リーグ編Vol.03 帰郷、そして新たな戦いへ <前編> 興奮の冷めやらぬスタジアムで、閉会式が行われた。 開会式の時に灯された聖火は今も燃えているけれど、七日前と比べれば、その輝きは弱くなっている。 今年のホウエンリーグが終わると同時に、聖火も消えるんだ。 数列に並んだ参加選手の前で、ホウエン支部の理事が目を輝かせながら講評を述べている。 どこにでもありがちな言葉が連発されるだけで、ハッキリ言ってどうでもいいものだったけど、とりあえず聞くフリ。 いつ終わるんだろうと思いながら聴いていたら、意外と早く終わった。 というのも、ホウエンリーグの最後のイベントである、表彰式が行われるんだ。 普通はさっさとやっちゃうものなんだろうけど、実際に一番盛り上がるのが表彰式で、 それをクライマックスにした方がリーグの運営には一番都合がいいんだそうだ。 ちなみに、そのことを教えてくれたのは、理事の隣でニコニコと笑顔を振り撒いているミクリさんだ。 彼はポケモンリーグの役員の一人で、この大会の運営にも大きく関わっているそうだ。 ミクリさんにはお世話になったけど、もうすぐお別れだ。 一週間後に開幕するカントーリーグに出場するために、オレはホウエン地方を発たなきゃいけないから。 できれば、今日中に船に乗ってホウエン地方を発ちたい。 カントーリーグに気持ちを切り替えるのと、ダブルバトルに慣れすぎたみんなを、シングルバトルに特化させるためだ。 理事の目の前に表彰台が用意され、表彰式が始まった。 一位から三位までの選手が表彰台に登る。 一番高い段には、激しい戦いを制して優勝を勝ち取ったアカツキが、二段目には惜しくも敗れたユウスケが。 段上に登る時に一瞬だけ見えた表情。 アカツキはこういう場面に慣れていないらしく、緊張しきった面持ちだったけど、ユウスケは澄ました表情をしていた。 キャリアの差か、それとも…… なんて考えていると、三位の選手に銅のモンスターボールが先端についたトロフィーが手渡された。 二位のユウスケには銀のモンスターボールのトロフィーが。 そして、優勝したアカツキには…… 「アカツキ選手。優勝、おめでとう」 満足げな表情でアカツキにトロフィーを手渡したのはミクリさんだった。 土台には惜しげもなく銀が使われ、美しい水晶(クリスタル)で作られたトロフィーには金のプレートが埋め込まれている。 ハッキリは確認できなかったけど、金のプレートには、優勝者の名前が彫り込まれているようだった。 どこを探しても世界にひとつしかない、アカツキだけの優勝トロフィーだ。 優勝の栄誉や達成感はもちろんだけど、こういう風に目に見える形で努力を結晶化したものを受け取れるんだから、当然うれしくなる。 「ありがとうございます!!」 アカツキはミクリさんに礼を言うと、笑顔で振り返って、トロフィーを高々と頭上に掲げた!! その瞬間、割れんばかりの歓声と拍手が、スタジアムを包み込んだ。 アカツキは、本当にうれしそうな表情をしていた。 友達(ライバル)の喜びぶりを肌で感じているんだろう…… ユウスケもうれしそうな、でもどこか少し困ったような表情でアカツキを見ていた。 オレもサトシも、惜しみない拍手を贈った。 オレは優勝できなかったけど、アカツキが優勝したって分かった瞬間はとてもうれしかった。 まるで自分のことみたいに感じられたんだ。 名前が同じだから……っていうワケじゃない。 友達が優勝するのって、自分が優勝したのと同じくらいうれしくなるものなんだな、って思ったよ。 ――感動と興奮に包まれて、ホウエンリーグは幕を閉じた。 参加選手や観客が、街の麓から出る定期船に乗って、それぞれの故郷へと戻っていく。 何百段の階段の上――サイユウシティの入り口で、オレたちは立ち止まった。 アカツキは優勝トロフィーを大切そうに抱えながら、右隣にいるユウスケに振り向いた。 「ユウスケ、これからどうするの?」 「オレ? どうしよっかな……」 これからどうするのか…… それは、アカツキからすれば気になることだろう。 死闘を繰り広げた相手がこれからどこへ行き、どんなバトルをして、どんなトレーナーになるのか。気にならないはずがない。 もちろん、オレもサトシも。 サトシはユウスケと面識がなかったらしく、三回戦で戦った時が初対面だった。 負けたけど、素直にユウスケのポケモンの強さを褒め称え、あっという間に意気投合して友達になった。 ポケモンバトルって、そういうものなんだ。 戦っている時は敵同士でも、バトルが終われば友達になれる。 オレも、そうやって何人と友達になっただろう。 今までに友達になったトレーナーたちのことを振り返っていると、ユウスケは空を見上げてつぶやいた。 