注意! これは2003年3月20日に勃発したイラク戦争を題材にしたポケモン小説です。 内容的な趣旨で、死や出血などといった残酷表現や暴力表現が含まれています。 このような表現が苦手な方は、直ちにプラウザか右クリックメニューの「戻る」で前のページに戻ってください。 この小説での戦場シーンはフィクションですので、実際にあったものではありません。 *この小説は言うまでもなくフィクションです。 Reality=Fantasyと時間軸は同じですが、ストーリーの趣旨は異なります。 #1:戦争をする理由 2003年3月20日、アメリカ軍を主力とした英イギリス軍との連合軍が、イラクへの攻撃を開始した。 攻撃の始まりは、アメリカ軍側のバクダッドへのピンポイント爆撃であり、この爆撃で多くの民間人に死傷者が出たのは言うまでもない。 それから数日後にアメリカ陸軍及び海兵隊はイラク領内に侵攻して、各地の石油採掘施設や空港、港などの重要施設を確保する。 しかし、米軍に自国の領内に踏み込まれたことは、イラク軍も黙ってはいなかった。 『祖国を守りたい』という純粋な思いで米軍に戦いを挑むイラク“正規”軍であったが、 アメリカ軍側の兵士の戦闘能力と兵器の性能的な差には敵わず、多数のイラク正規軍が降伏するという結果に終わったのである。 しかもイラク軍は師団長までもがアメリカ軍に降伏するという始末である。 『祖国を侵略軍から守りたい』イラク軍と『独裁政治から民衆を解放したい』アメリカ軍との衝突。 そのような目的で最前線で命をかけて戦う兵士達とは余所に、 『アメリカの政治機構が憎い』と主張するイラク政府と『イラクの政治機構はアメリカには危険だ』というアメリカ政府には、 そんなことは関係なかった。 自分達にとって脅威となるものを排除したいと思う政治家の正義には、兵士達の正義は『自分達が正しい』と主張する為の口実に過ぎなかったのである。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/ Latter in Firefly _/_/_/_/_/_/_/_/_/ #2:兵士達の哀歌 2003年4月初旬、イラク国内の主要拠点を次々と陥落させていき、順調に進軍を続けるアメリカ陸軍であったが、 余りに早すぎる進軍で、補給ラインの敷設が遅れていたのである。 そのために、食料は1日1食で我慢をしなければならず、銃弾も無駄に発砲が出来ない為に攻撃も留まっていた。 さらに、装甲車や歩兵戦闘車、戦車などの戦闘車両もガソリンが無ければ動くことが出来ないので、 燃料の補給が滞っているので無駄に動くことが出来ない。 しかし、現実世界であれば問題はこれだけで済んだが、ポケモン世界となれば補給が滞っていることは最大の問題である。 兵士達に支給される食料はポケモン用も含まれており、装備品の所持数の限界を考えれば、食料の消耗も一段と早い。 ポケモンで戦闘を繰り広げるとなれば医薬品の消耗も早いので、下手にポケモンで攻撃を仕掛けることが出来ない。 最悪にもここが敵地であれば、長期戦やゲリラ戦に持ち込まれると部隊の壊滅は免れない。 姿を見せないで奇襲を掛けてくる相手ほど、脅威となる敵はいないからである。 幸いにもここが味方の制圧区域でよかったが、“If”、日本語で『もしも・・・である』という事態は絶対に無いともいえない。 常に不安と隣り合わせである兵士、ここではポケモンアタッカーと呼ばれる武装したポケモントレーナーには、 戦争が終わって祖国に帰らない限りは安息の日は無い。 銃弾やミサイルに爆弾が飛び交う戦場では、誰もが平等に『死の恐怖』に去らされている。 それは相手のポケモンも含まれており、『生物を殺せるもの』全てが恐れる対象となるのである。 たとえ味方が近くにいても、自分の身は自分で守らなくてはならない。 それが多くのポケモンアタッカーが、自分が生き残ために選んだ判断だからである。 しかし、このことは敵を攻める能力が無くても、自衛できる能力が無ければ意味を成さない。 「ラストステージ目前で、足止めになるとはな・・・。」 「補給がないと攻め様にも責められないからよ。ライト・・・。」 歩兵戦闘車M2ブラッドレーの後ろにある後部ハッチに寄りかかっている日系人のアメリカ兵、ライト・K・ミストラルは、 横にいるイタリア系の白人の戦友と攻められない事への不満を呟くのであった。 「なあライト、お前は何で軍に志願したんだ? 俺は親父が中東戦争で戦っていたことがあると聞かされて育ったから、親父のような軍人に憧れて志願兵になったんだ。」 「リキッド、お前はそんな理由で軍に志願したのか?」 イタリア系の白人であるリキッドの志願理由に、ライトは呆れ果ててそれを否定しようという気が起こらなかった。 アメリカ軍は志願兵制度であり、日本の自衛隊のように“職業軍人”という方向にも進めるが、 予備役登録をしてから軍を退役し、民間人として日常生活を送ることも出来る。 「俺が軍に志願した理由は、大学に進学する為の奨学金が欲しくて、志願兵になったんだが、やりたくない戦争をやる羽目になったんだ。」 