Sub Effect 第一部:Ballet city story 第十八話:携帯獣兵器(中編) 9月17日午後8時頃、シルフカンパニー総合研究所地下研究室にて、 ミムラとシルフカンパニーの一部の科学者によって作られた『M』と呼ばれたミュウツーは不完全のまま覚醒させられた。 10年前のあの事故の生き残りであるガイとミムラは以前以上の恐怖を感じて言葉がなかった。 この2人以外のこの場にいる者は、未知なる恐怖ともいえる感覚であった。 「これが・・・ミュウツー・・・図鑑で見るよりも恐ろしく感じる・・・。」 「確か、レイナだったな。こいつは決して人間が手を出してはならないポケモン・・いや、兵器だ。」 ガイは恐怖で立ちすくむレイナに不完全体ミュウツーを『生物』としてではなく『道具』して示した。 その横でショウはポケギアのトレーサー機能の画面を見て呆然としていた。 「機械で測れないレベルの相手をどう倒せというのだ・・・。」 「四天王クラスの実力者がいくつ束になっても勝つことはできない。私以外の人間には制御することなんて不可能だ!」 ミムラは感じる恐怖を『力』と認識して誇らしげに語っていた。 ミムラの味方殺し(未遂)と裏切りにいらだっていたエリザは不完全体ミュウツーの恐怖を払いのけるかのように、 モンスターボールからカイリューとバンギラスを出していた。 「ミムラ、ミュウツーを化け物として覚醒させるとは・・・仕方ない、こいつを実力で倒すしかない!」 ちなみに不完全体ミュウツーを覚醒させたのはガイであるが、エリザの怒りの矛先はミムラに向けられていた。 「総帥、念のために保険をかけておきましたよ。ミュウツー!重力球で私以外の生物を皆殺しにしろ!」 ミムラの指示で不完全体ミュウツーは両手をかざして黒いエネルギーの塊を作った。そのエネルギーの塊はカイリューに向かって放たれた。 「カイリュー!黒いエネルギー弾を破壊光線でかき消せ!」 エリザのとっさの指示があってもカイリューは破壊光線をすぐに発射できる状態にしていた。カイリューは今まで我慢をしていたかように、 破壊光線を重力球に向かって発射した。だが、重力球は破壊光線を突き抜け、カイリューに直撃した。重力球はカイリューを片足と大量の血の跡を残して蒸発させた。 「わ、私のカイリューが・・・。」 エリザは自分自身ポケモンで最強の存在であったカイリューを簡単に片足を残して消滅させられたことに愕然としていた。 そこでガイは不完全体ミュウツーがミムラの指示を受けたのかに疑問を持った。 「ミムラ博士、何故ミュウツーがあなたの命令を・・・。」 「いい質問だ。あらかじめミュウツーがスレイヴボールで捕獲できなかった場合に備えておいたのだ。培養カプセルを私自身のモンスターボールとしてね。」 「どういうことだ?」 「ミュウツーは私の命令を本能的に聞くようになっている。でも、実際に捕獲しない限りは永遠に私のものだがな。」 ミムラはガイの質問に誇らしげに答えた。不完全体ミュウツーを自分の力としているのだ。 しかし、エリザはそんなことに関係なく不完全体ミュウツーにバンギラスの破壊光線を浴びせていた。 だが、不完全体ミュウツーは自己再生で回復していた。 それから不完全体ミュウツーは重力球をバンギラスに向かって放ったが、悪属性をもつバンギラスにはエスパー属性の効果がなかった。 「ミュウツー!破壊光線だ!」 不完全体ミュウツーはミムラの指示で右腕から破壊光線を放った。 不完全体ミュウツーは右腕を焦がしつつ放った破壊光線はポケモンの中でも硬い皮膚をもつバンギラスの腹部を貫通し、 エリザの右胸部から右腕を蒸発させて地下研究室の壁に深さ約5メートルの横穴を作った。 「エリザ!しっかりしろ!」 「総帥!」 ショウと親衛隊の一人が慌ててエリザの元に駆けつけた。 「ショウ・・・わ、わたし・・・よ・・・か・・いぶつ・・・・を・・・・・・。」 エリザはしばらくして意識を失った。おびただしい量の血を流して無念の顔つきで死んでいった。 エリザの死に過剰反応を起こした親衛隊の3人はアサルトライフルを不完全体ミュウツーに構えた。 「ミムラ、よくも総帥を殺したな・・・。」 「総帥の敵だ!」 「リザードン、カメックス、フシギバナ!合体攻撃で化け物を消滅させろ!」 「待って下さい!」 突然ナカジマが親衛隊3人を引きとめた。 「ナカジマ戦闘部隊副長!止めないで下さい!」 「違う!ミュウツーを見て気づいたことがある!」 親衛隊3人はナカジマの方に首を向けた。ショウ達は別の意味でナカジマに注目した。 「戦闘部隊副長だったのか!?」 「確かに服装が少し違いますね。」 「サイウン、それはそれで置いといて副長なのに弱いことに気にしないと・・・。」 「黙れ!俺の地位に驚いてないで俺の話を聞け!!」 ナカジマはショウ、サイウン、レイナに怒鳴りつけてから真剣に不完全体ミュウツーについて話した。 「みなさん、どんな動物でも100%の力を意識しても出すことはないことは知ってます?」 「どういうことだ?」 「例えば、ゴーリキーが本気で爆裂パンチを繰り出すとします。しかし、ゴーリキーはそれでも100%の力は出してないのです。 100%の力を出さない理由は、自分自身の体を傷つけないためであって、脳が無意識のうちに力を制御しているのです。 もし、ゴーリキーが100%の力で爆裂パンチを放った場合は、爆裂パンチを放った腕は骨が砕けて皮膚が破れ、 腕は原型がなくなるほど無残に変形するほどのダメージを負うのです。このミュウツー不完全体であるために、その制御が全くできてないのです。」 「つまり、ミュウツーは自分自身が傷つくことに構わず100%の力を常に出しているということか。」 「ガイさん、その通りです。この不完全体ミュウツーは厄介なことに自己再生も使えますから常にベストな状態で戦えるのです。」 「このミュウツーは完成予定の3倍上の攻撃力をもつ事になるのか・・・。」 ナカジマが説明している間にショウは不完全体ミュウツーをポケギアのトレーサー機能で能力測定していた。 何度も測定不能の表示が出たが、やっと一部の能力の測定ができた。 「ナカジマとガイの言う通りだ。攻撃力はエリザのカイリューの約5倍、HPはハピナス並、防御力はパルシェンの約1.5倍、素早さはマルマインの約2倍だ。(攻撃力以外はポケモンのレベルが70である場合を基準としています。)」 「そんなに強いのか!?」 全員は不完全体ミュウツーの以上と言える能力の高さに驚いた。しかもミムラはその結果に満足していた。 それでも親衛隊3人は立ち上がりリザードン、カメックス、フシギバナに3対合体攻撃を指示した。 「ソーラービーム!」 「火炎放射!」 「ハイドロポンプ!」 3匹はそれぞれ言われた技を出せる限りの全力で不完全体ミュウツーに放った。 不完全体ミュウツーは合体技に直撃し、反動で壁にたたき付けられた。だが、ミュウツーは立ち上がリ、 重力球をカイリューに放ったものの3倍はある大きさの物を親衛隊3人とそのポケモン達に放った。 それから地下研究室は激しい爆発と煙に包まれた。しばらくして煙がおさまり、 すぐにサイウンとナカジマが全員いることを確認したが、親衛隊3人とそのポケモン3匹はおびただしい血の跡を残して消滅していた。 ---to be continued---