???「ユウキ、おきなさい、ユウキ!」 ユウキ「うー・・・ん・・・あ、あれっ!?こ、ここはどこだ!もしかして悪の組織、ロケット団のアジトか!?     そうか、オレはつかまってそのままここにつれてこられたってわけか・・・」 ???「ぬぁぁぁに勝手にお話作ってんよ!ここはミシロタウン!これからあんたが暮らすとこ!」 ユウキ「うわっ!何だお前!!」 ハルカ「あたしはハルカ。あんたの家のとなりに住む可愛い女の子よっ、よろしくねv」 ユウキ「自己紹介のときだけかわいくアピールしやがって・・・」 ハルカ「何か文句あるの!?」 ユウキ「い、いえ・・・ありません・・・」 ハルカ「これからあたしたちが主人公になるんだから、しっかりやらないとね!」 ユウキ「しゅじんこう?えーっ、コイツとかぁぁぁ!!(涙)」 第1話 Boy meet Girl−出会い− ユウキ「なぁ母さん、ミシロってのはまだか〜?」 ユウキの母「もう少しよ。そうねぇ。あと20分くらいでつくわね」 ユウキ「20分も!?退屈だよぉ。持ってきた漫画全部よんじゃったしさぁ」  走る、赤い軽自動車。ユウキはため息をもらし、母に不満を訴えた。 彼の座っている席の横には、10冊ほどの漫画がつみかさなっている。 おそらくこれは全部彼の漫画だろう。 それを、先ほどしゃべっていたように、全部読んだというのだ。 ユウキの母「どうせ読むんなら小説や学問の本を読みなさい!漫画ばっかり読んで」  運転しているのは父で、ただもくもくとハンドルをまわしている。 その間母は、ずっとガミガミとユウキを怒鳴っていた。 ここは、いつもケンカしていると仲たちに入ってくる父が黙っているので、いいチャンスだと思っているのだろう。 だが、ユウキにとっては迷惑なだけだ。 こういうことを余計なおせっかいという・・・あれ!? ユウキの父「わぁっ!」 ユウキ「ど、どうしたの父さん!?」 ユウキの母「・・・・・・あなた?」 ユウキの父「すまん。運転に失敗して溝に落ちてしまったみたいだ・・・」 二人「・・・・・・・・・・・(滝汗)」 二人「ちょ、ちょっと、どーしてくれるのよ!(どーしてくれるんだっ!)(怒」 ユウキの父「だ、だってしょうがないだろ。運転を面倒くさがるお前が悪いんじゃないか!」 ユウキの母「あーん!?誰が悪いって!?もう一度いってみな!」  鬼のような顔で、ユウキの漫画を何冊かもち父に攻撃をしかけようとする母。 そんな中、ユウキはひとりため息をついた。 ユウキ「今はケンカしてる場合じゃないだろ。それにオレの漫画かえしてくれよ」 ユウキの母「そ、それもそうね・・」 ユウキの父「(小声で)サンキュ、ユウキ♪」 ユウキ「サンキュじゃなくて、早く何とかしないと、日が暮れちまう!」  実際、ユウキの腕時計は午後2時を回っていた。 このままここで立ち往生しているわけにはいかない。 やがて父は、自動車を何とかしようと立ち上がった。 外へ出てみると、三人は唖然とした。 ユウキの父「・・・うわっ、こりゃひどいや」  本当にひどいはまり方だった。 前の右のタイヤがどっぷり溝にはまっており、 バランスをくずせば今にも転倒してしまいそうな状態なのである。 ユウキの父「やっぱり森の中を通っていくのはまずかったかぁ・・・ここが一番の近道なんだけどなぁ」  しょんぼりと肩を落とし、解決策を考える父。 だが、いい名案が浮かばない。 カイリキーやゴーリキーのようなカイリキのあるポケモンがいれば、何とかなるのだが、 今父の手元にはまったくポケモンがいない。全てパソコンで転送してしまったのだ。 ユウキの父「こんなことなら1匹でもつれてくればよかった。って、うわぁぁぁぁ!!」 二人「こ、今度は何ッ!?」  しりもちをつき、退くユウキの父。 何事かと二人が顔を出すと、そう、襲われていたのだ――野生のポケモンに! その野生のポケモンたち――一匹ではなかった――は牙をつきたて、敵意をあらわにしている。 今にでも襲い掛かってきそうな勢いだ。 数も多く、数えると全部で7匹はいる。 犬のようなポケモンだった。 ユウキが、今までに見たことがないポケモン――。 ユウキ「な、何だコイツら・・・!!」  自動車から飛び降りる二人。 その反動で自動車がグラッとゆれたが、幸い転倒はしなかった。 ユウキの母「あなた!これはいったい・・・」 ユウキの父「お前はユウキをつれて逃げろ」 ユウキ「え!?」 