第5話 強くなりたい……!! -His wish- 昨日はよく眠れたな…… コトキタウンの方角から顔を覗かせている朝陽を頬に照り受けて、アカツキはそんなことを思った。 彼はポケモン図鑑を片手に、アチャモとアリゲイツの前に立っていた。 夜も明け切らないうちから、ポケモンセンターから少し離れた森の中に繰り出していた。 目の前にいる二体のポケモンが使える技について必死に知ろうとしているのだ。 「あんなんじゃ……先が思いやられそうだもん」 昨日のバトルを思い出し、頭を振った。 今頃、ポケモンセンターで高鼾を欠いているセイジの顔が頭に浮かぶ。ポケモンブリーダーである彼と昨日、バトルした。 アカツキにとっては初めてのバトルになったわけだが…… とっさの機転で辛うじて勝利は収めたものの、彼にとってそれが心の底から納得できることだったかと言えば、答えはノーだった。 初バトルを勝利で飾ったのは確かにうれしいことだ。 だが、それ以上に不安要素……つまり不満の残る部分もあったのである。 「ぼくはポケモンの技のこと、あまりに知らなすぎる」 ポケモン図鑑でアチャモの使えそうな技を拾い出して、それを指示したのだ。 ポケモン図鑑がなければ勝利などあり得なかったのだから、単にトレーナーとしての実力云々の話ではないだろう。 図鑑を見ている間は、指示を下せない。よってポケモンは無防備になる。 だから、いつまでも図鑑に頼ってばかりはいられない。 ポケモンバトルにおいて、ポケモンは基本的にトレーナーの指示がなければ、相手の技を受けてしまう。それが勝敗を分けることだってままある。 だから、いつまでも図鑑を見てばかりではダメ。 自分のポケモンが使える技をきちんと把握し、適材適所、繰り出す必要がある。 彼が探しているリザードンは、並のトレーナーではとても扱いきれないポケモンだ。 リザードンをゲットして、扱えるくらいの実力が身につくまでは、とてもではないが会うことなどできない。 会うことができるだけでもうれしいのは言うまでもないが、リザードンに認められなければ、完全な意味を為さないのだから。 今はバトルの最中ではないから、いくら図鑑を見ても問題ない。 要するに、実戦でどれほど活かせるかということに尽きるわけだが……今、図鑑の液晶にはアリゲイツの技について表示されている。 水鉄砲、噛みつく、睨みつける、引っ掻く、怖い顔…… アカツキはアチャモを見やった。 先ほどから技をたくさん出しているから、息を切らしている。だが、これくらいはしなければ特訓と呼べないだろう。 何もしないまま、流れに任せてジムバトルを行っても、勝てるはずがないのだ。 心を鬼にして――自分も苦難を分かち合いながら特訓するからこそ、深い絆が結ばれる。 そこまでは考えていないにしろ、苦労をせずにバトルに勝とうなどという考えは一片たりとも持ち合わせていなかった。 「アチャモ、茂みに火の粉!!」 「チャモ!!」 指示を下すと、アチャモが口から火の粉を吐き出した!! 火の粉……炎タイプの技ではもっとも威力が弱い。だが、旅立ったばかりである以上は、威力の弱い技でも、貴重だった。 炎タイプの技は、虫、草、鋼、氷タイプのポケモンに有効だ。多少の相性も頭に叩き込んである。 アチャモが吐き出した火の粉は一直線に前方にある茂みに突き刺さると、火を起こした。あの茂みにポケモンがいないのは確認済みである。 少しずつ勢いを増す火は、数秒で炎と呼べるまでに成長した。このまま放置すれば、森林火災になってしまうだろう。 だが、そこへ―― 「アリゲイツ、水鉄砲で火を消すんだ!!」 「ゲイツ!!」 待ってました――と言わんばかりに、アリゲイツが一歩足を踏み出した。 口を大きく開いて、お得意の水鉄砲を吹き出す!! 