ゴミ捨て場の小さな友達

「何だよ、これ」


 小さな町のゴミ捨て場。
 小さな少年は、ゴミ袋を持っていた。ゴミ袋の中には、生活の中で出た、ゴミが沢山入っていて、少年はそれをゴミ山の中に捨てた。
――ガシャン
 その時、何か機械が落ちる音がした。少年は、自分の足下に転がっているそれを拾い上げた。

「おもちゃ……か?」

 なめらかな形に、色鮮やかなピンクと青が目に痛かった。
 少年は、しばらくおもちゃを見つめ、辺りをうかがいながらも、それを持ち去った。


 少年の名前は『ロペ』といった。
 ロペは親に捨てられ、ゴミ捨て場で泣いているところを孤児院の役員が見つけ、小さな孤児院に引き取られた。しかし、ロペは孤児院を好まず、抜け出して働いていた。

「ただいま!」

誰も居ない、廃屋のドアを開け、ロペは叫んだ。手には袋を持っている。

「今日こそお前を直してやるからな」

 ゴミ捨て場で拾った、あのおもちゃを手に、ロペは袋の中を探った。
 おもちゃは、ロペが拾った時よりもきれいになっている。
 頭と胴体が離れていて、その繋ぎ目と思われるような物はない。
 ロペはしばらく、袋の中にあるネジやドライバーを取り出し、おもちゃをいじっていたが、おもちゃはビクともしなかった。

「直してやりたいんだけどなあ……。お前の体、どこも開かないしどこも差し込めないんだよな」

 ロペはそう言って、頭の方にある黄色い目のようなところを叩いた。
 反応はない。

「はあ……お前だけが俺の友達なのに」

 ロペはおもちゃを床に置き、俯せになった。じっとおもちゃを見つめる。
 黄色い目に光りはなく、なめらかな体はきれいに月光を映していた。


「あれ……俺、いつの間に……」

 ロペは目を覚ました。
 いつの間にか眠ってしまっていたのだ。
 辺りを見回すと、廃屋ではない。ロペの目の前を、川のように、光のように、記憶が流れて行った。
 突然、記憶の川が途切れた。蛍光色が何度もチカチカと光る。その光の間に、ちらりと見えた記憶は、ロペの物でなかった。
 ゴミ捨て場。拾い上げた少年。自分に微笑む笑顔。
 おもちゃの記憶だった。
 ロペは、目の前に浮かんでいるものに気が付いた。
 蛍光色は次第に消えて行き、元の廃屋に戻る。

「お前……――」

 ロペは、はっきりと見えた、それに手を伸ばした。

「初めまして、俺の友達。」

 それは宙に浮かんだまま、振り返ってロペを見つめた。

「お前の名前は……」

 口から自然に言葉が出るのがわかった。

「……――ポリゴンZ」