志願兵として一定の軍役を隔てれば、様々な特典があるのがアメリカの志願兵制度の特徴でもある。 ライトの志願理由は大学に進学する為に必要である奨学金もその1つであり、 日本の奨学金のように“貸し与えられる”ものではなく、“国から賞与されるもの”である。 軍に志願した人間の多くは、貧困層や白人以外の人種が大部分であり、目的も自分達の人生にとって必要なものを得る為である。 「ライト、俺は親父みたいな強くなりたいという意味で軍人になりたいといったのであって、 人殺しを堂々とするために軍人になったわけではないからな・・・。」 リキッドはライトの志願理由がまともであることから、自分自身の志願理由が誤解を招いていることから、自分の言った言葉の意味を補足する。 たとえ愛国心があっても誰だって戦争はやりたくない。 ライトとリキッドもそのことは十分に分かっているし、敵であるイラク兵もそうであると思っていた。 しかし、戦争はそれとは無縁な野心や欲望、そして“偏った正義”から起こるものであって、 相手の国を屈服させる手段としては“有効すぎる”方法であったことを、人類は古来から知っているのである。 「何で母国の命令で人殺しをやらなければならないんだよ・・・。」 「政治家や大統領は、2年前の9.11テロでワールドトレードセンター(世界貿易センタービル)が崩壊したことから、 過剰に反応しているんじゃないか?」 本当の戦争をやるとはライトとリキッドも志願当初は全く思っても見なかっただろう。 9.11テロの翌年に中東のアフガニスタンで行われた、某イスラム過激派テロ組織の掃討作戦には参加しなかったが、 テレビや新聞で次々と伝わる情報から、「次に戦争をやるときは俺達が死ぬときだな」とも思ったという。 #3:手紙 その日の午後5時頃、ようやく補給物資を積んできた輸送部隊のトラックやタンクローリーなどの輸送車両が次々と到着した。 進撃するのに必要な武器や弾丸、食料などが次々と荷が降ろされて、戦闘車両は燃料補給のために列を作って待機している。 これらの物資が到着したということ、それは攻撃の開始前を意味していたのである。 「全員、物資が到着したところで、ようやく攻撃を再開することが出来る。 今までの進撃は、敵側が即座に降伏したから順調に進んで来たが、首都バグダッドを目の前にするこの戦場ではそうはいかないだろう・・・。」 この部隊の指揮権を持つ大隊長クラスの士官が、兵士達の士気を高めようと勢いがある演説を始める。 威勢がいいだけの演説を戦闘開始前に聞かされるのは、脱力感というものを少し感じる。 ここにいる誰もが、演説を聞くより武器のメンテナンスや手持ちポケモンのコンディションを確かめる時間が欲しいと思っていた。 よって、大隊長の演説を真剣に聞くものは一人もおらず、何かをやっていた方が精神的に落ちつくので、誰もが聞き流す状態となっていた。 「夜間戦闘開始か・・・。」 「ああ、なんか緊張してきたぜ・・・。」 大隊長の難苦しい演説をBGM代わりにしながら、ライトはハンドガンに銃弾を詰め終えたマガジンを装着し、 リキッドは今までに経験したことが無い、夜間戦闘に緊張と恐怖に寒気を感じていた。 「ミストラル兵長、国から手紙です。」 「サンキュー。」 緊張感が張り詰める中、輸送兵の一人が祖国からの手紙をこの場にいる兵士達に次々と渡していた。 ライトも受け取った祖国から届けられた手紙は、目前にした戦闘への不安を取り払うには効果がある心の特効薬である。 「誰からの手紙か?・・・リーナ・・・って、お前の彼女か?」 「そうだ。彼女がいて悪いか?」 「彼女がいない俺には悪い!!」 ライト宛に届けられた手紙の差出人で彼の彼女と判断したリキッドは、彼女がいない悔しさを交えながらも、 先程まで張り詰めていた緊張感を振り払うかのように、ライトと共に和みモードに突入した。 ライト、この手紙が届いたときにはあなたは生きていますか? 私はあなたが戦争に行くことは、最初は反対しました。 しかし、あなたは『自分が信じている正義と未来のために戦う』といって、イラクに行きましたね。 世論は戦争に賛成している人が大部分ですが、私は最後まで反対するつもりです。 私は祖父から太平洋戦争で戦ったことを聞いたことがあるので、それをこの手紙に書きます。 祖父は徴兵されていた若い頃に硫黄島で日本兵と戦っていました。 1944年の硫黄島での戦いは、アメリカ軍が有利に戦況を進めて来ましたが、祖父はこのときに日本兵が怖いと思いました。 祖父が戦っていた日本兵は、たった一人の君主を崇拝し、その君主のために自らの命を捨てて執拗に攻撃を仕掛けてくることではなく、 命を捨ててでも祖国を守りたいという気持ちが強かったことが怖かったのです。 祖父は『人は最も大切なものを守る為には、命を捨ててでも守ろうとする。』ということを、相手に思い知らされました。 (以下中略) 私が戦争に反対する理由、それは『どんな理由であろうと、その人が大切なものを力で奪ってはいけない。』ということです。 あなたがこの戦争でイラク人にとって大切なものである『イラク人にとっての祖国』を奪うのではないかと、今でも考えると泣いてしまいます。 