■これまでのおはなし  104番道路にある、フラワーショップ・サン・トウカ。 そこでユウキを待ち受けていたのは、幼きころから強い絆で結ばれていたジョウトのポケモン・ロコンだった。 ロコンをGETしたユウキは、新たなる仲間とともに、ルビー・サファイヤ探しの旅を続けていくのだった。 第5話 再会−Reunion−  104番道路を抜けたハルカとユウキは、その先の都会町・カナズミシティにやってきていた。 ユウキ「ここがカナズミシティだな!」 ハルカ「ホウエン地方でも1、2を競う大都会よ。ここにはね、デボンコーポレーションっていう 何でも作る会社があるって聞いたことがあるわ」 ユウキ「デボン?変な名前だな。何でも作るって、もしかしてポケモングッズも作ってるのか!?」 ハルカ「そうねぇ。何でも作ってるんだから、ポケモングッズがあってもおかしくないかもね」 ユウキ「おっしゃぁぁ!!ハルカ、オレ今からデボンにいくぞ!!そこでポケモングッズをもらうんだ! しかも1分の1ピカチュウぬいぐるみ!!あれは人気があるから滅多に売ってないんだよな。くーっ」  そういいながら、ユウキは走り出してしまっていた。が、しかし、それをハルカが制する。 ハルカ「待って、ユウキ!あたしたちの目的はルビーとサファイヤを探すことでしょ? 旅立ってから数日。まだ何にも手がかりをつかんでないんだから!こんなのオダマキ博士に顔向けできないわ!」 ユウキ「うるせーなー。いいじゃねぇか。もしかしたら1分の1ピカチュウぬいぐるみがもらえるかもしれないんだぜ? ハルカは欲しくねーのかよ」 ハルカ「ほしくありません。さっ、早速聞き込み調査よ!!」 ユウキ「えーっ……!!」  ユウキはダダをこねた。いつまでもそこでダダをいっているので、 ハルカはとうとうユウキの後襟首を持ち、ひっぱっていった。 それでもユウキはまだダダをこねていたので、ハルカはため息をつくしかなかった。 ハルカ「はぁ……」 ???「もしかしてあなた、『バルカちゃん』?」 ハルカ「……!?」(その声は……!!)  ハルカはあたりを見回した。だがそこには町に立ち並ぶ家々と、少ない自然、行き交う人々しかいない。 ???「トウッ!!」 ハルカ「とう?」  いきなりそのような掛け声とともに、サッという人影が赤い屋根から飛び降りてきた。 うわっ……!!いきなりのことで驚き、退くユウキ。そして彼は、やっとダダをいわなくなった。 ユウキ「な、何だお前!?」 ハルカ「…………」  ハルカは黙りこくったままだった。 ユウキには、突然現れたヤツがハルカの知り合いなのかそうでないのかさえわからなかった。 マナミ「お久しぶりね、ハルカ。あたしはマナミ。忘れたとはいわせないわよ!」  強くきつく、その視線は感じられた。 マナミとよばれたその少女は、19歳くらいで、もちろん背もユウキらより少し高かった。 ユウキはちょっぴり美少女なマナミに気をとられ、ほわほわしていた。 だがハルカは、いきなり敵意を剥き出しにする。 ハルカ「もちろん覚えてるわ。あなたのような憎ったらしー班員を忘れてるはずがないでしょ?」 ユウキ「そーかな。オレは結構可愛い美人だと思うけどなー」  デレデレとしているユウキに、ハルカは渇を入れた。 彼女の渇といえばこれしかなく、その渇はまさにそれだった。 ハルカ「ミズゴロウ、水でっぽう!!」 ユウキ「っ……何すんだ!!」  いきなりの水鉄砲で驚いた人々が振り返ったが、それは一瞬のことだった。 皆「ただのバトルか」と思ったらしく、そのままとおりすぎていく。 この街のみんなはバトルには慣れているようだ。 ハルカ「あなたがあんまりデレデレしてるからよ」 ミズゴロウ「ゴロゴロ」  ミズゴロウはまるで「そのとおりだ」とでもいいたげに、ユウキをにらみつけた。ハルカと一緒に。 