Curse of summer night 「第五話・覚めない悪夢」 男は死んだ。 確かに死んだ。 男の原型すらも留めていない死体が島の海岸沿いに転がっていたから。 島民達も皆、肉眼で確認した、 そしてこの哀れな男の墓すらも立てたから。 島民は二度とこんな恐ろしい惨劇を繰り返さないようにと今まで以上にポケモン達との信頼を築こうと考えた。 しかし、 あの悪夢の惨劇から数ヵ月後。 人々も次第にあの事件の記憶は脳裏から次第に薄れてきていた。 島はかつての平和を取り戻し、 人々もポケモンも再び信頼関係の絆も蘇りつつあった。 だがこの頃、この島にある不気味な噂が流れ始めていたという。 その噂の内容とは、 『あの殺された男の魂が夜な夜なこの島をさまよっているらしい。 男の霊は男を殺したポケモンでは無く、男を見捨て、男を助けもしなかったこの島の島民を恨んでいる。 男の霊は島の島民に復讐してやろうと考えているらしい。 この島は危険だ。 逃げないといけない!! でないとこっちが殺されるっ』 という不気味な噂だった。 島民達は男の霊を恐れた。 ある者は島から離島し、 ある者は男の墓に出向き、お参りを始める始末。 だがほとんどの島民は馬鹿らしいと気にもとめていなかったという。 だが一部の島民が予感していた恐怖が現実となって現れた。 ある日の晩、 ある島民が漁から帰って来た時のこと。 『…ナゼオレヲミステタ…?』 不気味な声が耳元に響いた。 島民は驚き背後を向いたが誰もいない・。 そこで島民は空見だったのだと納得した。 だが、 『ドウシテタスケテクレナカッタ?』 再び耳に木霊する不気味な声。 『…空耳なんかじゃない!』 島民は確信した。 そして恐る恐る正面を向いてみる。 すると、 『お、お前はっ!?』 そう、見覚えのある人物だった。 両手を失い、顔面からも多量の血が流れている。 姿こそ変わり果てているものの、 見忘れるはずも無いあの男の姿。 『コンドハオレガオマエラヲサバクバンダ…! オレヲミステテイマモノンキニイキテヤガルキサマラガニクイカラナッッ…!』 変わり果てた姿の男はゆっくり、ゆっくりと一歩ずつ島民に近づいてきた。 確実に。 ―――殺されるっ、 このままじゃ殺されるっ 島民は悟る。 男の殺意と憎しみを。 『た…助けてくれっ!? お…俺が悪かったよっ! 謝るっ! だから命だけは助けてくれっ!? な、頼むよっ!?』 島民はあまりの恐怖に足がすくみ一歩も動けなかった。 震えた声で小さく必死に男に命乞いをする。 怖かった。 どうしようもなく。 『コトワル…。 コノオレトオナジメニアワセテヤル…、キサマラハ…!!』 『―――ぎゃぁぁぁぁっっ!!』 この島民の絶叫は島全体に鳴り響いた。 だが無常かな誰もこの悲鳴には答えない。 いや、答えられなかったのだ。 あまりの恐怖のが島民全てを震撼させていたから。 『コレデオワリジャナイゾ…。 …コノウラミハラサデオクベキカ…。』 男は微笑し、闇に消えていく。 翌日、あの漁に出ていた島民は変わり果てた姿で海岸沿いで発見された。 その姿はあまりにあの事件を島民に思い出させた。 そう、その姿はまるであの男の死体の如く酷似していた。 続く。