水鉄砲……水タイプの技では『泡』に続いて威力が弱い。 だが、単に水を発射するだけでなく、多様な使い方ができることから、多くのトレーナーに好まれている技でもある。 水タイプの技は、炎、地面、岩タイプのポケモンに有効。アチャモの弱点となるタイプ(地面、岩)のポケモンに効果が高い。 同様に、炎タイプの技もアリゲイツの弱点となるタイプ(草)のポケモンに効果が高いのだ。 相性と言うのはジャンケンのようなもので、三すくみになっていることが多い。 そのうち二つでもこちらが持っていれば、多彩なタイプを相手にしても通用するだろう。 アリゲイツの水鉄砲は狙い違わず燃え上がる茂みを直撃した!! しゅーっ、と音と立てて、鎮火される。 「ナイスだよ、アチャモ、アリゲイツ。その調子!!」 アカツキは二体のポケモンの技のキレ具合に満足しているらしく、満面の笑みをたたえていた。 アチャモの火の粉で茂みを燃え上がらせ、アリゲイツの水鉄砲で火を消す。 それを何度繰り返したか。少なくとも十回は超えているだろう。周りには濡れた黒焦げの茂みが数多く見られる。 はじめはなかなか命中しないことが多く、危うく火の粉を吹きかけられるといったこともあったが、今ではそれもない。 アチャモもアリゲイツも確実に強くなっているのが実感できる。 同時に、トレーナーとしても少しは腕を上げたことにもなるのだ。 「じゃあ、次は……」 図鑑を操作して、アチャモのページを開く。 「使える技は、と……」 火の粉、つつく、引っ掻く、鳴き声…… 今のところ試したのは火の粉とつつく攻撃。 昨日のバトルでつつく攻撃は分かったから、次は…… 「アチャモ、木の幹に引っ掻く攻撃!!」 続いて指示を下すと、アチャモは一直線に手短な木に向かって駆け出した!! スピードはそれほど早くないにしろ、走らせればその分だけアップすることだろう。 一定の距離まで近づくと、ジャンプ!! キックでもするように、細い脚を前に向け―― 「チャモチャモチャモ!!」 乱れ蹴りの要領で木の幹を引っ掻き続ける!! 「なるほど、あれがアチャモの引っ掻く攻撃かぁ……」 どうやって引っ掻くんだろう? はじめはそう思っていたので、気になってやらせてみたのだが…… 意外と言えば意外なアクションに、アカツキは妙にあっさり納得していた。謎がひとつ解けてよかった……みたいな感じだろうか。 「次は鳴き声!! 頑張って、アチャモ!!」 「チャモ〜っ!!」 アカツキの鼓舞を受け、華麗に着地したアチャモが腹の底から声を絞り出す!! その声は鳴き声として、辺りに響き渡った。 鳴き声……直接相手にダメージを与える技ではないが、使うタイミング如何では戦況をひっくり返すことも可能な技だ。 得てして、ポケモンの技には無限の可能性が存在するものだ。 鳴き声を聞かせることで相手をビックリさせ、一時的に攻撃力を下げる。 物理タイプの攻撃が得意なポケモンに対しては効果が大きい。 続いては―― 「アリゲイツ、アチャモを睨みつけるんだ!!」 アチャモがビックリした顔でアリゲイツを見つめ、アリゲイツは…… 「ゲェイィツゥ……」 低い唸り声を上げながらアチャモを凝視する。眼差しを尖らせるアリゲイツに、アチャモはびくびくと震え出した。 度胸がないと言われればミもフタもないが、相手が並のポケモンであれば、足が竦んだりする効果も期待できる。 ビックリさせて相手の防御力を下げる、それが睨みつけるという技の効果だ。 「アリゲイツ、もういいよ。アチャモもよく頑張ったね」 アリゲイツの『睨みつける』から解放されたアチャモは、緊張の糸がプツリと切れたように、その場に座り込んでしまった。 対照的に、アリゲイツはそれほど疲れた様子を見せていない。ワニノコから進化したことでタフになったからだろう。 