ユウキの父「お、みえてきたぞ!」 ユウキ「えっ、どれどれ!?」  ちょうど下に見える、小さな街。 自然いっぱいの、おだやかな街。 そう。キャッチフレーズは、どんな色にも染まらない町。 ――ミシロタウン―― ハルカ「ようこそ!ここがあたしの生まれ故郷、そして自慢の街!ミシロタウンで〜すっ♪」 第2話 Start trip−旅立ち− オダマキ「お〜い、ハルカちゃぁぁん、ユウキくぅぅんっ!!」 ハルカ「あ。博士!迎えにきてくれたみたい。急ぎましょっ♪」 ユウキ「ま、待てよおいハルカーっ!!」 ユウキの父「さ、俺たちもいこう」 ユウキの母「ええ」  4人は走っていった。 オダマキ博士は、そんな4人を笑顔で出迎えてくれた。 オダマキ「やぁ。君がユウキくんだね。あの噂の・・・」 ユウキ「あの、だから噂っていったい・・・」  ここはオダマキ研究所。 2・3台のユウキには理解できない機会が並び、大きなモニターと、小さなパソコンが1台。 その他は本棚だらけで、ポケモンの資料―― 「ポケモンの生態」「ポケモンの暮らし」「ポケモンのバトル方法」などの本が綺麗に並べられていた。 ユウキの両親はひとまず家に行き、引越し物の整理をするとユウキにいった。 ここまでこれたのは、ハルカの案内のおかげだ。ついていくのはとても大変だったが。 オダマキ「なぁに、ただの噂だよ。ミシロにもうすぐで引っ越してくるっていうね」 ユウキ「・・・それで、用って何なんだ?」 ハルカ「ちょっと、馬鹿ユウキ、オダマキ博士なんだからもっと礼儀を丁寧にしなさいよっ! 何なんだじゃなくって、『何でしょうか』でしょっ。まったくこの子は!敬語もしらないの!」 ユウキ「るっせーなー。オレは別にこんなオッサン博士なんて尊敬してねぇんだから敬語使う理由はないだろ」 ハルカ「・・・っ・・・。ほんっとぅににくったらしいやつっ!!」  ぷいっとそっぽをむいてしまったハルカに、苦笑するオダマキ。 彼は、ユウキにオッサンよばわりされたことをあまりいやがってはないようだ。 まぁ、事実は事実だから仕方ないと思っているのだろう。 オダマキ「まあまあハルカちゃん。そう怒らないで、おだやかにいこうよ。 せっかくボーイフレンドができたんだからさ」 ハルカ「ぼ、ぼぼぼ、ボーイフレンド!?(滝汗) こ、コイツがあたしの!?じょ、冗談じゃないわよっ!!」 オダマキ「でも、男の子は好きな女の子にはいじわるしてしまうものなんだよ」 ハルカ「はぁ!?」 ユウキ「何だよ」  むすっとするユウキ。いつもならここでもっと反論するのだが、なぜか反論できなかった。 痛いところをつかれたからだろうか、やはりユウキはハルカのことを好きなのだろうか……。 ハルカはそんなユウキに気づき、目と目が合った。 あっ・・二人は同時につぶやいた。 ハルカ「ごめん、ユウキ。あたし・・・」 ユウキ「・・・あやまるのはオレさ」 ハルカ「え・・?」 ユウキ「オレ、いっつもこうなんだ」  ハルカに背中を向け、後頭部で手をくむユウキ。 ユウキ「いっつもいっつもつっぱしっちゃって。相手の気持ちを考えることを忘れちゃう。 ははは、ダメだよな、こんなのって・・・」 ハルカ「・・・ユウキ・・・・・・」 ユウキ「んで、用って何なんだ、オッサン博士」 ハルカ「立ち直りの早いヤツ」  ため息まじりにつぶやくハルカ。 だがユウキが自分のことに好感をもってくれていることがわかったのか、微笑んだ。 オダマキ「そういう呼び方、やめてくれないかなぁ?(苦笑) ――用っていうのは・・・」  するとオダマキ博士は、本棚に立てかけてあった写真をもってきた。 青色の写真たてに入れられており、大事そうに抱えながら。 そこには、ユウキとハルカと同じ年代と思われる少年と少女が並んでいたのである。 少年はピースサインで両目を細め、少女のほうは両手をひざにくっつけて目を開いていた。 ユウキ「誰だ、コイツら?」 オダマキ「こら、わたしのことは呼び捨てにしてもいいけど、この子たちの呼び捨てはヤメルんだ!」 ユウキ「何で?」 ハルカ「知ってる!この人たち、ルビーさんとサファイヤくんでしょ!」 ユウキ「ルビー・・・?サファイヤ?」 オダマキ「ああ。今、君たちよりも2つ年上の12歳だ。二人ともな」 ユウキ「へぇ。兄貴と姉貴か」 ハルカ「勝手に兄弟にするな!」 オダマキ「二人とも2年前にこのミシロを旅だって。