ユウキ「それよりお前、ハルカと同じ服着てるけど……」  ユウキはこれ以上争いを続けてもハルカに負けると判断したらしく、いきなり話題を変えた。 そう。そのマナミという人物は、なぜかハルカと同じ格好をしていたのである。 ハルカ「それは」  ハルカがいいかけたとたん、マナミがそれを制した。 マナミ「あたしとこのバルカちゃんが同じポケモンレンジャーだったからよ」 ユウキ「にゃにぃ〜〜〜〜〜〜〜!?」  驚きのあまりどきもを抜かれたユウキ。 まさか……まさかこの美人がハルカと同じポケモンレンジャーだったなんて!! だったらオレもポケモンレンジャーに入ろうかな。 もっと美人な女の子がいるかもしれない……と、そこまで考えたユウキに、いきなりゲンコツが襲ってきた。 そのゲンコツはハルカのものだった。 ハルカ「いいかげんにしなさい、ユウキ!!」  まるでハルカはユウキの心の中を見据えているようだった。 よくもまぁそんなに敏感だなと思いながら、ユウキは顔をあげる。 ハルカ「それにあなたも。いいげんバルカって呼ぶのやめてくれない!?とっても腹が立つんだけど」 マナミ「あら。あなたが腹たとうがたたないが、あたしには関係ないでしょ。 いっとくけど、ポケモンレンジャーやめたからってあのときの上下関係はかわってないのよ。 下手に逆らうと痛い目見るわよ?」 ハルカ「くっ……ユウキ、いきましょ!こんなやつほっときましょっ」 ユウキ「え〜っ……。オレもっといたい!」 ハルカ「馬鹿ユウキ!!」  二度目のパンチがユウキをくらった。 ハルカはユウキを先ほどのように後ろ襟首をつかみ、ひきずっていった――。 マナミはというと、ずっとその場にたっており、何か思慮しているようだった。 それはハルカのことなのか、それとも別のことなのか――。 直接本人に聞いてみることにしよう。 (ハルカはあのことを忘れているのかしら?せっかく会いにきてやったのに……) ハルカ「もーっ……何なのよアイツゥウ!!どうしてこんなところまでおいかけてくるわけ!? 腹たつったらありゃしない!!」  ハルカはカンカンに怒っていた。もちろんアイツ――マナミのことでだ。 ユウキをひきずりながら、町を抜け、薄暗い野原にやってきていた。 ハルカ「ねぇ、ユウキもそう思うでしょ。ユウキっ、おきなさいよ!!」  何とユウキは寝ていたのだ。ハルカにひっぱられたまま。 ユウキ「むにゃ……何だ?何があったんだ?」 ハルカ「とぼけないで!」 ユウキ「……とぼけるもなにもないだろ。だいたい何でお前、そんなにマナミのこと嫌ってるんだよ。 何かあるんだったら話してくれなきゃわかんねーじゃねーか!!」  寝てると思いきや、ユウキはさっと真剣な顔になる。 ハルカはうっと言葉につまり、ぷいとそっぽをむいてしまった。 ハルカ「何よ。わかったように口きいて!」 ユウキ「わかってなんかねえだろ。だから教えろっていってんだ!」 ハルカ「……っ、馬鹿ユウキ!!」 ユウキ「何だ、アイツ?」  ユウキには悪気がなかった。ただ、「マナミとの関係」と聞こうとしただけだ。 それなのにハルカは、「馬鹿」という余計な一言をつけ、その場を去っていってしまった。 どこにいったのかわからないまま、ユウキは途方にくれていた……。 (オレ、何か悪いことでもいったか???) ハルカ「……忘れてるわけないでしょ。あなたとの約束を――」  暖かい風に髪をなびかせ、ハルカは思い出していた。 5年前のあのことを。 ハルカ「……ママ、パパ。どうして会いにきてくれないの?寂しいよ。悲しいよっ!!」    そこでは、一人の少女がしゃくりあげていた。 涙もかれ、たった一人でうずくまっている。 ポケモンレンジャーに入隊したてのハルカは、両親に会えない悲しみでいっぱいだった。 寮では、みんなもう寝静まったというのに、ハルカだけが起きていたのだ。  ハルカは夜空を見上げた。 