アカツキは座り込んでいるアチャモを抱き上げると、言葉をかけた。 「アチャモ、アリゲイツ、ご飯食べよっか。ぼくもお腹ぺこぺこだからさ」 「チャモ!!」 「ゲイツ!!」 腹をさすりながら言うと、待ってましたとばかりにアチャモもアリゲイツも大きな声で返事して頷いた。 起きてから、朝食を摂ることなく一時間以上特訓を続けてきたのだ。 これで空腹にならないはずがない。 二体とも食べ盛りな年頃(?)なのか、食欲に関してはアカツキのそれを遥かに上回っている。 あれだけたくさんの食物が一体どこへ消えるのやら…… アカツキは常々不思議に思っていたが、そんなことはよくよく考えてみればどうでもいいことだった。 ――元気だったらそれでいいじゃない? いつからかそういう風に思えるようになったからだ。 図鑑をポケットにしまい、アカツキはアチャモを肩に乗せ、アリゲイツと共にポケモンセンターへと戻った。 少し離れた場所を選んだのは、あまりに近すぎるとポケモンセンターを巻き込んでしまう恐れがあったからだ。 それに、声や鳴き声などで寝泊りしているトレーナーに迷惑がかかると思慮した末の結論だった。 まあ、それが手頃な運動になるのだから、ある意味で一挙両得以上の効果が期待できたのかもしれない。 食べ物をねだる腹の虫を宥めるように、腹をさすりながら歩くうち、やがて前方にポケモンセンターが見えてきた。 丸太小屋(ログハウス)のような外見は、102番道路を少し外れた森の中にあることを意識させる。 自動ドアを抜けると、爽やかな風が吹きつけてきた。 特訓でいい汗をかいた彼らにとっては、とても気持ちよかった。 昨今話題に上ったマイナスイオンをたっぷり含んだ風で、身体によい影響を与えるとされている。 「特訓お疲れさま。朝食は用意してあるわ。たくさん食べてね」 「はい」 ポケモンセンターに入るなり、ニコニコ笑顔のジョーイが労いの言葉をかけてくれた。 相変わらずの職業病……とはいえ、コトキタウンでも同じ顔のジョーイを見たので、どことなく安堵感を覚える。 このセンターでの食事はバイキング形式ではない。和食、洋食、中華の三種類の中から選ぶようになっている。 ジョーイ曰く、泊まる人がそれほど多くないので、バイキング形式の方がかえって残飯が多く出てしまい、処理が大変なのだそうだ。 アカツキは食堂に向かいながら、昨日ジョーイに言われたことについて考えていた。 「ハルカでもユウキでもないんだ……どこまで先に進んだんだろう?」 数日前からこのポケモンセンターを根城にしている少女がいるそうだ。 もしかしたら……と思って訊いてみたが、外見的な特徴からすると、ハルカとは別人らしい。 まあ、彼女はトウカシティにお父さんがいるわけだし、そちらに向かうにしても道を間違えたりはしないだろう。 アカツキのように、アクシデント(?)でコースアウトしない限りは。 とはいえ、トウカシティまでは少なくとも一日はかかる。 野宿か、あるいは102番道路にある(と思われる)ポケモンセンターに泊まるか。 まあ、それはどっちでもいい。彼らは彼らの旅を続けているのだ。 「ぼくもぼくの旅を続ければいいだけの話さ」 と、完結したところで食堂に入ると、鼻孔をしたたかに突く食事の香りに思わず頬が緩む。 ラッキー――ポケモンでありながら、ジョーイの助手を勤めている――が用意してくれたものらしい。 テーブルには三人分の朝食と、ポケモンフーズ(ポケモン用の食べ物)が整然と並べられていたが、すでに先客がいた。 セイジだった。 「よう。お疲れさん」 「セイジ、起きてたの?」 「まあな」 彼はすでに席について食事を始めていた。 アカツキは彼の向かい側に腰を下ろし、ちゃんと「いただきます」と言ってから箸をつけた。 