「ここからずっと遠く離れたところに、オーレって地方があるんだけど、そこに行こうかと思ってる」 「オーレ地方……?」 聞き慣れない名前の地方に、オレもアカツキもサトシも揃って首をかしげた。 まったく同じ向きに首をかしげたものだから、ユウスケは小さく噴出していた。 ニコニコしながら、続ける。 「実は、外国なんだ。 言葉は違うけど、一応勉強しといたから大丈夫。 ホウエンやカントー、ジョウトとは違ったポケモンが棲息してるって話だから、ぜひ行ってみたいと思ってたんだよ。 今以上に強くなるには、知らないことをひとつでも知らなきゃいけない。 次、絶対に勝つために……」 外国か…… 道理で知らないと思った。 言葉も文化も違う場所に行くのって、口にするのはとても簡単だけど、実際にやるのはとても大変だ。 言葉の違いは勉強でどうにかなるけど、文化の違いは感覚的なものだから、そう簡単に克服できるものじゃない。 この国じゃ当たり前なことでも、他の国では禁忌とされているものもあるくらいだ。 でも、ユウスケはそこへ行くのだと言う。 言葉を勉強したと言うところを見ると、前々から行こうと、決意を固めてたってことなんだろう。 ユウスケらしいと言えば、ユウスケらしいかな。 次にアカツキと戦う時は絶対に勝つ。 負けたままでは終わらせたくないということだ。 それはオレも同じことなんだけどな…… 「ユウスケ。頑張ってね。キミに言うのって、なんか変だと思うけど」 「ああ、まったくだ」 アカツキがニコニコしながら言うと、ユウスケは満足げに微笑んだ。 二人とも、言葉にも表情にも出さないけど、寂しいって思ってるはずだ。 外国となると、気安く連絡は取れないし、会うのも難しい。 たぶん、数年単位で会えなくなるだろう。 いずれ戻ってくると分かっていても、友達との別れは辛いものなんだ。 オレだって、ナミと別れるのにいろいろと葛藤とかしてきた。 だから、それがよく分かるんだ。 アカツキは引き止めないし、ユウスケも行く気満々だ。 ユウスケはアカツキの眼前に握り拳を突きつけて、挑戦的な口調で言った。 「戻ってくる時にはちゃんと連絡入れるから、首を長くして待ってろよ」 「うん。楽しみにしてる」 「あと……元気にしてるんだぞ。いいな?」 「もちろん。ユウスケも元気で……」 アカツキの表情に、一抹の寂しさが混じる。 別れは、新たなスタートでもある。 ここから、二人の戦いが再び始まるんだ。次の戦いではどちらが勝つのか……それは分からない。 だって、さっきの決勝戦は、どっちが勝ってもおかしくなかったから。 バトルの行方が分からないのは、いつだって同じ。 「ボーマンダ、出て来い!!」 ユウスケはモンスターボールを頭上に投げ放って、ボーマンダを繰り出した。 「がおぉぉぉっ!!」 ボーマンダは外に出られたのがうれしいのか、とてもうれしそうに空を飛びまわっていたけれど、すぐにユウスケの傍に舞い降りた。 ユウスケはボーマンダの頭を撫でると、その背中にまたがった。 ボーマンダが翼を打ち振って、飛び上がる。 「じゃあな!!」 ユウスケが大きな声で言うと、アカツキはトロフィーを持っていない方の手で、遠い場所へ旅立つ友達に大きく手を振った。 ボーマンダは百メートルくらいの高さまで浮上すると、東の方角へと飛び立った。 瞬く間に、ボーマンダと、ボーマンダにまたがったユウスケの姿は見えなくなった。 アカツキはしばらく、何も見えなくなった東の空を眺めていた。 けれど…… 「ぼくたちも行かなきゃね。ユウスケも旅立っちゃったし……ぼくも、負けちゃいられないから」 「そうだな!!」 アカツキの力強い言葉に、サトシが大きく頷いた。 そうだな…… オレは言葉にこそしなかったけれど、心の中で頷いていた。 だって、オレにはカントーリーグという次の戦いの舞台が待ってるんだ。 ハルカやミツルといったライバルが、今頃はセキエイ高原にたどり着いて、開幕の時を待ち侘びているに違いない。 あいつらにも、負けられない。 「よし、行こうぜ!!」 オレの鶴の一声に、アカツキとサトシが頷いた。 「それじゃあ、一回ミシロタウンに戻ろうよ。これを持ったままっていうのも、大変だし……」 アカツキが弱音を吐く。 よくよく見てみると、トロフィーはそれなりに大きいし、紙や木でできているわけじゃないから、結構重いんだ。 アカツキはユウスケがいた時に我慢していたらしい。 「出てきて、チルタリス!!」 トロフィーを両手に抱えたまま呼びかけると、モンスターボールが勝手に開いて、中からチルタリスが飛び出してきた!! 「チルルッ!!」 チルタリスはアカツキの傍に舞い降りると、綿雲のような翼を折りたたんだ。 