綺麗なお月様が、黄色く輝いている。 そんなお月様は、ハルカのことを励ましてくれているように思えた。 がんばれ、がんばれ。 ???「あなた、まだ寝てないの?」  ハルカはびっくりして飛び上がった。 ハルカ以外にも、他の誰かがおきていたのだ。 ハルカ「だ……だ、れ?」 マナミ「あたしはまなみ。あなたと同じよ」 ハルカ「ぽけもん、れんじゃー……?」 マナミ「まったく。同じ班員の名前くらい覚えておいてほしいわね!あなたはバルカでしょ? この前隊長が話してたわ。何でもバルカって子、運動神経も悪いしのろいし、役に立たない隊員だって」 ハルカ「……いいもん」 マナミ「え?」 ハルカ「別にいいもん。あたし、とろくたってのろくたって、うんどうしんけーがわるくたって、 ママとパパに会えないんなら、そんなのいらない!!」  うわ〜んっ!! 次の瞬間、ハルカは大声で泣き出した。 あまりにも大きな声だったので、周りのみんなが起きてしまうのではないかとマナミはひやひやした。 マナミ「……な、泣いてたって何にもはじまらないでしょっ!!」  そんなハルカに腹が立ち、マナミはとうとう怒鳴りつけてしまった。 ハルカ「……」  ハルカは泣くのをやめ、マナミを見上げた。 だがマナミは、ハルカに顔を向けようとせず、その目はどこか遠くをみつめている――。 マナミ「泣いたって、喚いたって、悲しんだって。 会えないもんは会えないんだから、自分で持ちこたえるしかないのよ」 ハルカ「……あっ……マナミさん……」  マナミは泣いていた。 一粒の涙をこぼし、ごしごしとそれをこする。 マナミ「あれ?なんであたし、泣いてるんだろ……っ。 今までこんなこと、一度も……っ」 ハルカ「悲しいよね」 マナミ「え…?」 ハルカ「マナミさんも、ママやパパに会いたいんでしょ?」  ハルカはてっきりそうだと思った。 マナミさんも自分と同じで、両親に会いたいものだと。 だが――彼女の答えは違っていた。 マナミ「ううん。もう、会えないの」 ハルカ「それはマナミさんがポケモンレンジャーにはいってるからなんじゃ……?」 マナミ「ううん。あたしのママとパパ、天国にいるんだ」 ハルカ「……えっ――」  何て慰めたらいいんだろう。 何か声をかけてあげたい。 でも、その言葉が見つからない。 マナミ「ごめんなさい。あなたを見てると何だかにくくって……。 あたしにはもうママもパパもいない。でもあなたにはいる。 それが――それが……」  マナミはそれ以上いわなかった。ずっとうつむいたまま、床を見つめている。 ハルカ「ごめんなさい……あたし……そんなこととはてっきりしらなくって――」 マナミ「ねえ。もしもバルカがポケモンもって、戦えるようになったら。 一度バトルしてみない?」 ハルカ「バトル?」 マナミ「ポケモンバトルよ。あたし、ずっとあんたと一度戦ってみたかった。 だから、あんたがポケモンもつようになったら戦いたい。いいね?」 ハルカ「もちろん!あたし、がんばる!!」  そして。 マナミは翌年、ポケモンレンジャーを卒業していった。 一人残されたハルカは、狂ったように特訓をはじめた。 おいつきたい。 マナミさんの背中に、マナミさんの笑顔に!! でも――バルカと呼ばれたからか、憧れからなのか、ハルカはどうしてもマナミには負けたくなかったのかもしれない。      そして――。 ハルカ「………もう、5年も前のことだけど……」  ハルカは一人たたずんでいた。原っぱに仰向けになり、ユウキのことを思い出す。 ハルカ「……やっぱりあれはあたしが悪いわ……ユウキにあやまらなくっちゃ。 それに――っ、きゃああああ!!」  ハルカが大声をあげた原因は、まさにユウキにあった。 ユウキはハルカの両膝をはさんでたち、ハルカの顔をのぞきこんでいたのである。 ユウキ「はぁ、はぁ……やっと探したぜ、ハルカ!