オレのポケモン戦闘記  〜サンダース編〜 「『破壊光線』!」 「かわせ、そして『十万ボルト』!」 今日も今日でいつもどうりバトルがくりひろげられていた。  劣勢のほうは一発逆転とばかりに破壊光線をブースターに命ずる。 しかし、オレのサンダースはかろうじてかわす。そして、 バチバチバチィ! 強力な電撃がブースターを襲う。ブースターが力尽き、たおれてしまう。 「ブースター戦闘不能!よってこの勝負、サンダースの勝ち!」 「ごめんね、ブースター、もどって」 「よくやった、もどれ、サンダース」 審判が勝敗を言い、オレたちはポケモンをボールにもどした。  今回のバトルの勝利者は、サンダース使いのライガすなわちオレ。 この町に半年ほど前に引っ越してきた11歳のポケモントレーナー、『光速のライガ』との異名がある。  もう一人バトルしていたのは、同じく11歳、ブースター使いのアカリ。 金髪に赤い瞳、黄色い服で負けず嫌いなヤツ。 生まれたときからこの町にいるらしい、この町で数少ないオレと互角にバトルできるヤツだ。 ちなみにコイツは『百億万度のアカリ』という異名を持つ、らしい。  オレたちはこの町で最強クラスのトレーナーでかなり有名だ。  おっと、もう一人いたな。さっきまで審判してたヤツ。 11歳、ボサボサの黒髪で褐色の瞳、白い服に何より特徴的なのがトゲチックを頭の上にのせているコト。 アカリとはおさななじみらしい。ほとんどバトルしない上によわっちい。 『最弱のハク』というオレたちとはまったく逆の異名を持つ。  そんな、オレたち三人組は今日のバトルを終え、くだらない話をしながらポケモンセンターに行った。  翌日、オレたち3人は町のはずれの博士に呼ばれていた。 博士といってもオーキド博士なんて一流の博士ではない。この町にいる三流の博士だ。 ちなみに、指を振るについて研究しており、ハクがたまにてつだいに来るらしい。 「やあ、よくきてくれたね」 博士がオレたちに話し掛けた。 「博士〜、こんにちは〜〜」 「それで、なんで私たちを呼んだの?」 「・・・・・・」 上から、ハク、アカリ、オレだ。ハク以外は年上に敬意をもってないのがよくわかるな。 「うむ、実は最近南の森でこのあたりには生息しないハズのポケモンが多く発見されているというウワサを聞いたことがあると思う。 それで、どんなポケモンがいて、なぜそこにいるか調べてもらいたいんだ」 「ボクは別にいいですケド・・・」 「私もオッケ〜だけど」 なぜ自分で行かんのだと思ったが 「オレは別にかまわん」 こうしてオレたちは南の森に出かけることになった。 「で、ぜんぜんフツーのポケモンしかいないんだけど・・・」 アカリがイライラしながら言った。 「ここまでに出会ったのはキャタピー3匹、ジグザグマ5匹、オニスズメ8匹に・・」 ハクが出会ったポケモンをメモしながら言った。大抵、どこの森にも生息しているポケモンだ。 「だーー!そんなことわかってる。ぜんっぜんこのあたりのポケモンじゃない!!」 「そんなコト言われても・・・」 ちょうどアカリがハクにやつあたりした時だった。 「お、おい、あれ・・・・」 オレがハクの後ろを指差した。そこにいたのは・・・エレブー! ポケモンリーグに挑戦するようなトレーナーが持ってる、かなり強いポケモンだ。 しかも、いきなりの戦闘態勢。 ハクとアカリもそいつにきずいて、距離をとる。 そしてエレブーは電気ショックを放つ。 「トゲチック、もどって!」 おいハク、トゲチック戻すな!戦え。と心の中でつっこんでいると、 「ブースター!『火炎放射』!!」 アカリがいつもいっしょにいるパートナー、ブースターに火炎放射を命ずる。 いつも、攻撃一本ヤリの単純なヤツだが、実力は中々のものだ。 「『とっしん』!」 エレブーに火炎放射が命中した後さらにとっしんをうつブースター。 その攻撃を受けてエレブーは倒れてしまうが、こんなところにエレブーがいるのは明らかにおかしい。 それに、アカリのブースターの火炎放射を受けた場合、大抵一撃で勝負がつく。 「・・どうやらこの事件、本物らしいな・・・」 そう、このエレブーは、ほんの始まりでしかなかった。 「ちょっといくらなんでもおかしいよ、これ」 何度目かのアカリのセリフ、その意見はものすごく正しい。 