おやおや、こんにちは! サファリパークは初めてですか? このサファリパークは、セキチクシティ唯一無二の観光スポットでして、かなりの人気なんです。 ここにくるお客さんは、大きく分けて“珍しいポケモンを見に来た”人と“珍しいポケモンを捕まえに来た”人の二パターンなんです。 え?サファリパーク目的で来たわけではない? そうでしたら、我がサファリパーク伝統のお土産話はどうですか? あなただけに、無料でお話いたします。 ストライクの、お話です。 〜〜〜 「よし、ストライク。このサファリパーク一の名物となって、お客を楽しませてくれよ!」 「捕まえられないように、な!」 おれっちはストライク。 今日から、創立したばかりのサファリパークで暮らすことになったらしい。 このセキチクシティは、前までは活気がなく、村長も困っていたところ、他の地方では「サファリパーク」というのが流行っていたのを聞いた。 これを使えば、活気が戻る。そう考えたんだな。 そこで、村長はサファリパークの管理人を数名選んでは、各地の珍しいポケモンをかなりゲットしては、ここに離した。 結構住み心地がよく、たまにおれっちは観覧用として、サファリパーク入り口付近の檻に入ったこともある。 おれっちの役目は、サファリパークを盛り上げる、リーダー的な役割。 おれっちは、もともと生存していた地域があったけど、今は絶滅危機種に指定されているから、かなり珍しい。 そのため、おれっちを捕まえようと全国各地から、いろんなチャレンジャーが来る。 だけど、中途な実力を持つやつらばかりだから、おれっちは手ごたえが全くねぇ。 おっと、またチャレンジャーが来たようだ。 サファリパークが創立されて、初めての開園日。 カントー地方のマスコミも来ていたが、驚いたのは、シンオウ地方のコトブキシティっつートコからもマスコミが来たってこと。 カントー地方初のサファリパークだからなのか、カントー中の人々が押し合ってきている。 そして、大行列のなか、約五十人ずつがポケモンゲットを楽しんだ。 大半の人はゲット目当てなのだから、観覧の人はゆっくり見物できるからラッキーだったそう。 あ、そういや、ラッキーさんは観覧用だったらしい。 サイドゲームや飲食店から、土産屋までじっくり楽しめる。 そして、配られたパンフレットに、おれっちのコトやガルーラさんのコトがでかでかと載っていた。 “全国でも珍しいストライクやガルーラ、ケンタロスもいます! みんなで張り切って、ゲットしよう!” ちなみに、サファリパークには、おとなしいポケモンも多いからか、ポケモンバトルでのゲットは許されてない。 だから、そこらの石ころをぶつけたり、甘い香りや甘い餌とかで誘き寄せたりする。 でも、おれっちはそんな甘ったるい餌を使っても、引っ掛からないし。 石ころを投げても、まず当たらないだろう。 だから、おれっちと勝負するには根気がいるのさ。 ボールは三十個までで、なくなったり時間がきたら、ガイドさんと一緒に撤収する。 ガルーラさんは、餌には引っ掛からないけど、飛んでくる石ころにははむかう。 自慢の拳で弾き飛ばすし、ボールまで、開閉スイッチに触れずに弾き飛ばす。 あまり足は速くないけど、強い。 ケンタロスさんは、匂いに釣られて猛突進するから、みんな恐れて餌を出せない。 勇気ある人が、ケンタロスさんに餌を出して、タイミングよくボールを投げても、あまりの速さ故にゲットできないそうだ。 しかも、ケンタロスさんは血の気が多いから、石ころを投げたらだめだってパンフレットに載ってるし、ガイドさんにも注意させられる。 このサファリパークの名物は、おれっちストライク、ガルーラさん、ケンタロスさんで、 観覧のほうはラプラスさんやラッキーさん、カブトさんやオムナイトさんやピカチュウさ。 おれっちはかなりの若輩で、同級生がピカチュウだ。 他にもたくさんいるけど、これらが一番人気だ。 「あ!ストライクだ!」 