(番外編) 第7話 Tear―涙― ユウキ「んっ……」  朝だ。ユウキは目を覚まし、寝袋からもぞもぞと起き上がった。 森に囲まれた小さな原っぱで、中心には大きな切り株がひとつ。 その上には昨日二人が食べたと思われる料理の跡が見られた。 ユウキ「とりあえず顔でも洗ってくるか」  この森に入るとき、あらかじめ通った道には木に、小さく赤い×印をつけることで、迷わぬようにしてきた。 そのおかげか、以前通った澄んだ川もすぐに見つかった。 この川を見て、案の定ハルカが感激の声をあげたことを覚えている。 「わぁっ、きれ〜!!」――それは、いしのどうくつ(第6話参照)を探検したときと同じ表情だった。 ユウキ「ふぅっ……気持ちいいな。やっぱり自然って、いいよなぁ……」  ユウキはジョウト地方から引っ越してきた少年だったので、 こういう自然に触れるのは初めてのことだった。 そりゃあ、ジョウトにもいくつか自然は残っていたけれど…… こんなにいたるところにはなかったことを思い出す。  さわっ――暖かい夏の風が吹いた。そしてそれは、ユウキの髪を宙に揺らす。 ハルカはまだ寝てるかな。すっげえ寝相悪かったけど。 苦笑しながら、ユウキは先ほど洗った顔を、タオルでぬぐう。 ハルカ「ユウキってば!!」 ユウキ「ん?って、わぁぁぁぁぁっ!!」  思わず大声で叫ぶユウキ。森の中からたくさんの鳥たちが飛び立った。 バサバサバサッ――ユウキはしりもちをつき、突然のハルカの登場に驚く。 ハルカの顔は怒っているのに、寝癖はまだ治っていなかった。 髪がぐしゃぐしゃしている。 ユウキ「な、何だよいきなり!!ビックリするじゃねーか!」 ハルカ「何で一人でいっちゃうのよ!!怖かったんだからぁっ」  わんわんわんと泣き出すハルカ。その行動にも驚いたユウキは、 どう対応していいのかわからなかった。 こっちにくるまで女の子とかかわったことなんてなかったし、 ましてや自分が泣かせてしまったのだと思うと何だか罪のような思いがある。 ユウキ「わ、悪い……ただお前がまだ寝てたから、顔を洗いに……」 ハルカ「嘘よっ♪」  ウインクしながら、ハルカは微笑む。 はぁ?――ユウキはため息をついた。 ユウキ「お前、いいかげんにしろよ。オレ、ひやひやしてたんだから」 ハルカ「かーば!……だからユウキは馬鹿っていわれるのよ。うそ泣きひとつ見抜けないなんて、おまぬけね☆」 ユウキ「ま、まぬけはそっちだろ!!その髪見てみろ!くしゃくしゃじゃねーかっ」 ハルカ「うっ、うるさいわね!!あたし、髪をくしゃくしゃにしたくてしたんじゃないわよ!! それに……怖かったっていうのは、本当なんだからねっ!!」  それもそうである。 昨日、この森に初めて足を踏み入れたとき、いきなり野生ポケモンに襲われたのだ。 相手はヒメグマとリングマ。どうやら親子のようで、なわばりに知らずに踏み入れてしまったようだった。 あのときはユウキのロコンがバトルで倒してくれたけど、夜はそうもいかない。 ハルカの就寝は遅いので、ユウキが寝ている間は一人で自分の身を守るしかないのだ。 もちろん今までもそうだったが、ハルカだって女の子。 いくら強がっていても、心までも変わることはない。 ユウキ「……っ、わかったよ。悪かったよ、オレが。お前なら大丈夫だって思ってたんだ」  タオルをリュックにしまいながら、ユウキはいった。 ハルカの頬はぽっと赤くなり、顔をそむける。 ハルカ「…………」  沈黙。  何ともいえない息苦しい雰囲気が、二人を包み込んだ。 ユウキがあたしにああいってくれたのは嬉しかった。でも、ありがとうと言い返せない。 それはなぜか?簡単なことだ。あたしが素直じゃないから――。 ごめんなさいとか、ありがとうとかいうことが昔から彼女は苦手だった。 ユウキ「それはそうと、早くこの森を出ようぜ。お前、リュックもってきたよな?」 ハルカ「見ればわかるでしょ。ちゃんと持ってきたわよ。それに、寝てたところも片付けてきたわ」 ユウキ「サンキュ。