私はポケモン専攻の医者。 といっても駆け出しなので、腕はマチマチ。 将来の期待の星。 でも、いまは仕事がないからあたりをブラブラしている。 最近はよく浜辺に来る。 ここの波を見ているとココロが安らぐ。 「ぅ・・・」 すると、そこにはポケモンがいた。 白と紅の、めでたいポケモン。 でも、埃だらけ。どうしたのかな。 よく見ると、そのポケモンは怪我をしている。 近くの草をすり潰しては傷口につけている。 手はないので、頑張って丸っこい身体を駆使してつけている。 これは助けないとね。 私は、そのポケモンに近づく。 すると・・・ 「来るな。ニンゲンは来るな」 そのポケモンはなんと言葉を使える。 言葉を話せるのは極一部のポケモンで、知能が高いポケモンしか不可能だ。 けど、私は聞きだす。 「人間って、関係ないわよ。その怪我、見せなさい」 「来るな。ニンゲンは俺らの敵だ。来たら爆発するぞ」 そのポケモンは雷を出して私を威嚇している。っ てことは、この傷は人間の誰かがつけたのかな。 医者として、見逃すのはできない。 近くの岩に、私は座る。 そのポケモンは、こっちを無視して、ただひたすらに薬を塗り続ける。 それから、私は少しの間そのポケモンを見守る。 すると、ポケモンはこっちを見て、飽き飽きしてこういった。 「なんだ、まだいるのか。あっち行け」 「それはできないわよ。私は医者。見逃したら、名が廃るわ(駆け出しだけど・・・)」 「俺はニンゲンが嫌いだ」 「ねぇ、わけを聞かせてくれない?」 少しの間、沈黙が続いた。 するとそのポケモンが重い口を開いた。 「言うわけないだろ。ニンゲンは俺らの敵だ。恨みを持っている」 そのポケモンはそうとしか言わない。 私は、そのポケモンが酷い怪我をしていたので、おそらく移動は無理だろうと推理。 明日に、無理やりでも治療しよか。 今はもう遅いし。 「わかったわ。だけど、明日も来るから」 「なんど来ても同じだ」 私は、どうしてあんなに私たち人間を恨んでいるのか、考えた。 やっぱり、身勝手な人が多いからね、最近。 私はポケモンの心理の本を読む。 ポケモン・スピチュアル・カウンセラ・ [明くる日、私は迷わず昨日の浜辺に向かった。 ザザーン・・・ やっぱり、そのポケモンはいた。 どっからか、新しい草を用意してすり潰しては塗る、それの繰り返し。 私は背後からポケモンに言う。 「素直に私の治療を受ければ、すぐ治るわよ」 「!!?」 ポケモンは警戒心を失っていた。 背後に近寄っても気づかなかったそう。 そうとう、精神面が弱っているわね。 ポケモンは再度威嚇する。 「なんだ!また来たのか。無駄だ。ニンゲンは信用できない」 ポケモンはまだ意地を張っている。 いい加減、諦めればいいのに。 「なんの草が効くのか、わかってるの?」 「匂い。匂いで毒があるか探る。なかったら、塗る。」 それは安直な答えだった。 毒の有無を探るだけで効果的な薬の処方はできないのに。 しかも、それを毒がないかわかったらとりあえずはすり潰して塗っていた。 「わかったわ。薬であなたの手当てをしたら、素直に帰るわ」 私は単にポケモンの手当てをしたいだけ。 それだけできたら、別に文句はないね。 だが、ポケモンはまだ意地を張っている。 これは、当分かかりそうね。 また明くる日の朝。再び浜辺に向かう。 今度こそは!いつもそう思う。 医者の面子に掛けて、今度こそ。 「ねぇ、気がついたんだけど。友だちいないの?」 ポケモンは、少ししてはこういった。 かなり、深刻そうな感じで。 「みんな、俺から逃げるさ。怖いって言って」 それは予想外の返事だった。 怖い? なにも、ミュウツーとかだったらわかるけど、普通のポケモンが怖い、なんて。 「なんでみんなそういうの?」 私は問いを続ける。 治療のために。 「俺はみんなからバクダンて言われている。ニンゲンや、ポケモンから。 爆発ばっかするからって」 そのポケモンは、みんなから嫌われたがためにメンタル面で、かなりのダメージを負っていたのだ。 私は、次に怪我の原因を探る。 誘導尋問を使えば、意外とあっさり聞きだせるんだって。 