Curse of summer night 「第四話・男への制裁」 島の海岸付近。 辺りには暗い海が見えた。 まるで男の行く末を暗示しているかのようにも。 ドサッ 男はピジョットに振り落とされ、地面に落下した。 『ピジョォォ…!』 『ギャァァ…!』 ピジョットとギャラドスは厳しい目つきで男を睨みつけ、防御力を下げたというのは冗談だが、 本当にそれくらいの剣幕で男を見下げていた。 『た…頼むっ! い、命だけは助けてくれっ! たかだかポッポとコイキングの一匹や二匹くらいでそんなに怒んなよっ!?』 『たかだか一匹や二匹?』 この男はこの期に及んでも自分の犯した罪を認めようとしないのだ。 そして男自体も忘れていた、自分が殺したポケモン、もう一体を。 そう…、トランセルの存在を…。 ギャラドスとピジョットの元にある一匹の虫ポケモンが現れた。 美しい真っ白な翼を広げ、飛翔するその様はあまりに優雅で美しかった。 しかし、その美しい容姿とは裏腹にその眼光は鋭く男を捕えている。 そう、その虫ポケモンの名は、バタフリー。 男に殺されたトランセルの親ポケモンだ。 『貴、貴様はっ!?』 『フリィィ…ッッ!』 本来、優しく、大人しい性格のはずのバタフリーがここまで我を失っている。 そう、ここにいるポケモンはもはや怒りの感情しか持ち合わせていないのだ。 『ピジョォォッッ!』 『ギャァァッ!』 『フリィィッッ!』 ポケモン達は咆哮した。 憎しみと怒りの感情を男にぶつけるかの如く。 まずバタフリーが痺れ粉を発し、男の動きを封じる。 『な…なんだこれはっ!? う…動けねぇっっ!』 当然である。 野生ポケモンでさえ受けたら一たまりも無いバタフリーの痺れ粉を受けて、 人間如きが耐えられるわけがなかった。 更にピジョットが風起こしで男の両腕を切り裂く。 『ぎゃぁぁぁっっ…!!』 男は両腕をもぎ取られ、絶叫する。 そしてあまりの痛みに苦痛の表情を浮かべる。 だがギャラドスは攻撃の手を緩めない。 そう、ギャラドスの噛み付く攻撃だ。 ギャラドスの巨大な牙によって男の顔面は食いちぎられ、 男は正に即死状態。 『ぐぇぇぇぇっっ!!』 男の末路。 それが男の発した最後の言葉。 そう、これがあまりに哀れで愚かな男の最期だった。 復讐…、復讐…、復讐…。 その言葉だけが彼ら【ポケモン達】を動かした。 自分の子供達の無念を晴らす為に。 そしてギャラドスは再び海に帰り、ピジョットは青空に戻り、バタフリーもまた森へと帰って行った。 こうしてこの島は再び平和な日々が戻った…、 かに見えた。 そう、これで終わりではなかったのだ。 この島の惨劇は。 この事件はまだこの島に伝わる悪夢のほんの序章に過ぎなかった。 今まさに真の恐怖の惨劇が幕を開けようとしていた。 本当の恐怖は、今、これから。 続く。