アチャモとアリゲイツにそこのところは分からなかったようで、無我夢中でポケモンフーズにかぶりつく。 泊まる人が少ないということから、テーブルはひとつだけだった。 丸太小屋の外見だから、中もそれに倣おう…… などというシャレたことを建設者が考えていたのかは不明だが、一本の木を削りだして作られたテーブルのようだ。 美味しい味噌汁をすすりながら、アカツキはセイジの横に視線を向けた。 どうやら、もうひとりの宿泊者はまだ起きていないらしい。手付かずの和食が残っている。 確かひとり少女が泊まってるって聞いたけど……そんなことを思いながら壁に目をやると、時計の針が七時半を差していた。 普通の人なら起きている頃なのだが、物音一つ聞こえてこない。 「ねえ、セイジ」 「ん?」 「あとひとりいるんでしょ?」 「らしいね。でも分かんない。昨日から姿見てないから」 「そっか……」 別に異性に興味があるわけではない。 だが、気になって仕方がないだけだ。 「で……一時間以上も頑張ってたんだな。いい汗かいてるじゃん」 「うん、結構サマになってきた気がするよ」 セイジが白いご飯を頬張りながら言うと、アカツキはニッコリと笑みを浮かべて頷いた。 自分で言うのもなんだが、たった一時間の特訓でも、アチャモとアリゲイツが使える技をよく知ることができたような気がする。 これで次のバトルからは、いちいちポケモン図鑑を開く必要もなくなる。 その分隙がなくなり、バトルを有利に進めることができるかもしれないのだ。 これは、新人トレーナーのアカツキには大きな進歩だった。 「アチャモもアリゲイツもね……」 一旦箸を置いて、食欲に任せてポケモンフーズを食べまくるアチャモとアリゲイツを見つめる。 微笑ましいものを見るような眼差しを、パートナーに向けている。 「よくがんばってくれたんだよ。 ホント、いい仲間を得たなって……そう思うんだ」 「ま、そうだろうね」 頷き、セイジは味噌汁を啜った。 新人トレーナーのレベルアップはこれほどまでに早いものなのか……そう思い知らされる。 昨日のアカツキと今日のアカツキは何か違うような気がするのだ。 具体的に何が違うのかと言われれば返答に詰まるが…… 「雰囲気とか違うよな。今のキミとバトルしたら、勝てるか分かんないな……」 少なくとも目に見える違いでないことは確信できる。 「そういえばアカツキ。トウカシティに行くって言ってたけど……?」 「うん」 「ミシロタウンからだと、コトキタウンを通ってきたんだろ?」 「うん」 「だったらカイナシティに行くこともできたんじゃないか?」 「うん、そうだけど……ぼくさ、トレーナーとしてもっともっと強くなりたい。 そのために、ジムのある街を目指してるんだ」 「ジムっていうと、ポケモンジム?」 「そうだよ」 なるほど……道理で早朝から特訓などするわけだ。 ポケモントレーナーがジム戦に挑戦するのは珍しいことでもない。アカツキも公式の大会に出たりするためにジム戦に挑むのだろうと思った。 「トウカシティには確かにジムがあるけど……挑戦するのか?」 「そのつもりだよ。勝てるか分からないけどね」 小さく舌を出して、アカツキは頷いた。 特訓で腹を空かせていたのか、それから瞬く間に朝食を平らげてしまった。 セイジにだって分かっている。 ポケモンジムにいるジムリーダーは、並のトレーナーではとても歯が立たないほどの実力を持っている。 挑戦者(チャレンジャー)はジムリーダーとポケモンバトルを行い、勝利を収めれば、ジムを制した証として、リーグバッジを与えられる。 だが、ジムリーダーに勝つのは簡単なことではない。 リーダーが多少手加減してくれるとはいえ、それを差し引いても、新人トレーナーが楽に勝てるほど甘くない。 