だから私はライトがどんな理由でも戦争で人やポケモンを殺すことをやめて欲しいのです。 私はライトが戦争で戦うことから逃げても、誰がなんと言おうと一生あなたの味方でいます。 でも、私はあなたが生きて帰ってくることを一番望んでいます。                                       リーナ・インフィールド 「リーナ・・・。」 リーナからの手紙を眼に通したライトは、手紙を広げている両手が震えて、一筋の涙を流していた。 彼女の願いの1つをかなえることが困難な戦場に身を置くライトには、彼女の言葉というナイフが心の奥深くに突き刺していた。 相手の命を奪わなければ生き残れない戦場で、人やポケモンを殺さないで済む方法は確実に無いに等しいからである。 「嫌でも戦わなければ今の俺達は生き残れないんだ・・・。そうだろ?」 「ああ・・・。」 生きて帰る為にも誰かを殺さなければならない。 それが戦争というものであることをリキッドは、手紙を読んで精神が動揺しているかもしれないライトに言うのであった。 #4、戦闘 午後7時頃、首都に近いこの街に多くの兵士達が次々と進撃していった。 最初に戦車などの戦闘車両が先頭を突き走って、敵が敷設したと思われる家具や木製の箱などが積み上げられたバリケードを破壊する。 それから大型のポケモンを引き連れたアメリカ兵数人が前進し、 敵であるイラク兵に対して軽機関銃やグレネードランチャーを発射して、大型のポケモンは破壊光線の一斉発射を行う。 ここで相手側も大型のポケモンを数匹を前線に出して、戦車などの戦闘車両を破壊しようと試みるが、 ポケモンの技は戦車の装甲には傷が付く程度でしかなかった。 しかもイラク兵の中には、反アメリカ派の周辺国からの義勇兵や民兵(武装した民間人)も混ざっており、 激しい銃撃戦とポケモンによる執拗なほどの攻撃を行っていた。 「前にいる第3小隊がやられた!前進しろ!」 「了解!これから第4小隊が前進する!」 通信兵が背負っている無線機のマイクを所定地に戻して、小隊長は部下に対して前進することを指示する。 この第4小隊にはライトとリキッドも所属しており、この二人にとっては本当の意味での初めての実戦である。 「ミストラル!ウィンスター!ポケモンを出して攻撃を仕掛けろ!!」 「よし!デンリュウ行け!!」 「バクーダ!GO!」 上官命令を受けたライトとリキッドはそれぞれの手持ちポケモンから、デンリュウとバクーダをモンスターボールから召還する。 それから二人はM16アサルトライフルのセーフティロックを解除して、トリガーをすぐに引けるように人差し指を掛けた。 「ここで戦わなければ死ぬ」という思いから、アサルトライフルを構える両手は手汗で湿り気を帯びており、 心臓の鼓動が次第にテンポが早くなるのであった。 「デンリュウ!雷!」 「バクーダ!噴火!!」 ライトとリキッドは目の前にいる“敵兵”と呼んでいる人間に対して、相棒のポケモンに技を放たせたのである。 ポケモンより生体構造が脆い人間にとっては、ポケモンの技は致命傷となるのは言うまでもない。 「これも自分達が生きる為だ」と、二人は心の奥底で自分達に言い聞かせるかのように、何度も何度も脳裏に刻み付ける。 《軍事帝国アメリカに死を!!》 《アラーの名の元に、この侵略軍をなんとしても追い出す!!》 ライト達には意味が分からない言語でイラク兵は憎しみを込めながらも、目の前にいる敵を殺す為に銃器をためらいもなく構えた。 だが、このアラビア言語の意味を理解は出来ないが、自分達を殺しにくることは表情や行動からも分かっていたのである。 「撃て!撃つんだ!!」 ここで彼らが取らなければならない行動は言うまでもなく、両手に構えていた銃器を発砲することであった。 そのことを即座に判断した小隊長は、部下達に対して“敵兵”と呼ばれる人間に対しての射殺を命令する。 《フライゴン部隊で同時に総攻撃だ!!》 部隊長と思われるイラク兵は後方にいたフライゴンの十数匹に、目の前にいるアメリカ軍に対して攻撃命令を掛けた。 上空から飛来してくる十数匹のフライゴンが、無数の破壊光線の光を地上に降り注ぐのであった。 「に、逃げr・・・!」 フライゴンの破壊光線の直撃を受けた戦車兵の頭部は血飛沫と共に塵となり、 それから戦車の中に積まれていた砲弾に破壊光線が引火して、戦車は周辺にいる兵士数人とポケモン数匹を巻き込んで大爆発を起した。 「ライト!大丈夫か?」 「俺もデンリュウも大丈夫だ!!」 とっさの判断で戦車から離れて、戦車の大爆発から逃れたライトとデンリュウは、リキッドに対して自分の無事をアピールする。 それでもなお、数匹のフライゴンが上空から破壊光線を次々と撃ち込んで、地上にいるアメリカ軍を混乱させている。 「フライゴン相手では、デンリュウの電撃は効果が無い!!」 「おれのバクーダの攻撃もこの高さでは届かないぜ!!」 地面・ドラゴンの属性を兼ね備えるフライゴンに太刀打ちする術が無いことを、二人は簡単に認めたのである。 