「チャーンス☆火炎放射〜」 ゴォォォォォ・・・・・。 町はずれのポケモンバトル。私のブースターの火炎放射を受け、たおれるニドリーノ。 「ああっ!もどれ!」 ニドリーノのトレーナーはニドリーノをボールにもどす。 これは、私がバトルに勝ったことをしめす。 「また負けちゃったよ・・・・・あいかわらず強いね。それじゃ!またね」 負けたトレーナーは手早くあいさつをすませ、ポケモンセンターへ走っていった。 (やった!これで4連勝!) 私は心の中でガッツポーズを決めた。 私のバトル日記  〜ブースター編〜 パチパチパチ・・・・。 突然、はくしゅが聞こえたので振り返ると、トゲチック(体重3,2k)を頭にのせた黒髪の少年、私のおさななじみ・ハクがベンチに座ってた。 ちなみに、ハクの髪型はトゲチックにいいようにいじくられ、とんでもない髪型になっていた。(いつものことだったりする) 「ハイ、これ」 ハクは、私が、バトル前に買いにいかせたミックスオレをわたした。私は『クイッ』と1口飲んでから言う。 「何で私のお金でミルクココア飲んでんの?」 「え゛」 ハクはトゲチック用のコップにココアを注いでる状態で停止する。 「うんぱん料ってことで・・・」 「ダメ」 私は手をつきだす。 「・・・・トホホ」 私はジュース代を受け取り、足元で(そんなに小さくないケド)『ボクもボクも』とうったえているブースターにジュースをあげるため、器を取り出す。 (勝ったんだから、ごほうびぐらいあってもいいよね) そう思い、いつもより多めにミックスオレをそそぐ。 「ハイ」 ブースターに器を出すと、ブースターはうれしそうになめはじめた。 「ねえ、さっきのバトル、荒すぎなかった?」 突然、ハクが話しかけてきた。 「どういうコト?」 「さっきの人となら、いつもはボクが戻って来るころにはもうカタがついてるハズなのに、今回はココアで一服するだけの時間があったよ」 そういえば、と私は思う。いつもなら、決着がついてからこいつが走ってくるんだけど、今回は後ろのベンチに座っていた。 今日のバトルは、敵のすなかけをまともに受けてしまい時間がかかったしブースターもところどころダメージを受けた。 「最近、連勝続きで、油断してるんじゃないの?」 私はこの言葉に『カチン』ときた。なんでこんなバトルをしない人に言われなきゃなんないの? 「バトルほとんどしない上に現在9連敗中のあんたにいわれたくない!」 「ちがうよ!!最近1回勝ったもん!」 「どうせ単なるマグレ勝ちでしょ!」 「う゛」 「私の夢は、世界一のポケモンマスターになることなの! こんなトコロで負けるワケにはいかないの!!ねぇ!ブースター!!」 そう言い放ちブースターのほうを見ると、ミックスオレを飲み終えたブースターがトゲチックと楽しくたわむれていた・・・・。 タッタッタッタッタッタッ・・・・・。 今日は日曜日、その上絶好のバトル日和。私とブースターは手早く食事をすませ、いつもの場所に向かっていた。 「あれ?」 私がいつも居座っている場所には見慣れない男の子がいた。 サラサラした銀髪。スカイブルーの瞳。色白な肌。黒をメインとした服装。見た目は結構カッコいい。 「え〜っと、あなた、この辺じゃ、見ない人ね?」 「オレか?最近ひっこして来たんだ」 「ふ〜〜ん」 「それより、お前、あいつが言ってたブースター使いか?」 「この辺でブースター使ってるのは私だけだよ」 私が「ね☆」とブースターに同意を求めるとブースターは『うん』って感じに一声鳴いた。 「お前の実力は聞いている。バトルするか?」 「オッケー。いっとくケド、てかげんなしだけらね。いけ、ブースター!」 「サンダース!」 彼は私のブースターにたいして、サンダースを出してきた。 (サンダース・・・、スピードと強力な電撃が武器のポケモン・・だけど、防御がもろいハズ!) 「ブースター、とっしん!!」 「かわせ」 ブースターの強烈なとっしんをいともカンタンにかわすサンダース。 「火炎放射!」 「高速移動」 火炎放射に対し、表情ひとつ変えずに高速移動を指示する男の子。 火炎放射を高速移動でよけるサンダースにブースターは首をまげて当てようとするがゼンゼン当たらない。 ・・・そして、『ゴホッ、ゴホッ!』とブースターは息切れしたのかむせた。 