この小説はポケモン不思議のダンジョンをモチーフとしていますが、”実際のゲームとは異なる展開”がありますので、 ゲーム本編から脱線したギャグが嫌いな方は読まないで下さい。 ―――光が見える・・・・・・・ここは一体何処なんだろう・・・。    ぼくは眠っていたみたいだ・・・。この感覚は・・・・・・。――― ・・・ねえ・・・起きてよ・・・・・・。起きてよ・・・・・・。 ―――誰かが呼んでいる・・・。ぼくのことを・・・・・・。――― ・・・・・・ねえねえ・・・、起きてよ・・・・・・。 ―――ぼくは何で倒れていたんだろう。    とにかく起きなきゃ・・・・・・・。――― 「あ、目が覚めた?君は何処から来たの?」 ぼくは見たことのない森の中で目を覚まし、木漏れ日で目が一瞬だが眩んでしまったが次第に慣れていった。 目が覚めたぼくの前に立っていたのは、頭に葉っぱを着けた可愛らしい黄緑色のポケモンで、 ぼくの記憶が確かならば、このポケモンは葉っぱポケモンチコリータだ。 「君は・・・誰・・・?なんでぼくはここに居るの?」 「ここで寝ていたら、炎タイプの”ヒトカゲ”でも風邪をひくわよ」 どうやらチコリータはぼくが目を覚ますのを待っていたに違いないが、チコリータから発したあるポケモンの名前に反応してしまう。 そして、ぼくは慌てて自分の手を見てみたが、これは明らかにぼくの知っているポケモンのものだった。 「ヒトカゲって・・・。ぼくのこと?」 「どこからどうみてもあなたはヒトカゲそのものよ」 「違う!ぼくは人間だ!!これは悪い夢だ!!」 「あなたが人間?あたしにはヒトカゲにしか見えないよ」 ぼくはチコリータにヒトカゲといわれているが、ぼくは人間であってポケモンではないと思っていた。 そこで慌てて近くにあった水溜りで自分の姿を確認する。 「ルー○!私がお前の父だ!」 「うっ・・・嘘だぁあああああ!!!!!」 只今ヒトカゲは、スター○ォーズEP5にて、主人公の父親がダー○ベ○ダーだったという位のショックを受けています。 「うっ・・・・・・嘘だぁあああああ!!!」 水溜りに映っているぼくの姿は、ポケモン図鑑全国No004のとかげポケモンヒトカゲであって、人間ではなかった。 ぼくは見知らぬ森で目が覚めたときには、ポケットモンスターという生物になってしまっていた。 ポケモン奇妙なダンジョン、救助隊結成へ 「あなたは誰がどう見てもヒトカゲなのよ」 「ぼくは人間だぼくは人間だ・・・・・・。これはきっと悪い夢だ・・・・・・」 チコリータのいうことが信じられずに、ヒトカゲになったぼくはこれが夢であると何度も疑いながらも、 近くにあった大木に何度も頭突きをして夢から覚めようとするが、頭が痛くなるだけで夢から覚めない。 そう、痛みが体中に伝わるくらいの現実そのものだ。 「ねえ、チコリータ。ぼくは何でここに居るの?」 「わからないわよ。あたしが通ったときにあなたはこの森で倒れていたのよ」 どうやら、チコリータは倒れていたぼくの第一発見者であって、ぼくがこの森に迷い込んだ理由はわからないようだ。 「あなたが人間なら、何か覚えていることとかある?名前とか・・・」 「う〜ん・・・・・・」 ぼくはチコリータにいわれるままに、人間としての記憶を必死に思い出そうとするが、何も思い出せない。 自分の両親や友達に住んでいたところ、それどころか自分の名前すら思い出せない。 「全く覚えていない・・・」 必死に人間としての何年生きたか忘れてしまった人生を思い出そうとするが、思い出せないどころか頭が痛い。 頭突きによるダメージもあるけど、これは脳みその思考回路がショートするような痛みだ。 「記憶喪失なのね?自分がヒトカゲとして生きていたことも?」 「ぼくは誰がなんと言おうと人間だ!!ヒトカゲだとしても記憶喪失になるヘマをやらかしたりはしないよ!!」 「それでも記憶喪失であることに変わりないし、現にその様なドジを踏んだから記憶喪失になったのよ」 チコリータの容赦ない突っ込みに、ぼくは何もいえなかった。 