「もちろんじゃ。いくらバトルとはいえ、そんなにムチャなバトルは危険じゃからな。
 狂暴なポケモンは、研究所のモンスターボールにしまっておるよ。
 ・・・・まぁ、トレーナーのバトルの運び方にもよるが、な」

ってことは、そういうことだっ。
プリンは、ガーデンのポケモンよりも強い。
そしてボクは、そのプリンよりも強い。
つまりっ、ボクはガーデンのポケモンより、もっと強いワケだっ!

「・・・ど、どうしたのナナちゃん?」

首をかしげてるマコちゃんに、ボクは笑って答えた。

「ははははははっ、もう大丈夫だよっ!!
 まかせてよ、どんなポケモンがきたって、ボクがやっつけてやるんだからさっ!」

・・・あんなプリンなんてアテにできるもんか。
ボクのナナちゃんパンチのいりょく、見せてやるっ!!


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 ポケモンなんて大嫌い!

    PART6「みずうみなんて 大嫌い!」

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そのあと、博士の指示でいわれるままに、ボクたちはポケモンガーデンのいりぐちに立った。
木でできたその門は、いつもはカギがかかってる。今はあけられてるけどね。
むこうからふいてくるさわやかな風がきもちいい。ボクのかみのけをゆらす。

目の前には広いみずうみが広がってる。ああ、これがさっき言ってた「ポケモンレイク」ってやつだな。
そのみずうみは、太陽のひかりをうけてキラキラとかがやいてる。
そのほとりには、小さなてこぎのボートがいくつかあるのがみえる。これにのってけってこと?

と、とつぜんボクのしかいを博士のからだがジャマする。

「さぁてと、どうかな、ガーデンの第一印象は?
 中には緊張してる子もいるかもしれんが、なんてことはない、ただの広い庭じゃよ」
「ね、ね、ナナちゃんっ」
「ん?」

またうだうだと話し始めた博士のほうに顔をむけたまま、マコちゃんはボクにはなしかけてきた。
なんとなく、マコちゃんもたのしそうだ。

「あれ、ボートだよねぇっ?
 やっぱりあれって、のってもいい、ってことなのかな?」
「う〜ん、・・・そうなんじゃないかな」
「わぁっ、ボートがこげるなんて、楽しみっ!
 ・・・あ、でもとちゅうでポケモンにおそわれたらタイヘンかぁ・・・」

そういわれて、ボクもみずうみのうえでポケモンにおそわれる場面をそうぞうしてしまう。

(ガ〜ッ!!)
(ああっ、こいつは世界にまたといないまぼろしのポケモン!!
 ダメだ、ボートがひっくりかえる〜っ!!)

「・・・そ、そうだね・・・。
 できればボートは使わないほうがいいかも・・・」

そうそう、いくらボクがプリンよりも強いっていっても、さすがにみずうみのうえじゃたちうちできないだろうしなぁ。

「・・・とまぁ、こういうわけだから、各自十分注意するように。
 さきほど見せたガーデンの地図は入り口の横にプリントとして置いてあるから・・・、
 まぁ、今、配ることにするかの」

と、博士はひとりごとみたいにそう言って、その地図をボクらみんなに配った。
どれどれ、もいっかい見てみるか。



う〜ん、一番うえの赤い点がゴールかぁ・・・。
ホントにボク、無事にたどりつけるのかなぁ?

「さっきも説明したが、見てわかるとおり、このガーデンは湖・平原・森・山からなっておる。
 うまく自分のポケモンをつかって、早くゴール地点にあるロッジにつくのが目的じゃ。
 もちろん、一人でゴールを目指してもいいし、何人かでグループを組んでもいいぞ。
 それに、道順もすべて自由じゃ。湖をボートで縦断し、山を上るような直線ルートでもかまわんし、
 それら湖や山をさけて通るルートでゴールを目指してもまったく構わん」

なるほどねぇ。
少しでも早くつきたいばあいは、まっすぐにゴールを目指すし、
ちょっとでも安全に行きたい場合は、ぐるっと大回りしろってことね。

ボクたちはどうしようかなぁ?
・・・もちろんっ、「あんぜんさく」で行くしかないっ。
みずうみや山なんて、どんなポケモンが出るかわかったもんじゃないやっ。

そう決心したところで、またマコちゃんが話しかけてくる。

「ねぇねぇナナちゃんっ、どういうみちじゅんで行くっ?」
「うん、やっぱり不安だしさ、ぐるっとまわって、あんぜんそうなルートで行こうよ」

そうだよねー、なんてかんじで、二人で話してると。

「ア・イ・ハ・ラ・さ〜ん」

うしろのほうから、バカにしたようなこえが聞こえてきた。
このこえは・・・カツヤのバカだっ。

「・・・なんだよっ」

ボクは、おもいっきりイヤそうな目でカツヤをにらんだ。
・・・いや、ホントにイヤなんだけどね。

「おいおい、そうコワい目ぇすんなってばさ〜。
 ・・・で、どう? もうすぐでアイハラさんのあこがれたポケモントレーナーの第1歩が」
「だれがあこがれてるもんかっ」

