あいつはなにが見たくてココへきたんだろう? それはあそこになかったモノだから? だからって、こんなところに来ることはないだろう? 俺には、こいつの気持ちが全然わかりそうにない・・・。 それは多分一生わかることがないだろう。                鯨が見たかったモノ 「本日、ミナモの海岸で、ホエルコが1頭座礁しているのが見つかりました、現在も救助活動が続けられていますが、進展はありません」 そう、抑揚のない声でテレビのキャスターがニュースを読んでいた。 ホエルコの座礁は、かなり珍しい事態だからだろう現場を写したテレビにはたくさんの野次馬が写っていた。 そして、現場の女子アナが野次馬の一人にインタビューしている所が写し出される。 その内容はあまりにも馬鹿らしくて聞く気にはなれなかった。 俺はテレビを消すと、家を出る支度をする。 このニュースを聞いたとき、俺の心の中にもあの野次馬達のようなキモチになったわけではなかった。 そりゃ、現場には行くよ、俺の家はミナモにあるからな。 じゃあなんでわざわざ見に行くかって? ただ何となく、そいつが気になっただけさ。 そう本当にそれだけのこと。 理由はそれでいいだろう?                                     * しばらく、自転車をこいでいるとやがて海岸に出る。 そこにはテレビと全く同じ光景が広がっていた。 俺は自転車を適当な場所に置いて、鍵をかけて、砂浜へ降りていった。 がやがやと人のしゃべる声やテレビ番組のリポーターそんな騒音の中、俺はホエルコへと近づいていった。 「あっ、すみませんココからはちょっと近づけないんです。」 ホエルコまで後もう少し・・・というところでジョーイさんに止められた。 俺は一応理由を聞いてみることにした。 「・・・なぜですか?」 すると、やっぱり俺が想像していたような返事が返ってきた。 「野生のホエルコはだいぶ警戒心が強いんです、だからもしかするとこちらへ攻撃をしてくる可能性があるんです」 「なぜ、モンスターボールを使わないんですか?モンスターボールに入れれば楽に返せるでしょう?」 俺は素直に思っていたことをぶつけてみた。 「それは出来ないんです、ここのホエルコは今数が少なく保護の対象です、あなたも知ってるでしょう?ポケモン保護法?」 ポケモン保護法、これは少し昔からある法律だ。 何でもカントーとかいうところである事件・・・確かナントカ団とかいうのがポケモンの虐待などを行ったためそんな法律が出来たらしかった。 俺はその頃ガキンチョだったため、あんまり覚えてはいなかったけれど。 「はあ、たしか保護対象のポケモンは捕まえることはもちろんモンスターボールにも入れてはいけない・・・でしたっけ?」 ポケモン保護法第何条かは忘れてしまったけれど、確かそんな項目があったはずだ。 「そうです、それが理由です」 そういってそのジョーイさんは、これで十分でしょ?とでも言いたげに救助作業へともどってしまった。 はぁ、とため息をつく。 この法律がなかった時は重度の怪我をしたポケモンはモンスターボールに入れるのが常識だった。 俺もそんなポケモンを見つけてはモンスターボールを投げポケモンセンターへと連れて行ったりした。 それが、出来なくなったと知った時は・・・・あまり覚えてない。 なぜモンスターボールに入れてはいけないかというと。 なんでも、一回入れてしまうと人を頼ってしまい自分で生きてゆける確率がうんたらこうたら・・・。 俺は暗記も苦手なんだ許してくれ。                           * 俺は遠巻きにホエルコとレンジャー達を見ていた。 ホエルコは時々グフゥグフゥと弱った声を出す。 それを救助チームが海水をかけたりして励ます。 そしてポケモンたちが海へ戻そうとずり.....ずり....と押していく。 正直あまり効率がいいとは思えなかった。 と、そのとき俺は急にこんなことを思った。 なんでコイツはこんなところにきたんだろう? メルヘンだと笑われてもいい俺は急にこんなことを思いついてしまったのだ。 陸の方に面白いものでも期待してたのか? それとも、海が飽きたのか? いずれにせよ、メルヘン過ぎる考えだった。 きっと、こんなことを海洋学者やらに意見を求めても、笑い飛ばされてしまうだろう。 