ぼくが人間だろうがヒトカゲだろうが、どちらにしろ記憶がないのでは話にならない。 ここはヒトカゲとして大人しく振舞った方がよさそうだ。 「おらぁあああ!!オレ達の縄張りにはいるんじゃねぇ!!」 突然として一匹のオニスズメが襲い掛かってきた。 どうやらここはオニスズメの縄張りらしく、ぼくとチコリータはうかつにも入ってしまったみたいだ。 「大変!ここはガラが悪くて醜くて卑怯で卑劣でいかにも巣が不衛生としか言いようがないオニスズメの縄張りよ!!」 「「お前の方が一番酷いこと言っているだろう!!」」 ボロクソとしか言いようのない暴言を吐くチコリータに、ぼくとオニスズメは声を合わせて突っ込んでしまう。 「と・・・とにかく・・・・、貴様ら二匹ともオレの縄張りに無断で踏み込んだ報いを受けてもらう!」 オニスズメは聞く耳をもたないと言わんばかりに、ぼく達に襲い掛かってくる。 そのとき、ぼくの中のポケモンとしての本能が呼び起こされるように、尻尾の炎が激しく燃え出した。 「これでも食らえ!!」 「あっちちち!!飛び道具なんてずるいぞ!!レベル1で火の粉が使えるなんて聞いてないぞ!!」 「ゲームのあらすじ通りに行かないのが、小説なのよ」 ヒトカゲとしての本能に目覚めたぼくが夢中で放った炎は、火の粉という炎タイプでも初歩的な技である。 口の中が火傷しそうな技なのだが、口の中がヒリヒリしないことからも大丈夫だと思った。 その横でチコリータはオニスズメを”確実に挑発している”。 これでぼくのチコリータに対するイメージが音を立てて壊れてしまったのだ。 「火の粉の出し方を知らないのに、体が自然に動いた・・・・・・」 「ヒトカゲ!!行け!殺れ!!」 「『殺れ!』って、チコリータのくせにそんな過激なセリフを言うな!!」 明らかに作者はチコリータファンの皆様に喧嘩を売っているとしか言いようのない展開なのだが、 ぼくはノリ突っ込みしながら迫ってくるオニスズメに火の粉を連射する。 幸いにもオニスズメはレベルが低かったのが救いなのか、すぐに戦闘不能となった。 「だからオレは最初の御三家が嫌いなんだよ・・・・・・」 「ぼくも好きでヒトカゲになったわけじゃないです。出来れば”ミュウツー”とか”デオキシス”の方がよかったです」 「それは高望みと言うものよ。ヒトカゲ君」 全身の羽毛や体毛が焼け焦げた負け惜しみを言うオニスズメを前に、ぼくの言う事にチコリータは突っ込みを入れる。 だって、ポケモンになるのだったら伝説のポケモンの方がいいじゃないか・・・・・・。 「ねえ、ヒトカゲ君。君は強いんだね」 「いや・・・ぼくはヒトカゲの技を何故か覚えていただけで、技の出し方まではどうか不安だったんだよ」 ぼくは人間だった頃に知っているポケモンに関する知識は明白に覚えている。 完全に人間だった頃の記憶が消えたわけじゃなくて、ヒトカゲになった今でも算数だって簡単に出来るし文字も分かる。 どうやら人間だった頃の知識や一般常識はきちんと覚えているようだ。 「ところで、チコリータ?後ろのバーベキューセットは一体何・・・・・・」 「これは、お腹がすいたからそこのオニスズメを”焼き鳥にして食べよう”かなと思って準備したの♪」 「お・・・オレは・・・ここに居たら間違いなく殺される!!!」 バーベキューの準備を整えて純真無垢の笑みを見せるチコリータに、ぼくは得体の知れない恐怖を感じた。 同じく彼女を恐れたオニスズメは全速力でこの場を逃げ去っていく。 「せっかくのお昼ご飯に逃げられた・・・」 「食べる気満々って・・・、チコリータが肉食というのは公式設定の何処にもないぞ!!!」 もうわけも分からなくなって、自覚症状のない小悪魔であるチコリータに、ぼくは突っ込む以外の方法はなかった。 「!!!!!!!!!」 「うぉおおおぁぁぁあぁあああ!!!」 「何!?今の叫び声!?」 