この森にはルビーもサファイヤもいないようだしな。次の町はっ……」 ???「あーーーーーーーっ!!!」 ユウキ&ハルカ「?」 ???「はるかせんぱいだーーーーーっ!!」  それは少女だった。ブルー色のロングヘアと、それと同じ青い瞳。 そして――ポケモンレンジャーの服を着ている。ハルカと同じ服だ。 ユウキ「おい、何だお前?そ、そうか。勝負だな!?バトルなら負けないぜ!いけっ、ロコ……」 ハルカ「待って、ユウキ!この子、ポケモンレンジャーだわ。あたしと同じよ!」 ユウキ「なっ――……ぽけもん、れんじゃー!?」 ???「ウチの名前はアオミゆーねん!よろしゅうな! ハルカ先輩のことはマナミ先輩からいろいろ聞かされてんねん!」 ハルカ「じゃああなた、マナミを知ってるの?」 アオミ「知ってるも何も、ウチの憧れの先輩やねんで!それに呼び捨てはアカンて、隊長から教わらへんかったんか?!」  アオミは笑顔ではなく、きつい目でハルカを見つめた。 彼女もポケモンレンジャー。だが、マナミとはライバルだ。 マナミからバルカと呼ばれているハルカにとって、マナミを先輩と呼ぶ必要があるのだろうか? ハルカ「……そう、マナミの後輩なのね。そしてあたしの……」 アオミ「そうや!隊長はいつも言うてたで!ハルカ先輩とマナミ先輩、今ごろ何してるんだろうってな!」 ハルカ「え?」 アオミ「えっ、て知らなかったんか!?まぁしょうがないけど、隊長、突然ハルカ先輩がいなくなってぎょうさん驚いてたわ。 そのあとすぐにマナミ先輩もどっかいってしもうたからなぁ……」 ハルカ「そ、そんなの初耳よ!?マナミ、ポケモンレンジャーやめたの!?」 アオミ「知らなかったんか、アンタ!?マナミはアンタのことよくあたしにいうてたわ。ライバルや、いつか勝ったるて!」 ハルカ「??」  ハルカはますます困惑するばかりだ。マナミと戦って、ハルカが勝った形跡は今までにない。 あえていうのなら、この前のミズゴロウがヌマクローに進化した時だけだ。 それなのになぜ……? ユウキ「ハルカ、マナミに勝ったことあるのか?」 ハルカ「えっ?ううん、ないわよ。ヌマクローに進化した時以外……」  ユウキも困惑したような顔で、アオミを見つめる。 なぜこの子は、ハルカがマナミに勝っているような言い方をするんだろう。 この子が嘘をついているはずは……可能性もあるが、そんなこと嘘をついて何の意味がある? そこまで考えたとき、アオミが真相をいってくれた。 アオミ「ち、違うて。勝つ負けるいうのは……確かにマナミ先輩はハルカ先輩に勝ってばかりやったけど、 それはバトルでのことや。ハルカ先輩はいつも負けてたゆーてたで。でもな……マナミ先輩は、魂で負けてるねんて」 ハルカ&ユウキ「魂!?」 ユウキ「一体、どういうことだ?魂で負けてるって……」 アオミ「ウチにはよーわからんかったけど、ハルカ先輩はポケモンに対する愛情とか信頼とか、人一倍やねんて。 そこは隊長もよく評価してたわ。その点、マナミ先輩は劣ってるって」 ハルカ「……そうなの……」  そういえば、とハルカは思い出していた。 マナミはハルカ以外のバトルで負けるとすぐにポケモンのせいにしたし、 それによってポケモンに今以上のキツイ特訓をさせていたっけ。 ユウキ「魂、か……」  ユウキはそうつぶやき、ため息をついた。 ユウキ「オレはどうなんだろうな。魂――ポケモンに対する愛情とか信頼とか、どうなんだろう」  そういったとき、ハルカはクククと笑い始めた。 な、何だよっ――と顔を赤くするユウキ。 ハルカ「ううん、ユウキもそんなことで考えることあるんだなぁって思ったら、おかしくなっちゃって」 ユウキ「それ、どういう意味だよ?オレだって成長してんだかんなっ!!」  そう。ユウキはゴロウとの勝負で負け、ポケモンに対する魂を学んでいた。 あのときは全くパートナーのアチャモのことを考えてなかった。 そんな自分に強く腹が立ち、そして今以上に強くなろうと思った。 これはルビーとサファイヤを探す旅だが、そういったいろんな意味での強さを求めて、 旅をしているということもある。 