あの翼に首や脚を引っ込めれば、本当に普通の雲と見分けがつかなくなる。 アカツキはこの八日間の戦いの中で、チルタリスに雲に紛れるように指示を出したことがあった。 「アカツキとサトシはどうするの? カントー地方に戻るの?」 「ああ。みんな、待ってるし」 「オレにはカントーリーグもあるからな……ノンビリしてられない」 アカツキの言葉に、オレとサトシは口々に言った。 サトシはこれからどうするんだろう? しばらくは、マサラタウンで羽を休めるんだろうか。 それとも、数日滞在した後は、新しい場所へと旅立つんだろうか。 アカツキはミシロタウンに戻って、しばらくはノンビリするんだろうと思う。 今まで頑張ってきた分、親父さんの傍にいたいだろうし…… できれば、親父さんと一緒にいた方がいいだろう。 「じゃあ、ミシロタウンまで一緒に戻ろうよ。チルタリスの方が船より早いよ!!」 「そうだな……じゃあ、そうさせてもらおうかな」 オレはアカツキの申し出を一も二もなく受け入れた。 やっぱり、船よりも空を飛べるポケモンの方がよっぽど早い。 オレは空を飛べるポケモンを持っていないし、サトシもオオスバメに乗るわけにはいかない。 チルタリスはオレたちを乗せても大丈夫だけど、オオスバメは鳥ポケモンの中でも中型で、人を乗せることはできない。 「チルタリス、ぼくたち三人が乗っても大丈夫かい?」 やっぱり、アカツキは優しい。 有無を言わさずに乗り込めばいいものを、わざわざチルタリスに確認を取るんだ。 でも、そうやってポケモンのことを気遣う姿勢を忘れないからこそ、ポケモンから全幅の信頼を得ることができたんだろう。 チルタリスは、笑顔で嘶いた。 大丈夫だって言ってるんだ。 無理にイエスと答えたとは思わない。 チルタリスは体力的にも優れているし、オレたち三人を乗せてミシロタウンまで飛ぶこともできるだろう。 アカツキのことだから、途中で休ませたりすると思うけど。 それなら、ミシロタウンまで運んでもらおうかな。 ついでに、オダマキ博士やカリンさんに会うのもいいだろう。 「じゃあ、行こう!!」 「おう!!」 オレたちはチルタリスの背中に乗った。 三人だとやっぱり窮屈さを感じるけど、この際贅沢は言っていられない。 ちょっとくらいなら身動きできるし、途中でどこかの島に降り立って、動くこともできる。 「じゃあ、チルタリス。お願いね」 「チルルッ!!」 チルタリスは嘶くと、翼を広げて飛び上がった。 フワリと浮き上がるようにして、あっという間に五十メートルの高さに舞い上がった。 眼下に、オレたちの戦いの舞台が小さく見えた。 来年の今頃になるまで、この街は再び静かになるんだろう。 そんなことを思っていると、チルタリスは飛び立った。 ミシロタウンのある西へ。 視界の先に、ホウエン本島がうっすらと姿を見せる。 ミシロタウンは、もっともっと西にある。 今日中にはたどり着けると思うけど……どうやら、今晩はミシロタウンで過ごすことになりそうだ。 途中でチルタリスを十分に休ませながらミシロタウンを目指す。 海の上に作られた浮島のような町、キナギタウン。 ホウエン地方の玄関口のひとつであるカイナシティ。 そして、陽が西の水平線に沈むか沈まないかという日暮れ時に、ミシロタウンにたどり着いた。 「あとでぼくの家においでよ。お母さんに頼んで、たくさん料理を作ってもらうから。ね?」 「ああ、必ず行くよ」 「うん、待ってるから!!」 アカツキはチルタリスをモンスターボールに戻すと、自分の家へ向かって駆け出した。 優勝しての凱旋……今夜はパーティになるだろう。 もちろん主賓はアカツキだ。 アカツキの優勝が、親父さんに勇気や希望を与えられたら、オレとしてもそれ以上にうれしいことはない。 アカツキの姿が路地の向こうに消え、サトシと二人になった。 「どうする?」 サトシが声をかけてくる。 オレはアカツキが駆け出した方向とは逆に伸びる道に目をやった。 「先に、オダマキ博士の研究所に行くよ。いろいろ世話になったし……カントーに戻る前に、一言でも礼を言っておきたいからさ」 「そっか……オレもオダマキ博士にいろいろとよくしてもらったからな。じゃ、一緒に行こうぜ」 「オッケー」 あっという間に話が決まって、オレたちはオダマキ博士の研究所を目指して歩き出した。 「なあ……」 「うん?」 歩いていると言っても、話もしないんじゃ、退屈で仕方がないんだろう。 人気もなく、ひっそりと静まり返った町。 サトシはひっきりなしに話しかけてきた。 「優勝できなかったな」 「ああ。未練が残ってるのか?」 「いや、そういうんじゃないよ」 「じゃあ、なんでそんなこと言うんだ?」 