私の生まれ育った場所。 世界一美しいといわれる、水の都。 アルトマーレというその名で、人々を地上に生かしている――。 ―― 青空の下、水の都 ―― ふと、私はこの都を散歩したくなった。 空は、見上げると涼しい風を吹かす爽快さを表している。 青空は、見入るほどの美しさを見せていた。 私は、この都が大好き。 毎年いろんな行事がある。 代表できる行事といえば、やっぱり水上レースね。 水しぶきは、冷たく気持ち良い。 海の中心にそびえている島。 その美しさからいって、当然のごとく伝説だってある。 “水の都の護神(まもりがみ)”として、人々を護っているポケモンがいるって。 そのポケモンを秘密の庭で迎えているのが――私の一族。 いつも、透明な姿でいる。 ポケモンは、その動物的勘で、2匹の姿を見抜く。 人間は、風が起これば気付く程度。 私は気付く以前に、…その姿を現した状態で、何回も会ってるから。 …まあ、それは置いといて。 その秘密の庭が出発点。 私の散歩。青空の下で。 「…いってきます」 そう言って、スケッチブックを片手に、秘密の庭を出た。 …透明な、あの姿を捜すのも有りに。 ――なんで、私はこの都に生まれたんだろう? ふとした疑問に、私は空を見上げてた。 青い。なんで青いんだろう。 涼しい。風は疾風という異名を持っている。 真っ直ぐ歩けば、大聖堂と太陽の塔が見える。 綺麗な色した、希望の輝きを表す建物。 シンプルな明るさ。…ここで絵を描くのが、大好き。 なんで、ここは水の都なんだろう? 人々がたくさんいる、活気のある都。 水を使った行事を中心とし、伝説の残る場所。 …なんで、なんだろう…。 「…あーあ…」 溜息しか出ない。 どういう風の吹き回しで、散歩なんか思ったんだろう。 頭の中には、疑問しか思い浮かばない。 一体、私は…なにをしてるんだろう…? 「…風?」 強い。強風。 近くを通ったから、勢いが荒い。 水面が揺れる。 「…ラティ…ッ」 言葉が、途中で切れた。 ――どっち? …また、疑問が浮かんできた。 「……」 ――全然わかんないわけじゃない。 むしろ、なんとなくわかってた。 でも…、希望を持とうとしてて…。 「…ス…」 ア?オ? …どっち…? ――青空。 果てしなく広がる。 葉が揺れ、水面が波立った。 …水の都が、…私の故郷。 いつも晴れ渡った空。 それに映えるように移動する雲。 嬉しくも、哀しい素振りを見せる。 どっちでもいい。 散歩は、景色を眺めるためにある。 青空は、暖かみを起こす。 護神を告げた、2本の柱。 透明な姿で、柱を横切る。 水しぶきが散り、思わず目を瞑った。 …不安じゃない。 でも、安心してるわけでもない。 優しい光に手をかざせば、何かを見出せるわけでもないし。 こころのしずくを護るために遣わされたあの2匹。 人々を護るためにやってきたこの2匹。 …今でも、心の支えになっている。 「はぁ…。散歩なんて出来やしない」 小さく呟くと、スケッチブックを開いた。 そして、描き始める。 そこには――。 「…できた」 それから、何分経っただろうか。 私はようやく顔を上げる。 ――ラティオスとラティアス、こころのしずく。 …この3セットで、“水の都の護神”が完成する。 まるで、ジグソーパズルが完成するかのように。 「ラティアス!帰るわよ!」 嬉しそうに叫ぶ。 風が、私についてきた。 水の都、アルトマーレ。 木漏れ日を受け、水が波立つ。 風が吹き、貴方の来る先を導いてくれる。 それはまるで、貴方を歓迎しているかのように。 水の中を、ゴンドラが進んでいく。 風は貴方を、秘密の庭まで誘ってくれる。 こころのしずくが、伝説のポケモンを呼び覚ます。 青空の下にあるのは、水の都、アルトマーレ。 ―― fin ――