「エレブーが3匹、ケンタロスが5匹、ニドクインとニドキングが1匹ずつガラガラとゴーストが・・」 「うっるさーーーい!!カウントしてるヒマがあるんだったらなんとかせーーー!」 相変わらずポケモンをカウントしてるハク、そしてハクにやつあたりするアカリ。 ・・・・はっきり言ってうるさい。 しかし、アカリのブースターはたびかさなるバトルにボロボロでボールの中だ。イライラするのもわかる。 「シッ!」 オレは2人に静かにするように指示する。あやしい男がいたからだ。オレたちはしげみにかくれた。  その男はボールからエレブーにケンタロス、ガラガラといったポケモンを出す。  そしてそのポケモンに「いけ」と命ずる。ポケモンたちを逃がしているのだ。ポケモンたちは野生にかえっていく。 「何やってるんだろう?」 「私にわかるワケないでしょ!」 「直接聞いてみるか?」 オレの意見に2人はおどろいた。 しかし、この事件の黒幕はあの男であるのはほぼ確定なのだ。ここで逃がしてはいけない。  結局、言い出しっぺであるオレが行く事となった。 「何してるんですか」 断っておくが、オレだって一応見ず知らずので年上の人との会話では敬語になる。 「ポケモンたちを逃がしているのさ」 男は当たり前といった感じで言うが、この男の言うことは明らかにおかしい。  第一にポケモンを自分自身の手で逃がしていること。 ポケモンを逃がす時はパソコンの預かりシステムを使って逃がしてしまうのが一番楽だ。  第二にココに逃がしていること。 ポケモンを逃がす時は原則としてゲットした場所に逃がさなくてはならない。 タマゴからゲットした場合も生息地をパソコンでさがして逃がさなくてはならない。 理由はポケモンの生息地を荒らさないためだ。 「なぜここに逃がしているんですか?従来住んでいるポケモンたちがどうなってもよいのですか? ・・・それに、そのポケモン、ゲットしたばかりですよね。ぜんぜんなついてない。 まるで、最初っからここに逃がす予定だったみたいじゃないですか」 オレは疑問をそのままぶつけた。そしてその疑問には怒りもまじっていた。 ポケモンの生息地を荒らすこの男が許せなかったからだ。 「・・・・・」 男はしばらくだまっていた。しかし、 「くっくっく、・・・・ ハァーーハァッハァッハァッハァ!!」 「!」 突然笑い出した。オレはおどろき、こう思った。 (この男・・・・・バカ?) しかし、それはまちがいだった。 「ふっ・・・最初から逃がす予定だった事まで言うとはな・・・なかなかするどいじゃないか。 しかし、そこまでカンがいいと、逆に早死にするぞ!」 「なっ!」 「いけ!ドードリオ!」 「ちっ!」 突然男がポケモンをくりだしてきたので、オレは後ろにジャンプした。 3つの意思と頭を持つ、飛べない鳥ポケモン・ドードリオ。 飛べないとはいえ、かなり素早いうえに、攻撃力もある。 「アカリ!ハク!コイツが黒幕だ!ひっつかまえるぞ!」 「・・・トゲチック!たのんだよ」 おお!今度はたたかうのか? 「ブースター!つらいかもしれないケドがんばって!」 ハクがトゲチックを、アカリが残り体力が少ないブースターを出した。が! 「アカリ!お前のブースターはもう限界だ!ひっこめろ! ハク!お前はアカリを町までおくってけ!」 「なによ!私だって戦えるよ」 「キミがやられたらどうするの?ボクも一緒に戦うよ」 オレの発言に2人は反論する。しかし、ここで2人を戦わせる気はない。 「アカリ!ムリするな!ハク!お前は足手まといだ! それに大丈夫!コイツはさっき、ポケモンを5匹逃がした。後1匹のハズだ!」 それにサンダースならドードリオに対して有利だ。 「わかった!すぐにもどるよ」 「それまでに負けてたら、承知しないからね!」 そう言いのこし、2人は走っていった。 「・・・フッ、仲間おもいだな」 「・・そろそろおしえてもらおう。お前がなぜ、こんなことをするのか」 もはやコイツに敬語を使う必要ない。 「・・・・・・」 「サンダース!」 オレはボールからサンダースを出し、戦闘にそなえる。 「ドードリオ、『ドリルくちばし』!」 サンダースを出すと、敵はすぐさまドリルくちばしをはなってきた。 「!よけろ!『高速移動』!」 いきなりの攻撃をなんとかかわし、高速移動で距離をとる。