ここでポケモンの交代をしたいが、モンスターボールに回収する際に、敵に攻撃を与える隙を作ってしまい、 デンリュウの電気系技は当然効果がなく、地上戦向きのバクーダに高高度にいる相手に対しての対空戦闘は無理であった。 しかも時間帯の関係から完全に日が落ちて視界が暗くなり、爆撃を恐れて灯火管制がしかれている街には明かりはなく、 最悪にも建物が月光を遮っており、ライト達アメリカ兵にとって不利な状況になっていた。 暗闇に覆われた街の上を飛ぶ十数匹のフライゴンは、この高度では敵に攻撃されないことを知ってしまって、 破壊光線や竜の息吹を容赦なく、地上にいる“敵と認識した”人間達に放つのであった。 #5:戦場を飛び交う蛍の光 「全員、一時後退だ!!」 戦況が不利だと判断した部隊長が、最前線にいる兵士達に後退する事を指示するが、 上空からのフライゴン十数匹による、しつこい位の激しい攻撃に頭上を飛びかう銃弾が後退すらも妨げている。 「リキッド!逃げ切れるか!?」 「死ぬ気で逃げる気でいるのに、疑問系で言わないでくれ!!」 攻撃態勢が崩れた状態での最前線での戦闘が不可能と判断したライトとリキッドは、部隊長命令が下る前に少しずつ後退していたのである。 後退する隙を作る為にデンリュウに雷をフライゴンに落とさせていたが、地面・ドラゴン属性のフライゴンには怯ませる程度の効果しかなかった。 ライトはフライゴンにデンリュウの攻撃の大部分が効かないことは知っていたが、相手に隙を作らせるために放たせている。 《このまま押し切れ!!アメリカ軍をこの街から追い出すんだ!!》 自分達が有利な立場に立ったイラク兵は、アメリカ軍が混乱していることに付け込んで、一気に突撃してきたのであった。 上空からの十数匹のフライゴンによる攻撃を受けている今、最悪にも集団で突撃してくる十数人のイラク兵の存在には気付いていない。 「ちっ、俺もここまでか・・・。」 形勢がイラク側によってしまったこの戦闘で、ライトは「死」というものを直面したのである。 このとき彼は「この戦争に出てしまった事が運の尽きだった」と、自分の人生の幕を戦死という形で閉じることを覚悟したのであった。 このとき、この街一体に空襲警報のサイレンが大音量で鳴り響き、この場にいる誰もが一瞬だが攻撃の手を止めてしまう。 ここが首都バクダッドに近いことから、空襲警報が鳴り響いてもおかしくない街であり、 当然飛んで来るのは、十数機の爆撃機かイージス艦が撃ち出す十数発のミサイルのどちらかである。 「空襲警報だ!撤退だ!」 部隊長は味方の空襲に遭ってしまうと判断して、この街にいる全ての兵士に撤退命令を下したのであった。 《敵の爆撃だ!攻撃を止めて逃げるんだ!!》 もちろんイラク兵も爆撃から逃れる為に戦闘を直ちに停止して、即座に全員戦線離脱をする。 空襲警報が鳴り響いて3分が経過したとき、夜空を飛び交って来たのはFA18ホーネット8機に、 その下にはトマホークミサイル4発が、目標に目掛けて飛来してきた。 この戦闘機の編隊に4発のミサイルが行く先は、アメリカ側の最大の標的でである指導者がいると思われるバクダッドである。 *トマホークミサイル:全長5.5メートル、質量1.2トン、射程が約2500キロの精密誘導装置による大型誘導ミサイル。       このミサイルの誘導装置は、事前に入力された情報を参照にしながら、現在飛行中の地形を照合してコースの       ずれを自ら修正するという精密さを持っているので、命中率は極めて高いほうである。       巡航速度は885キロとミサイルにしては低速だが、高度20〜50メートルの低高度を飛ぶために、       レーダーに探知されにくく、そのために撃墜される確率も極めて低いのである。       ちなみにこのトマホークミサイルは、1991年の湾岸戦争で初めて実戦に使われた。 ドオォォォォオンン・・・・・・。 トマホークミサイルがどこかに命中したことがわかる爆音が、皮膚にも僅かに感じる空気の振動と共に響いてきた。 それからトマホークミサイルが爆発して十数秒後に、FA18ホーネット8機が搭載していた空対地ミサイルを地上に対して次々と撃ち込んで行く。 「爆撃が始まったか・・・。」 「何も見えないが、音が・・・。」 この光景はライト達の眼には見えることが無かったが、このことが分かるのはミサイルが炸裂する爆音と僅かな閃光に、 夜空を飛び交う幾つもの対空砲火の光がそれを物語っていたのである。 この対空砲火の光は、夜空を飛び交う蛍の光のような美しさを持っていた。 人が作り出した殺りくと破壊の為の道具が演じる、夜空に咲く花火のような美しい光の協奏曲であった。 しかし、この対空砲火とミサイルの炸裂したバクダッドでは、民間人の死傷者が次々と増えていき、 悲鳴と叫び声による苦しみに血が飛び交い炎が燃え盛るという、地獄そのものを語る変奏曲となっていた。 トマホークミサイルの命中精度が高いといっても、目標から数メートルの誤差が生じるともあり、 それにレーダーには探知されないステルス爆撃機が、この殺りくを助長するような精密爆撃を高高度から行っている。 遠くから見れば美しい光の協奏曲だが、その真下では地獄の変奏曲という両極端に異なる戦場。 