウヘイが追いかける。 「ちぇっ・・・素直じゃねえ奴。そのくせシュンにはあまいんだからな。」 「・・・・・・アオイ、早くレイとヨウヘイを追いかけよう」 アオイとシュンも二人を追って走り出す。 そして、そのはるか後方から今の四人のやり取りを、物陰から冷たく光る目が見つめていた・・・。