Memories  ―はじまりの詩―




――僕を選んで。
     お願い、僕を見て……――



          
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「とうとう明日だね」
「うんっ。やっと会えるんだね、ボクらのパートナーに」


 皆が楽しそうに話しているのを、僕はぼうっと見ていた。

「どんな人がオレを選んでくれるのかなあ」
「んー。仲良くなれるといいよねー」

 チコリータくん、ヒノアラシくん、ワニノコくん。
 マリルくん、ミニリュウくん、ワンリキーくん、ヤンヤンマくん。
 本当に皆、楽しそうに話す。

 僕とは正反対だ。


 僕の心は、明日への期待どころか、不安で満ち溢れてる。
 僕は皆のように、笑うことはできない。

 明日なんか来て欲しくない。
 ここから消えてしまいたい。
 逃げ出したい・・・・・・。


「メタモンくん、大丈夫? 元気ないみたいだけど」

 ここはワカバタウン。
 僕らの“仮の親”である、ウツギ博士の研究所だ。




         
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「あ、ううん。何でもない。大丈夫だよ」

 僕の顔を除きこむチコリータくんに、僕は無理やり笑顔を返した。
「ね?」
 僕の顔を見て、チコリータくんはニコッと笑った。
「なら、よかったぁ。だって明日はとっても大切な日だもんねー」

 直球ド真ん中な言葉のボールに、僕は一瞬たじろいだ。
 チコリータくんに悪意は全くない。
 でも、その言葉は。
 今の僕にとって、物凄く重い。
「・・・・・うん。そうだね」
 返事をするので精一杯。笑うことはできなかった。


「一体どんな人が来るんだろうね」
「優しい人だといいなあ」
「オレ、早く旅に出たいっ」
「だから、明日ね、明日」
「あ、そうそう。明日からはみんなライバルだね」
「だな。でもバトルになっても手加減はしないからな」
「それはこっちのセリフだよ」

 皆は・・・・・いい。
 誰かが望んで選んでくれる。
 進んで選んでくれる。

 ・・でも、僕はどうだろう。

 僕はメタモンだ。
 相手の姿を借りて戦うポケモン。
 “へんしん”しか使えないポケモン。

 選んでくれるわけがない。
 じゃんけんにでも負けた誰かが、嫌々僕を選ぶんだ。
 でも、そんな出会いをするなんて・・・・・・僕は嫌だ。



         
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「・・僕、もう寝るね」

 皆の会話に加わることができないまま、僕は皆に声をかけた。
「皆も早く寝たほうがいいよ」

「うん、そうするー」
「オレはもう少し起きてる。おやすみな、メタモン、チコリータ」
「あれー? メタモンくんたち寝ちゃうの? それじゃボクも寝ようかな」
「えー、もうちょっと話してようよ。ね?」
「うん。ああ、でも寝なきゃ。明日のために」


 皆はまだ、わいわい話してる。

 ・・・・・・いいな。


 僕が寝ようとすると、チコリータくんがやってきた。
「メタモンくん、一緒に寝てもいいー?」
「え、あ、うん。いいよ」
 僕が答えると、チコリータくんは僕の隣に寝転んだ。
「あれ? メタモンくんは横にならないの?」
「・・・これでも、なってるんだけど」
「えっ、あ、そうなんだ。ゴメンなさい」
 まあ、仕方ない。
 実体のない粘土のような僕の体じゃ、立ってるとか座ってるとか区別しにくいだろうし。
 ・・と、いうより区別できないし。
 あと、そういう僕も、今座ってるんだか寝てるんだか時々分からなくなるし・・。