「オニスズメより美味しそうなお昼ご飯みたいだから行きましょう」 まだ他のポケモンを食糧としか思っていない発言をするチコリータと共に、ぼくは森中に響く叫び声に耳を傾け、 声が聞こえた方向へと向かっていった。 「ぼ・・・ぼくが・・・・・・ミズゴロウに・・・・・・・」 「私はピカチュウになってるよ!!どういうことか誰か説明しろ!!」 (まだ居たんだ・・・ぼくのようにポケモンになった人間が・・・・・・・) 断末魔の叫びが響いたのは森の泉のほとりで、そこには泉に映る姿を見て驚くミズゴロウとピカチュウの姿があった。 このリアクションからしても、この二匹もぼくと同じように人間からポケモンになったらしい。 「君は何処からどう見てもミズゴロウだろう」 「そうだね。どこからどうみてもミズゴロウだ」 第一発見者であると思われるフシギダネは、ミズゴロウの姿であることを納得させる。 しかもこのミズゴロウはぼくとは違って”現実を何の抵抗もなく受け入れている”。 「何でわたしがピカチュウになったのか、説明しろ細目!!」 「ぼ・・・ぼくが見つけた時はピカチュウで・・・君は人間じゃないんだよ・・・・・・」 そこから離れた場所でヒノアラシの首を両手で絞めているのは、相当好戦的とも思えるピカチュウで♀だと思われる。 このピカチュウの態度を見て、ぼくの抱いたピカチュウのイメージが崩壊したのは言うまでもない。 「君達も人間だったというポケモンなの?」 「君はヒトカゲになっていたんだね」 「お前ら!!わたしなんてピカチュウなんだぞ!!せめてメタグロスかバンギラスに変身させろ!!」 同じ境遇の人間・・・じゃなくてポケモンが他にも2匹いたことは、ぼくも少しは勇気付けられた。 ミズゴロウは完全に環境に適応しているし、ピカチュウに至ってはぼくと同じ発想をしながら森中で放電している。 「あたしのヒトカゲ君が人間だったと言うことは本当みたいだね」 「ぼくの見つけたミズゴロウも人間だといっていたことは嘘じゃないよな」 「あんなに凶暴なピカチュウなんてぼくは一度も見たことがありませんよ」 こちらは純粋なポケモン達同士で、お互いに出会った自称人間と名乗るぼく達について話している。 この3匹はお互いに面識があるらしく、どうやらぼく達の今後について考えるつもりだ。 そこで、ヒノアラシが余計な一言を思わず口を滑らせてしまった。 「誰が凶暴なピカチュウだ!?」 「ご・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」 悪口には敏感ともいえる地獄耳を持つピカチュウは、高速移動しながらヒノアラシに鉄拳制裁を浴びせる。 様子から見てもヒノアラシの残りHPはレッドゾーン突入しているらしい。 「あたしがヒトカゲ君の面倒を見るから、キミ達はそれぞれ見つけたポケモンを頼むね♪」 「わかったよ。ミズゴロウはぼくに任せてよ!」 「このピカチュウはぼくということですか?これから救助隊を結成するのに強い味方がほしいですから・・・」 どうやらこの3匹の方針は決まったらしく、ぼくはあのチコリータと共に行動することになったらしい。 ところで、ヒノアラシの言っていた救助隊って何なのだろう・・・。 「ところで、救助隊って一体何?」 「救助隊というのはね。今は自然災害が相次いでいるから、それで困っているポケモン達を助ける仕事よ。 あたし達はこの3人で救助隊を結成する予定だったけど、君たちとそれぞれペアで結成することに決めたのよ」 どうやら救助隊というのは、人間でいう災害救助隊に当たる組織らしく、 ポケモンの世界では人間の世界とは異なるシステムや独自の文化を持っているのだと、ぼくはそう考えた。 そんな大事なことを、ぼく達の意見を完全無視して勝手に決めないでよ。 「救助隊って・・・、ぼくはポケモンじゃなくて人間だよ!! それにヒトカゲになった僕自身の体がどのようなものか、全く分からない状態だし・・・・・・」 「オニスズメを秒殺したから、ヒトカゲ君なら大丈夫だよ」 ぼくは未だに自分がポケモンであることを認めていないのだが、チコリータはぼくの意見を完全に無視して話を進める。 