木の実と僕とフシギソウ









「ねえ、何で学校に行かないの」

 そう聞くように、フシギソウはツルのムチで、僕を布団の上から叩く。
 学校なんか、嫌いだ。僕だけ旅に出れなかった。
 理由は、フシギソウが弱いから。

 僕の最初に選んだポケモンは、フシギダネだった。がっちりしているし、強そうに見えた。
 でも、フシギダネは弱かった。種も小さかったし、攻撃も弱かった。

 他の2匹を選んだ友達は、強さを認められて、10歳になって旅に行った。

 僕だけ、学校でフシギダネと居た。友達が恨めしかった。羨ましかった。
 全部フシギダネのせいにした。

「お前が弱いから……お前が弱いからいけないんだ……!」

 何度もフシギダネにあたった。それなのに、フシギダネは、毎晩何処かへ出かけては、傷だらけになって帰ってきた。

 そして、進化した。

 フシギソウになっても、毎晩傷だらけになって帰ってきた。
 その頃から、僕は家から出なくなった。

 フシギソウが、どんどん強くなっていくのが嫌だった。置いて行かれるようで、嫌だった。

「フシャッ」

 フシギソウが僕の頭を叩く。ツルのムチではなく、足で。力も強くなっているようで、結構痛い。多分、この力で学校を卒業したら、確実に旅に出れるだろう。

「フッシッ!」

 フシギソウの攻撃が、痛くなってきた。

「痛いよ、フシギソウ!」

僕は怒って布団を蹴り飛ばし、フシギソウを突き飛ばすように起きた。フシギソウは、軽々とそれをかわし、嬉しそうに笑っている。

「なんだよ」

 僕がフシギソウをにらみつけると、フシギソウは、僕の机の上から学校カバンと制服をツルのムチで取った。

「僕は学校なんか行かないからな」

 僕は、フシギソウの行動に腹を立てながら吐き捨てるように言った。
 そうしたら、フシギソウは僕にカバンを投げてきた。

「いった……! なんだよ!」

 カバンは僕の頭に当たって、僕は怒ってフシギソウに怒鳴った。
 フシギソウは全く悪気の無さそうな顔で、キョトンとしている。
 僕は溜め息をついて、落ちたカバンを拾った。

「あれ……?」

 何故か、すごく重い。当たった時にも、かなり痛かったが……
 何か入っているみたいだった。
 僕は、何も入っていないはずの重いカバンを開けて、中身を見た。

 数え切れないくらいの木の実。

「あの時の……」

 僕が、旅に出る試験で、友達と、フシギダネと受けた試験。内容は、指定された木の実をその日以内に集める事。僕とフシギダネは、途中で会った野生ポケモンにやられ、倒れて失格になってしまった。

「フシギソウ……」

 木の実の中には、指定された物以外の物もあり、この周辺にない、珍しい物まであった。

「フシッ」

 よく見ると、フシギソウは本当に傷だらけだった。ポケモンと戦って、一匹で木の実を集めてきて。
 僕は、自分がすごく情けなく感じた。

 フシギソウがこんなに頑張っているのに、僕はただふてくされて学校にも行かず、フシギソウにもかまわず――


 僕は、今、ジムリーダーの前に居る。

 戦っているのは、フシギソウ。

 そして、


 僕自信。