ポケットモンスター。 通称「ポケモン」の愛称で人間達からよく親しまれている。 このポケモンの中にも色んな奴らがいて、 愛想がいい可愛いポケモン達。 姿が怖くて近づき難いポケモン達。 妙な事に拘る性格でなかなか自分を曲げようとしない性格のポケモン達。 だけど彼らは皆、同じ「ポケットモンスター」同士。 ―――だってポケットモンスターだから。 元を辿れば皆、根はいい奴ばかり。 どんなに恐ろしい顔をしていても、 どんなに恐ろしい姿、形をしていても、 彼らの心は同じ。 剽軽なポケモン。 ずる賢いポケモン。 心優しいポケモン。 ひねくれ者のポケモン。 ――あれ? ――ちょっと待てよ? ――アイツは? ――――――こいつはどうなんだろう? こいつの性格だけはさっぱりよく掴めないんだよ。 何時も寝てじかりのアイツ。 そう、食べてばかりのアイツ。 食べてばかりだからいつの間にかポケモンの中でも一番重い体になってたあのポケモン・・・。 ――そうだよ、お前のことだよ! ――――――――カビゴン!             ボ ク の し あ わ せ。 ――――山。 緑の木々が生い茂り、辺り一帯は見事な美しい緑の風景が見られる。 頂上から眺められるこの山全体の風景は正に絶品だ。 風は強い。 暖かくもなく、寒くもなく、 でもどちらかというと・・・穏やかな風。 野生ポケモン達が辺りを走り回っている。 楽しそうに、愉快に。 跳ね上がったり、飛び上がったり。 または叫んでいたり。 コラッタやオタチ等の愉快なポケモン達が楽しげに遊んでいる。 木の上では鳥ポケモン達の綺麗な歌声が聞こえる。 爽やかな風に乗って。 神秘的な風と鳥ポケモン達の囀りが上手く噛み合っている見事なハーモニー。 だけどそんなポケモン達とはまるで違うポケモンが大きないびきを立てて大地に寝ころんでいる。 それも一匹だけ。 体は・・・大きい。 とにかく大きい。 周りのポケモン達とは段違いの大きさだ。 真っ黒な体の色。 容姿は・・・一見愛らしい。 大きくはあるのだが何とも寝顔がとても愛らしい顔立ちで、 幸せそうに眠りこけている一匹の大きいポケモン。 大きな野良猫の様な姿をしている。 ――こいつの名前は、 ――――カビゴン。 時間が経った。 夕方だ。 真っ赤な陽は既に落ちている。 昼間はこの山を所狭しと飛び回っていた野生ポケモン達はもう枕の中へ。 薄暗い静寂とたまに聞こえるフクロウポケモンの不気味な笑い声。 それだけが山全体に響き渡る。 ――アイツはどうしているだろう? ――やっぱりまだ眠っているのかな? なんだか少し気になったから、昼間アイツがいた場所をもう一度覗いてみよう。 ――・・・ ――――――・・・・・・ ――――! ――――いた!まだいたよ。 昼間のカビゴンは相変わらずだった。 日中いた場所と寸部違わず全く同じ場所で全く同じ行動を取っている。 昼間と全く同じ場所でただ眠っている。 気持ちよさそうに、眠っている。 ただ、ひたすら。 何事も無かったかのように、幸せそうに眠りこけている。 あれ? 眠そうな瞼が一瞬開いた? 気のせいだろうか? ――――否。 確かにカビゴンの眠そうな眼ははっきりと開いて見せた。 そしてゆっくりとのっしりとカビゴンは起きあがった。 「カビィィ・・・。」 ググーッとお腹が鳴る。 カビゴンもお腹が空いたみたいだ。 無理もない。 一日中ずっと眠りこけていたのだから。 夕暮れ時。 ようやくこの時間帯がこのカビゴンの目覚め。 そう、カビゴンの一日が始まるのだ。 勿論、辺りには昼間ほどのポケモン達の数は見えない。 普通のポケモン達とは違うポケモン。 それがこのカビゴンなんだ。 ************* 起きあがったカピゴンは必死にある一つの大木を揺すっている。 グラグラ・・・。 勿論、辺りは風はない。 辺り一帯の木はどれも静止したままである。 だけどカビゴンが必死に揺すっている木だけは、 揺れていた。 確実に揺れていた。 ドサドサ! すると沢山の木の実がカビゴンの周りに落ちてくる。 美味しそうな真っ赤な果実。 カピゴンはゆっくりその赤い果実を手に掴む。 そしてザバッと口にそれを流し込む。 もぐもぐもぐ・・・・ それを口に放り込む。 食べる。 流し込む。 ほうばる。 ************ 「カビィ・・・。」 満足そうなカビゴン。 カビゴンの周りにあれだけあった大量の果実は既に存在しない。 皆、全部、ぜーんぶカビゴンのお腹の中へ。 もう満腹だ。 カビゴンにとってはこの上ない最高の一時。 お腹いっぱい食べることが・・・ ――――――ボクの幸せ そしてカビゴンは再び夢の中へと旅立つ。 相変わらず、いつもの場所に寝ころんで。 眠る。 ひたすら眠る。 そう、今、こうして眠っていることもまた・・・ ――――――ボクの幸せ・・・ ***************** ――――さぁ、今日もまた居眠りポケモンのカビゴンを覗いて見ようよ。 幸せの一時。 各々が違うもの。 そう、このカビゴンにとっては、 「食べる」ことが。 「眠る」ことが。 何よりも し あ わ せ だから。 ――――――カビィ・・・。 今日もまたある山の中で一匹の居眠りポケモンが大地に寝ころんでいます。 今と変わらぬ日常。 それもまたカビゴンにとっての幸せのかたち。 fin あとがき にゃぁ・・・なんですか、これは。(笑 カビゴンの読み切り。 幸せの一時。 なんかちょっと羨ましいような。(笑 ではまたですっ!