ゲンガーは夢から覚めるとまず大きな声で一声。洋館の中に響き渡るように言った。 「カイ!!!!!!」 しかし、返事はない。もう一度叫んでみたが同じくゲンガーの声だけが虚しく響くだけ。ゲンガーは体をベットから起こそうとした、 が昨夜の暴力によって体中が激しく痛む。その痛みに耐えながら扉をすり抜けてカイの部屋へ行く。 「カイ!?入るぞ!」 返答がないまま部屋にはいるがそこに自分の捜し求める人物の姿はない。カイのいつも寝ているベットの近くに歩いていく。布団がまだ暖かかった。 そして枕の上に一枚の紙が置いてあることに気づく。カイからの伝言だった。 「−−−−−ゲンガーへ。僕は探したいものがあるので町に行ってきます。今日はクリスマスですよね?待っていてください。 ケーキを買って帰りますから−−−−−」 その手紙は字がガタガタだった。カイは自分の感覚だけで文字を書いたらしい。 しかしゲンガーには手紙の最後の文字だけははっきりと見えた。 「−−−−−−−僕の友達になってくれませんか?−−」 その文字をみた瞬間ゲンガーは初めて涙を流した。大量の涙で手紙を濡らしながらゲンガーは叫んだ。このとても広い世界に生きる全ての 人に聞こえるように。 「とっくにオレらは友達だろーーーがよォォォ!!!!バカやろおおォォォ!!!!」 その瞬間ゲンガーは体が痛むのも忘れて洋館を飛び出た。そしてカイがむかった町へと走る。ゲンガーの右手には手紙がしっかりと握られていた。 クリスマスということで町はどこの家も光り輝いていた。街灯から街灯にロープがひかれ、そのロープにいくつもの星の形をしたものが飾られている。 お店の窓にはサンタクロースとトナカイの絵が張られ、おもちゃ屋は多くの子供たちでごった返している。そんな晴れ晴れしい空気の中をカイは歩いていた。 カイは目が見えないので装飾や大きなクリスマスツリーなどは見えないが肌で楽しい空気を感じていた。 「ケーキ屋さんはどこだろう・・・。」 カイは自分がどこにいるのかわからない状況の中ケーキ屋を探している。洋館で待つゲンガーと一緒に食べるためのケーキを自分で探そうと決めたのだ。 しかし、ふらふらとおぼつかない足どりなので人にぶつかってしまう。 「痛っ!す、すみません!」 カイはさきほどから人に何度もぶつかっては謝っている。そんな彼などきにしないようにさっさと歩いて行く。 誰かに聞こうにもどこにいるのか分からないためケーキ屋を見つけるのは困難だった。そしてまた人にぶつかる。 今度はカイが転んだのではなくぶつかってしまった人が転んだ。 「きゃっ!痛〜〜・・・・」 「す、すみません!お怪我はありませんか?」 「うん。平気よ。それにしてもあなたさっきからやたらと人にぶつかってるわね。」 その声は女性の声なのだが気が強そうでかわいいというよりかっこいいの部類に入る声だった。その女性に謝りながらわけを話す。 「すみません・・・僕目が見えないんでしょっちゅう物にぶつかるんです・・」 「あんた目がみえないの?!それなのになんで町を歩いてんのよ?」 「え〜と・・僕の友達のためにクリスマスケーキを買おうとしてたのですが、その・・ケーキ屋がどこにあるのか分からなくて・・・」 女性はやや呆れ顔でカイを見つめる。そしてカイの手を握ると元気に言った。 「じゃあ、あたしが連れてってあげる!私すぐそこの小さい店に住んでるんだ!ちょっとおいでよ!」 その元気な声とは裏腹に半ば強制的な声にカイは有無言えず、ただ弱々しく「はい・・」としかいえなかった。 ゲンガーは森の中で痛みに動きをとられながら町へと向かっていた。