俺と彼と


 彼の名前は、リザードン。
 俺の信頼できるパートナー。

 濃い橙色の体に、鋭い目。尻尾の炎は絶える事なく燃え盛っている。
 得意技は、火炎放射。彼の火炎放射は強力で、苦手なタイプの水ポケモンだって火傷させる。その他に、アイアンテールに空を飛ぶ、地震などを覚えている。

 俺のパートナーは一生涯、彼だけだ。
 彼しかいない。


 まだ彼がヒトカゲだった頃に、俺はポケモントレーナーとして旅立った。彼を連れて。
 彼は、弱かった。
 何度もバトルに負けていたし、俺も何度も他のポケモンを捕まえようと思った。

 しかし、彼はめげなかった。
 俺よりも強い精神で、何度もバトルに向かって行った。

 そして、彼は進化した。
 リザードへと。
 彼の体は強くがっちりとした体型になり、目付きも鋭くなった。
 攻撃も強くなり、大体のポケモンなら2発くらいで倒せるようになってきた。

 彼は、また進化した。
 まるで、俺の気が自分にいつも向けるように、と。
 確かに、彼が進化を遂げる時は、俺の気が彼に向いていない時だった。
 彼は、より強く、より俺に忠実になった。

 彼は、いつも俺の傍に居た。
 
 俺を守り、自分の地位を守った。


 ある日、彼は飛べなくなった。今まで俺を乗せて軽々しく飛んでいたのに、飛べなくなった。
 そして、彼の炎は弱々しくなった。かつて水ポケモンさえ火傷させる炎を吹いた彼が、炎をあまり吹かなくなった。

 でも、俺の気は彼にしか向いていなかった。

 彼は、積極的にバトルをしようとしなくなった。

 昔の面影は、全く無い。

 俺も、彼に合わせた。


 彼は、何も言わなかった。何もしなかった。

 そして、彼の炎が消えた。
 彼の炎は、夜の内に小さくなり、ゆっくり消えた。
 彼は、苦しむ事もなく、眠るように、俺の下から離れた。



 俺は、元ポケモントレーナー。

 歴代のパートナーは、彼だけだ。


 リザードン。