「よぉし、オイラが捕まえる!」 おれっちの指名は、すぐに逃げずに、できるだけ客を楽しませること。 だから、近くに近づいてはシュッとかわす。 そんなおれっちについた愛称は“かまきり忍者”。 おれっちの科学名は“かまきりポケモン”。 それと、敏捷さを兼ねて付けられたんだ。 「喰らえー!忍者ぁ!」 その子供は、おれっちにボールをなげる。 そこで、たまにおれっちは地面を蹴り、砂埃を舞い上げる。 そうすると、捕まえたかも知れないっつー快感が生まれるからさ。 でも、なかなか歯ごたえのあるやつはこない。 忍者ってあだ名も、「速すぎる」「捕まえられない」とか勝手な不満から来たのかもしれない。 最近、そう思ってきた。 入場料で幼児は無料・小学生は五百円・中学生は六百円・高校生からは八百円と少し割高。 でも、珍しいポケモンのために・・・と、アリみたいにぞろぞろくる。 それなのに、おれっちと真剣勝負したい奴はいないらしい。 「捕まえられたらいいな」 そのためだけに、おれっちをもてあそぶのか。 そういえば、アイツだけは根性があった。 マグマラシを連れ、比較的クールな風格の少年で、そしてかなりの実力者。 なぜわかるかって?動きが並じゃねーからだ。 アイツからはなぜか、懐かしい匂いがした。 会話から聞くと、どっかの地方から引っ越してきたらしい。 「忍者、ここにいたか・・・・・・!」 ドタタタタ・・・・・・ ソイツは、かなりのスピードでおれっちに追いかける。 おれっちの自慢は俊敏さだが、アイツも速い。 「ボール、行け!」 ヒュー・・・ シュッ! ぽちゃーん 「ちっ・・・」 (おれっちをここまで追い込めるとは・・・) おれっちは、久々に熱い何かを得たんだ。 ソイツは、ちょくちょく来ては、おれっちを探して勝負する。 ガイドさんも、おれっちとソイツとの勝負に魅せられて、三十秒くらい時間を引き延ばしたくらいだ。 そして、時間がきて・・・ 「ボウヤ、惜しかったな。」 「ああ、逃したか・・・ 次こそ・・・勝つ!」 「がうぅ」 何度もこいよ。おれっちは、勝負ににげねぇからな。 そう思っていたが、ソイツはだんだんこなくなってきた。 なんでも、あのバーナード学院に入学して、あまり来れなくなったらしい。 いまでも、おれっちはソイツを待っているからさ。 早くこいよ。 でも、祈りは通じない。 夢で熱いバトルをしていても、アイツ以外に熱い根性の奴は出てこねぇし、みんな途中で諦める。 珍しいポケモンを集めているポケモンマニアも、最初は張り切っていたが、結局はネット上でほかのストライクを買っていたらしいし。 そんなおれっちも、名物とされて五年が経った。 途中でケンタロスさんやガルーラさんは捕まったけど、おれっちだけは初代サファリパークから名物として残り続けている。 そのためか、パンフレットやテレビでも “サファリパークが創立されて五年経った今でも、あのかまきり忍者はまだ居ます!” とか報道されることがある。 そのときそのときに全国中の腕利きのトレーナーが集う。 だが、これはポケモンバトルではないから、どれだけ実力があっても意味がない。 どちらかっつーと、メンタル面でのバトルの方が近い。 それから少し経つと、オーナーさんが 「ストライク、お前が来てもう五年が経ってるな。」 「凄いモンですよ!ケンタロスやガルーラは他の人の手に渡っても、ストライクは残ってるなんて!」 「でも、だんだん歳っているライバルが来るからなー・・・」 「じゃあ、頑張ってもらうか、な!ストライク!」 そうか、おれっちはもうあれから五年経ったのか。 今では、毎年、修学旅行やデートとかでよく来る人が多いけど、おれっちとまともに勝負した奴は・・・いねぇな。 おれっちは、さっき言ったとおり、たまに観覧用として檻に入る。 そのときに、みんながこういう。 「わー!忍者だー!」 「スッゲー、見たことねぇ!」 「捕まえたいなー」 おれっちは、正直嬉しかった。 