カツヤのコトバをぜんぶ聞きおわるまえに、ボクはものすごいいきおいで言い返してやった。
ったく、コイツはなにかっていうとすぐにこれだもんなぁっ。

「いきなりこんなことしなくちゃならないなんて、ホントついてないよっ」
「あれ?・・・オレはてっきり、アイハラさんはもう感動して目をかがやかせてるかと思ってたのに・・・。
 初日かどうか、っていうのはべつにしても、こういう練習があるなんてことは誰にでも想像できるのに」
「しるもんかっ。だいたい、いまこの場にボクがいるってことじたい、想像もしてなかったよっ」

まったくだ。・・・これもぜ〜んぶ、おかーさんのせい。
・・・くぅ〜っ、なんだかすごくムカムカしてきたぞっ。

「あれ・・・、もしかしてアイハラさん、・・・恐いの?」
「ぬゎにぃっ!?」

・・・こっ、こいつぅっ!!なにニヤニヤしてんだぁっ!!

「・・・まぁ、仕方ないかぁ。いくら博士のガーデンとはいっても、
 どんなキョウボウなポケモンが出てくるかもわかんないもんなぁ」
「そっ、そっ、そんなワケないっ!!
 ポケモントレーナーになんかはなりたくないけど、ポケモンなんて恐いワケないじゃないかっ」
「ふ〜ん、、、じゃぁ、なんでポケモントレーナーになりたくないんだ?」
「そっ・・・、それはっ・・・」
「やっぱ、恐いんだ」
「ちがうぅっ!!」
「じゃぁ、自信がないとか」
「それもちがうっ!」
「・・・・・」

やばい、カツヤ、じっとこっちを見てる・・・。
・・・ったく、さっさとあっち行けよなぁっ。

「・・・ま、アイハラさんみたいな人はどんなにがんばっても、“ちゅうとはんぱ”なポケモントレーナーにしか
 なれないだろうけど、さ」
「なにをぅっ!?」
「まぁ、どのジムでも相手もされなくって、泣き泣きマサラに帰ってくる、ってのがオチだろうね」

ぷっち〜ん。
も〜う、ナナちゃん大暴走っ。コイツだけは絶っっ対に許さないっ!!

「なんだよっ、自分だって“ポケモンマスターになりたい”ー、なんてえっらそうに言っちゃってさ、
 あんたみたいな悪ガキがそんなのになれるわけないじゃないかっ」
「キミよりはマシだと思うけどなぁ、“算数ナナ”さん」
「今はそんなの関係ないっ!!」
「あ、じゃぁホントに7点だったんだ」
「ちっがぁうっ!!」

あーっ、ホント、アッタマくるなぁっ!!
ちっとも話になりゃしないっ!

「じゃぁ、いっちょ勝負するかっ?
 もちろん、どっちがさきにゴールに着くか、っていう勝負。
 ・・・まぁ、アイハラさんが、ポケモンが恐くないし、自信もあるっていうんなら、だけどね」
「恐くないって言ってるだろぉっ!!もう、さっきからおんなじことをぐだぐだとっ!!
 ・・・残念だけど、ボクはマコちゃんといっしょに行くんだっ。お前と勝負なんかしてられないねっ」
「・・・別に、こっちは構わないけど。オレは一人で行くし、アイハラさんたちは二人で行けばいい。
 1対2なのに、・・・まぁ、ちょうどいいハンデかな?」

こっ、ここまでいわれて引き下がっては、“マサラのナナ”の名がすたるっ!!

「よぉぉしっ、いいよっ、その勝負、受けて立ってやるっ!!
 負けてからほえづらかくなよっ!!」
「へへっ、そうこなくっちゃなっ♪
 ・・・まぁ、ここではっきり、差を見せ付けてやるぜっ!」
「ナ、ナナちゃ〜ん・・・?」

と、わすれてた。マコちゃんが心配そうな目で、ボクをみてる。

「だいっじょうぶっ、マコちゃんっ、ボクにまかせてよっ!
 みずうみだって、ターボでこげばあっというまにわたれるって!」
「そ、そう・・・?」

そうだそうだ。ポケモンが出てくる前に、渡ってしまえばいいんだ。
ヘタをすると、ゴールまで一匹のポケモンともであわないかもっ!