「オレがおまえに勝ったあの後……おまえ、ポケモンセンターで泣いてただろ。ちょっと、気になってさ……」 「見てたのか……」 「ううん、そんな気がしただけさ」 ……引っ掛けられた。 まさかサトシに言葉で足下をすくわれるなどとは考えたことがなかっただけに、衝撃的だった。 でも、オレの頭の中に思い描いてたサトシよりは成長してたってことなんだよ。 悔しいけど、それだけは認めなくちゃいけないんだよな。 「おまえのことだから、泣いてるとこなんて、人には見せないだろうし」 「……まあな」 オレは頷いた。 何気に人の気持ちってのを分かるようになってきたじゃないか。 筒抜けになってたのがちょっと悔しいけど。 「おまえに負けて悔しかったさ。 ラッシーを出してりゃ勝てたかもしれないって思った。 でも、それは言い訳でしかないし、何より、そんなことを考えてたら、ラッシーに申し訳が立たないだろ」 仮定の話なんて無意味だ。 結果が出た以上、嫌でもそれに従うしかない。 だから、そういう風に考えるのは言い訳でしかないし、誰よりもオレが負けたことを気にしているラッシーに申し訳ない。 自分が出ていれば……と、ラッシーは結構深刻に受け止めてた。 オレに対する信頼があるからこそ、逆に責任も大きく感じてしまうんだ。 今じゃもちろん、そんなことを気にしてないと思うけど…… オレは親指をまっすぐ立てた。 「でもさ……おまえに負けて、いろいろと分かってきたこともあったんだ。 だから、負けた悔しさはあっても、それ以上のものはないよ」 「そっか……オレ、あんだけ大口叩いたのに、ユウスケに負けちまって。 おまえに申し訳ないなって思ってた。 おまえがそう思うのを望んじゃいないって、分かってたんだけど……やっぱり、ちょっとは気にしてるんじゃないかって思って」 「それくらい分かってたさ。 でも、おまえはおまえなりに精一杯やったんだから、それでいいじゃないか」 「そうだよな」 サトシも何気に気にしてたみたいだ。 互いに、どうでもいいことは、つまらないことは気にしちゃうタイプらしい。 何気に、笑えるよ。 クスクスと小さく笑っていると、サトシは驚いたように振り向いてきた。 「負けた悔しさをバネにして、これから頑張っていけばいいさ。オレたちにならそれができる。 だろ?」 「あ、ああ……!!」 簡単なことさ。 だって、旅立った時には、自分があれだけのバトルをやれるようになるなんて、想像もつかなかった。 もっと時間がかかると思ってた。 でも、一年と経たずにあれだけ成長したんだって、サトシとバトルした時に、一番それがよく分かったんだ。 一年でそれだけできるんだから、二年、三年が経ったら一体どうなる!? 今よりももっともっとすごいことになってるはずさ。 もちろん、そうなるためには努力が必要だし、忍耐だって多く求められるだろう。 オレたちにならそれができるのさ。 熱くなっていろいろ話すうち、オレたちはオダマキ博士の研究所に到着した。 出迎えてくれたのはユウキだった。 ミナモシティの郊外にある、ミナヅキ所長の研究所から帰ってきていたらしい。 一回りも二回りも大きくなったユウキは、歳相応の少年でいて、一人前の研究者でもあった。 研究所で多くのことを学んで、それらをオダマキ博士の研究に役立てようとしているそうだ。 それに、大人になった。 軒先で話すんじゃなくて、オダマキ博士やカリンさんも呼んで、ロビーでいろいろと話した。 久しぶりに会ったお二方は相変わらずで、それぞれの研究に情熱を惜しげなく注いでいた。 オレやサトシはホウエンリーグのことを話したし、それまでにゲットしたポケモンを見せたりもした。 その度にカリンさんが怪しげに目を光らせてニヤニヤしてたり、ユウキがポケモンたちの周囲を忙しく動き回って観察し始めたり…… 楽しいと思う時間は、あっという間に過ぎた。 一時間ほど話をしたところで、オレたちはアカツキの家に向かうことにしたんだけど…… 当然と言えば当然か、オダマキ博士一家もついてくることになった。 二人は五人となって、アカツキの家に押し寄せた。 それを予想していたらしく、アカツキもアカツキのお母さんもまったく驚いたりしなかった。 その証拠に、リビングに通されると、テーブルの上にはたくさんの料理が並んでいた。 久しぶりにアカツキの親父さんと会ったけど、結構元気そうだった。 笑顔も見せてくれるし、オダマキ博士のことだって忘れてるはずなのに、本当に友達のように気さくに接している。 オダマキ博士の人柄や、周囲の温もりもあって、親父さんは記憶を失くす前の親父さんに戻りつつあると、 アカツキは親父さんの笑顔を見ながらそっと耳打ちしてくれた。 