ユウキの母「でもあなた・・・ポケモンはパソコンで全部転送しちゃったんじゃあ・・・」 ユウキの父「だが!」  ユウキの父は左右のこぶしをたたきあい、右足を少し前に出し、戦闘のかまえに入った。 ユウキの父「ポケモンがいない以上、俺がお前たちを守らなくちゃいけないんだ!父親としてな!!ウォリャァァァァァッ!」 ユウキ「と、父さん!!」 ユウキの母(いくら過去ポケモンマスターになるための修行をしていたからって、 ポケモンとあなたじゃあ力の差が!) ユウキの父「これでもポケモントレーナーだ!俺をあまくみるなよっ!!」  とうっ、たぁっ!! 幸いそのポケモンがレベルが低かったのか、あっさりと蹴りを入れていく父。 きゃんきゃんと声をあげ、ポケモンたちは倒れていく。命に別状はない。 ユウキ「す、すげぇ!!」 ユウキの父「お前たち、何してる!はやく逃げろっ!!」 ユウキの母「でも、あなたが・・・!!」 ユウキの父「このくらい朝メシ前だっ・・・って、うあぁぁっ!!」  不意をつかれたのか、ボスらしき少し大きめのポケモンの攻撃、 「たいあたり」を受けたユウキの父は、地面に強くたたきつけられた。 ユウキ「父さんっ!!」  目に涙をため、叫ぶユウキ。 それでも痛々しく立ち上がろうとする父に、何もできないユウキは自分の力の非力さを思い知った。 そして、自分に腹が立ち、いらだった。 ユウキの母「逃げましょう、ユウキ!お父さんの気持ちを無駄にするわけにはいかないわ!」 ユウキ「・・・いやだ!母さん。オレも父さんに加勢する!!」 ユウキの母「えっ・・・ユ、ユウキ!!」  母の声を無視し、ユウキが飛び出していったそのときだった。 ――少し高めな、少女の声がユウキらの耳に飛び込んできたのは。 ???「ミズゴロウ、『みずでっぽう』よっ!!」 3人「!!?」  するとどうだろう。  ポケモンたちは、しっぽを巻いて、キャンキャンと逃げていったではないか。 少女はすたん、とユウキの前に飛び降り、長い髪がさらりと風に揺れた。 ユウキ「・・・た、助けてくれてありがとう。オレ、ユウキ!君の名前は・・・?」 ???「馬鹿ッ!!」 ユウキ「なっ!?」 ???「もすうぐであんたも、あんたの親父さんもオダブツだったかもしれないのよ! もっと感謝してほしいくらいだわ!」 ユウキ「なっ・・・。だ、だからさ、いってるじゃねえか!”ありがとう”ってよ!!」 ???「あら。じゃあ♪」  少女は両手をさしのべ、ユウキにウインクした。 それが何を意味しているのか、ユウキにはすぐわかった。 「お金をくれ」といっているのである。 ユウキ「ふっ・・・、ふざけんなぁっ!!」  ユウキは少女に蹴りを入れた(もちろん手加減しているが)。 だが、少女はそれをひょいとかわし、ミズゴロウに「たいあたり」を命じた。 すると、ミズゴロウのたいあたりがユウキに命中し、空まで吹っ飛んでいってしまった。 ズドン!再び地面に叩きつけられたユウキは、怒りを抑えきれなくなっていた。 ユウキ「何すんだお前ッ!!」 ???「・・・フン。あたしはね。戦闘の助太刀を手伝って、お金をもらうっていう仕事をしているの。 いわばこれは商売なのよ!」 ユウキの母「あ、あの・・・」  ユウキの母が何かをいおうと少女に歩み寄ったが、その母を父が手で制する。 そして少女の手をにぎり、その少女の手の中には・・・。 ???「・・・こ、これは・・・」  ユウキとは違う、父の以外な行動に驚く少女。 ???「いいんですか?」 ユウキの父「家計が苦しいんだろう?だからこんな商売をしている。 なぜわかったか――って顔をしてるね。 だって、君くらいの年になるとみんな、ポケモンマスターになるための修行に旅立っていくじゃないか。 でも君の家計は苦しくて、家を支えるために仕事をしなくてはいけないんだろう?」 ???「・・・・・・」    かすかに微笑む少女。 それは、家計の苦しさをわかってくれた嬉しさと、何より少女自身が「ありがとう」といいたいことを意味していた。 ユウキの父「さぁ、俺たちも先をいそごう・・・って、その前にこの自動車を何とかしないといけないね」 ???「・・・・・・」 ユウキ「おいオンナ!」 ???「何よっ」 ユウキ「名前くらい教えたらどうだ。金だってわけてやったんだ。ここはおとなしくいうことをき・・・」  チュドーン!! 再びミズゴロウのたいあたりで飛んでいくユウキ。 少女はフンッと鼻で笑うと、ユウキの両親に頭をさげた。 ハルカ「あたしはハルカ。