Memory ―2人の恋―


          ――あたしが、1番好きだもんっ!
             それは、こっちのセリフですわ!


                         [1]

          はへえ。
          もう、やんなっちゃう。


          あたし、ラフレシア。
          『レアラ』っていうの。
          かわいいでしょ?


          ねえ。
          好きな人っている?
          あたしはいるよ。

          あのね。
          ストライクの“ライク”さん!
          すっごい、かっくいいの!
          この森で、1番強いんだ。



          あたしは、ラフレシア。
          ライクさんは、ストライク。

          種族が違うからって、あきらめたりしない!

          だって、あたし。
          ライクさんが好きだもんっ!




                         [2]

          もう。
          気分はサイアクですわ。



          わたくし、キレイハナですわ。
          『レイナ』と申します。
          由緒正しい、この森の、長の娘ですわ。


          母はキレイハナ、父はウツボット。
          種族の差を越えた愛。
          わたくしは、それを間近で見てきたのですわ。


          そう。
          もはや種族に、なんのこだわりもありませんわ!
          素敵な殿方であるならば。
          たとえ火の中水の中。(・・でも、火は遠慮したいですわ)
          このレイナ、きっと思いを貫いて見せますわ。



          そして。
          わたくし、ついに見つけました。
          素敵な殿方を。


          そのお方は、ライク様。
          ストライクですわ。

          ですが、先ほど申し上げました通り。
          わたくし、もう何の未練もございません!

          きっと、あの方を。
          わたくしの夫として迎えてみせますわ!




                          [3]

          はあ。
          なぜに? Why?
          なんでレイナがいるのよー!!



          今日。
          さっそくライクさんへの、ラブラブ・アタックを開始したの。
          そうね。
          まず、知り合いにならなきゃって。

          でも。
          すっごいのよ。
          ・・・・・この森の女の子達みんな。
          ライクさん狙いなんだもん。


          本当に、すっごい人気。
          まあ。
          さすが、あたしのライクさん・・って感じね!



          でもね。
          その中にいたのよ。
          あたしの永遠のライバル。
          キレイハナのレイナが!!

          ・・・正直びびったわ。
          あの、おじょーが!
          高飛車ムスメが!

          ライクさん狙いなんて!!



                          [4]

          うそ。
          なんで? どうして?
          何故レアラが、いるんですのー!!



          せっかく、おしゃれして来たというのに。
          レアラが気になって。
          少しも、アピール出来ませんでしたわ。


          それにしても。
          なんとかしなければ、いけませんわね。

          あんな庶民のいるところじゃ。
          おちおち話も出来ませんわ。


          それに。
          今度こそレアラに。
          一泡ふかせてやりますわ。

          レアラには。
          ナゾノクサだった時から。
          散々、ジャマされっぱなしですものね。



          わたくしの恋路のジャマは。
          もう2度と。
          させませんことよ!



                          [5]

          レイナのヤツー!
          抜け駆けは許さない!



          レイナったらね。
          今日もきたのよ。
          それが・・・・・・・。


          お父様を連れて!!


          あー、もう!
          お父様を連れてくるなんて・・・。

          お父様はレイナには甘いし。
          お母様と同じキレイハナだから。
          すんごい過保護だし。
          ノリやすいし・・・・・・・。

          しかもレイナったら。
          お父様の前だと、すっごいおとなしいし。
          ハッキリ言って。
          ニャースかぶってるのよ!!



          はあ。
          なんとかしなきゃ。
          お父様が、口車に乗せられないうちに。

          こっちはなんとしても。
          それを阻止しなければ!!



                         [6]

          ・・・・ショックですわ。
          せっかく。
          せっかく、お父様を味方につけたところでしたのに・・・・・。



          ライク様には。
          お相手がいました。
          今日、それを見てしまったのですわ―!!

          ライク様と一緒にいる。
          お、お母様の姿を・・・・・!!


          楽しそうに、こっそりと影に隠れて。
          2人は話していましたわ。
          あああー!!
          悲しいですわ―!!
          よりによって。
          お母様がお相手なんて・・・・。


          わたくし、どうすればいいんですの?

          はっ、そうですわ。
          こんなことをしている場合じゃありません!!

          お母様達、まさか離婚をお考えじゃ・・・・・・。


          イヤー!!!
          離婚だなんて、絶対イヤですわー!!!
          わたくし、どちらに引き取られるんですの!?
          ど、どうしましょー!!?



                          [7]

          くすん。
          悲しい。
          まさか、本当に恋人がいたなんて・・・・・。



          レイナはお馬鹿さんだから、本気にしてたけど。
          これは、もちろん。
          あたしの作戦。

          ・・・・って言っても。
          ただ、あたしを紹介してもらっただけ。
          だって。
          勝負は正々堂々やらなきゃね。


          でも・・・・・・・。
          ・・・アハハ、玉砕しちゃった。
          振られちゃったのさ。
          ・・・・・・恋人がいるんだって。


          ・・・・ま、いいもん。
          だって、勝てっこないもん。
          だって・・だって・・・・・。

          この森で、1番キレイな。
          バタフリーのセアラさんがお相手なんだもん―!!



                         [8]

          またまた・・・・・やられてしまいましたわ。

          どうして、こうなるんでしょう?



          先程の話。
          ・・・・・レアラのばかー!!
          って、感じですわ。
          本気で心配しましたのに・・・・・・。


          ライクさんの話も聞きましたわ。
          ・・もう、いいですわ。
          お似合いですもの、2人とも。
          うちのお父様達みたいに・・・・・。

          でも。
          やっぱり、悲しいですわ。

          ・・・・・だって。
          本島に素敵だったんだもん・・・・・・・。



          ふう。
          ・・・・わたくし。
          今度こそ、運命の相手を見つけますわ!!

          きっと、いるはずですもの。
          レアラではなく、わたくしを好きになってくれる方が・・・・。

          レアラと比べたりせずに。
          わたくしだけを、好きになってくれる方。


          双子のわたくしたちを。
          決して比べない方々が・・・・・・・・・・。




                         [9]

          「お父様、わたくし、もうイヤですわ! この庶民娘と、縁を切ってくださいませ!」
          「お母さまー。もう、ヤダー!! この高飛車おじょー、どうにかしてよー!!」


          「・・・・・・ハァ。2人とも、少しは仲良く・・」

          お父様の言葉に、声がハモる。


          『「こんな奴、だいっきらい!!!!」』




          双子だからって、比べないで。
          性格も、何もかも。
          みーんな、違うんだから。

          でも。
          ねえ、神様。
          なんで好きな人も。
          別にしてくれなかったの・・・・・・・・・?




          ――あたしが、1番好きだもんっ!

           そうよ。
           あたしが、おねーちゃんなんだから。
           少しは、ゆずりなさいよねー!!

          ――それは、こっちのセリフですわ!

           なんですって!?
           普通は妹にゆずるのでしょー?
           もう、レアラなんか。
           ・・・・・・だいっきらいですわ!!!