ここはマサラタウン。 旅立ちの色の風が吹きかう田舎町。 人々が出会いと別れを惜しむように、 ポケモンもそれを惜しむだろう・・・。 ぱっと見、何のへんてつも無い何処にでもあるような小さな片田舎町なのだが、 一つだけ誇れるものがこの街にはあった。 そう、ここマサラタウンはポケモン界に置いてその名を知らぬものはいないくらいに名を轟かすオーキド博士が住む町でもある。 ポケモン界の権威、オーキド博士。 様々な人々に尊敬され続ける彼の業績は誰もが認めるであろう偉大なものであった。 人間には表と裏の顔がある。 そう、それは一般人にだけ限定するべきものではない。 もし、このオーキド博士に誰にもいえないであろう彼だけの隠されてた裏の顔があったとしたら・・・? ヒロシ君大ピンチ!? 〜オーキド一族の本性〜(前編) ここはマサラタウンの一角に位置する、とあるちょっとした有名人の研究所。 外観から見るとかなりこった洋風の作りで、それでいて敷地面積も広く、 様々なポケモン達が広い庭を駆け巡っている。 そう、ここはオーキド博士の研究所。 天候は、晴天。 雲一つ無い快晴の天候。 蒼一色の空。 そんな綺麗な空に決して退けを取らないような美青年がここ、オーキド研究所を訪ねてきた。 爽やかな笑顔が眩しい顔立ち。 そしてセンスのいいブルーの帽子がトレードマークの好青年。 彼の名をヒロシと言う。 この日、彼はオーキド博士に呼ばれ、ここにやって来ていた。 ピンポーン っとチャイムを鳴らし、 「お邪魔しまーす♪」 と笑顔でオーキド博士の研究所に入室するヒロシ君。 彼はこの時、この後自分に降りかかる悪夢の様な災害が彼を待ち受けていることなど知る由も無かった・・・。 「やぁ、よく来てくれたね、ヒロシ君・・・。」 そう言い放つのは白い白衣を身にまとった中年風の男。 そう、彼こそがあのポケモン研究会にその名を轟かすオーキド博士その人である。 何故かヒロシ君を見るや否やご機嫌な表情を浮かべるオーキド博士。 「こんにちは♪ オーキド博士! それで僕に用って何ですか?」 相変わらず何時ものニコニコ笑顔で応答するヒロシ君。 「ああ、どうしても君と2人っきりで話したいことがあってね・・・。」 不気味に微笑するオーキド博士。 そして何故か「2人っきり」という所を強調する。 「はぁ・・・。」 ヒロシ君も少し戸惑いながらも何時もの笑顔を絶やさない所は流石といった所か・・・。 博士は続ける。 「ところでヒロシ君、今日のこの事はツバキ君には黙っていてくれたのかね?」 「はい、博士が事前にどうしてと言う事でしたから彼女には黙っていましたけど。」 博士が言うツバキとはヒロシのガールフレンドに当たる女の子である。 「ヒロシラヴ★」がモットーで生きる彼女にとっては 「ヒロシがオーキド博士宅に行こう」 とでも言い出せばきっと 「自分もついて行く!」 っと言い出しが聞かなく様な性格の女の子だ。 博士はどうしてもヒロシと個人的な用を済ませたかった。 博士にとっては彼女は邪魔な存在だったのだろう。 (よっしゃっっ!! これで一安心できそうじゃっ!!) ヒロシ君の返事を聞くと、 拳をぎゅっと握って心の中で何故か大はしゃぎするオーキド博士。 無論、ヒロシ君には悟られない程度に。 オーキド博士は更にご機嫌になる。 そもそもこの日、どうしてヒロシ君がオーキド宅に行く破目になったのかを説明しておこう。 事の起こりは三日ほど前・・・。 ここはマサラタウンに位置するとある民家である。 ヒロシ君にとっての友人でもあるサトシという少年の家だ。 彼もまたオーキド博士にパートナーポケモンとなるピカチュウを受け取り、この街から旅立った少年でもある。 ポケモンリーグを終えた帰り道にヒロシはこのサトシの家に立ち寄っていたのだ。 お手伝いポケモンのバリヤードが忙しそうに家事をこなしている日常風景。 