ミシロタウンのハルカで〜す♪」 3人「み、ミシロタウン!?」 <ミシロタウン・オダマキ研究所> オダマキ「もしもし、オダマキでございま・・・」 ハルカ「あっ、博士!?博士ですかぁ?」 オダマキ「うわっ・・・な、何だ、ハルカちゃんか・・・びっくりしたよ」 ハルカ「びっくりって・・・もうっ。どうして男ってみんな失礼な人ばっかりなの! ・・・とと、話を元に戻して・・・っと。 今、道に迷った馬鹿ユウキと、その両親がこっちにむかってるの」 オダマキ「ユウキ・・・?ああ、今この街に引っ越してくるって噂の・・・」 ハルカ「ええっ!?じゃあこの人たちが噂の!?」 <101番道路> ユウキ「おい、噂ってどういうことだ?」  とりあえずミシロタウンに向かうことになった3人。 ハルカはミシロタウン出身なので、道案内をしてくれるという。 自動車のことは、ミシロについてから何とかしようということになった。 ハルカ「噂は噂よ。今ミシロで噂になっているの。馬鹿ユウキたちのことが」 ユウキ「おい。その言い方やめろよな。馬鹿ユウキっていうの!」 ハルカ「あら。可愛いニックネームじゃない♪悪い?」  いやみな顔をするハルカに、ますます腹を立てるユウキ。 ユウキの父「それで、ミシロまではどのくらいかかるんだい、ハルカちゃん?」 ハルカ「え〜っと、あと10分くらいね」 ユウキの父「さっき襲われたポケモンのこと、よかったら教えてくれないかな?」 ハルカ「襲われたポケモン?ああ、あれはポチエナとグラエナ。多分大きい方・・・ボスがグラエナね。 他はみぃんなポチエナ。グラエナの進化前であくタイプのポケモンよ」 ユウキの父「へぇ。それにしても、ホウエンにはめずらしいポケモンがいっぱいいるんだなぁ・・・」 ハルカ「別にめずらしくも何ともないよ。それぞれの地方にそれぞれのポケモンがすんでるだけ。 ほら、日本にオオカミがいて、オーストラリアにはカンガルーがいる。そんなかんじよ」 ユウキ「オオカミって・・・それいつの話だ?そうか。お前は原始人か!ププ」 ハルカ「馬鹿ユウキッ!!オオカミは原始の生き物じゃないわ! それにあたしはハルカ!原始人じゃなぁいっ!(怒」 ユウキ「じゃあ縄文人か?(笑」 ハルカ「くぅぅぅっ・・・こんの野郎!またミズゴロウでたいあたりしてやるぅっ!」  モンスターボールをかまえるハルカ。 怯えた顔をするユウキに苦笑する、両親。 ユウキ「わ、わかったよ。わかりました!さっきは悪かった。ゴメン」 ハルカ「わかればよろしい」 オダマキ『ハルカちゃん、ハルカちゃん?』 ハルカ「あっ、オダマキ博士のこと忘れてた!あ、はいはい、何ですかぁ?」 オダマキ『”何ですかぁ”、じゃないよ。ずっと呼んでたんだよ。 ちょっとユウキくんに頼みたいことがあるから、 ミシロについたら研究所によっていってほしいんだ』 ハルカ「オダマキ研究所に?」 オダマキ『うん。じゃ、よろしくたのむよ!』  プチッ。プー、プー、プー・・・。 ハルカ「あ、切れちゃった」 ユウキ「んで、その何とか博士って何ていってたんだ?」 ハルカ「何とか博士じゃない。オダマキ博士!!」  鬼顔で叫ぶハルカに、ユウキはふぅんとすまし顔。 そんなハルカに、ユウキの母親がたずねた。 ユウキの母「ねぇ、ハルカちゃん」 ハルカ「ん”あ”ぁ”っ!?(怒」 ユウキの母「あ・・・え、えっと・・・(汗)オダマキ博士っていえば、あの有名な博士じゃあ・・・?」 ハルカ「そうよ。ミシロタウンの観光スポット、オダマキ博士よ」 ユウキ「オダマキ博士はタテモノかよ」 ユウキの母「か・・・っ、カンゲキッvvv」 ハルカ「え!?」 ユウキの母「私、オダマキ博士の大ファンなのよ! 他の博士たちとは違って、資料ばっかりあさってないで・・・。 だって、フィールドワークっていうのをなさってるんでしょう? お母さん、そういうのって憧れなの。自然にポケモンと接しようとするその姿! あぁ、素敵だわぁ・・・v」 ハルカ「え・・・」  ハーックション!! そのころきっとくしゃみをしているだろう。 ジョウトのウツギ博士、そしてカントーのオーキド博士は。(笑) ユウキの父「お、みえてきたぞ!」 ユウキ「えっ、どれどれ!?」  ちょうど下に見える、小さな街。 自然いっぱいの、おだやかな街。 そう。キャッチフレーズは、どんな色にも染まらない町。 ――ミシロタウン―― ハルカ「ようこそ!ここがあたしの生まれ故郷、そして自慢の街!ミシロタウンで〜すっ♪」