その日の夜ゲンガーはカイと一緒に屋根の上にいた。    ーーーー数分前ーーーーー・・・。 「え?月を見ようって?」 ゲンガーは目の見えないカイに月を見ようといったのだ。 「ああ!オレの大好きな月を一緒にミヨウゼ!!」 しかし、カイは悩んだ。なぜなにも見えないことをしっていながら自分に月を見よう!というのだろうかと。 そこでカイはゲンガーに言い聞かせるように聞いてみた。 「ゲンガー。僕も君と一緒にその月というものを見てみたいよ。でも。ホラ、僕は目が・・・」 「ダイジョウブだって!!!いいから月をみに行こうぜ!すぐに分かるって!!」 そうゲンガーに言い切られてカイは屋根の上でゲンガーの隣に座っていた。しばらく二人の間に沈黙が続きカイが諦めがちに言った。 「ホラ・・やっぱり僕にはなにも見えな・・」 「いいから。耳を澄まして上を向いてナ」 カイは自分の言葉を切るように言ったゲンガーの言葉のとおりにしてしばらく待ってみた。すると、 「あれ・・・なんだろ・・・音?・・・」 二人の洋館を囲むように生えている木々、いやハクタイの森そのものから 音 が聞こえた。 静かで、綺麗で、涼しくて、暖かくて。カイはしばらく言葉を失い音に聞きいった。 「聞こえたろ?森の声が」 「森の声?」 ゲンガーは閉じていた大きな目をゆっくり開いて月を見つめながらいった。 「夜になると声がするんだ。この森に住むポケモンの声や寝息。風でさわさわと揺れる葉っぱの音。 地面の下を流れる地下水の音。全部が重なって、一緒になって、一つの 声 になる。オレはこれをカイに聞かせたカッタんダ」 そういったゲンガーはちょっとはずかしそうにしながらも笑った。 そんなゲンガーの表情は分からないカイだったがなんとなくはわかった。 今 幸せだということ 「ゲンガー。ありがと。」 「いいって。お礼なんて。照れるダロ?」 そしてまた二人は笑った。照らされて明るく映る 空間の中で笑った。 二人にとっての思い出になった。 思い出。それは生き物が生きていくうえでなくてはならないもの。 それは二つ。一つは悲しみ。もう一つは 優しさ。 悲しみだけではそれはつらいだろう。 優しさだけではそらはつまらないだろう。 だから 二つ。 思い出はその人が生きた証。 消しちゃいけないし。消されちゃいけない。 どんなにつらい出来事でもそれは君の思い出だから。 君の思い出はドコ? 心?体?ちがう。思い出は 君自身。 だから思い出は光り輝き続ける。 たとえ体が心が朽ちても。