これは人の命が灯火のように消える瞬間であり、同種族の生物を平然と殺すことが出来る生物の醜態さをさらすことであった。 #6:正義という無意味な旗印 《畜生!この人殺しが!!》 《今すぐ出て行け!!》 《俺達の同胞を殺すな!!》 《貴様らは偽善者よりたちが悪い侵略者だ!!》 バクダッドが空爆されるところを遠くながらも一部始終見届けていた、この街の住民達が戦火に怯えて閉め切っていた窓を開けて、 下にいるアメリカ兵に目掛けて、手にした物を憎しみを込めて投げつけてきたのである。 「畜生!俺達はお前たちを解放して正しい道を歩かせる為に戦っているんだ!!」 《人殺しは今すぐこの国から出て行け!!》 《アメリカは今すぐ地獄に落ちやがれ!!》 住民達のブーイングの嵐を受けている部隊長は、ハンドガンを手に構えて上空に向けて撃って住民達を黙らせようと威嚇するが、 人殺しが堂々と出来る職業である軍人、しかも世界で“唯一の軍事大国でもある”アメリカへの非難はその程度でおさまる訳は無い。 結局は部隊長の威嚇はかえって火に油を注ぐこととなってしまったのである。 「俺達は・・・戦いたくてこの戦場に来たわけではないんだ!!」 ライトは言葉の意味が分からないが住民達の怒りが分かっていたので、とっさに自分が好き好んで戦場に来たわけではないことを言う。 しかし、彼の言葉は言語としての意味が分からない為に通じないことと、現地住民達は言い訳程度の言葉でしかないと思っているので、 彼の言葉は無意味な言動として無視されてしまったのである。 「俺は・・・俺は戦いたくてこの戦場に来たわけではない!!俺がこの戦場に来たのは・・・。」 ライトは何とかしてでも自分が好き好んで戦場に来たのではないと、街の住民達に自分が戦場に来た本当の理由を伝えようとしたとき、 その理由は自分が得る国からの奨学金が目当てであることを言おうとしたとき、その言葉を反射的に詰らせたのである。 国からの褒賞が目当てで戦場に来たもの、結局は好き好んで戦争しに来たことと、同じ意味に当てはまったからである。 民間人から見れば他国の軍隊は、どんな正義の旗を掲げても、敵対する国であれば『侵略軍』として見られてしまう。 アメリカ軍がイラク解放の旗印を掲げてはいるが、本当の目的は全く異なるものであった。 この戦争の目的は、アメリカの脅威でもあるこの国の主導者の抹殺と長距離弾道ミサイルや生物化学兵器の武力による武装解除である。 そしてこの目的を果たせばアメリカ政府は、戦後のイラクを都合のいい同盟国に仕立て上げる。 国連決議を無視してアメリカの先制攻撃で起したこの戦争は、一つの大国によるエゴイズムと欲望が浮き彫りにされた戦争でもあった。 「俺達はお前達を独裁政治から解放する為に戦っているんだ!!」 「俺達はイラクの自由の為に・・・!!」 《アメリカは今すぐ出て行け!!》 《戦争屋は全員地獄に落ちろ!!》 1991年、12年前の湾岸戦争で、国連決議によって編成された多国籍軍の中心としてイラクを攻撃したアメリカ軍が、 どんな“正義の旗印”を掲げても無意味なものであった。 ケンカやいじめにしても“やった方”が忘れても、“やられた方”は過去の苦しみは決して忘れることは無い。 たとえ民衆が解放を望んだとしても、アメリカが人として生きる自由を許しても、独立国家としての自由を奪うと思っているからだ。 FreedomとLibertyが日本語で『自由』という同じ意味を持つ言葉ではあるが、その意味は全く異なるものであるのと同じである。 この場合の“Freedom”による自由は、自分達の責任で物事を進める自由であり、 “Liberty”による自由は、他者から制約と責任を課した上で認められる自由である。 たとえ正義の旗印を掲げても自由の意味が異なっていれば、価値が無いものとして排除されるのである。 「なんで・・・なんで俺達は“戦わされて”いるんだ!!」 この戦争で異国の地で“戦かわされている”ことに、ライトは疑問を感じてしまった。 イラク人が望む自由が、アメリカが突きつける自由が違うという理由もあったが、何もかもが力づくで解決出来るものなのかの疑問も浮かんだ。 「リーナの・・・手紙の意味が分かった・・・。」 このときライトはリーナの手紙の一文である『どんな理由であろうと、その人が大切なものを力で奪ってはいけない。』の意味が、 この理想と現実の違いの狭間で理解したのである。 たとえ武力でアメリカがイラクを“解放”しても、彼らにとって一つの独立国としての誇りを奪ってはいけないということである。 国というものは、思想や民族が集合して成り立った人の集合体であるが、 アメリカというものは建国されて歴史が浅い方で、この歴史の中で様々な思想や人種が交じり合ってきて成り立った国であるから、 アメリカ国民は国のあり方である基本を忘れていたのかもしれない。 皮肉にも戦場で国のあり方の意味を理解したライトは、祖国に対する疑問が次々と浮かんで、自分自身を見失いそうであったのである。 #7:決断 イラク戦争が勃発して3週間を過ぎた頃、イラクの首都バクダッドは大きな抵抗が無いままアメリカ軍の手によって陥落した。 