「じゃあ、その傷もそうなの?」 「これは、ニンゲンがポケモンを連れて、俺に攻撃してきたんだ。 ニューラに、ひっかかれた」 やっぱり。て感じの展開。 そうとう辛い想いをしたのね。 「そうなの。じゃあ、治療させてね。だいたいわかったから」 そのポケモンは、観念したのか、こう返した。 わかった。と――― 私は、この傷はニューラの攻撃による傷を考えて、しみらない薬で治療する。 麻酔は―――いらないよね。 「じゃ、まずは草を落とさないと。薬が塗れないから。 ちょっと我慢してね」 シュゥーー・・・ 私は、しみりにくい風を使って草を落とす。 そうとう塗りこまれていたらしく、色までついている。 「っ!・・・」 「はい、おーけーね。後は・・・」 そこで、私はしめらせた脱脂綿でチョンチョンと汚れを取る。 アルコール成分を含んでいるから、これが冷たい。 「ニンゲン、なんで俺の手当てをする」 「私は医者だから。ポケモンの怪我を治し、一匹でも多くのポケモンを救いたいから」 会話が続いているなか、アルコールをしめらせた脱脂綿で、汚れは完璧に落ちた。 ここからね。 しみったら爆発しそうだし、ストレスが原因でここまで陥っているから、ストレスは溜めさせないようにね。 「俺は、ニンゲンに会う度にバクダンとか言われて、逃げ出される。 違う日には、石を投げられる。 でも、俺はそんなこと、これっぽっちもしてねぇのによ」 ポケモンから、かすかな嗚咽がもれた。 そうとう我慢していたそうなのだ。 目には少しの輝きが見える。 嬉みの輝きじゃないね。 それから、どれくらいの時間が経っただろうか・・・? 気がつくと、治療は完了していた。 「はい、終わり!」 「・・・ニンゲン、なんで俺を見て怖がらない」 「なんでって、あなた知らないもの」 「・・・・・・そうだよな。じゃあな、ニンゲン。お前みたいなニンゲンも、たまにはいるんだな」 「そうだよ・・・」 私は、その一言でその場を去り、もう浜辺にはいかなくなった。 “・・・・・・そうだよな。じゃあな、ニンゲン。お前みたいなニンゲンも、たまにはいるんだな”―――― あれから、数ヶ月の刻が経った。 私は、メンタル面も治癒できるというアピールポイントで、なんとか医者としてのライセンスを得た。 これでもう、立派な医者として働ける。 ポケモンセンターのジョーイさんとは少し違う、医者。 スピチュアル・カウンセラーとしての資格も手に入れた。 これで、急に忙しくなった。 ・・・嬉しいけど、たまにはのんびりしたいな、なんてね。 いまは夏真っ盛り。 久々に休暇をもらい、夜空を見ながら歩く。 ・・・あのポケモンのおかげで、ここまでこれた。 あのポケモンにまたあったら、お礼言おうかな。 気がつくと、懐かしい浜辺に来た。 ――ここで少し休もう。 そう思い、岩に腰掛けた。 「・・・ニンゲン?」 背後から、懐かしい声が聞こえた。 この声は、あの時のポケモンだ。 「よぉ、いいニンゲン」 白と紅のめでたい柄のポケモンだ。 少しの間、会話が弾んだ。 「俺はあれから、お前みたいな“いいニンゲン”を探したんだがよ、いないんだ。 やっぱ、世界でほんの一握りなのか?」 「違うよ。君がバクダンって愛称で呼ばれているからだよ、きっと。 もし私が、君がバクダンってあだ名だったら、やっぱ怖いモノ まずは、それなりにいいことをすれば?」 「・・・そうかな」 そのポケモンが、最期に私にこう告げた。 「ニンゲン、お礼にいいモンあげるぜ。 世界で一番最高の、宝モノをな。」 ポケモンが少し離れた。 「ちょっと離れろ。危ないぞ」 そういうと、ポケモンは高くジャンプし、空に向かった。 そして・・・ パァーーン・・・ぱぁんパァーン! 夜空に咲く花・・・ ポケモンは、夏の終わり頃に、綺麗な宝モノをくれました。 ――――忘れることのない思い出を・・・ おしまい ※これは完全なフィクションであり、人名、団体名など、現実のものとは全く関係ございません ※この医者とポケモンとの関係から、感じた何か―― それは、あなたのココロに残り続けるでしょう。