月光陽街六丁目


「ねえ、『月光陽街六丁目』って知ってる?」

「何それ?」

「なんか、サーカスみたいな三人組らしいよ」

「へえ。どこに居るの?」

「それがね、どこに居るのかわからないんだって……」


「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 月光陽街六丁目だよ!」

 どこかの街の片隅で、小さく大きく、静かに賑やかに、黙って騒いで、止まって舞って、小さなサーカス、大きなサーカス、月光陽街六丁目がやってくる。
 サーカスを開いてお客を引き寄せ疾風のように去って行く。

「さあ、このブラッキー、名は『月光』と申します」

 男は大きく手を広げて、装飾されたモンスターボールを放り投げると、星と共に、耳に三日月をつけたブラッキーが現れた。
 男は続ける。

「さて、こちらのエーフィ、名は『陽街』と申します」
 
 男は大きく手を広げて、装飾されたモンスターボールを放り投げると、星と共に、耳に太陽をつけたエーフィが現れた。
 男は続ける。

「この、月光、陽街と共にサーカスをしておりますのがこの私、『六丁目』でございます」

 拍手と共に、小さな破裂音がした。
 月光と陽街が消え、客が見回している中、客の足下から、月光と陽街は現れた。

「余興はこれくらいにして」

 六丁目が大きく手を広げる。

「これから話すは、大切な者を探し求める一人の男の物語。はじまりは、そう。月と太陽が生まれた時から始まった……」




 その頃、太陽は月を知らなかった。
 月も、太陽を知らなかった。お互いの存在は知っていた。
 手が届かない事も知っていた。
 

 月に宿った男は、こう言った。

「夕暮れ時に見える、あの光り輝く星が見たい」

 月は男に返した。

「あの星は我らには手が届かない」

 男はうなだれて、月を見回した。
 月は、きれいな金色をして光っていた。


 太陽に宿った女はこう言った。

「夕暮れ時に見える、あの光り輝く星が見たい」

 太陽は女に返した。

「あの星は我らには手が届かない」

 女はうなだれて、太陽を見回した。
 太陽は、きれいな赤い色をしてきらめいていた。


 ある日、男と女は夢を見た。

『とても小さな星、とても大きな星』

『その星から、あなた達を繋ぐ者が現れるでしょう』

 そして、男はとある人間と出会った。
 そして、女はとある人間と出会った。

「こんにちは。私の名前は六丁目。あなた方を地球の旅に招待致します」

 男と女は着いて行った。
 そして、地球に辿り着いた時。
 男と女は、出会った。


「物語はこれでお終い。この続きは、今でも紡がれ続けているのです」

 六丁目が大きく手を叩くと、まるで話に飲み込まれていた、とでもいうように、客は我に帰った。

「月光陽街六丁目はいかがでしたか? それでは、皆々様、また機会がありましたら」

 六丁目の笑顔と共に煙が上がり、その姿は月光、陽街と、消えた。


「我らは月光陽街六丁目! 今日も貴方様のお心に住み着き取り付き虜にして差し上げましょう。寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 月光陽街六丁目、ただいま開演!」