ゲンガーは彼の友達、カイが待つ二人だけの大きな洋館へ帰るため夕飯の食材と新品で自分の顔が映るほど綺麗なお皿と    カイの誕生日プレゼントをもって帰路についていた。 すっかり日は沈みゲンガーの好きな月が暗い大空の中一点の曇りなく光り輝いている。 白くやわらかい雪を踏むごとにサク、サクという寒さを感じさせる音がして、彼の歩いた道が足跡として残る。 「さすがに寒くなってキタナ・・・。ちょっと汚いけど今日は毛布でも出して寝ようかナ・・・。」 そんな寒さに震える横顔はどこか嬉しそうに頬を高潮させている。カイへの誕生日プレゼント・・。喜んで受け取ってくれるだろうか。 カイのことだ、最初は恥ずかしそうにしながら遠慮するだろう。でも何度ももらってくれと言っているうちにカイは受け取ってくれるだろう。 そして、中身を開けて、見て、触ってどんな顔をするのだろう。喜んでくれるだろうか、否、喜ぶだろう。 そんなカイの喜ぶ顔を想像すると自然に笑顔になる。 「おい。待てよ。」 不意に後ろから誰かに呼び止められた。気のせいかと思いまた歩こうとすると今度は怒声が冬の寒空に響きわたった。 ゲンガーは何かようか?といいかけて振り向いた瞬間、言葉を切った。 大人の男が二人、一人は眼鏡をかけた細身な男。 もう一人は大柄で少しあごひげを生やした男。そう少し前にゲンガーが脅かして追い返した調査員だった。 「お前。あの洋館に住んでるらしーな。俺らがあのぼろ屋敷に調査に入った日より前から。」 「・・・・・」 「あーあ。あの日調査に失敗した俺たちは報酬の金ももらえず、それどころかクビになっちゃったんだよな〜。誰のせいかわかるか?」 ゲンガーは大きな目で大柄な男をにらみつけたまま動かない。その視線に気づいたのか、気づいていたのか大柄な男は話を進める。 「テメーのせいだよ!!!テメーのせいで俺たちは仕事を奪われたんだ!・・・・覚悟できてんだろーな?」 「・・・・オレはオバケ。お前ら人間には障ることすらできナイ」 そんなゲンガーの忠告を眼鏡をかけた男が笑って言う。 「あのなあ。時代は進化し続けてんの。お前らポケモンを小さくしてモンスターボールに入れて持ち運べるようにしたものも人間様だぜ? ゴーストタイプのポケモンに触れるなんざ・・・」 そういいながらゲンガーに向けて拳を振りかぶり走っていき。 「らくしょーだっつーの!!」 ゲンガーは人間の手で触られそのまま強烈なパンチを腹にくらった。地面に手をついてうずくまる。 「たーーーぷり仕返ししてやるよ。この最新の技術‘ハンドレッド’でな。教えてやるよ。この黒い手袋をはめた状態ならゴーストタイプに触れるんだよ」 そしてもう一発今度はうずくまるゲンガーの顔を思いっきり蹴られ地を転がる。口からは赤く熱い血が流れ白い雪を染める。 とっさにゲンガーは右手に持っていた‘物’を体を丸めて隠すように守る。 その間にゲンガーのもっていた夕飯の食材を男達は踏み潰していく。そして全て潰すとその暴力の対象はゲンガーに向けられる。 「今夜はたのしもーぜ!!!っと!!」 そしてゲンガーは二人の男による必要以上の暴力を受け続けた。男達の暴力が止まり最後の一蹴りを加え男達は姿を夜の闇の中に消した。 うつろなゲンガーの意識の中ゆっくりと立ち上がり震える足を引きずりながら彼を待つ友達の元へ壊されなかった‘大事’な物をもって ゲンガーは帰っていく。 「・・・カ・・・・い・・・・・・今・・・帰る・・から・・・・ナ・・・」 彼の帰る帰路を赤く血が染めていった。町は静寂に包まれていた。