今のこの瞬間、首都のとある広場で主導者の銅像が、ワイヤーを持った大型のポケモン数匹によって確実に引き倒されていく。 主導者の銅像が倒されるのを見届ける500人余りの民衆であったが、本当の意味での解放を喜ぶ者は誰一人としていなかった。 それは人として生きる自由がかつて敵対していた国によって解放され、その代償として独立国としての自由を失ったからである。 何かを得る為には何かを失うとも言うが、失ったものが命以上に大切な民族としての信念であれば、 その悔しさは想像では計り知れないものとなっている。 アメリカがこの戦争の目的である大量破壊兵器が見つからないうえに、殺すはずの主導者が高官数人とともに行方をくらましている。 この戦争による犠牲者は軍人より、ポケモンと民衆がその比率が数百倍にも及んだのである。 戦争には犠牲がつきものというが、その犠牲が軍人に従うポケモンと何の関係も無い民衆であれば、後味が極めて悪すぎる。 そんなバクダッドの一角で、いつものように歩兵戦闘車にもたれているライトとリキッドの二人がいた。 「俺達の小隊は局地的抵抗をする残党の掃討のために、バクダッドに留まることになったぜ。」 「ああ・・・。」 首都を落としても“敵軍”と呼んでいる人間達が完全に降伏しない限り、戦争は終止符を打てない。 しかも政治機構を喪失したバグダッドでは、貧民層の民衆を中心に街中で略奪が平然と行われており、 現地の警察のほとんどでさえもそれに加わるという状態である。 殆ど機能することが無い現地の警察に変わって、アメリカ軍が治安維持のために一時的に駐留することとなったのである。 その治安維持という白羽の矢が、たまたまライトやリキッドがいる部隊に刺さったというわけだ。 「リキッド・・・、俺は脱走兵になろうかと考えているんだ・・・・。」 「脱走へ!!」 ライトが放った『脱走兵』という言葉に、リキッドは大声と共に激しいリアクションを見せるが、ライトがそれを力づくで無理矢理押さえ込む。 「ライト・・・お前正気で行っているのか・・・?」 「本気だ。」 リキッドは数日前の戦闘で多くの民衆からブーイングを受けたことから、ライトの様子がおかしいと思っていたが、 ほんきで軍から脱走を考えている以上は、彼の力ではライトの固い意志を考え直させることは困難であった。 「お前、脱走兵になるということは、国には帰れないし犯罪者扱いされることもあるんだ!! それにお前の彼女のリーナとは一生会えなくなるんだぞ!!」 「それも覚悟している。だからリーナに手紙を書いた。」 脱走兵になることを決めたライトは、リーナ宛の手紙を断る隙を与えないくらいのスピードでリキッドの手に託す。 彼の決意と覚悟はすでに決めていたことであることを知ったリキッドは、仕方がないように彼の頼みを引き受けることにしたのである。 「ライト、お前はどのように脱走するんだ?」 「イラク軍の局地的抵抗に紛れて逃げる。」 「よし、俺がそのプランに今思いついた+αを加えてやろう。」 「ここまでライトの意志が固ければ協力するしかない」と、リキッドはライトの脱走の片棒を担ぐことを決めたのである。 #8:本当の自由の意味を求める為に・・・ その日の午後10時頃、バグダッド西側でイラク軍がアメリカ軍に対しての襲撃を掛けてきたのである。 この襲撃の対象となったのはライトがいる部隊であり、イラク兵の大部分が爆薬を体にくくり付けており、 それは自爆も行うつもりであることを、誰からも伺えさせることが出来る。 《全員!侵略軍を倒せ!!》 《この命を祖国のために捧げるんだ!!》 命を捨てる覚悟を決めたイラク兵十数人は、アメリカ軍に対して一斉攻撃を掛ける。 まさにこれは捨て身の攻撃である。 「撃て!抵抗するものは殺しても構わ・・・!!」 部隊長は攻撃命令を下したとき、頭部に銃弾を撃ち込まれて地面に倒れこんでしまう。 地面に倒れこんだ部隊長の屍を、攻撃に応じるアメリカ兵や数匹のポケモンによって哀れにも踏みつけられてしまう。 「ライト、脱走する覚悟は出来ているんだな・・・。」 リキッドは相棒のバクーダと共に、アサルトライフルと火炎放射で反撃を掛けながらもライトが脱走する隙を見出そうとする。 「リーナへの手紙、絶対に渡してくれよ。」 同じくライトも相棒のデンリュウと攻撃を掛けながらも、脱走する隙を見ながらも反撃を仕掛けていた。 《死ね!!》 《侵略者を祖国から追い出せ!!》 しかし、イラク兵による攻撃の勢いが予想以上のものであるために、脱走する隙どころか逃げる隙すら与えてくれなかった。 ライトとリキッドの後ろでは、対戦車ロケット弾が直撃して歩兵戦闘車M2ブラッドレー1台が爆破炎上をする。 「ライト、そろそろ別れのときだな。荷物はまとめて置いたか?」 「リキッド、俺の頼みに付き合ってくれて有難う。」 「それにお前の荷物とは他に、今後必要になるものも別の場所に用意して置いたぜ。」 銃声が鳴り響く中でリキッドは、ライトのために用意した物資のある場所が書いてある紙を渡してから、 爆弾の起爆装置のスイッチを押したのである。 ドォォオオォォンン!! リキッドが爆弾の起爆装置を押したとき、近くにあった戦闘車両が爆破炎上を起こし、角度によっては遠くから見れば、 ライトとリキッドが爆発に巻き込まれたように見える。 