「……やっぱり、分かってるんだろうな……」 オレは思った。 アカツキが頑張ってることを知って、親父さんも頑張ろうって思うようになったんだろう。 前半はホウエンリーグで優勝したアカツキが話題の中心だったけど、 後半はすっかり大人と子供で見えない柵によって完全に分断されていた。 大人四人は楽しそうに談笑している。 「……やれやれ、オレたちは蚊帳の外ってワケかい……」 ユウキが困ったような顔で小さくつぶやくと、お手上げのポーズを取ってみせた。 わざと大人に見える位置でやってるんだけど、当の大人は気付いていないのか、それとも気付いてないフリをしてるだけなのか……微妙なところだ。 大人たちが勝手にワイワイ騒いでるのを傍目に、オレたちはベランダに場所を移した。 どっちが子供だか分からないくらい、大人たちは大きな声で笑ったりしてるんだ。 そんな状況じゃ、シリアスな話だってする気になれない。 で、場所を移してからは、大人同様にいろいろと話し始めたわけで……冷静に考えてても、大差ないな。 「で……これからどうするんだ?」 啖呵を切ったのはユウキだった。 当分はこの町に落ち着くんで、余裕の構えだ。これからするべきこともとっくに定まってるだろうし。 「もちろん、カントーに戻るよ。やらなきゃいけないことがいっぱいあるからな」 オレはユウキの問いかけに答えた。 「ああ、そうだよな」 頷くサトシ。 サトシはカントーリーグにも出ないわけだし、少なくともカントーリーグが終わるまではマサラタウンにいるんだろう。 でも、カントーリーグが終わったら、たぶんまたどこかに旅に出る。 それはオレも同じだ。 ユウスケが向かったオーレ地方じゃなくたって、この国には他にたくさんの地方がある。 「親父に聞いたぜ。カントーリーグに出るんだって? だったら、こんなトコで油売ってていいのか?」 「間に合うさ」 ユウキのちょっとトゲの生えた言葉にも、オレは余裕で答えた。 ちょっとキツイけど、それもユウキなりのエールだろう。 「これでも、気持ちは結構切り替わってるんだぜ。 それに、みんな本当はダブルバトルよりもシングルバトルの方が得意だからな…… 何回かバトルさせれば、すぐにカンを取り戻せるだろ」 むしろ、オレよりもみんなの方が先に気持ちを切り替えてるんじゃないか、とさえ思えるんだ。 だから、そんなに心配はしてない。 そのことを伝えると、ユウキは拍子抜けした顔をして、肩をすくめてみせた。 言うだけムダだったか……って物語ってたりする。 「おまえはどうなんだよ。 オダマキ博士を手伝ってフィールドワークに精を出すんだろ」 「もちろんさ。ミナモシティの研究所で勉強したことがとても役に立ってるからな。 前よりもずっと踏み込んだことができるし、違った視点で見ることもできる。 やっぱ、研究って楽しいよ」 オレの問いに、ユウキは我を忘れたように――あるいは酔いしれたように、とても楽しそうな声で返してきた。 やっぱり、こいつは研究者になる道を選ぶんだろう。 「で……」 なにやら夢想しちゃってるユウキはほっといて…… オレはアカツキに顔を向けた。 オレとサトシはカントーに戻る。 ユウキは研究者としての道を歩いていく。 さて、残りはアカツキだ。 これからどうするつもりなのか。 「おまえはどうするんだ、アカツキ」 「そうだねえ……」 アカツキは夜空に浮かぶ月を見上げて、なにやら考え込んだ。 まだ決めてないんだろうか。 「ホウエンリーグだって終わったばっかりだし、いきなり決めるってのも無理じゃないの?」 サトシが茶々を入れる。 確かにそりゃそうだ。 ホウエンリーグは終わったばかり。これからの道を決めるには、オレたちはあまりに早すぎたのかもしれない。 まあ、次の目標があるから、そこへ行かなければならないわけだし……そこんとこは有無を言わさず、って感じだよな。 まだ決まってないのなら、無理に聞く必要もないか。 そう思って別の話題に変えようと口を開きかけた時だ。 「別の地方に行こうと思ってるんだ」 アカツキがポツリと言った。 どこか迷いを含んだような声音で。 「また旅に出ちゃうのか?」 「うん」 むしろ、驚いていたのはユウキの方だ。 少しはゆっくりするんだろうと思っていたのに、アカツキの口からは旅に出るという言葉が飛び出してきた。 離れていた時間が長いから、その分だけはまた親友として近くにいようと思ってたんだろうな。 でも、だからってユウキはアカツキの足かせになるような言葉は言わなかった。 「そっか。どこの地方に行くんだ?」 「まずはカントー地方かな。 アカツキやサトシからいろいろと話を聞いて、行ってみたいと思ってたんだ」 アカツキは迷いもせずに言った。 