 僕は{チコリータ}になった。
「わあ、いつ見てもスゴイね、メタモンくん!」
 チコリータくんが楽しそうにいう。

 ・・・・・すごくなんかない。
 僕にはコレしかできないんだから。




         
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 そして。
 朝がきた。

 僕たちはお別れをしてから、ボールに入った。

 そして今、僕らは彼らの前にいる。
 僕らはボールの中だけど、外の様子はしっかり見える。

 そこには、男の子が6人、女の子が2人。
 そう、この子たちが今日旅立つ。
 この子たちの誰かが、僕らの相棒になる。

 誰が僕を・・・・・・・。

 ・・いいや。一体どの子が負けるのかな・・・。

 僕は男の子と女の子の顔を、一人一人じっくり見ていった。
 右からゆっくり視線を移動させる。
 ・・もう皆、ウツギ博士からボールの中にいる僕らの話を聞いたのだろう。
 皆、目が輝いてる。
 もう決めたのだろうか、1つのボールをじっと見つめている子もいる。
 勿論、その視線は僕を見ているわけがない。
 妙に軽い自分の心を感じながら、僕はそれぞれをじっと見つめた。


 ふと、視線を感じた気がした。


 一番左隅にいる女の子。
 見ているはずのない、こっちを見てる気がした。
 その子は、髪を二つに縛ってて、黄色い帽子をかぶってて。
 小さいけれど、元気そうな子で。

 なんだか気になった。
 あの子は一体誰を選ぶのかな。



           
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「じゃあ、どうしようか。みんな、好きな子を選ばせてあげたいけど、こればっかりはどうしようもないからね」
 ウツギ博士が言った。
 とうとう。
 とうとう、僕らが待っていた時がきた。
「やっぱり、じゃんけん、かな」
 博士が言った途端、彼らの間に緊張が走った。
 その影で、僕らもひっそり息を飲む。

 彼らが拳を握った。
「せーの」
 じゃーんけーん・・。
 ぽんっ。

 ・・・・・・・。

「やったー、勝った!」
 歓声を上げたのは、あの女の子だった。
 チョキの手を高く上げて喜んでいる。
 他の子達は、恨めしそうに自分の出したパーを見つめていた。

「それじゃあ、クリスくん。好きな子を選んで」
 博士が言って、そのクリスっていうらしい女の子は。
 僕らのいるテーブルの前まで歩み寄った。


 一体、あの子はどの子を選ぶのかな。

 きっと、チコリータくんとかマリルくんとかを選ぶんだろうな。
 だって、女の子だから、きっとカワイイのが好きだと思うし。
 僕なんか、やっぱりダメだよな。
 ・・・・・・でも、あの女の子に・・。


「うん、きーめたっ」



           
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 信じられなかった。
 他の皆もそうだったに違いない。
 一様に黙ってしまって。
 僕はただボールを通して、僕を見てニコニコ笑っているその子を見ていた。

 ウツギ博士が恐る恐る口を開いた。
「ク、クリスくん? 本当に、本当にメタモンでいいのかい?」
 その子はキョトンと博士を見て、それから僕を見て、また博士を見た。
「・・・・・・・・ダメなの?」
「え、いや、だから、その・・・・」
 その子の問いにウツギ博士が戸惑う。
 僕もそのときの博士と同じ気持ちだった。

 なんで、僕をこの子は選んだの?
 なんで、僕を?
 なんで?

「なら、いいでしょ、博士。あたしの相棒はこの子なの」

「だって、この子、あたしを呼んでたもん。ね?」

 ・・僕が呼んだ?
 僕は、この子を呼んだの?

「あたしもね、わかってたんだ。すぐにわかったよ。だから、この子と行くの。この子があたしを呼んでくれて、あたしはそれに答えたから。・・・声。みんなも聞こえたよね? 聞こえたでしょ?」


 わからない。

 僕は、この子を呼んだのかな? みんなも、誰かを呼んだのかな?
 彼らには、その声が聞こえたのかな・・・・・。


 そのあと、彼らは恐る恐るボールの前に立った。
 なぜか。
 1つのボールの前に、2人以上重なることはなかった。




           
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「はじめまして。あたし、クリスタルっていうの。みんなはクリスっていうけど」

 研究所のそと、僕はボールから出て、クリスと向かい合っていた。
 クリスはニッコリ笑っていった。
「えっとね。まずは、ありがとう」
 ペコッと頭を下げるクリスに、僕は面食らった。

 ・・なんでこの子は僕にお礼を言ってるの?

