あたいの名前はアネゴ。 ハブネークのメス。 このアネゴって言うあだ名は、あたいのトレーナーのユウキがつけてくれた。 仲間のスーとはケンカもするけれど基本的には仲良し。 そして、キイチは・・・・まっまぁいいじゃない。 いまあたいは悩んでるの・・・・。 みんなはあたいらしくないっていうけれど・・・・あたいは・・・・・。 なにげないにちじょうがいちばんのしあわせ 月が出ていた、三日月のきれいな月。 あたいはこの月が1番すき。 だって、ハブネークの模様には三日月があるじゃない? でも、今日はちょっと月を見る余裕がないの・・・。 だってね、あたいには悩みがあったんだ。 「はぁ〜」 「何?ど〜したの?アネゴ、ため息なんかついちゃってポロックにでも当たった?」 「ち、ちがうわよスー」 「じゃぁポフィン?」 「そうじゃないっつーの」 こいつはスー言うことがいちいちカンにさわるが、ダブルバトルではあたいのパートナー。 もちろん息はピッタリ・・・・ただしバトルだけだけど。 「あのね、あたしはね・・・」 「うんうんわかっているわよ、キイチのことでしょ」 「だ〜か〜ら〜違うっつーのぉぉぉ早とちりすんなぁぁぁ〜」 「またまたぁ照れちゃって、隠してもこのお見通しのスーさんにはバレバレよぉ〜」 たしかにキイチさんはカッコいい。 だって、このあたいが・・・・。 って今はこんなこと考えている場合じゃないわ。 早くこの早とちりオオスバメを何とかしなくては・・・。 「だ〜か〜ら〜話をきけぇぇぇこの早とちり〜〜」 「あら、違うのなんだつまんないないの〜」 やっとわかったのかよ、やっぱりトリ頭なのか。 「だいたい、『お見通し』はアンタのとくせいじゃないだろ」 一応ツッコんどこう、わかんないかも知れないけど。 「今、どーせわかんないだろ?とか思ったでしょう、どーせアタシはトリ頭ですよーだ」 と勝手にスネてどこかへ行こうとする。 「おーいアンタ鳥目じゃなかったけ?グラエナに襲われても知らないよ〜」 「あ、あらそうだったわね、やっぱりアネゴちゃんと一緒にいるわ」 おほほほ、といって戻ってくるスー。 だけど・・・足元がおぼつかない。         ゴン  鈍い音がして振り返ると、スーが気にぶつかりひっくり返っている。 「あぁ〜もう、アンタバカぁ〜」 「おほほほほ〜アタシは今宇宙まで飛べるよーな気がするわぁ〜〜」 意味不明のことを口走りながらしばらくふらふらしていたが。 「ばたんきゅー」 そんなことを言って倒れてしまった。 「おーい、大丈夫〜?てか余分だけど『ばたんきゅー』って死語だぞ」 そういって、あたいはスーを安全なトコへ運ぶ。 少し強引な方法だったけどね。 しばらくぼーっとしていたけれど。 がたんがたんという物音でわれに返った。 「ご、ごめんアネゴ寝てた?起こしちゃった?」 そうオドオド聞いてきたのは、ドジョッチのシマ金魚鉢入り。 「ううん、別に大丈夫だけど・・・どーやって金魚鉢で移動できんの?」 「うーんとね、こーやって上半身を少し出してね、よいしょってやるとね、ちょっとずつ動くの」 だから、がたがたごとごと音がしたのか。 「ねっスゴイでしょっ」 「確かにスゴイけど、水こぼれたらどーすんのよっ」 「あっそーか」 おいおい、あっそーかーって・・・。 そうだ、シマにこのことを言ってみよう。 そう思って言おうとしたら・・・・。 「ねぇっアネゴって今何か悩んでる?」 いきなりで少しビックリした。 その時アタシは多分目が点になってたと思う。 「う、うんそうだけど、何でわかったの?」 「だって、アネゴなんか最近元気なかったし、大好きなネコブの実も少ししか食べなかったしそれに・・・」 「あ〜そんなにアタイ元気なかった?」 アタイは、あんまり自覚がない。 