アカツキはそれを知っているのだろうか? ふと、そんなことを考えてしまう。 「まあ、あんまり関係ないんだけどな……」 モーニングコーヒーを口に含み、その考えをさっと霧散させる。 それはアカツキの問題であり、自分が口を挟むものではない。 アカツキとしても、ジムリーダーが普通のトレーナーと一線を画した存在であることは分かっている。 それに、やるからにはできることを一つずつやってみるつもりだ。やる前からあきらめるのは大嫌いなのだ。 「でも、できることはやってみるつもりだよ」 「勝てるといいな?」 「うん。セイジはどうするの?」 「ああ、オレか」 セイジはコーヒーカップをテーブルに置き、腕を組みながら答えた。 「しばらくはこのポケモンセンターを根城に、辺りのポケモンの観察を続けるつもりさ。 まだ見足りないし、知らないポケモンもいっぱいいるみたいだからな」 「そうなんだ……」 げっぷ。 ……と、ゲップなど立てながら、アチャモとアリゲイツが揃ってその場にへたり込む。 お腹いっぱい食べたのだろう、ポケモンフーズは一欠片も残されていなかった。 食べかすが散らかっていないところからして、「いただきます」を言わなかった割にはずいぶんとお行儀よく食べていたらしい。 「トウカシティに行くには、道をまっすぐ行けばいい。そのうち102番道路に出るから、そのまま道なりに進んでけば行けるはずだ。 そうだな、夕方前にはたどり着けると思う」 「そっか……」 アカツキは深く、何度も頷いた。 「すぐにでも出発するのか?」 「そうするよ。いろいろお世話になったね、ありがとう」 椅子を蹴って立ち上がる。 その音に驚いて、アチャモがびくっと身体を震わせる。 アリゲイツはというと、度胸が据わっているのか、それとも慣れているだけか……立ち上がったアカツキに視線を向けるだけだった。 「まあ、頑張りなよ。キミは結構いいカンジしてるから……きっと勝てるさ」 「うん。それじゃあね、セイジ」 アカツキは振り返り、笑みを浮かべて片手を上げると、アチャモとアリゲイツを連れて食堂を後にした。 空になった彼の皿をラッキーがせっせと回収していくのを視界の隅に認めながら、セイジはふっと息を吐いた。 「トレーナーになって三日目とは思えないな……まったく」 口調はぶっきらぼうだったが、その顔には笑みが浮かんでいた。 アカツキは宿泊していた部屋に取って返すと、荷物をまとめてポケモンセンターを後にした。 向かうはもちろん、初めてのジムバトルを行う、トウカシティだ。 102番道路に続いている道をアチャモとアリゲイツと共に歩きながら、アカツキはいろいろなことを考えていた。 トウカシティには何度か行ったことがあるが、その時は102番道路を通ったので、道路から外れたところに迷い込んだことはなかった。 だが、今はどうだろう? 空を振り仰ぐ。 生い茂る木の葉の合間から覗く空は青く澄み渡り、棚引く白雲が音もなく流れていくのが見えた。 「旅に出たから、こうしていろんなこと体験できるんだろうな……」 旅に出るまでは、考えもしなかった。 街と街を結ぶ道路から外れたところに行くなんてことは。 でも、そのおかげでセイジと会えたわけだし、ポケモンバトルだってできた。 つくづく不思議だと思う。 考えもしなかったトラブル(?)がいろいろと転がり込んできては、様々な体験をもたらしてくれる。 普通の暮らしの中だったら、そんなのは金輪際お断り……と言いたいところだが、旅の中ではそうでもない。意外と楽しいものだ。 「まだまだ、いろんなことがありそうだな」 楽しいことばかりじゃなく……辛いことも、旅をしていく中で遭遇することなど、その時のアカツキには想像さえできなかった。 ただ、今は……旅の中で出会うすべてに期待を膨らませるばかりだった。 第6話へと続く……