よぉしっ、なんだかやる気、でてきたぞぉっ!!

「こらこら、そこ、静かにしてなさい。
 ・・・おっ、キミはさっきの、・・・ナナくん、じゃな。
 そうかそうか、やっとポケモンが好きになってきたんじゃな? 楽しみになってきたんじゃろう?」

なっ、なんたるゴカイだっ!!

「ちっ、違いますっ!!」
「はっはっはっ、まぁいいじゃろ。
 ・・・おっと、そろそろ時間じゃな。太陽が、一番高く、強く輝いておる。」
「よしっ、スタートとどうじに、ダッシュしてボートに一番のりだっ、マコちゃんっ」
「う、うん・・・」
「・・・ではみんな、スタートじゃ。わしは一足先にゴールでまっとるからな、頑張るんじゃぞ」

そのコトバをきくがはやいか、ボクはマコちゃんの腕をひっぱってみずうみのほとりにとめてあるボートに
向かって全力で走った。
ふふっ、ボクの足のはやさはすごいんだからっ。クラスじゃトップだし、リレーじゃいつもアンカーだもんねっ!

「うぉぉぉぉぉ〜っ!!」
「ちょっ、ちょっ、ちょっとっ、ナっ、ナナちゃ〜んっ!」

ほとんどひきずられるようなかんじで、マコちゃんがボクのうしろを走ってる。
ゴメン、マコちゃん、もうちょっとガマンしてっ。

「くっ、くっ、くそぉ〜っ!!」

って、すぐうしろまでカツヤがせまってるじゃないかっ!
・・・そっか、アイツもクラスで二番の足のはやさだったっけっ。・・・くそっ、負けるもんかぁっ!!

「一番のりぃ〜っ!!」

ボクはそう叫びながら、ボートに飛び乗った。ガタン、ってボートが少し揺れる。
・・・ふなよいなんて、まさかしないだろーなー。今思い出したけど。

なんて考えてたら、すぐにカツヤも隣のボートに乗りこんだ。
いかんっ、追いつかれたっ!!
ボートのオールを、ボクは力いっぱいにぎりしめる。

「いくよっ、マコちゃんっ!!」
「え、ええっ?」
「ナナちゃん〜・・・っ、ターボエンジンっ!!!」

そのまま、ぜんそくりょくでボートをこぐ。
へへへっ、こういうのは得意なんだっ!!・・・でも、こりゃ結構つかれるかも・・・。

「くっ、くそっ、女のクセしてバカぢからだからなぁっ、ナナはっ!!」
「へっへ〜ん、や〜い、負け犬〜っ♪」

ボクとカツヤとの差はみるみるうちに広がっていく。なんだか、カツヤのボートはあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。
いつもうるさいアイツをバカにするには、もってこいだっ。

「うっるさいっ、この男女っ!!」
「あ〜ら、ごめんなさいねぇ、カツコちゃ〜んっ♪」
「うっ、うるさ〜・・・・!!」

ははっ、とうとうカツヤの声も聞こえなくなってきたっ。みずうみも、もうそろそろで終わりだろっ。
腕もすこしだるくなってきたけど、まだまだだいじょうぶだもんねっ!

「すご〜いナナちゃんっ、めっちゃくちゃはや〜いっ!」
「へへっ、それほどでもあるけどねっ!!」
「これなら、ホントにあたしたち、いちばんのりになれ・・・っ?」
「もっちろんっ、そんでもってゴホウビたくさんもらわなきゃねぇっ!!」
「・・・ね、ね、ナナちゃん・・・」

と、ひっしでオールをこいでいるボクの服を、マコちゃんがひっぱった。

「ん、どうしたの?」
「ね、・・・コレって・・・」
「?」

マコちゃんは震える手で、ボートの外の水面を指差した。
・・・ん? 何だか黒いカゲが・・・。
カゲが・・・見える、ような・・・、、?

「きゃああああっ!!」
「うわぁっ!?」

次のしゅんかん、黄色いツノみたいなのがにょきっと見えてきたっ。
な、な、なんだこりゃぁっ!? まさか、、、「オニ」っ!?

「なんだこれぇっ!!?」
「ナ、ナナちゃん・・・、、ポケモンだよ!!
 このツノは・・・“トサキント”!!」




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by えんげつ(a.know.3373@gmail.com)