 わからなくて、あせあせとしている僕を尻目に、クリスは言葉を続けた。
「あたしを呼んでくれてたよね。もしかしたら、あたしの勘違いかもしれないけど、君があたしを読んでるみたいな気がしたんだ」
 クリスはじっと僕を見た。
「うれしかった」
 僕もクリスをじっと見た。
「誰も、あたしなんか選んでくれないと思ってたから。ほら、あたし、チビだし、女だし」

 僕は黙ってクリスの言葉を聞いていた。
 ・・不思議だった。

「だからね、だから。君の声が聞こえて、とても嬉しかったんだ。・・でもね、君の声が聞こえてなくても、あたしは君を選んでたよ。見て分かったもん、君があたしの相棒だって。・・・・でもやっぱり」
 クリスは
1度言葉を切った。
「・・選んでくれて、ありがとう」




 ・・・・・・僕のほうこそ、ありがとうだよ。

 僕は言いたかった。
 同じことを、クリスに。




 ありがとう。



           
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 僕は、“タル”と名前をつけてもらった。

 クリスは、
「二人で一つだから」
 と言っていた。


 結局、僕はクリスと一緒にいる。

 僕はクリスに選んでもらったと思ってる。
 でもクリスは、僕がクリスを選んだという。

 どっちだろう。

 でも、どっちでもいいと思う。

 結局、クリスと一緒なんだから。

 クリスといられるんだから。


 そう思うよ。




――僕を選んで。

 選んでくれたのかな、それとも選んだのかな。
 でも、どっちでもいいや。

――お願い。僕を見て・・・・・・。

 君は僕を見てくれてたね。それが、とっても嬉しかったよ。





         
[]

「ああいう考え方もあるんだね」

 ウツギ博士は誰に言うでもなく呟いた。

「ポケモンが、トレーナーを選ぶか」



「・・ねえ、博士。クリスが一番強くなるよ、きっと」
「ゴールドと同じく。俺もそう思う」
「うん。ポケモンもそうだけど、それだけじゃなくて」
「・・心、だな」
「そうー、ボクもそう思うの」
「なぬっ。ブロンズ、このっ、偉そうなこと言いやがって!」

 口々に言う男の子らの声が聞こえた。

 それぞれ、自分が選んだ、いや、自分を選んでくれた相棒を抱いていた。


 博士は振り向いて、彼らを見た。
「・・・なんで、そう思うんだい?」





 女の子が答えた。

「なんとなく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★どうも。ひろみっていいます。
このホムペでは、初投稿です。皆さん、どうぞよろしくお願いします。
感想くれると嬉しいです。泣いて喜びます。

★あとがき…本当は、クリスにしゃべらせようと思ったんですが。
そんな気力が残ってないので、今度からってことで。ははは。
そう、あとがきで、その話にでてきた人キャラに喋らせようと思ってます。
今回だったらクリス・・みたいに。あと、今まで送ったMemoryシリーズに出てきた子らも紹介しようかなって。

★そう。ちゃんと名前あるんです。細かく決まってます。はい。
・・・じつは、私の考えた話の中のキャラたちだったりして・・・。
いつか、全キャラ紹介したいです(夢)。

★あーと。今回から、MemoryからMemories、複数形に変えました。・・勝手なことしてスミマセン。理由は、・・なんとなくです。

★話題かわりまくりですね。
・・・・・今回の話。まとまってるようで、まとまってませんっ。
せっかく初投稿だし。はじまりの話にしよう!
と、いい気になって書いたバチがあたりました。だから。
もう、どうにでもなれって感じで終わらせちゃいました。すみません。

★そう、投票に私の話が入ってました!!嬉しいです!!いれてくださった皆さん、ありがとうです〜!!

★★ああ、もう。まとまりのないあとがきっ。
そこの、こんなとこまで読んでくれたお方、どうもありがとうです!!
そだ。もし読みきりで書いて欲しい子がいたら、リクください。
・・・・・いるわけないか。
・・それでは。あとがきでした〜♪