おれっちと勝負する奴はいなくなったけど、世間ではここまで見てくれているんだなってな。 それから、また五年か六年くらいの歳月が経とうとしているときのこと。 おれっちは、あまり俊敏性にキレが出てきていなかった。 猛スピードで走っても、陸上選手と同等のくらいだった。 今までは、残像が見えるくらいだったが。 もしかしたら、ピークが来たのか・・・? 目が覚めると、天井は真っ白だった。 右腕には、点滴で、透明な液体がポタポタってなっている。 奥では、オーナーや管理人が話し合っている。 「もう、あのストライクは、潮時なのか・・・」 「でも、しょうがないですよね。あそこまで頑張っていたんだし・・・」 おれっちは、もう歳では三十三くらいだったらしい。 人間では、別におかしくないが、ポケモンではかなり長生きだ。 おれっちは、多分十歳くらいの頃に捕まえられてはここに勤めている。 あれから、もう二十年経ったのか。 ポケモンでのバトルその他のキレが一番いいのは十四くらい。 そのときは、かなりの実力を発揮する。 三十を越えると、人間でいう“お年寄り”になっている。 すると、オーナーが来た。 「・・・スマン・・・ もう、君は潮時のようだ。このサファリパークを引退・・・することになった。」 最初は、もう走ったりせずにのんびりできると思ったが、違った。 言いたいことを、かなり遠まわしに言ってることが、わかった。 なぜかっつーと、表情がかなり深刻だったからだ。 おれっちは、あれからちっともアイツと勝負してないし、決着もついてない。 引退とかしたくねーけど、身体がついていけないそうだ。 すると管理人と医者が・・・ 「ストライク、君の引退のときに、マスコミや宣伝、CMとか使ってサファリパークに集まってもらう。」 「そのときに、君の勇退を正式に発表する。」 ま、おれっちも頑張ったしな。 こうして、世間では “セキチクシティサファリパークで、あの創立当時からの名物とされたストライクの、 勇退を発表するということです! そして、その日限定の特性ストライクグッズが販売されるとの模様!” と、ニュースを使ってまで放送されていた。 そして、勇退宣言日当日、オーナーがおれっちの肩に手を置き、勇退宣言をした。 観客動員数が一万を軽くこえ、かなりの数を用意したストライクグッズもすぐに売り切れ。 おれっちは、嬉しかったが、一個だけ物足りないことがあった。 アイツにまだあえてない・・・ そして、それから一週間後。 おれっちは、食欲がなくなって、ベッドの横でバダッと倒れた。 おれっちは、なぜか無性に眠くなり、目を閉じた。 ピーポーピーポー・・・ 目を覚ますと、辺りでは管理人などが泣いている。 おれっちの居る場所は、辺り一面真っ白。 ただ、医薬品の匂いがぷんぷんする。 だけど、おれっちは目を覚ませない。 身体が動けない。 なんで泣いているかは、おれっちにはわからなかった。 「す・・・すと ライクも、 頑張・・・たですしね・・・」 若い管理人が、おれっちの肩に手を掛け、おえつを漏らしながらこういっている。 「今日のうちに引退していてよかったな・・・」 そして、医者らしき人物の話し声が聞こえた。 「残念ですが、ご臨終です・・・  原因は、歳ですね」 「それだけは、どうしようもない・・・ですね」 おれっちは、いまわかった。 自分が、どうなっているかが――― すると、力が抜けて、完全に意識がなくなった。 なにも、聞こえなくなった。 医薬品の匂いがしなくなった。 点滴をさしている感覚もなくなった。 管理人の手の温かみも消えた。 ・・・・・・いま、おれっちがいる場所、教えようか? いま、おれっちは、白い世界にいるんだぜ―――― おしまい ※これは完全なフィクションであり、人名、団体名など、現実のものとは全く関係ございません ※しかし、この忍者に対するみんなの想いから、あなたのココロに生まれたなにか――― それはあなたの心に残り続けることでしょう。