第五話 「白き闘神」  薄暗く、木々生い茂る森の中をレイは一人で進んでいる。 しかし、その後からはヨウヘイ、アオイ、シュンの三人が追いかけてきているはずだ。 そして今のところ、話に聞いた幽霊の類はおらず、時々野生のポケモンと出くわすくらいだった。 「・・・チッ、所詮噂は噂にすぎなかったと言うことか。」 レイは独白した。彼はこの森に住み、人々を襲うとゆう化物と本気で戦う気でいたのだ。 それなのに何も出てこない。確かにまだ旅に出たばかりではあるが、そのせいで弱いと思われるのは何よりも腹立たしい。 彼自身、バトルの知識や戦略にはほかのトレ−ナーに引けをとらないとゆう自信があるからだ。 そんな風にレイが一人考えていたその時、急に森そのものの空気が変わった。 「・・・フン、やっとお出ましということか!!」 木々は突然吹き出した荒れ狂う風に激しく揺さぶられ、レイはいつでも戦えるように身構える。 「レイ、森が変だよ!?何がおこったの!?」 その時ヨウヘイが追いつき、アオイとシュンもすぐに合流する。 「レイ、まさかヤサカ博士が言ってた奴が出たのか?」 アオイもこの異変に対してレイに疑問をぶつける。 「ああ、そのようだな。アオイは二人を守ってやってな!!俺一人で十分だ!!」 そういってレイはフシギソウとメリープを出す。 「一人でって・・・無茶言ってんじゃねえよ!!ヨウヘイ、シュン、オレ達もやるぞ!!」 「うん!!」 「わ、わかった・・・」 アオイ達三人も、それぞれカメールとホーホー、ピカチュウとオタチとキャタピー、そしてヒトカゲを出してあたりを警戒する。 「アオイ・・・お前も進化させたのか・・・」 「ヘェ・・・レイもかよ。ま、これなら少しは何とかなるだろ。」 レイとアオイはここに来るまでに最初にもらったポケモンを進化できるまでに集中的にレベルを上げていたのだ。 そして彼らがポケモンを出したのを見計らったようにソレは姿を現した。 「あ、あれが・・・?大きい・・・」 シュンがソレを見て呟く。確かに背の高さは2mほどあり、 子供のシュン達から見れば十分に大きく、白い体に冷たく輝く紫色の瞳は見るものを圧倒する。 「ポケモン・・・かなぁ?なんて言うんだろ?」 そういってヨウヘイがポケモン図鑑を向けると、図鑑が反応し説明が画面に表示される。 「え〜と、ミュウツー・・・遺伝子ポケモン。 幻のポケモン、ミュウの遺伝子から造られたとされているが、それ以上のことは解っていない・・・だって」 ヨウヘイは気楽に読み上げる。おそらく、ほとんど理解していないのだろう。 「そんな事はどうでもいい!ゲットすればそれで終わりだ!!」 レイがそう叫ぶと、フシギソウの葉っぱカッターとメリープの電気ショックがミュウツーへ放たれた。 しかし、ミュウツーはその攻撃をあっさりとかわす。 「それなら・・・カメさん泥かけ、ホーホーは催眠術だ!!」 だがミュウツーはアオイのカメールの泥かけかわすと、金縛りと呼ばれる技でホーホーの催眠術を封じる。 そこへすかさずヨウヘイのオタチとキャタピーも体当たりをするが、やはり簡単に避けられてしまった。 「つ、強いよぉ・・・レイ、アオイ・・・どうしよう?」 シュンはミュウツーの強さを目の当たりにして、ただ狼狽しているだけだ。 「シュン、ぼさっとするな!早く攻撃の指示をしろ!!」 レイはシュンのヒトカゲが指示を与えられていないため、うろたえているのを見て怒鳴りつける。 「う、うん!!ヒーすけ、火の粉!!」 「よ〜し、ピカピカも電気ショックだ!!」 ヒトカゲの攻撃にあわせてヨウヘイもピカチュウに指示を出すが簡単にかわされる。 しかし、その時に一瞬だけ隙ができ、それを見逃すことなく 「今だ!葉っぱカッター!!」 「いけぇ!水鉄砲!!」 レイとアオイが同時にフシギソウとカメールに指示を出す。 だがその瞬間、四人のポケモンは突然発生したエネルギー球に弾かれてしまった。 「!!!!」 その光景に四人は何が起きたのか、しばらく理解できなかった。そのときである。 ((・・・やはり彼は来ないか・・・もうこの森にはいないのだろう・・・)) 突然、四人の頭の中で不思議な声が響く。 「え・・・?これ、何?」 「テレパシー?まさか、ミュウツーから?」 しかしミュウツーはそれ以上何も言わず、そして・・・完全に消えてしまった。 「わっ・・・き、消えたよ?やっぱりユーレイだったんだ!」 「いや、あれはただのテレポートだ。奴は・・・エスパータイプか・・・」 泣きそうなシュンにレイが冷静に答える。 「しっかし、なんだったんだアイツ・・・?誰かを捜してるみてーだったけど・・・」 「でもすっごく強かったねぇ。あんなポケモンもいるんだぁ」 「奴が・・・幽霊の正体・・・だったのか?」 その後、四人はポケモン達を自分のモンスターボールへと戻し、森を抜けるために再び歩き出した・・・。 ・・・ここはとある山の中。そこに一人の少年が立っていた。 少年のその顔にはまだ幼さが残っており、年は14、5歳ほど。 服装はシュンとほぼ同じだが、色は赤だ。 そこへ、いきなり何もない所から、白くて大きな生き物が突然現れる。 「ミュウツー!どこにいってたんだ!?勝手にいなくなったら心配するだろう!!」 少年はたいして驚くこともなく、その場に現れたミュウツーに話しかける。 ((あの男を・・・捜していた。)) 「あの人を・・・?なんでだい?」 少年の質問に、ミュウツーは意外そうに答える。 ((お前はあの男と本気で戦いたくはないのか?あれほどの相手と・・・)) 「・・・そりゃあ、戦ってみたいさ。だからって、見つけてもすぐに戦うって訳にはいかないだろう?」 ((何故だ・・・?)) ミュウツーは少年に疑問をぶつける。 「あの人は何年もの間、ずっとあの敵と戦い続けているんだ・・・たった一人で。」 ((・・・・・・・・・)) 「だから、決着がつくまで待とう?もちろん、できるならあの人を助けたいしね。」 ((そうだな・・・まだ、あの時の借りを返してなかったな・・・。わかった、言うとおりにしよう。)) ミュウツーがそう言ってうなずくと、少年は優しく微笑みながら空を見上げる。 美しい夕焼けがあたりを覆い、東の空には星達が輝き始めていた・・・。