ハルカ「ところでアオミちゃん、どうしてあたしたちのところにきたの?何か理由があるんじゃ……」 アオミ「あ、すんません、忘れてたわ!ウチ、旅したいねん!!」 ハルカ「えっ…」 ユウキ「え?」 ハルカ&ユウキ「エ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」 アオミ「ウチもな、ハルカ先輩やマナミ先輩にあこがれて、ポケモンレンジャー飛び出してきてん!なっ、ええやろ!? ウチどーしても旅したいねんっ!お願いや、仲間にいれたってーな!!」 ユウキ「そ、そんなこと……いわれても、なぁ、ハルカ?」 ハルカ「そうよ。あなたはまだ新米なんだから、もっと鍛えないとだめよ。 それに、旅は危険が多いし……」 アオミ「っ……!!」  じわっ――アオミの目に浮かぶ涙……ポロポロと、宝石のような粒が地面に落ちていく。 ユウキ「お、オレっ、何か悪いことでもいったか!?」  汗ばむユウキ。彼は女に泣かれるのが弱いのだ。 どう対応していいのかわからないからである。 アオミ「ごめんなさい……。ウチ、隊長にハルカ先輩にいうたことと、同じようなこというてん」 ハルカ「旅に出たい、って?」 アオミ「そうや……でも隊長はな、ハルカ先輩と同じように言い返してん。 ウチはまだポケモントレーナーとして未熟や、もっと鍛えなあかん……」 ハルカ「……」  確かにそうだが、アオミは旅にでたいのだ。 旅は危険なものだが、大切なことを色々教えてくれる。 時には自分を変えてくれることさえある。 新しい人との出会い、街との出会い、そしてポケモンたちとの出会いによって――。 アオミ「なぁ、何でハルカ先輩はポケモンレンジャーからいなくなったん?ウチみたいに、旅に……」 ハルカ「……そんなこと……あなたには関係ないでしょっ!!」  鬼のような顔で怒られたので、アオミはますます泣き出した。 今まではしゃくをあげているだけだったが、声まで出し始めたのだ。 わんわんわん――ユウキはもうどうしていいのかわからず、ただただ立ちすくんでいる。 ユウキ「お、おいハルカ――何もここまで怒鳴ることないだろっ!」  やっといえた一言で、ユウキはアオミの前で仁王立ちになる。 ハルカはぷいっとそっぽをむくと、ユウキにこう怒鳴りつけた。 ハルカ「うるさいわねっ!!この子はまだ未熟なの!だから鍛えなきゃいけないのよ!! それなのに旅に出るってどういうこと!?」 ユウキ「何だよそれ。お前だって未熟だったんだろ。お前だってポケモンレンジャーからいなくなったときは……っ」 ハルカ「――っ、ユウキの馬鹿っ、もうしらない!!」 ユウキ「ああ、勝手にしろ!オレだって知らないね。いこうぜ、アオミちゃん」 アオミ「……う、ウチ――」  ユウキはぎゅっとアオミの手をにぎりしめる。 だが、アオミはその手をはらいのけた。 ハルカはいつのまにか、この場から去っていってしまっている。 どこにいったのだろうか?でもそんなことは、ユウキはもうどうでもよかった。 それよりも腹が立っていた。アオミのさりげない質問に、あそこまで怒ることないだろ。 アオミはまだ……子供なんだぞ!? アオミ「うち……何か悪いこというたんかな……ハルカ先輩を傷つけるようなこと……」 ユウキ「いってないさ。あいつが馬鹿なだけだ」 アオミ「でもハルカ先輩、泣いてた……」 ユウキ「は?」 アオミ「ハルカ先輩、泣いてたで!!ウチ見たもん!ちょっとやけど……!!」  アオミはその場にしゃがみこみ、顔を手でおおって泣き始めた。 ウチのせいや、ウチのせいでハルカ先輩とこの人(ユウキ)は喧嘩してしもたんや――。 そう思えば思うほど、涙はあとからあとから流れ出てくる。 ユウキ「……本当に、泣いてたのか?アイツが」  アオミの泣き具合からして、それは嘘ではないだろう。 そう思い、ユウキは一度確認しようとしたのだ。 アオミ「……多分……でもなんでかわからへん――」 ユウキ「オレもだ。