カントーに行く……か。 となると、マサラタウンまでは一緒に行くことになるな。 「寂しくなるな。 でも、それがおまえの道だって言うんだったら、オレは止めやしないよ」 「ありがとう、ユウキ」 アカツキとユウキは互いに顔を向け合った。 笑みこそ浮かべているけれど、互いに寂しい気持ちを共有しているのは間違いない。 親友ってそういうものだって思う。 「おい、サトシ」 「なんだよ」 「オレたちは席を外そう。こういう時は二人っきりにしてやらなきゃな」 「……?」 オレがせっかく気を利かせてるのに、サトシは何がなんだか分からないといった表情で首をかしげた。 あー、こいつは…… なんで皆まで言わなきゃ分からないかな。 ムカムカした気持ちを持て余しつつ、オレはサトシの耳元で小さくささやいた。 「またしばらくこの町離れるんだから、いろいろと話したいこととかがあるんだよ。 だから、オレたち外野がいたってしょうがないってこと。分かったか?」 「ああ、そういうことか。それなら分かった」 ここまで言って、やっと分かってくれた。 他人の気持ちが分かるようになったかと思ったら、こういうシリアスな話に関してはまったく分かってない。 オレはサトシを連れて、アカツキとユウキに気付かれないようにそっと、リビングに戻った。 時々ベランダに顔を覗かせた時、アカツキとユウキは真剣な表情で何かを話していた。 耳を欹てる気にもなれないし、オレたちが立ち入ることでもないからさ。 「…………」 何をするでもなく、テーブルに肘を突いてボーっとする。 やることがないのって、意外と大変なんだなあ……って思う。 大人は大人で話しているし、サトシはモンスターボールをテーブルに並べて、一つ一つ磨き始めるし…… オレだけがヒマになったなあ。 さて、何をしよう。 やるべきことと言えば…… 「あ、そうだ」 思いついて、オレは手を打った。 そっとアカツキのお母さんの傍に歩み寄り、声をかけた。 「あの、電話貸してもらっていいですか」 「ええ、いいわよ。廊下の左側にあるから、使ってちょうだい」 「ありがとうございます」 話の途中で声をかけられたというのに、お母さんは嫌な顔をせずに応対してくれた。 オレは言われたとおり、廊下に出て、左側に身体を向けた。 壁に薄型の画面が貼り付けられたテレビ電話だ。今じゃ、どこの家にでもテレビ電話が普及してるからな…… オレは受話器を手に取り、本体のボタンを押した。 通話モードに入り、電話番号を入力していく。 ただし、今回はテレビ機能を使わず、音声だけで。 電話番号を入れ終わった後、オレは映るはずもないテレビ画面を見やった。 廊下の照明にうっすらと映し出されたオレの顔は、ちょっと疲れているように見えた。 気のせいだろうと思いながら、相手が出るのを待つ。 呼び出し音が七回鳴ったところで、通話が始まった。 「はい、どちら様ですか?」 聞きなれた懐かしい声が電話口に現れた。 「アキヒトおじさん? オレです、アカツキです」 「アカツキ? 本当かい? いやあ、久しぶりだねえ……」 「はい」 電話に出たのはアキヒトおじさん。 そう、オレはナミの家に電話をかけたんだ。 明後日には戻る……それを伝えるために。 本当はじいちゃんや親父に連絡すべきなんだろうけど、なんでだろう。 一応、ナミが元気にやってるかどうか、確かめたくて。 心配しなくても、オレがいないくらいでへこたれてるようなヤツじゃないってことは、オレが一番知っている。 でも、八ヶ月ぶりだから、やっぱり気になる。 どうかしてるのかもしれない……心の隅にそんなことを思いながら、オレはアキヒトおじさんと話に興じていた。 「ホウエンリーグ観たよ。サトシ君と戦って負けたのは残念だけど、素晴らしいバトルだった。 ナミも、本当に自分のことみたいに悔しがってた」 「そうなんですか……やっぱり観てたんですね。 あー、情けない姿してたらどうしようかと思ってたんですよ」 「はっはっは。そんなことはないさ」 アキヒトおじさんはハルエおばさんと違って、包容力があって暖かい人だ。 悪い言い方をすれば必要以上に優しすぎるんだけど、オレはアキヒトおじさんのそういった優しいところが大好きなんだ。 でも、ちょっとだけ安心した。 アキヒトおじさんはウソをつかない人だ。 テレビ画面に映ったオレがみっともない姿をしてたらどうしようと思ってたんだけど……杞憂に過ぎなかったらしい。 「で、これからマサラタウンに戻ってくるのかい?」 「はい。そのつもりなんですけど、そのことでナミと話したいんです。もう寝ちゃいました……?」 「いや、この頃はなんだか夜も遅くてね。