「十万ボルト」 敵はこのスキを見逃す相手ではなかった。声にこたえ、サンダースは十万ボルトを放つ。 バチバチバチバチィ!! 強力な電撃がブースターにさくれつする! 「ブースター、大丈夫!?戦える?」 私のブースターは『大丈夫!』といった感じに一声鳴くと、1歩、サンダースに近ずいた。 「ようし、それでこそ、私のブースター!」 「・・・そのブースターかなりのレベルだな」 「そうでしょ。私のポケモンなんだから」 「しかし・・・・トレーナーであるお前はその程度か」 「ちょっと!それどーいう意味!!」 「バトルが荒すぎる。そんな荒いバトルではオレのサンダースにはキズ1つつけられん!」   ≪さっきのバトル、荒すぎなかった≫ 昨日のハクの言葉が頭によぎった。たしかに、最近勝ちすぎていてバトルが荒くなってるかもしれない。 「サンダース、フラッシュ!」 相手の声に、私は我にかえった。しかし、時すでにおそし。  サンダースが『カッ』と光輝き、私の目がくらんでしまった。 「十万ボルト!」 バチバチバチバチバチィ!! 「終わりだ、次に来るときはもう少し防御も考えるんだな」 ・・・・・その後、私はポケモンセンターに走っていった。 ・・・ええ、負けましたよ〜だ! 私はポケモンセンターのロビーのソファーに回復済みのブースター入りボールを握りしめ、うつむいた状態で座っていた。 ブースターはモンスターボールの中でもうしわけなさそうな顔している。   ≪さっきのバトル、荒すぎなかった≫   ≪バトルが荒すぎる。そんな荒いバトルではオレのサンダースにはキズ1つつけられん!≫    ≪次に来るときはもう少し防御も考えるんだな≫ 頭の中で、ハクとあの男の子の声がリピートされる。 こうやってうつむいているとどんどんネガティブな考えになってしまう。 「!」 いきなり、ほっぺたに冷たい物があたった。 そちらにむくと、両手にジュースを持ち、頭の上にトゲチックをのっけたハクが立っていた。 「おどろいた?」 そう言ってハクは私にジュースをわたし、となりに座った。 「ハク、なんであなたがここに居るの?」 「なんでって、ポケモンカードをやりにだけど」 ポケセンでカードなんてできたっけ?と思ったが口には出さないでおいた。 「で、そっちはなんでここにいるの?」 私は口ごもんでしまった。昨日、「こんなトコロで負けるワケにはいかないの!!」と言っておきながら、今日「負けました」なんて情けなくて言えない。 しばらくして、ハクが口をひらいた。 「何があったか知らないケド・・・何か考え事でもあるんなら相談にのるよ?」 そう言うハクの褐色の瞳が私をのぞきこむ。 ・・・本気で心配してくれている。 思わず何もかも打ち明けたくなるケド。   ≪次に来るときはもう少し防御も考えるんだな≫ 「・・ねえハク、防御ってどうやればいいのかな?」 「防御?ポケモンバトルの?」 「うん」 ハクはこの後しばらく「う〜〜〜ん」といって考えた後こう口をひらいた。 「ちょっとわかんないケド、キミが防御なんてしたら逆に弱くなると思うよ。」 「?どーいうこと?」 「これは、あくまでボクの意見だけど、トレーナーとポケモンにあった闘い方が一番だと思うよ。 ふなれな闘い方をしたら逆に弱くなっちゃうと思うよ」 「う〜〜ん・・・・」 「特にどこかの攻撃一直線の場合は特に・・」 バキィ!! 私はハクをなぐった。トゲチックは油断なく宙に浮かんだ。 「だれが攻撃一直線のバカだってぇ!!」 「いてて・・いや、なにもあなたのコトなんていってないんですが・・(バカって言ってないし)・・ でも!キミとブースターの場合まっすぐな闘い方が一番だとおもう」 「う〜〜〜〜ん・・・」 「さっきの言ったとおりふなれな闘い方は弱くなっちゃうと思うし、ブースターは攻撃能力が高いからね」 こいつ・・・意外といろいろと考えてるんだ。私はハクの事を思い直した。  私が感心していたらハクはさらにこう言った。 「答えになってないよね。他にボクが言える事といえば『油断大敵』 『敵を知り己を知れば百戦危うからず』といったものだケド・・・」 こいつ・・・・びみょうに昨日のコト言ってないか。と思ったがまあいいか。 「うん、アリガト!おかげでなんとかなりそう!」 