とりあえずハルカを探そう。この森の中にきっといる。そんなかんじがする」 アオミ「うん……ウチも先輩にあやまらんなあかんし……」 ユウキ「そして探したら、理由を聞くんだ」 アオミ「……」 ハルカ(何よっ、ユウキの馬鹿!!一方的にアオミちゃんなんかの肩を持って!! あの質問――あたしがどれだけ傷ついたか、わかってる!?)  ハルカはそう思いながら走り続けた。ユウキの馬鹿、ユウキの馬鹿――。 そしてやってきたのは、今朝まで寝ていたところ。 切り株にはすでに何も無い。ハルカが片付けたのだ。 ハルカ「……ユウキの、ばか……」  そうつぶやき、切り株に腰をおろす。 零れ落ちてくる涙を手の甲で拭きながら、空を見上げる。 木々にふさがれて、ほとんど見えない空。 ハルカは思い出していた。 あの日のことを――ポケモンレンジャーをやめたときのことを。 * * * ???「君が裏切り者のお嬢さんだね?是非我らに君のご両親の居場所を聞きたいんだけど……。 居場所を教えてくれたら、君を解放してあげるさ」  ソイツラは突然やってきた。ハルカはというと、体を縄でしばられ、身動きがとれないでいた。 どこなのかはわからない――相手が誰なのかさえわからない。 幼い4歳だったハルカは、ただただおびえるしかなかった。 ???「ちっ、だんまりかよ!こちとら裏切り者を捕まえないと大変な目にあうんだ! ボスに怒られてしまう!」  もう一人の同じ黒い服を着た男性が怒鳴る――そう、彼らはロケット団だったのだ。 いしのどうくつで戦った、あの男もいる。 ???「キノココ、ねむりごなっ!!」  うっ――誰だ!!  ロケット団は次々と眠っていく。ばた、ばた、ばた――相手は少女だったので、しっかり油断していた。 もちろんポケモンなんて持ってきていない。 そして助けてくれたのは――。 ハルカ「マナミさん!!」 マナミ「バルカ、早く逃げなさい!コイツラ、ロケット団でしょ!何があったの!?」  ハルカはいえなかった。自分の両親のこと――。 もしもマナミが、自分の両親がロケット団から逃げたといったら、これからも仲良くしてくれるのだろうか? そう思うと、怖くていえなかった。 ハルカ「マナミさん……」  ハルカはついに泣き出した。そして――泣きながら思った。 もう、みんなには迷惑をかけたくない。 あたしがポケモンレンジャーにいると、マナミさんのように、他のみんなにも迷惑がかかってしまうかもしれない。 だから――だから、ロケット団にあたしの居場所を知られぬよう、旅にでよう。 そう、それがいい――それが一番いい……。 * * *  そんなわけで、ハルカはポケモンレンジャーを後にした。 誘拐されて、マナミに助けられ――結局マナミには両親のことを明かしていなかった。 ずっと心の中でポケモンレンジャーのみんなを想っていた。 仲良しだったトレーナー、お世話になった隊長、マナミのこと――。 懐かしい、暖かい場所には、ハルカはもう戻れないのだ。 それなのに、アオミちゃんがあんなこというから、涙が出てしまったのだ。 ハルカ「……お父さん、お母さん――あたし、どうしたらいいの?このまま、もう、ユウキのところにもいられなくなるのかな……」  何となくそう思った。 今までユウキと喧嘩ばかりしてきて、その結果にいつもおびえてた。 あたしに愛想をつかしてどこかへいってしまうのではないか――。 あたしなんて本当は、どうでもよく思っているのではないか――。 そしていつもたどり着く思いは一緒だった。 『ユウキのことが、好き――好きで好きで、たまらない』 ハルカ「ユウキ……」  ぽろり――また涙が落ちた。 涙を流したのは、ポケモンレンジャーにいた頃以来初めてのことだ。 ユウキ「ここにいたのか!」  ゼエゼエと息を吐きながら、ユウキが走ってきた。 ハルカは驚いて、言葉もない。 アオミ「ハルカ先輩っ……!!よかったぁ、もうどっかいっちゃうのかもしれないって思ったら、 ウチ、何ていえばいいかわからんくて……ほんで……」  アオミは泣きながら、ハルカの胸に飛び込んでいった。 