カントーリーグが目の前に迫って、いろいろとやってるみたいなんだよ」 「そうなんですか……」 ナミもナミなりに、いろいろと頑張ってるみたいだ。 普段は従兄妹でも、バトルになれば戦う相手――つまりは敵になる。 オレも単なる従兄妹じゃなくて、ライバルとして見てくれるようになったってことだろうか。 そうだとしたら、なんだかうれしいな。 「ナミに代わればいいんだね」 「お願いします」 アキヒトおじさんが受話器を傍に置いた音がした。 オレは知らず知らずに下ろしていた顔を上げた。 何も映ってない画面に映った表情は、疲れなんて微塵も感じさせない、むしろ喜びさえにじんでいるように見えた。 気のせいかな…… そう思っていると、アキヒトおじさんがナミを呼んだ。 ――パパ、なに〜? 相変わらず……みたいだな。 炭酸の抜けたソーダ水のような声。 でも、相変わらずで安心したよ。 あいつがあの性格でなくなったらどうしようって、一瞬だけ本気で心配になった。 これもまた杞憂で良かった。 ――電話だよ。 ――誰から? ――アカツキから。 ――え? アカツキから!? ――うん。マサラタウンに戻ってくるんだって。それでナミに話があるんだってさ。 ――すぐ行くっ!! 二人の声が聴こえなくなったかと思ったら、ドタバタと忙しそうな音。 木目張りのフローリングの床を蹴って駆けてくる音だろう。 その音は徐々に大きくなり、地揺れすら思わせた。 電話の台が揺れているから、そんな風に聴こえるんだろう。 「アカツキ!? ホントにアカツキなの!?」 電話に出たナミは喜びで胸がいっぱいと言うような声だった。 喜びが声ににじんでいて、顔は見えなくてもどんな表情をしているのかがよく分かる。 「ああ、そうだ。久しぶりだな、ナミ。元気にしてたか?」 「うん、もちろん!! アカツキも元気そうだよね。 ホウエンリーグ、観たよ。 サトシに負けちゃったのは残念だけど、アカツキ、とってもカッコ良かった!!」 「あ……? ああ、ありがとう……」 カッコ良かった……か。 他の人に言われたら単なる世辞としか受け取らない言葉だけど、ナミに言われると、なんだか照れくさく感じちゃう。 顔が火照ってるって、自分で分かるんだ。 ナミの目に、ホウエンリーグで戦ったオレはカッコよく映ったらしい。 だったら、優勝できなかったことも帳消しにできそうだ。 オレが心配したのは、優勝できなかったことよりも、むしろみんなにみっともない姿を見せたんじゃないかってことだった。 でも、そうじゃなかったって分かっただけでも、正直ホッとするよ。 「なあ、ナミ。明後日の昼過ぎにはマサラタウンに戻れそうなんだ」 「え、本当!?」 オレの言葉に、ナミが沸き立つ。 電話越しにも、あいつがドキドキワクワクしてるのが分かる。 「これからはカントーリーグが始まるだろ。セキエイ高原に行かなきゃいけないからな……一緒に行こうな」 「うん!!」 「そういえば、アキヒトおじさんから聞いたんだけど…… おまえ、夜遅くまで頑張ってるんだって? 昔のおまえじゃ絶対に考えられないことだったよな。 やっぱ、カントーリーグのことを意識してるんだろ?」 「そうだよ。だって、アカツキと戦うことがあるかもしれないでしょ? ほら、リンリちゃんの争奪戦じゃ負けちゃったけど……なんか、負けたままって悔しいじゃない」 いつにも増して饒舌だ。 それだけ喜びを感じてるってことだろう。 ナミとは二度バトルしたことがある。 ゲットしたリンリをどちらが連れて行くかって時と、サファリゾーンでゲットしたポケモンの強さを競う時だ。 いずれもオレが勝ったけど、今はどうなるか分からない。 互いに努力を重ねてきただろうし、互いに知らないポケモンもゲットしてきたからだ。 もちろん、マサラタウンに戻っても、オレはナミにポケモンを見せびらかすつもりはない。 なにしろカントーリーグで戦うかもしれない相手だ。 そんなことをしても、マイナスにこそなれど、プラスにはならない。 「ま、次に戦っても勝つのはオレだけどな……おまえだって頑張ってきたんだろうけど」 「ううん、勝つのはあたしだよっ♪」 ナミは妙に自信たっぷりに言ってきた。 うーん…… 以前のナミは、これほど自信に満ちた声をしていなかったような気がする。 いろいろと頑張ってきて、自分に対する自信と、ポケモンに対する自信を身につけたようだ。 それなら、どっちに転ぶかは分からないのかもしれない。 「そりゃ楽しみだ。じゃ、またな」 「え? もう終わり?」 「明後日になれば会えるんだからさ……今日はこれくらいにしとこうぜ。 おまえが興奮して寝付けない、なんてことになっても困るからさ」 「ぶーっ……アカツキのイジワル……」 「あはははは……」 ナミは今頃、膨れっ面をしてるんだろう。 