「ミズゴロウとピカチュウがどう考えているか分からないし、ぼくはまだポケモンと認めたわけじゃ・・・」 同じ境遇でポケモンとなっている他の2匹がどうなのかぼくは聞いてみることにする。 この二匹の反応次第では救助隊の話も上手く誤魔化せるし、このチコリータの魔の手からも逃げられると思っていた。 「ぼくは一生に一度くらいポケモンになっても別にいいと思っているよ。 どうせ人間としての記憶がないんじゃ、ポケモンとして生きた方がどう考えても特だよ」 「お前は呑気に構えていないで、もう少し危機感を持てよ!!!」 ミズゴロウは自分の体に馴染んだらしく、既にポケモンとして環境に適応してしまっていた。 彼の言うこともこの世界を生きるために一理あるのだが、それと同時に人間としての人生を捨てるつもりなのか・・・。 「わたしはポケモンになっても、人間だった頃に覚えた空手というものが出来れば構わないよ!! ピカチュウというのが悔しいが、そこらの人間も一撃で倒せそうな気分がするよ!!」 「君はもう少しマイナス思考で考えてください・・・・・・」 記憶の片隅にあった“前向きロケット団”のフレーズを思わず口ずさみそうな、ピカチュウの超プラス思考振りに、 ぼくは”ピカチュウは後先を考えないタイプ”だと思った。 「ほかの二匹の意見も聞いたでしょう♪」 「賛成5、反対1の多数決で救助隊結成が決まりました」 「ヒトカゲ君も”今はポケモン”なんだから、救助隊で頑張ろうよ」 郷に入れば郷に従えのことわざどおりに、他の2匹がポケモンとして生きることを決めたように、 ぼくもヒトカゲとしてこの世界を生きる事と救助隊結成が確定した。 「ぼくも男だから、潔くヒトカゲとして生きるよ・・・・・・」 「それでこそヒトカゲ君よ。これからはよろしくね♪」 悔しいけど正直に言ってぼく一人ではこの世界を生きていく自身がない。 何も知らない世界で生きるには誰かに頼らなければならない。 ぼくはチコリータと共に救助隊を結成して、この世界で生きることと人間に戻る方法を探さなければならないのだ。 こうして、ぼくとチコリータ、ミズゴロウとフシギダネ、ピカチュウとヒノアラシ、このペアによる3組の救助隊が結成された。 「オラオラ!!わたしが救助隊になったからには、どんなポケモンでもぶっ飛ばしてやる!!」 「ピカチュウちゃん。救助隊は傭兵とか暴力団じゃないんですよ!!」 「フシギダネ君。これからはよろしくね・・・」 「ああ、君と一緒で救助隊をこれから頑張ろう!!」 「ヒトカゲ君と一緒なら、オニスズメ以上の得物が食べられそうだね♪」 このときのぼくは小さな冒険心と好奇心と共に、”言葉では語り尽くせない大きな不安”を同時に抱えていた。 果たして、こんな個性の強すぎるメンバーの中で、ぼくは生き残れるのだろうか・・・・・・。 おしまい。 あとがき、 ポケモン不思議のダンジョンのオープニング壊バージョンを書いてみました。 いろいろな人から刺激されたことと、ノベラーとしてのリハビリという意味でもこれをモチーフに書いてみようと、 いざ妄想してみましたが、自分の脳内妄想を裏切らないでキーボードを打ってみたら、 こんなものになってしまったよ!orz 586さんの仮説に基づいたシリアスものや、春海さんのようなオーソドックスな冒険ものが出たのであれば、 ”ギャグ”がまだ出ていなかったので、結果としてこのようなものになったのかも知れません。 追い討ちをかけるようですが、執筆時間2時間程度のものでも、楽しんでいただけたでしょうか? それではこんなものを読んでいただいた方々、本当にありがとうございました。 2005/12/25 Whitten by 霧島吾留乃 ポケダンをプレイした方々へのクリスマスプレゼントとして・・・・・・。