「火薬の量が多すぎたみたいだな。」 戦闘車両の爆発で起きた熱風を受けて、戦闘服から皮膚が露出している箇所で軽い火傷を負ったリキッドは、ライトに脱走する隙を与えたのである。 「ライト・K・ミストラル兵長は行方不明・・・いや戦死した。死んだ人間は今すぐ姿を消すんだ!!」 「リキッド、さよなら・・・。」 リキッドの計画は、イラク兵から事前に奪った爆弾で戦闘車両を1台爆破させて、 その後バクーダの火炎放射で黒焦げにしたイラク兵の遺体をその中に放り込んで、 その爆発でライトが運悪く爆発に巻き込まれて、爆死したように周囲に見せかけるのである。 この計画での遺体の偽造は、熱に弱い遺体のDNAを破壊しているので、焼死体はDNA解析からは逃れることが出来るが、 歯型で遺体の身元がばれない限りは、ライトが脱走したことを知られないようにする為の時間を稼ぐことが出来る。 リキッドのライト脱走にプラスしたものは、ライト・K・ミストラルという人間が“この世にいない”ことにしておくことであった。 戦闘のどさくさに紛れたライトは、デンリュウをモンスターボールに戻してエアームドと交代させて、 自分の荷物とリキッドが用意した物資を回収して、エアームドの背中に乗ってバクダッドから姿を消したのである。 それから数時間後、ライトはエアームドに乗ってイラク国境まで到達してから、 物陰に隠れて認識票とアメリカ陸軍の部隊章を全て戦闘服から外して、 持っていたライターで火を着けて、自分がアメリカ軍人である証拠を隠滅したのである。 ライトが持ってきた荷物は、食料やサバイバルツール、GPSに携帯電話などの生きる為には最低限のものであったが、 リキッドが用意した物資は、アサルトライフルとハンドガンの銃弾数百発に高額の紙幣が数枚などのさまざまなものが入っていた。 彼の様々な気配りには、ライトは「俺より用意周到じゃないか」とも思ってしまった。 「もう俺には帰る国は無いし、守りたいものもない。 でも、本当の意味での自由を探すことが出来るんだ・・・。」 国という枷(かせ)を自ら捨てて、一時の自由を得たライト・K・ミストラルという名も無きポケモンアタッカーは、 この世界をさ迷うことで、誰もが納得するような“本当の自由”を探す旅にでるのであった。 今の彼は“Liberty”という意味の自由を捨てて、“Freedom”という意味の自由を得たからである。 #9:Letter in Firefly イラク戦争終結から数ヵ月後、イラク情勢も大分落ち着きを取り戻して、戦地から次々と兵士が帰国してきたのである。 この兵士達の帰りを待っていた人々が空軍基地に押し寄せて、ロビーで無事に生還できたことを心からお互いに喜びあった。 しかし、その中にはライトの姿はなく、彼の帰りを待っていたリーナは、必死にライトの姿を探していた。 ライトはこの時点では行方不明扱いとなっており、現在はリキッドが捏造したイラク人の焼死体の身元を解析している頃だ。 つまり、遺体の身元が判明するまでは、ライトは行方不明として扱われるということである。 「リーナ・インフィールドさんでしょうか?」 「はい。私がリーナ・インフィールドですが・・・。」 リーナは後ろから聞こえた男性の声に反応して、ライトが見つからないという焦りの色を見せながらも後ろを振り向く。 彼女の後ろにいたのは、ライトと同じ部隊にいたリキッドであった。 「リーナさん、俺はライトと同じ部隊に所属していたリキッド・パレスタイン伍曹です。」 リキッドはリーナにライトに託された手紙を渡す為に故郷には戻らず、彼の出身地にあえて来たのである。 「あなた!ライトは生きているのですか!?一体どうなったのですか?」 リーナはライトが生きているという僅かな望みがあると思いつつ、リキッドを締め上げる勢いで即座に掴みかかる。 「ライトは・・・生きている・・・。 詳しいことは・・・口からはいえないが・・・この手紙に・・・・・・。」 リーナに首を締め上げられているリキッドは、顔面蒼白ながらも力を振り絞ってリーナにライトの手紙を渡してから、 一気に力尽きたのである。 「ライトの・・・手紙・・・?」 気絶したリキッドの首を離して、リーナはライトの手紙を誰からも見られないように広げた。 親愛なるリーナへ 俺はアメリカという国の考え方、それに人が何故争うのかという疑問をこの戦争で感じた。 俺がこの戦争に来たのは、祖国から『イラクを独裁者から解放する為』と言われたが、現地ではその考え方は否定されてしまった。 イラク人にはイラク人の求める自由があり、アメリカが押し付ける自由は必要ないということを知ってしまったからだ。 俺は君からの手紙の一文にあった『どんな理由であろうと、その人が大切なものを力で奪ってはいけない。』という言葉の意味が、 皮肉にも戦場で理解してしまった。 それから、『力による正義は誰も望んではおらず、武力の力が干渉できない平和こそ人々の望みである』ということも理解した。 だから俺は自らの意志で脱走兵となって、誰もが望む自由、そして平和を考える為に終止符の無い旅に出ることにした。 