こういうのは・・・・本人に聞くのが一番だ。 といってもこんな状態では聞けやしない。 そのとき。 ぶほおおおっ かなり大きな声だった、それも少しくるしげな。 そしてこっちへかかる水しぶき。 みずなはどう・・・か。 どうやら、ホエルコが何かに反応し周りにいた人たちに攻撃をしてしまったらしい。 一応重傷なけが人はいないようだが近くにいた人はかなり吹き飛ばされていた。 だがポケモンたちにはダメージが大きかったらしい。 そりゃそうだ、ホエルコを押していたポケモンたちはサイドンやゴローニャンなど力持ちのそれも岩タイプばかりだった。 なぜ、カイリキーなどのかくとう系のポケモンがいないのか?と俺はさっき近くにいた人たちに聞いた。 どうやら、ちょうどカイリキー達は別の仕事がありそこの場所へ行ってしまったらしい。 ふぅまったく、どうしようもない。                          * 服が思ったよりぬれている。 いったん家に帰ろう・・・・。 そう思った時、がやがやとまた騒がしいどよめきが起こった。 それは、どよめきというより怒号に近いものだった。 どうやら救助を断念するらしい。 「ふざけんな」「ホエルコがかわいそうだ」「あんたらそれでも人か」 などなど、いろんな罵声が救助チームにあびせられる。 救助断念の理由が、ホエルコが救助チームを拒絶してしまい救助チームのポケモンたちや人に攻撃をしかけるようになったののだ。 先ほどのみずのはどうがきっかけだったらしい。 俺は自転車のとめてある場所へと行く途中、またあのことを考えていた。 そして俺は勝手ながらある結論とある考えを自分の中で出していた。                          * 夜、そこは誰もいなかった。 ただぽつんと一頭のホエルコだけがいた。 ホエルコはかなり弱っているようだった。 もう死の一歩寸前人間なら三途の川の渡りかけだろう。 俺はそいつのそばへ行くとそいつのかたわらに座った。 そいつは攻撃なんてしてこなかった、そうやらそういう気力もないらしい。 俺は話し始めた。 俺が自分が出した結論、それを話し始めた。 「なぁおまえは、ココがどういうとか見に来たんだろ?」 ・・・・・・・・・ホェ・・・・・・・・ 返事をしたらしい、俺は続ける。 「やっぱりそうなのか、どうだ俺がいろんなところに案内してやろうか・・・まだ見たりないだろ?」 ・・・・・・・・ほぇ?・・・・・・・・ 少し気力?が出てきたらしい、いや最後の力を振り絞っているのだ。 「おい、行くのか?だったらこれに入りな」 そういって俺はモンスターボールを出した。 そう、おれの考えとはポケモン保護法・・・それを破りこっそりとホエルコをモンスターボールにいれて俺の自分のポケモンにする事だった。 俺は一応トレーナー免許を持っている。 だからこそ出来る作戦のような気がした。 ホエルコは、少し驚いたように俺を見てそして。 ・・・・・・・ほぇぇ・・・・・・・・・ 入れて欲しいといっているらしかった。                       *                    ナゾの消失!ホエルコ消える! 昨日ミナモ海岸で漂着しているのが見つかったホエルコが今朝いなくなっているのが朝つりに来た釣り人によって確認された。 自分の力でもどったのか、人為的に誰かが海へ返したかは不明。 関係者は「自身の力で帰ったと言うのは信じられない」と人為説を主張。 だが、海洋学者のXX博士は「自力で帰った可能性もある」と自力説を主張。 これらの意見により警察は今日からポケモン保護法違反の可能性も含め調査を開始するという。 地元では「自力にせよ、人がやったにせよ、ホエルコが海に帰ってくれて嬉しい」と喜びの意見が多かった。                                                   XX日の新聞より                                                   おしまい あとがき たまには少し重いのを書きたくなってしまい書いてしまいました。 この話少しある曲からインスピレーションして書きました。 わかる人あんまりいないかも・・・。 わかったあなたはかなり音楽通かも・・・。 それではまた次の話で。