そして・・・。 「『十万ボルト』!」 「『高速移動』!」 十万ボルトを放つが高速移動でよけられてしまう。 「ちっ・・・・」 オレは舌打ちしてサンダースとドードリオを凝視した・・・・。 もうバトルをはじめてどれぐらいたっただろうか・・・。十数分か何十分か・・・・。 バトルは高速移動の連続で、どちらもノーダメージだが体力はおたがい残り少ない・・ハズだ。 サンダースの十万ボルトで、電気が苦手なドードリオを一撃で倒せるハズだ。 しかし、相手のドリルくちばしも、オレのサンダースを一撃で倒せる攻撃力を持つ。 そして、オレはバトルの緊張感に押し潰されそうになる。 オレは未熟だった。 今までスポーツ的なバトルばかりで、負けたらどうなるかわからないこの真剣勝負がつらかった。 (遠距離からの十万ボルトは当たらない・・・・ こうなったら、危険だが近距離から十万ボルトを叩き込むしかない!) オレがそう考えた時だった。相手の男がサンダースの進行方向に何かを投げつけた! バシィッ! サンダースは反射的にその『何か』に電撃を撃つ。 電撃によって黒コゲになった『エネコのシッポ』が地面に落ちた。 エネコのシッポ・・・野生のポケモンの注意を引き付け、逃げるための道具。 「エネコのシッポだと!!」 「かかったな!『ドリルくちばし』!」 ドードリオが高速移動をやめたサンダースに突進しドリルくちばしを撃とうとする。・・・しかし、 「『天使のキッス』!」 聞きなれた声と共に天使のキッスがドードリオに放たれる。 天使のキッス・・かわいい顔で投げキッスをし、ポケモンを舞い上がらせるワザ。 ドードリオのみっつの頭のうち、2つが混乱し、残り1つがそちらに振り向いた。 それにより、ドードリオの足が止まる。 「今だ!『十万ボルト』!」 この近距離での十万ボルト、ましてやドードリオは混乱している。よけられるハズがない。 バチバチバチバチバチィ! サンダースの十万ボルトが炸裂し、ドードリオがごうかいに倒れた。 「ハク・・・・借りが出来たな」 そう、先ほどの天使のキッスはハクがトゲチックに命じたものだった。 そして、ハクの後ろには博士が立っていた。 「後で何かおごってね♪・・・・うわぁ!」 突然、ハクの近くに電撃が通り過ぎる。サンダースがバチバチと電気を帯びている。 どうやら、サンダースは最弱と呼ばれるコイツらの横槍が気に入らないらしい。 オレのサンダースは一対一の戦いを邪魔されるのがキライだ。 おかげでオレはダブルバトルができないぐらいだ。 ・・・・もちろんハクはそんなこと知らないが。 「ちょ、ちょっと、なにを・・・うわぁぁぁぁぁ!!!」 その後ハクとそのお友達・トゲチックがかなり疲れているハズのサンダースに追いかけまわされ、町のある方角へものすごいスピードで走っていった。 「・・・・・・さて、ここは危険だね。なんかすごい強いポケモンが多いし、アカリちゃんも待ってるし、 まあ、ハク君たちは速すぎて野生ポケモンは手出しできないだろうから、ほっといてこの男を警察に連れて行こうか。ピクシー、おうふくビンダ!」 ビシバシビシ!! 博士がボールからピクシーを出し、おうふくビンダを命じて男を気絶させた。 「・・・そうだな」 オレはうなずき、サンダースを少し心配しながら、博士といっしょに男を町に運んだ。 後日、オレが戦った男はロケット団で、ロケット団が強いポケモンを養殖するためにあの森を改造しようとしていたというコトが警察の取り調べでわかった。 もう数日発見が遅ければ、あの森は凶暴な野生ポケモンでうめつくされ、手のほどこしようがなかったかもしれないらしい。 それほど、ロケット団にしても大掛かりなプロジェクトだったのだ。 その後、あの森に本来、生息しないポケモンは警察と周りの町のジムリーダーがかなり苦労して保護したらしい。 アカリはというと、ブースターのダメージが予想以上に大きく、ポケモンセンターのジョーイさんに説教を受けていたらしい。 一方ハクの方はというと、 「やな感じ〜〜〜〜!!」 と某アニメのセリフを叫びながら光速で町にもどってきた時、丁度サンダースの十万ボルトが炸裂したらしい。 そんな事を知らずにオレは戻ってきたやけに満足げな表情のサンダースに大好きな赤いポロックをあげ、頭をなで、ボールに戻した。 END