ユウキはへへっと苦笑しながらも、ハルカを気遣うような雰囲気を漂わせている。 ハルカ「……ユウキ――アオミちゃん……何で?」 ユウキ「そりゃあ、お前のことが……心配だったからだよ」 ハルカ「でもあたし……アオミちゃんに怒鳴ってしまって……」 アオミ「ごめんなさい!!」  アオミは頭をばっとさげた。その態度に驚いたのは、ハルカである。 どうしてあやまるの?この子は何もしていないのに――。 アオミ「ウチ、ハルカ先輩が泣いてるの見てしもうてん。 それで、何か、悪いことしてしもうたんかな思うて、 そしたら何て謝っていいのかわからんくて――」 ハルカ「アオミちゃん……ごめんなさいはあたしのほうだわ。貴方を怒鳴ったりしてごめんなさい。 あたし、ポケモンレンジャーをやめたのは――最初からちゃんと話せばよかったのよね。 でも……思い出すと、涙が出てきちゃって……わけわかんなくなっちゃって――」  ハルカはふふっと笑い、アオミの髪の毛をなでた。 すっ――アオミの泣き声が止まる……。 アオミ「許してくれるんか?」 ハルカ「当たり前じゃない」 アオミ「うわーっ、うち、めちゃ嬉しいわ!!」  アオミにやっと笑顔が戻ったのと同じように、ハルカの顔も笑顔になった。 ユウキはほっとして、ため息をつく。 ハルカ「あたしね、ポケモンレンジャーでの練習中のとき、ロケット団に襲われたんだ」 アオミ「えっ!?」 ユウキ「ロケット団って、いしのどうくつで――」 ハルカ「戦った相手も入っていたわ。ミツル君はいなかったけど……。 あたしの両親の居場所をいえって、脅したの……。 そしたらマナミが助けてくれて」 アオミ「マナミじゃなくてマナミ先輩やろ!もうっ」  プンプンと怒るアオミに、ユウキとハルカは笑った。 ユウキ「そっか――それでお前は、もうここにはいられないって思ったんだな」 ハルカ「何でわかるの?」 ユウキ「わかるさ、それくらい――だって……」  ユウキは言葉を濁し、もごもごと口走ったが、ハルカにはよくわからなかった。 アオミにはあんまり理解できてないらしく、きょとんとしている。 ユウキ「だからな、アオミちゃん。ハルカの両親は、ロケット団で――今はもう、やめたんだ」 アオミ「ロケット団!?知ってるで、悪党どものことやろ!隊長が昔一度戦ったことがあるゆーてたで! とんでもないヤツラやって。ポケモンを使って、悪いことばかりしてるて……」 ハルカ「……あたしのお母さんとお父さんがロケット団をやめたのには、わけがあるの……。 でもそれはまだいえないわ」 ユウキ「……いいたくないならいわなくていいよ。それよりアオミちゃん、そろそろ帰らなきゃ、 みんな心配してるんじゃないのか?」 アオミ「……わかった。ウチ帰る。みんなのとこに――」  ユウキとハルカはほっとした。嫌だといわれたらどうしようか迷うからだ。 アオミは気が変わったのか――いや違った。決意をしたのだ。 アオミ「ウチ、ポケモンレンジャーで十分鍛えてから旅に出ることにしたわ! そんときはハルカ先輩――えと、それから……」 ハルカ「馬鹿ユウキよ」 ユウキ「ちっ、違うぞ!オレはユウキだ!!」 アオミ「そうそう、馬鹿ユウキ先輩ともバトルしたいと思うてるから、そんときはよろしゅうな!」 ユウキ「くーっ、何でみんなオレのことを馬鹿馬鹿っていうんだよー!!」  こうして、アオミは無事ポケモンレンジャーの元へと帰っていった。 帰ると、案の定みんな喜んでくれた。アオミはハルカとユウキに出会ったことは内緒にしておいた。 いうと隊長もハルカを連れ戻そうとするだろうし、それをハルカは困るだろうから――。 ユウキ「でもさ、お前も色々大変なんだよな。オレの両親は普通だけど、お前はそうじゃないもんな」 ハルカ「うっ……(涙目)」 ユウキ「な、何だよ。オレまた何か悪いこと――」 ハルカ「うっそー♪」 ユウキ「あっ、コイツ〜〜〜〜〜!!」  ユウキもハルカも、まだまだ旅は終わらない。 ルビーとサファイヤを探し当てるまでは――。