1年前までは連絡があったんだけど、 どうしたものか、2年目から音信不通になってしまったんだよ」 ハルカ・ユウキ「ええぇっ!?」 ハルカ「それって、行方不明になっちゃったって・・・こと?」 オダマキ「そういうことに・・・なるな・・・」 ハルカ「たたたた、大変じゃないっ!!早く警察に電話しないと!!」 オダマキ「警察ならとっくに連絡済だ。現在も二人を探している。だけど、いまだに手がかりゼロなんだ!」  ドン!! 不安とあせりを隠せなくなったのか、オダマキ博士は研究用の机の上を思い切りたたいた。 目をパチクリさせ、きょとんとするユウキとハルカ。 かまわず、オダマキ博士は喋り続ける。 オダマキ「でも、ルビーとサファイヤは我がミシロの期待の星! すでにバッヂも8個ゲットしていて、来年はポケモンリーグに挑戦するはずだったんだ!!」 ユウキ「ポケモンリーグって・・・あの、ポケモンリーグか?」 ハルカ「ポケモンリーグ・・・。ホウエン地方で凄腕のトレーナーが集まり、ポケモン同士対戦させて 1位を競いあうっていう・・・あの・・・」 ユウキ「すげえじゃねえか、その二人!バッヂ8個ゲットした上、ポケモンリーグに挑むなんて!!」 オダマキ「・・・だが・・・今は・・・。そこで頼みがあるんだ。ユウキくんに旅に出てもらいたい! そして二人のてがかり・・・何でもいいから教えてほしいんだ!旅で得た情報をっ!!」 ユウキ「え・・・何でオレが・・・」 オダマキ「ハルカちゃんの家は家計で苦しくてな。10歳だというのに旅することができず、 ずっと仕事をしているんだ・・・」 ユウキ「・・・・・・ずっと・・・」 ハルカ「・・・そうよ。あたしはポケモンバトルの助っ人、いわば『ポケモンレンジャー』!! でも、他のポケモンレンジャーとはちょっと違う。あたしはお金をもらってるからね、助けてあげた人から」 ユウキ「・・・・」  聞いたことがある。 ポケモンレンジャーは、ポケモンバトルで困っている人たちを助けるという、 本来ならそういったボランティアの仕事だ。 だが・・・ハルカは家計が苦しいがために、仕方なく金稼ぎに利用している。 当然、警察も彼女に目をつけていた。「不法バトル違反」として。 本来、バトルにお金を賭けるのはいいのだが、それは両者が納得した上でのことと、ジムリーダーや四天王のみのだ。 しかし、それを相手の承諾をえずにお金をもらったりした場合、それは罪となる。 ハルカ「まぁ、あたしはいつ捕まってもいいんだけどね・・・。 でも、あたしがつかまると、家族のみんなが困るんだ」 ユウキ「・・・なぁ。お前ほんとは、旅にでたいんだろ。強くなりたいんだろ?」 ハルカ「そうね・・・強くなりたいっていうのは本当よ。 だって強ければお金がいっぱいもらえるもの」 ユウキ「・・・だったらさ、オレ、いい提案があるんだ。 一緒に旅をして、旅の途中で出会ったトレーナーとお金をかけてバトルする。もちろん相手に承諾してもらってな。 そして、そこで稼いだお金をパソコンで郵送するんだ。これなら・・・OKだろ?」 オダマキ「おっ!それはいい考えじゃないか!どうして今まで思いつかなかったんだ!!」 ハルカ「でも・・・もうひとつ、あたしにはこの街をはなれられないワケがあるの」 オダマキ・ユウキ「え?」 ハルカ「・・・今、5つの弟がね。ロケット団に捕まってるんだ。 この街から出たら、弟の保障はないって・・・」 ユウキ「何だって!?」 ユウキ「ロケット団・・・聞いたことがある。ジョウトやカントーで大暴れしていた悪どもじゃないか! でも、何でそのロケット団がホウエンの地に?それにお前の弟をなぜ・・・」 ハルカ「あたしの両親はロケット団なのよ。元、ね」 ユウキ「!」 オダマキ「・・・・・・」 ハルカ「今はロケット団から亡命して裏切り者といわれているわ。 必死にロケット団は捜索してるけど、みつかりっこないもの。 なんせあたしの両親は変装の名人だからね」 オダマキ「・・・」 ハルカ「でもね。ロケット団はそんなことでくたばる連中じゃないわ。 あたしの両親を探すために街々をつぎつぎと襲って、弟をつれさっていったのよ。 両親と引き換えに・・・。まだヤツラは動いてないけど、きっとあたしたちのところへやってくる。 そして、両親をつれもどすんだわ、きっと・・・」 ユウキ「許さネェ!」 オダマキ「ユウキくん・・・?」 ユウキ「何でお前の両親が逃げ出しただけで街々が破壊されなきゃなんねぇんだ!」 