最終章【  それでも僕等は生きていく  】 大きな森の隣の町に朝の日差しが降り注ぎ地面に残る白い雪が光りを反射してキラキラと輝いている。その青く澄み渡る広い空に一筋の煙が立っている。 それは灰色や黒色ではない、その煙は白くそれもまた光り輝いて天に昇っていく。それを見守る少年と少女がこの世を去った者を 送る場所火葬所でただ流れていく煙を見ていた。 「トモダチダロ」 そういった彼  ゲンガーの顔は笑っていた。その笑顔が忘れられない。カイが見た最後の笑顔だった。 「これからも・・トモダチ・・でいような・・」 ゲンガーはそういった。一生懸命笑っていった。その顔にはすでに痛みなどないような安らかな顔をしていた。 カイは別れなどこないといった風にゲンガーに言い聞かせたがゲンガーは笑った。 「これからの人生・・・楽しめ・・ヨ」 そういって。また笑った。カイは自分でもわからないうちに涙を流していた。その涙が流れる目に光りが集まってきた。 そしてゲンガーは笑いながら言った。 「今日から・・オレがお前の目に・・なるよ」 また彼は笑った。そんな彼の言葉が心の中で何度もなんども響いた。また涙が溢れ出した。自分ではもう止められない量の涙が流れた。 それをみてまた彼は笑った。 「泣くなって・・・・笑えよ・・・笑って生き・・・ロ」 そういってまた笑った。今度は涙を流しながら笑った。それをみてカイは泣き崩れた。笑えなかった。無理だった。 友が目の前でこの世を絶とうとしているのだ。その泣き崩れるカイを見て彼は言った。 「お別れだ」 彼のカイの手を握る手の力がなくなった。その瞬間カイの目に集まる光がはじけた。カイがゆっくり目を開けるとそこには笑った顔で 血まみれの友の姿がカイの目に映っていた。 その瞬間カイは知った。彼は死ぬ瞬間カイに残る最後の不幸 目が見えない 不幸を自分に移し死んだ。カイは目の前の 変わり果てた友の体に顔を埋めて泣いた。 今カイは町にある小さな店でアスカという少女と暮らしている。 カイは友をなくした日から毎日仕事が終わると森にある洋館に行った。 カイと友が過ごした洋館の屋根の上でカイは月を見た。 そして胸にぶら下がる友からのプレゼントを握り締め月を見る。 そして明るく照らす月を見ながらカイは毎日涙を流した。 死を恐れる者はだれだろう。 死を刻む者はだれだろう。 光りを探して闇を知る。 闇を探して光りを知る。 それはなんだろう。 わからない。でもきっと皆にもあるのだろう。 喜び、悲しみ、苛立ち、不快、恐怖、全部を知った彼はなんだろう。 かわいそうな人間か?あわれな人間か? 皆が知る。いつかは知る。それはなんだろう。 死を知らない者は恐怖を知らない。 そんなこの世界を僕等は生きていく。 ただ、己の見つめる光りに向かって。