いきなり悲鳴をあげるなんて、失礼じゃねーか!!」 ハルカ「ごめん……ちょっと考え事してて……」 ユウキ「考え事?」 ハルカ「ん。マナミのこと」 ユウキ「あいつ、お前の先輩なんだってな」 ハルカ「えっ?どうしてそれを……」 ユウキ「アイツが話してくれたんだ。ハルカを探してたら、突然やってきて……それより」  ユウキは一息ついてから、ハルカにこういった。 ユウキ「マナミとバトル、しなくていいのか?」 ハルカ「…………そりゃあ」  ハルカは立ち上がり、笑顔になった。 ハルカ「やるっきゃないよね♪」 マナミ「やっとやる気になったようね、バルカ!」  そこへ、マナミが登場した。 ずっと聞いていたのか、そうではないのか――サッと木からおりてきたのである。 ハルカ「ええ。やっとなったわ。それよりいいかげん、バルカってよぶのやめてくれない??」 マナミ「あなたをどうよぼうと、あたしの勝手でしょ。いくのよ、キノココ!!」 キノココ「キノーッ!!」 ユウキ「あれは!?」 ハルカ「キノココ……毒に注意しなくっちゃ。いって、ミズゴロウ!!」 マナミ「あら、ミズゴロウは水タイプでしょ?それなのにキノココに立ち向かおうなんて……さすがバルカね」 ハルカ「うるさいっ!!いけっ、ミズゴロウ!水でっぽう!!」 ユウキ「うあ、強烈っ!?」 マナミ「キノココ、よけて!」 キノココ「キノッ!!」 ミズゴロウ「ミズ!?」 ユウキ「お、おい、あのキノココめちゃくちゃすばしっこいぞ!!」 ハルカ「大丈夫よ」  ハルカはにっこり笑い、そしていった。 ハルカ「あたしのミズゴロウには、必殺技があるから――」 ユウキ「今のでも十分必殺技だと思うけど(汗」 ハルカ「ミズゴロウ、『がまん』を解くのよ!!」 マナミ「がまん!?」 ユウキ「……何回か攻撃を受けるときにがまんして、それを2倍にして返す技!すげえぜ、ハルカッ!!」 キノココ「キノ〜〜〜ッ!!」  「がまん」をまともに受けたキノココは、どさりと地面にたたきつけられる。 マナミ「キノココ!?」   ハルカ「ミズゴロウ、そのままたいあたりっ!!」 マナミ「アアッ!!」 ユウキ「キノココ、戦闘不能!!ハルカの勝ちっ!!」 ハルカ「や……やったぁぁ!!」  ハルカはあまりのうれしさのあまり、その場を飛び跳ねた。 そして、ぐっとこぶしをにぎりしめる。 マナミ「……強くなったわね、ハルカ」 ハルカ「マナミさんこそ。そのキノココ、本当はすごいレベルなんでしょ?」 マナミ「いいえ。あなたと対等に戦うために、わざわざホウエンでゲットしたものなのよ」 ハルカ「ええっ!?」 マナミ「あたしには、レベル99のポケモンもいるし」 ユウキ「きゅ、きゅうじゅうきゅう〜〜〜〜〜!?」 ハルカ「ちょっと!!」  ズン!ハルカはゆっくり歩み寄り、マナミをにらみつける。 ハルカ「それって、手加減してたってこと!?」 マナミ「まぁ、そういうことになるわね」 ユウキ「だな♪」 ハルカ「だなって……そんなのないでしょ!?あたしはあなたを追い抜くためだけにたくさん努力してきたのに!!」 マナミ「……そうかしら?」 ユウキ「でも、本当かもな」 マナミ「え?」  マナミとハルカは、同じくらいに振り向いた。 何とそこには、ミズゴロウが進化した姿が――。 ハルカ「嘘っ!?ミズゴロウ、あなた進化したの!?」 ヌマクロー「ヌマ」 ユウキ「これはミズゴロウじゃなくてヌマクローだな……よろしくな、ヌマクロー!」 ヌマクロー「ヌマヌマ!」 マナミ「くーっ、あたしとしたことが!!バルカのポケモンを進化させてしまうなんて〜っ!!」 ハルカ「うるさい!バルカってよぶな!!」 ユウキ「やーい、バルカバルカー!!」 ハルカ「ユウキまでーーー!!」  ハルカの叫び声が、大空へと舞い上がる。 ミズゴロウはヌマクローへと進化し、彼らの旅は、まだまだ続く。 つづくったら、つづく!