ハルカ「馬鹿ユウキ。破壊じゃなくて襲撃よ。 ロケット団っていうのはそういうものなのよ。一人逃げ出せば大勢の人が狙われる。 だから亡命は難しいのよ。もしもできたとしても、このようなことになるの」 ユウキ「・・・・・・だけど・・・けど・・・!!」 ハルカ「いってしまえば、このミシロだっていつ襲われるのかわからないわ。 きっとヤツラはヤイバの視線で街々を探索しまくっているだろうから、時間の問題ね」 ユウキ「弟はどうしてるんだ、今?」 ハルカ「きっと牢屋の中・・・ロケット団のアジトの・・・」 ユウキ「何で助けにいかねえんだ。お前姉貴だろ!?」  次の瞬間、ハルカはユウキの頬をなぐっていた。 以外な行動に驚くユウキ。だが、それでもめげずにたちあがり、怒鳴りつける。 ユウキ「何すんだ、テメェ!!」 オダマキ「ゆ、ユウキくん!!ハルカちゃん、何てことをするんだ!!」 ユウキ「っ・・・!!」 ハルカ「・・・どうしてわかってくれないのっ!!」  ハルカの瞳には、うっすらと涙の光が無数にきらめいていた。 そしてそれは、ポロポロとこぼれ落ちていく・・・。 ハルカ「助けられるものならとっくの昔に助けているわよ! でも、ロケット団のアジトはしょっちゅう移転してるし、 それに、牢屋まで行く前にやられちゃうのがオチよ!!」 オダマキ「・・・ハルカちゃん・・・」 ユウキ「・・・だからって、あきらめるのかよ」 ハルカ「えっ・・・」 ユウキ「弟のことが好きなんだろ!だったら助けだしてやれよ!!たとえ命をかけてもヨォ!」 ハルカ「・・・・・・・・・!!」  命をかけても・・・か・・・。 ハルカはうつむき、そして笑い出した。 ユウキ「・・・んぁ?」 ハルカ「はっはっはっはっは・・・ごめんね・・・あたし・・・間違ってた」 ユウキ・オダマキ「・・・」 ハルカ「自分が被害にあうのが怖くって、ずっと動けなかった。 ずっとずっと・・・でもきめた!」 ユウキ「きめたって、何を」 ハルカ「もうっ、どこまでにぶいの、馬鹿ユウキ!!」 ユウキ「何だと!(怒」 ハルカ「きまってるじゃない!弟を助けに行って、ロケット団をやっつけるのよ! ユウキ、もちろんあんたも協力してもらうからねっ!!言い出しっぺはあんたなんだからっ」 ユウキ「そ、そんな強引な〜(涙」」 オダマキ「・・・そういうことなら」  オダマキ博士はにっこり笑い、「あるもの」をとりだしてきた。 それは・・・モンスターボールだった。 ハルカにミズゴロウをあげたので、残り2つしかない。 ユウキ「こいつぁ・・」 オダマキ「ポケモンだよ。旅に危険がつきものだろ?でもポケモンがいれば、きっと大丈夫だ。 キミたちのいい”パートナー”になるはずさ。正しい育て方をすれば・・・ね」 ユウキ「・・・ポケモン・・・!」  ユウキの瞳がかがやきだす。 彼にとって、ポケモンとともに旅に出るなんて、素人にはできない技だ。 それに、そのくれた人がオダマキ博士ときちゃあ、きっとみんなうらやましがるぜ! オダマキ「さぁ、選んでよ、君のポケモンを!パートナーを、ね!」 ユウキ「う〜ん・・・(迷」  すとんと座りこみ、腕を組むユウキ。 そんな姿をみて、苦笑するオダマキ博士。 オダマキ「今残っているのは炎タイプのアチャモと、草タイプのキモリだ」  ぽん、ぽん! モンスターボールが二つにわれ、飛び出してきたのは二匹のポケモン。 キモリと・・・アチャモ。 どちらもかわいらしく、じっとユウキを見つめている――。 ユウキ「オレ、アチャモにする」 ハルカ「ええっ!?」 ユウキ「何だよ」 ハルカ「いや・・・そんなかわいいポケモン、ユウキにはにあわないんじゃないかな〜って・・(苦笑」 ユウキ「うるせえんだよ、ハルカ!別に何でもいいだろ。人のかってさ!」 オダマキ「まあまあ。アチャモは炎タイプだよ。進化すれば強くなれる」 ユウキ「やっぱり炎だよな!男はバリバリもえなくては!」 アチャモ「チャモーーーーーーーッ!!」  アチャモの「ひのこ」攻撃が、ユウキを直撃した。 ユウキ「ウワーッチチチチチチチチ!!何すんだアチャモッ!!」 アチャモ「チャモチャモ〜♪」 逃げ出すアチャモ、そしておいかけるユウキ。 そう、こうして二人の物語は幕をあけた。 ユウキとハルカの、ルビー&サファイヤ探しの旅が・・・。 ハルカ(・・・ヒカル。絶対にあなたを助けにいくわ・・・!!)  ハルカは一人、じっと地面をにらみつづけているのであった。