なんか、結構面白い。 相変わらずからかい甲斐があるっていうか……本質的な部分は変わってないみたいだ。 「分かったよ。明後日になれば会えるんだもんね。 それじゃあね、アカツキ。おやすみ〜」 「ああ、おやすみ」 でも、何気に聞き分けがいい。 ナミの方から電話を切った。 「……あいつも変わったな」 オレはため息混じりに受話器を置いた。 「ずっと、オレの後をついてくるばっかりだって思ってたけど」 ホウエン地方に旅立つまではそうだった。 いつもオレの後をチョコチョコついてくるばっかりだった。 学校に行くのもそうだし、じいちゃんの研究所に行くのも一緒だったっけ。 でも、オレのいない日々を経験して、あいつも自分で考えて自分で行動するっていうことを学んだはずだ。 そうじゃなきゃ、あんな声を出せたりするはずがない。 「だから、あいつとバトルするのが楽しみだな……」 今のあいつとなら、いいバトルができそうな気がする。 胸に芽生えたのは予感じゃなくて、確信だった。 「それじゃあ、行ってきます」 翌日、オレたちはミシロタウンを旅立った。 オレとサトシはともかく、アカツキを見送った面々は両親にオダマキ博士の一家と、そうそうたる顔ぶれだった。 ミシロ港に停泊した船が出港するのは十分後。 「頑張ってね、アカツキ。 あなたならどこまでも行けるわ。わたしたちも頑張るから。ね?」 アカツキのお母さんは、息子の肩に手を置くと、横目で隣に立つ夫に頷きかけた。 「ああ……おまえが頑張ってるのを見てると、やっぱり父親として負けていられないと思うんだ」 「うん!!」 アカツキの親父さんも表情が明るくなってきた。 初めて出会った時は、本当にこの人大丈夫かと思うくらい、表情が乏しかった。 でも、今は以前ほどでないにしても、親子として接していられるようになったみたいだ。 「オレも頑張るからさ。おまえも頑張れ!!」 「うん!!」 親父さんに続いてエールを贈ったのはユウキだ。 昨日は笑顔の裏に寂しさをにじませていたけど、今は寂しさなんて微塵も感じられない。 アカツキはアカツキの道を行き、ユウキはユウキの道を行く。 ただそれだけのことだけど、親友だからこそ認めるのが辛かったんだって思う。 でも、昨晩アカツキと何かを話して、互いに頑張っていこうという結論に至ったんだろう。 目指す場所は違っても、努力の基準は同じ。だから、負けられないと思ったに違いない。 「アカツキ君」 「……?」 カリンさんが声をかけてきた。 「オーキド博士によろしく伝えておいて」 「分かりました」 いかにもカリンさんらしい。 こんな時にでも、じいちゃんへの挨拶を欠かさないんだから。 それだけじいちゃんのことを尊敬してくれてるんだって思う。孫としてうれしいよ。 なんて、いろいろと話しているうちに、汽笛が鳴った。 もうすぐ出発するから早く乗れという合図だ。 オレとサトシは一足先に乗り込んで、船の甲板から手を振る。 「おーい、アカツキ。早く来いよ」 「うん、分かった!!」 声をかけると、アカツキは元気よく頷いて、船に乗った。 オレたちの傍で、甲板から身を乗り出して、手を振った。 何の迷いも不安もない、希望に満ちた旅立ちを思わせる、明るい笑顔で。 その笑顔に、親父さんの表情がさらに明るくなる。 遠く離れても、互いに頑張っていくことはできる。 記憶を失う前の親父さんに戻るには、まだまだ時間がかかるだろう。 だけど、アカツキが頑張っている姿を脳裏に思い浮かべたなら、きっと頑張っていけるはずだ。 少なくとも、元通りに近い形にまでは持っていけるだろう。 オレには、それを信じることしかできない。 歯がゆいけれど、これは人様の家庭の問題だ。心の中で応援するだけ。 「またね、ユウキ!! またね、お父さん、お母さん!! おじさん、おばさん!!」 そして、けたたましい汽笛と共に、船は出港した。 船は自動車や飛行機ほどの速度を出せないし、加速度も低い。 だから、桟橋から手を振る人の姿が見えなくなるのに、十分以上かかった。 その姿がゴマ粒ほどの大きさになるまで、アカツキは一心に手を振り続けた。 疲れないんだろうか…… 横目でツッコミを入れるものの、笑顔が曇ることはなかった。 やっぱり、今のアカツキには希望しかないのかもしれない。 だけど…… オレも、ホウエン地方に向けて旅立った時は、不安なんてあんまり感じてなかった。 これからどんなポケモンがオレを出迎えてくれるんだろうと、期待の方が圧倒的に大きかった。 まるで、マサラタウンから旅立った時のオレを見ているようで、オレは知らず知らずに微笑んでいた。 To Be Continued...