だから俺はもう君には二度と会えない。 これが俺からの最後の手紙になると思う。 でも俺はリーナや誰もが、『武力の力が干渉できない平和』を真剣に考えるようになったときに会えるかも知れないだろう。 たとえ何年、何十年、この俺の命が尽きてもこのことを皆に教えてやってくれ。 ライト・K・ミストラル 「ライトのバカッ!!」 ライトの手紙を読み終えたリーナは、空軍基地のロビーの床にしゃがみ込んで泣き崩れたのであった。 「・・・・・・。」 そんなリーナを見た周囲にいる者達は、愛している恋人が帰ってこないと思って泣き崩れているとしか思えなかった。 しかし、リキッドだけには、リーナが悲しんでいる本当の理由が理解できているのである。 彼女が泣いているわけは、ライト・K・ミストラルという一人の軍人であるポケモンアタッカーは、 決して故郷には二度と帰ってこない、いや帰って来ることが出来なという理由であるからである。 まるでこの手紙が彼の無事を伝える僅かな時間しか輝かない蛍の光であるかのように・・・。 ・・・・・・Latter in Firefly The Fin・・・・・・ キャラクターステータス ライト・K・ミストラル 手持ちポケモン:デンリュウ、エアームド、サマヨール、カメックス、キュウコン、チャーレム        (レベルデータなし) 武器:アサルトライフル(M16)、ハンドガン(M92F)、軽機関銃(M249SAW)、ロケットランチャー(SMAW) あとがき&雑談 『Reality=Fantasy』と同じ戦争を題材にした『Latter in Firefly』ですが、 Sub Effectシリーズでノベラーとして慣れきってしまった自分に対して課した、初心に戻るという課題として書いたものです。 この小説の主人公である『ライト・K・ミストラル』は、自分のポケモン小説処女作である『Sub Effect』が文章という形になる前に 誕生したポケモンアタッカーです。 この頃から自分は戦闘能力をもったポケモントレーナーという、他のポケモン小説にはほとんど無いというキャラクターを構成していました。 しかし、Sub Effectシリーズ連載前にライトはお蔵入りとなり、それと入れ替わりに『ニシザキショウ』というポケモンアタッカーを Sub Effectでポケモンワールドという世界に放ったという悲しい現実がありました。 よって、この小説で一度お蔵入りとなったライトをこの小説のためにリメイクして、彼にもう一度日の当たる場所に連れて行きましたが、 結局はこの小説の世界では、アンダーラウンドな世界に身を投じさせて、結局はそのまま裏の世界に追い込んでしまったということです。 最後にライトのキャラクターステータスをこの小説のためにリニューアルし直して公開したのは、 またいつか彼がこの世界で活躍するかもしれないので、自分の中では「さよなら」とは言い切れないところがそうしているのです。 この小説の本筋に話を戻しますが、この小説も『戦場で戦う兵士を主題にした』反戦のメッセージを込めています。 ここからかなり『酷い言い方』になりますが、「ライトが単にカッコいい」と思った方は『平和ボケ』であり、 「戦争は嫌いだと拒絶する」と思った人は、人が人を殺しあうという実際に起きている『戦争という現実から目を反らしている』としか思えません。 人は戦争で何かを失う変わりに何かを得るわけではなく、何かを失うとまた何かを失うという悪循環の繰り返しをするのです。 こんなことを書いている自分も戦争をニュースや新聞、それに関する歴史関係の本でしか知らない世代の日本人ですが、 戦争を嫌う人間の一人なのです。 『Peaceful at the World』(平和である世界)という言葉の意味を、読者の誰もが真剣に考えて欲しいとも思っています。 ライトも自由という言葉とともに、この言葉の意味を真剣に考えるためにも、旅に出ましたので・・・。 最後に自分達の国を守るための自衛隊を避難する日本人に対して、 漫画版の戦国自衛隊にあとがきにある原作者である(故)反村良先生のこの言葉を捧げる。 「戦争は嫌いだが、故郷を外国から守ることを否定することも嫌いだ。」 自分から解釈した反村先生のこの言葉の真意は、他国からの軍事的侵略などに対抗するには、 自分達の国を守るためには軍事力を行使するのも仕方がないことだという意味であると、自分は思っている。 戦争やテロで世界情勢が大きく揺らごうとしている21世紀初頭の現在、軍事的侵略から身を守るためには、 皮肉にも同じ軍事力で対抗するしかないという現実があるのが現状と考えてもいい。 しかし、自分は戦争で人類が争うことが無い遠い未来に、この反村先生の言葉が否定されることを望んでいるのである。 これは戦争を嫌う戦争を知らない世代の一人の日本人だからこそ、醜い現実より現実味の無い戯言を望んでいるからである。 これはポケモン小説のあとがきとは思えない最後となったが、自分なりの反戦論はReality=Fantasyでゆっくりと書いていくつもりです。 2003/04/30 Written by:長谷川紫電