しかし、ハクのやつけっこうトレーナーに向いてるんじゃないかな?と思ったんだが・・・。 「どういたしまして、さて!もっかいカードバトルするかな。 こんどこそこの『ラブラブ☆とげちデッキ』で勝つぞ〜」 私はそう言って立ち去るハクを見て (ダメだ・・・こいつはタダのトゲチック大好きのバカだ・・。) と改めて思った。  その日の夕方。私は再度あの男の子にバトルをいどんだ。  相手が『またか』と言いたげな表情をしたのはおいておこう。 「ブースター、行け!」 「サンダース、やれ」 「火炎放射!」 「高速移動」 例によって高速移動でよけられる。しかし、 「電光石火!」 高速移動をやめたこのタイミングで!電光石火がよけられるものか! ドカッ! 電光石火はみごとサンダースをとらえた。このサンダース、思ったよりずっと打たれ弱いようだ。 「よし!もいっかい!」 「かわせ!」 再びブースターに電光石火を放つがこんどはカンタンにかわされてしまった。 「サンダース!お前の電光石火を見せてやれ!」 サンダースは電光石火を放つ。しかし、たいしたダメージを受けない。 「もう一度だ!」 「むかいうって!かみつく!」 バシィ! 結果、サンダースの電光石火が当たり、ブースターのかみつくはすばやくはなれたサンダースにかわされてしまった。 「火炎放射!」 「かわして、電光石火!」 ブースターは火炎放射を放つが、サンダースはすばやくかわし、電光石火を放つ。 (一体、どうすれば・・・。) このままでは、いくらサンダースの打撃がたいしたことがないとわいえ、ブースターの体力が尽きてしまう。 「電光石火!」 無表情な顔で4回目の電光石火を指示する男の子。 「ブースター、鳴き声!」 サンダースが電光石火を放とうとした時、ブースターがおたけびを上げ、サンダースをひるませる。 「チャンス!電光石火!」 そのすきをつきブースターの電光石火!ブースターのいりょくの高い電光石火をうけ、サンダースはたおれた。 「やった!」 「もどれ」 私は勝ってすごく嬉しかったが、男の子は自分のポケモンがやられたというのに表情ひとつ変えずにボールにもどした。 「やられたよ。この町に来てからオレのサンダースに勝ったのはお前が2人目だ」 「1人目はだれ?」 私はこいつに勝てそうなやつを何人か思い浮かべるが全てハズレだった。 「あいつだ」 そういって、彼が指差したさきには・・・、 木の上にのぼり、あいかわらずトゲチックを頭にのせ、買い物ぶくろを持ったハクがいた。 「やあ」 そうハクが言ったとたん・・ どしーーん!! ・・・落っこちた。 「ハク!あんた一体どーやってこいつに勝ったの!?」 「どうやってって、指を振るでにきまってるじゃない。いや〜サンダースが地面タイプ苦手なんて知らなかったよ」 「なにぃ、じゃあマグレだったのか?しかも、バトル知識もなかったのか!」 「そだよ♪」 いままで無表情を貫いてきた男の子の顔が大きく崩れる。 「ふ〜ん・・それで10連敗しないですんだんだ?」 「うん♪」 「・・オレはこんなヤツに負けたのか・・・」 うわ〜すんごくショックうけてるよ。彼。 「ハイ、これ見物料」 そう言いハクは買い物ぶくろからよく冷えたジュースを取り出し、私と男の子に渡した。 「やっぱり、彼にキミのこと教えて正解だったよ。こんなスゴイバトルが見れたんだから♪」 「・・・つまり、オレたちはキサマの手の中で踊らされてたというワケか・・」 「このブースター使いの私を利用したこと、つぐなってもたうからね」 男の子は怒りに燃えている。私ももちろん怒りに燃えてる。こんなヤツ見直した私がバカだった。 「アリゲイツ!」 「ブースター!」 男の子はボールからアリゲイツを出し、私もブースターをけしかける。 「ちょ、ちょっとお2人さん・・・ひょっとして、怒ってる?」 「怒ってる!」 「もちろんだ!!」 「だ、だからって、ポケモンださなくっても・・・キミたちも楽しんだんだし・・」 「「問答無用!ブースター(アリゲイツ)!破壊光線だーーー!!!!」」 ドッカーーーーーーッン! その様子をトゲチックは上空で『やれやれ』という表情で見ていた。  その後、私と男の子はジュースを飲みながらポケモンセンターまで歩いていった。              おしまい