割と部屋全体もくまなく掃除されており、 サトシの母親がセンスもいい事もあってかかなり部屋も片付いており、 それでいて家具等の日常用品などもしっかり綺麗にまとまっていた。 ヒロシ君がサトシの家に泊りがけで滞在していたこの日のこと・・・。 プルル・・・・ サトシの家の受話器が鳴り響いた。 当然、家の電話に応答するサトシ。 しばらくの間、間が空く。 よっぽどの長電話なのだろうか・・・。 ようやく話が終わったのかサトシが不思議そうな顔をしながら部屋に戻ってきた。 ヒロシもこの電話の主が誰だったのか気になったのかサトシに声をかける。 「やぁサトシ、電話、誰からだったの?」 「ああ、オーキド博士からだったよ。」 「ふーん、博士から。」 「でもさぁ、何か変な感じだったんだよなぁ。」 首をかしげながらもヒロシ君にそう言い放つサトシ。 「変?」 サトシの表情が気にもなってきていたからヒロシ君も原因を聞いてみる。 「ああ、だって博士ったら 『ヒロシ君に代わってくれっ!!』 って言うんだぜ? どうしてもヒロシに代われって五月蝿くてさ。 そもそもどうしてヒロシがここにいるのが判ったんだろ・・・。」 「僕に・・・? 一体何の用だろう・・・。」 ふと疑問を持ちながらもヒロシは受話器の方へと向かった。 「はい、ヒロシです、お電話代わりました。」 『おお、ヒロシ君かっ! 実は君にどうしても話したいことがあってな・・・。』 受話器の向こうのオーキド博士はいたって冷静に映る。 でも何処か可笑しい。 明らかに雰囲気が・・・。 何処と無く・・・だが。 「話・・・ですか?」 オーキド博士とはあまり面識も無いヒロシだが 流石にポケモン界の権威の博士が相手だけに尊敬はしていた。 『そう・・・話じゃ。 じゃが電話越しというのもあれだからのぅ・・・。 お、そうじゃ三日後の日は丁度休日なんじゃ。 悪いがその日にでもワシの家に訪ねてきて貰えんじゃろうか?』 「はい・・・判りました。 ところで博士、どうして僕がサトシの家に遊びに来ていることをご存知だったんですか?」 流石のヒロシ君もこの事だけは気にかけていた。 博士と面識があまりあるとはいえない自分がどうして博士に呼び出されるのか。 そもそもどうして自分の居場所が・・・。 『ふふ・・・、君の事ならなんでも知っておるんじゃよ・・・。』 ヒロシ君の耳には入らなかった小声ではあるが、 確かにオーキド博士はそう言い放った。 不気味な笑みを浮かべて。 「へ? 今、何かおっしゃいました?」 かろうじてヒロシ君の耳には届かなかった恐ろしいこの言葉。 慌てて博士は応答する。 『い・・・いや、何でもないんじゃ・・・。 あ、そろそろヒロシ君、この事は誰には言わんで欲しいんじゃ。 特にツバキ君にはな・・・。』 「?? ツバキに・・・? はい、・・・判りました。」 『うむ、待っておるぞい・・・。』 「では三日後にお伺いします。」 という経緯があった。 「ところで博士、僕に話ってなんですか?」 さっそく博士に話を切り出してみるヒロシ君。 本題が気にはなっていたから。 (・・・・・ポッ) 何故か赤面するオーキド博士。 「・・・? 何故赤くなるんです?」 「うう・・・、もう我慢出来んぞいっ!!」 「へっ!?」 そう博士が言い放った刹那・・・。 ガバッ!! 何を思ったかいきなりヒロシ君に抱きつくオーキド博士。 しかも完全にヒロシ君を抱擁かる形に固定している。 「ヒロシ君っ、 ワシは・・・ワシは君の事が好きじゃったんじゃぁぁぁぁっっ!!!」 「はぁっ!?」 オーキド博士の絶叫がマサラタウンの上空を包み込んだ。 ―――To Be Continued ――― あとがき チャットでちょっとした経緯があって、 某Mさんからのリクがあった読み切り小説の前編。 やおいって書くの初めてだったし、 かなり壊れてたのかも。(汗 ではまた中編で。