「うん、そーだよ結構元気なかった」 そうだったんだ・・・・・。 「ねぇ、何?悩みって?何?」 「う、うんそれはね・・・」                     * 「実は最近野生にいたころを忘れかけてるんだよね、そんでホラ、なんていうか?ほんとにそれでいいのかな?って」 「ほんとにそれでいいのかな?って」 「だーかーらほんとに野生でいた頃のことを忘れていいのかなってこと」 シマは、うーんとうなっているのかと思った。 でも違った、そしてシマはあっさりとその答えを返してくれた。 「いいんじゃないの、かな、よくわからないけれど・・・」 「で、でもなんか忘れたくない思い出とかもわすれてくのよ、それでも・・・・」 「あ、あのね、アネゴわたし思うんだけれど、忘れてしまった代わりって言うわけじゃないんだけれども・・・」 シマはそこで言葉を切ると遠慮がちに言った。 「また、新しい思い出を作ればいいと思うんだけれども・・・違うかなぁ」 しばらく沈黙がアタイとシマの間に横たわった。 アタイにはどう返事をしていいか、よくわからなかった。 「シマの言ってることでいいんじゃねぇの?」 アタイもシマもおどろいて声の方向を見た。 沈黙を破ったのは、キイチの声だった。 「悪ィ立ち聞きするつもりはなかったんだが・・・」 そういって、キイチはアタイとシマの前に座った。 まさかキイチに聞かれているとは、アタイは恥ずかしいやら何やらでたぶん顔が真っ赤になってたんだと思う。 少し暗くてよかった。 「オレからも一言だけいいか?」 「べ、別にいいけどさ」 「オレだってなるんだよそーいう気持ちに」 「え、ホントに」 「オイオイ話をさえぎんなよ」 「ご、ゴメンなさい・・・・」 アタイはガラにもない口調で言った。 だけれどもキイチはそんなこと気にしなかったようだ。 「オレだって時々そう思うことあるよ、だけれども思うんだよ、忘れてしまったことは潔く忘れちまって、また新しい仲間と新しい思い出 を作っちまえばいいんだってさ」 半分開き直っているような感じではあったが、答えがわかったような気がした。 「そうですよ、アネゴさん」 今までずーーッと黙っていたシマが言った。 「忘れてはいけないこととかもありますけれど、それでいいと思いますよ、わたしはキイチさんのようにうまくは言えないけれど」 「ア、アタシもそー思いますよぉぉ」 そういってフラフラと茂みから這い出してきたのはスーだ。 「ア、アタシだってそんなことはよくあるわよぉ、でもそんな昔のことは忘れてもこれからの、何気ない日常が1番の幸せでいい思い出 が毎日毎日思い出に刻まれていく感じなんだよぉぉぉぉ」 そう、言ったらまたパタリと倒れてしまった。 「オイオイどーしたんだよ」 「あ、たしか木にぶつかったキリだったけ」 あはははははははっと巻き起こる笑い。 「あ、あのそろそろ戻った方がいいんじゃないでしょうか?日が昇り始めてるし」 「ああ、そうだな」 「そーね戻りましょーね、スー戻るよぉ〜」 「ほにゃぷーーー」 「わわわっよっかからないで下さいよぉスーさん」 アタイは今気づいた、こんなくだらない日常でも新しい思い出にきざまれる。 そして、それが今のアタイの幸せ。 昔のことを忘れても、この今の日常を思い出にする。 そうしようこれから、でもアタイの大切な思い出だけは絶対に忘れないようにしよう。 ・・・・・そう絶対に。                                          おしまい あとがき なんとなく「よるのさんぽ」の続編みたいなのを書きたいな〜みたいなことから書き始めたこの話。 話の構想を練るのが結構大変でした。 あ、でももしかしたらまた続編書くかもしれませんので、その時はまたお願いします。 続編は多分シマの話になるだろーな。